呪術師との邂逅
海の国マレ。潮風に包まれ穏やかに過ごす者もいれば錨片手に海の魔物と戦う漢気溢れる漁師が数多くいたりするが年々人口が減少しており少子高齢化も進んでいる。
そんな国のとある町ガウデレ。そこに住まう変態呪術師が今日も今日とて息づいていた。
「ハー、ヴィオ帰ってコナイし……ま、心配ハしなくてイイんだろうケド」
呪符を火に焼べ、陣などが描かれた紙の束をちらりと見ると椅子にもたれかかりため息をついた。
男は白塗りの仮面で顔の右半分が隠れるようになっている。それを押さえつけるように手をやるとわずかに顔が歪んだ。
「そろそろまずい、か……ヴィオが帰ってくる前に動く――」
その時、玄関から訪問の合図が響き仕方なく立ち上がる。ヴィオではないとしたら客人だろうがこんな場所に来る人間などいるのだろうか。
次第に激しくなっていく扉を叩く音に鬱陶しさを感じつつ玄関に向かい扉に手をかけた。
「ハイハイ、どちらサマ――」
そして何故か半開きの扉が勢いよく吹っ飛び男も一緒に吹っ飛んだ。
ガウデレ、南広場付近の家宅前。
「とっとと出てこいよあの変態野郎……」
「エレナさーん、そんな叩きまくらなくても聞こえますって」
必要以上に扉を叩くエレナさんに通行人も不審そうな目を向けている。というか合計八人の大所帯なら不審に見られてもおかしくない。
「ていうかヴィオに入れてもらえばいいのになんで向こうから開けさせようとしてるんですか」
ルカの疑問はもっともで近隣住民からの視線が痛い。ヴィオはしきりに会釈をしてごまかしているようだ。
「あいつが出てきたところを吹っ飛ばしてこっちが有利に会話を運べるようにする……ついでに殺れたら殺る……それしかない……それしか――」
「ハイハイ、どちらサマ――」
開きかけた扉ごと男の人を盛大に蹴り飛ばし家の中へと吹っ飛ばした。扉も一緒に飛んだせいで残骸の下敷きになっている。
「――やったか?」
「エレナさんその台詞はやってないフラグです」
俺ってツッコミのためだけに存在するんじゃないだろうか。最近そう錯覚する。
音のこの人は扉の残骸を退けて起き上がる。白塗りの仮面――見覚えがある気がする。
「っててて……ナンだよモウ……って、ん……?」
仮面の男はまじまじとエレナさんを見るとみるみる纏う空気が重苦しいものから軽やかなものへと変わった。
「……ミラちゃん? ミラちゃんジャないカ!! ヒッサシぶりいいいい!!」
そう叫んでエレナさんに飛びつこうとした仮面の男をエレナさんは怒りを込めて蹴り飛ばした。
もちろん、モロにケリを食らった男は壁に激突しそのまま崩れ落ちる――かと思いきや何事もなかったように立ち上がり声を上げて笑った。
「ハッハッハ、ミラちゃん相変わらずカゲキー。ソンナところモ愛してルヨ」
「……みんな、ちょっと離れてて。怪我するといけないから」
目が完全に据わってるエレナさんは剣――しかも大剣を出現させる。
「再会してスグ愛のムチとかちょっとハードじゃナイ? それに小生はミラちゃんをイジめた――」
「少し黙れこの変態がああああああああああ!!」
エレナさんが大剣を振り、男に強い衝撃を放つ。男はそれを避けるとその衝撃を外へとはじき出すためか、天井へと向けた。
天井が崩れ軽い爆発のようなものが発生し二人の間に緊迫した空気が漂う。しかし、俺たち六人とヴィオはポカーンとその様子を見ているしかできなかった。レベルが違いすぎる。
そして、近所の人からクレームが来て説教を食らったのは言うまでもない。
また短い……お許しを……!