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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 6章:汐風が運ぶ出会い
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汐風を感じて





 海。今俺たちは海の上にいる。

 そして、俺たちミラさんの弟子の半分は死にかけていた。





「うぅ……気持ち悪い……」

「る、ルカ……大丈夫?」

「大丈夫じゃない……」

 船の手すりに掴まり今にも吐きそうなルカ。こんなにひどい状態の船酔いは初めて見た。

「まさか、こんなに……乗り物駄目だった……なんて……」

「酔い止め飲んだんでしょ?」

 力なく頷くと海に向かって嘔吐しだす。サラは困ったように俺を見た。

「……俺、向こうのほうで手一杯」

 そこには屍と化したアベルとシルヴィア。船酔いしすぎだろこのメンバー。

 まあ、ルカと違ってあの二人は酔い止めも飲んでないであの状態だから自業自得だけど。

「ユリアは?」

「船の中あちこち見て回ってる」

 全く酔っていないのはユリアとサラ、そして俺。シルヴィアは初めて船に乗ったらしいがアベルは何度か乗ってるとかほざいたくせにこのザマだ。そしてルカは小さころに一度だけらしい。

「ケイト、船酔いの対処法わかる?」

「俺船乗るの初めてだからなー……」

「ああ、アウローラ人でもそういうことあるんだ……」

「アウローラ人全員が水の都に住んでると思うなよ」

 故郷のアウローラは水の都とも呼ばれ日常的に船で街を移動する。しかし、それは都会などであって田舎住みの俺には縁のないことだ。

「そういえばミラさんどこいったんだ?」

「さあ……アタシちょっと船員さんに船酔いのこと聞いてくる」

 近くにいた船員にサラは声をかけてしばらくの間何やら話し込んでいた。すると、ルカが今にも死にそうな顔で船員の方を見ながら言った。

「……あの船員、サラに色目使ってる」

「今ひどい言いがかりを聞いた気がする」

「ヘラヘラして……ムカつ――うっ」

 再び吐いたルカにサラは慌てて駆け寄ってきて背中をさする。狙い通りなのか偶然なのかはわからないがとりあえずよかったなルカ。


 そして――


「おーい、お前ら生きてるー?」

 隅の方でうずくまるシルヴィアとほぼ倒れているアベルに一応声をかけておく。しかし反応がないので多分瀕死だろう。

 シルヴィアとアベルはとりあえずまだ吐いたりはしていないが時間の問題だろう。顔は既に真っ青でひょっとしたらルカよりもひどいかもしれない。

「ケイトくーん」

 船内を見て回っていたユリアが駆け寄ってくる。一瞬、心配そうにアベルたちを見たがすぐにそっと目をそらした。

「ミラさんあまり体調が良くないらしくて今からしばらく寝るそうです。放っといて大丈夫、って伝言もらったのですけど……」

 ミラさんが?

 船に乗るときまでは元気だったのになぜだろう。しかし放っといてと言われたようなものだしかかわらないほうがいいのかもしれない。

「俺もちょっと船内見てこようかな」

「じゃあ私アベル君とシルヴィアちゃん見てますね」

 二人をユリアに任せて船内を散策することにする。割りと大きめの船でコーピアまでいくものだ。そのコーピアでヒモト行船に乗り換えるそうだがコーピアにつくのも一日以上かかるそうだ。どうやらこの船は遊覧船に近いらしいのでスピードが遅いらしい。

 そんなことを考えながら船内のレストランや売店を確認しもう一度外に出る。

 ユリアたちがいるほうとは逆の船首の方でちらほらと人が確認できる。やっぱり観光客が多いみたいだ。それなのにいきなり七人分のチケットを取れたミラさんはいったいどれだけお金を持っているんだろう。

 手すりにつかまり海を眺める。汐風にさらされて一瞬目をつぶってしまう。再び目を開けると変わらない海。景色に満足して振り返り――


「よっ」


 全く見覚えのない相手に親しげに声をかけられた。


「……えっ」

 知り合いかと思ったが全く覚えがない。

 金髪の男は笑顔を浮かべながら初めて会うはずなのに旧友と話すように俺に声をかけた。


「よー、そこのお前。せっかくの船旅だ。仲良くしようぜ!」



新章ですが短めの章になる予定です……。しかし新キャラが出ます。

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