閑話:悪と言われた者
むかしむかし、へいわだったこのたいりく『オルステルス』はいくつもの国がひしめきあっていました。
しだいに国々はまとまっていき認められた国はかぞえるほどになりました。
そんなたいりくに大きなききが迫っていました。
あくのそしき『アニムス』がたいりくで悪さをはたらき、そして、せかいをほろぼすほどのじけんを起こしました。
そのときたちあがったのはせいぎのこころざしをもった協会、そしてクラン『アミーユ』の面々でした。
クランアミーユは一人一人がとても大きい力をもっていてほとんどがルーチェでした。
しとうのすえに協会とアミーユ側がしょうりし、せかいはへいわになりました。
めでたしめでたし。
「あーあ、くだらないくだらない!」
苛立たしげに小さな絵本を投げ捨てる少年。整った顔立ちを醜く歪めている。
椅子に腰掛け憮然とした表情を浮かべている。
「完全に悪役じゃん、俺ら。何、あのアミーユとかが正義で俺らが悪? どうなってんの」
「世間は悪と正義を決めないと何もできないだけさ。気にするだけ無駄なことだよ」
少年に答えたのは青年はくすんだ赤毛をかきあげ、優雅に紅茶を口にする。
青年は紅茶を置くと近くにあった何冊かの本の中から一番古いものを取り少年のほうへ投げた。
「お前は絵本でも理解できないんゃないかと心配だったけど大丈夫そうだ。こっちも読んでみたらいいよ」
「はぁ? つーかアミーユ冒険記、アミーユ伝説って……多すぎだろ。なんだよこの量」
少年が指差したのは青年の近くに山積みになっている本だった。軽く二十冊は越えているだろう。
青年はその中から再び別の本を取り自分で読み出した。
「ここにあるのも一部さ。千年間の間改変され続けて今でもこうやって伝わってるんだ。膨大な量になるに決まってるだろう。僕としては彼女のところだけで充分なんだけど」
「本当にお前もしつこいな。『起きた』ばっかりに惚気聞かされるこっちの身にもなれって」
「やっと手に入るんだ……少しぐらい許してくれよ」
本のある文字を指先でそっと撫でる。その様子はまるで狂気。
「大陸を救った英雄として称えられた六人の少年少女。アミーユメンバー……『ユリシア・コルベール』に『レイフィア・カタルシス』、『カズキ・サザナミ』。こいつらはどうでもよかったんだ……。問題は目障りこの上ない『ルイス・カーネル』、何から何まで気に食わない『カイル・ラバース』……でも、もう気にすることはなくなった」
本を空中に投げるとなんの前触れもなく本は燃え出し跡形もなくなってしまった。
そして口元に笑みを浮かべた彼の顔を見ることができた少年はその様子を見て思わずぞっとした。
「邪魔する奴らはもういないんだ。そうだよ、僕のお姫様『ミラ・エルヴィス』……」
狂気に満ちたこの世界で狂気に全てを支配された青年はただ一人を求め更に狂っていく。
その狂気は緩やかに侵食し、破滅を呼び起こしていた――。
「ルカー! ルカ! るーかー! おーきーてー!」
「サラ……起きてるよー……何ー……?」
災いを呼ぶ少女と少年。
彼らと出会うのはまだ少し先の話――。
「魔物相手に魔法の練習でもしようよ! どうせなら人形よりも生きてるほうが実践向けでしょ」
「駄目だって! 村の外でそんな勝手なことしたら……」
「ふーん、じゃあ村の中だったらいいわけ?」
「え……」
魔法使いの村へ