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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 5章:呪術師の道しるべ
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事実の明かり



 クレームのおかげかとりあえず落ち着いてくれた二人と全く話がわからない俺たちとヴィオにエレナさんが説明をしてくれた。合計九人いるというのにその分の椅子があることに驚きを隠せない。

「こいつはその……まあ昔からの知り合いのカースっていうやつでわた……アタシは事情があって定期的に会ってたんだけど……で、カース。何で勝手に引っ越したのよ。最初どこ行ったのか探したんだから」

「ゴメンゴメン。実は前に住んでたトコ、苦情ガ相次いで出ていくハメにナッタんだよネ」

「目と鼻先に引越してんじゃないわよ。前のところから二キロも離れてないわよ。マレ中探したアタシの苦労を返せ」

「ソレはミラちゃんの探しカタが悪いんジャナイ?」

「よくもまあ、見つからないようにカモフラしときながらその台詞が言えるわね……」

 エレナさんが怖い。というか先程から気になっていることがいくつかあるのだが言い出せない。

「ア、そういえば君、あげた物ハ役に立ッタ? ――ドウヤラもう使った見たいダケド」

 俺を見てカースさんは口の端をあげる。やっぱり、ルカとサラの村の近くであったあの仮面の人のようだ。

 不審そうなエレナさんの表情はもっともで前に出会ったことを説明すると今度はカースさんに疑うような視線を向けた。

「は? 会ったことあるの? というか何あげたの? モノによっては殴るわよ」

「エ、ただノ、スケープゴートドールだけど」

 言われて半ば押し付けられたようなアレを思い出す。

 マジッククロークから取り出すとそれは二つに裂けていて原型が辛うじてわかる程度だった。

「持ち主の生命の危機を感ジトリ身代わりノ役目を果タス道具。小生のお手製人形ダヨ」

「え、これ人形なんですか……」

 とてもじゃないが人形に見えなかった。というか布の塊だと思ってた。

「出た、師匠のたまにある人形に見えない何か……」

「失礼ナ。立派な人形ダロう」

「普段は綺麗に作るのにたまーに目も当てられない失敗作作りますよね、師匠」

 ヴィオのどこか遠い所を見る目に思わず共感する。何をもってこれを人形と言うのか。

「見てくれは悪イかもしれないケド、効果はバッチリなのニ……まったく、コレだから素人ハ……」

 なんだか目的を見失いそうになってきたのでとりあえずここに来た本題をエレナさんに告げる。

 そしてカースさんにヴィオの一連の行動等を説明すると仮面でよくわからないが困ったような素振りを見せた。

「あれほど裏の仕事は控えなさいと言ったのに……ヴィオ、覚悟はできてるね?」

 唐突に口調が変わったかと思うとエレナさんを含むその場にいた全員が身震いをする。本能的な恐怖とでも言うべきだろうか。

 ヴィオはその中でも飛びぬけて震えており処刑を待つ罪人のようだ。

「ヴィオ、こっちに来い」

 無言でカースさんの圧力に従い震えながらカースさんのすぐそばまで近づくと彼はヴィオをへ手を伸ばす。

 来るべき恐怖に備えてかヴィオは強く目を瞑る。


 そしてカースさんはヴィオの額に軽くデコピンをした。


「……え?」

「これに懲りたら勝手に裏仕事はしない、いいね?」

 正直デコピンだけで本人も面食らっているようで目をぱちくりさせている。そしてなぜかエレナさんが怒った。

「あんたねぇぇぇぇ!! 甘やかしてんじゃないわよ! そんなキャラじゃないでしょあんた!」

「ソンナことナイよねー? ミラちゃんの勘違いダヨー。小生いつも優シイよネー?」

「え、あー……そうですね、優しいです」

 するとずっと黙っていたアベルが妙に和んだ空気を切り裂くようにある疑問を投げかけた。


「……さっきからそいつが言ってる『ミラ』って、どういうことか説明しろよ」


 途端にエレナさんの表情が固まる。逆にカースさんはにやにやと状況を楽しんでるようだった。

「アベル、それは――」

「そうだよ、聞かなくてもいいよアベル」

 ルカがエレナさんへ助け舟を出したかのように見えたが一瞬にしてそれは間違いだったと思い知る。

「アミーユに協力したことある伝説の呪術師カースと格闘家シャオリー、そしてアミーユ伝説のメインともなった大剣士ミラは栗色の髪の美少女だった……聞く必要もないよね、これだけのネタが揃っていれば」

 サラはルカの言葉に驚きはせず納得したように息を吐いた。シルヴィアは戸惑っているのかエレナさんとルカの顔を交互に見る。ユリアはよくわかっていないのか首を傾げていた。

 そして正直俺は驚きや戸惑いよりもエレナさんのずっと隠していたことかもしれないことにどう反応していいのかわからなくなっていた。


『ケイトには言えない、秘密があるの。いつか話せるとは思うけどそのときは――』


 旅に出る前に言われたその言葉を思い出す。これが秘密だとしたらエレナさんは何故――

「エレナさん……あなたはもしかして――ミラ・エルヴィス……?」




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