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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 4章:偉人たちの躍動
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邂逅と喪失

※軽く女装ネタ注意


 彼女は目を覚まさない『ケイト』をどうすべきか悩んでいると部屋から物音が聞こえた気がし様子を見に向かった。

 すると体を起こし窓の外を見つめている『ケイト』がいた。

「おー! やっと目を覚ましたネー! よかったよかった。何か食べる?」

 のろのろと視線を動かし焦点を合わせようとする『ケイト』はどこか虚ろで彼女を見るなり首を傾げた。

「ここは……」

「えっとねーアウルムの端っこにあるバーレルって町なんだけど……ナトゥーラがものすごく近いヨ。君は多分そっちからきたんだよネ?」

「誰……」

「あーそういえば名前! ワタシは――」

「俺は、誰……?」

「え――?」

 雨がやんだばかりの外はまだ薄暗くじめじめと肌にまとわりつくような空気だった。






 ナトゥーラの隣に位置する国アウルム。商人の国とも言われ流通が盛んである。

 一行はその国の端に位置する町、バーレルに来ていた。

「エレナさーん、無視しないでくださーい」

「ああもう、本当についてくるし……」

「その割にはちゃんと面倒見るんですね」

 ルカが口をはさむとエレナはばつが悪そうに目をそらした。

 結局、ついてきたシルヴィアはなんだかんだで打ち解けているのだが――

「ちょっと、私の足わざと踏んだでしょ!」

「被害妄想だな。まあお前がうるさいのが悪い馬鹿女」

 アベルとは一向に打ち解けるどころか仲が悪化していいくのである。

 最初はそれなりについてくる負い目もあってかシルヴィアはだいぶ喧嘩を吹っかけなかった。しかし、今となっては普通に喧嘩に発展するようになりたまに暴力沙汰にすらなってしまう。

 どちらも子供の喧嘩並みの頭の悪さだが。

「馬鹿っていう方が馬鹿なのよ! アホ男ー」

「誰がアホだ馬鹿女」

 そのやり取りを何度も見ているエレナ、ルカ、サラは苦笑するしかない。

 しかし、笑うどころか無反応を貫くユリアはもうここ数日ろくに声も発していないような状態だった。

 フラフラと歩いているかと思うとあちこちぶつかってまた歩き出す。みんな何度も心配になったが本人は「平気です」の一点張り。

 またもやふらついた足取りで前へ進むユリア。やはりというか人にぶつかってしまう。

「あ……ごめんなさ――」

「どこ見て歩いてんだゴラァ!?」

 ぶつかったのはいかにも三下っぽいチンピラたちでユリアはあまり表情を変えずに「ごめんなさい」と繰り返した。

 その反応が気に食わなかったのかチンピラたちは更にいちゃもんをつけ始める。

 そのやりとりを見てサラはぎょっとじた。今にもユリアが魔法を発動させかねない状態だったからだ。

「ユリアやめ――」

 制止しようとサラがユリアに近づこうとした瞬間赤いものが視界を遮ったかと思うとチンピラたちが綺麗にまとまって吹っ飛んでいた。

 一行は何が起こったのか理解できず吹っ飛んだチンピラたちとユリアを交互に見た。

 すると、ユリアの前に赤い変わった服装の女性が仁王立ちしていた。

 くすんだ金髪が肩のあたりで揺れており大陸でトップレベルに一般的な茶色い瞳は怒りで燃えている。

「おーまーえーらー! あれほど問題事起こすなって言ったじゃないカー!」

「ひぃいいいい!? しゃ、シャオリー姐さん! どうしてここに……」

「んなことより、ちゃんと謝ル! 旅の人たち、ごめんなさい。身内の馬鹿が――ってあれ?」

 シャオリーを呼ばれた女性はまずエレナを穴があくほど見つめ、ルカに視線を移し呆然としていた。

 そしてエレナに視線を戻し子供のような笑顔を浮かべた。その瞬間、エレナが「あ、やば……」と呟くのをサラたちはしっかりと聞き取った。

「嘘ー! すっごい久しぶりだネー! ミ――」

「セイッ!!」

 シャオリーが何か言いかけた瞬間、エレナは華麗なまでに拳をボディに叩き込み不気味な笑み(のようなもの)を浮かべた。

「あらやだシャオリー、久しぶりね。覚えてる? エ・レ・ナ、よ」

「えっ、エレ……あー……うんうん、久しぶり! 『エレナちゃん』」

 二人の奇妙なやりとりにルカとアベルは怪訝そうな顔になりシルヴィアは首を傾げサラはユリアが暴走しなかったことに安堵のため息を吐いた。




「でさー、数年くらいこの辺に住んでて……エレナちゃんは?」

「あっちこっち行ったり来たり。最近は弟子が増えた」

「びっくりだよネー。エレナちゃんが弟子を五人も……ところでここには何しにきたの?」

 久しぶりに再会した友人のごとく(まさしくその通りなのだが)会話を交わすエレナとシャオリーに五人は置いてけぼりを食らった。一応歩きながらどこかへと向かっているようだがこんなので大丈夫かと不安しかない。

「実は……モリアに用が」

「あー……モリアは引っ越したヨ。結構前に」

「はぁ!? どこに!?」

「確か……マギアのどこかって聞いたケド……」

「あっちゃぁ……じゃあジョン――」

「ジョンも仕事かなんかで当分戻んないって。この前勝手に家に来て飯たかりにきたノ」

「うっそ……最悪」

 エレナは肩を落とすと額に手をやり深いため息をついた。

「最悪ジョンはいると思ったのに……」

「まあまあ……すぐ帰ってくるかもしれないしうちに泊まったら? 無駄に部屋はあるシ」

「一刻を争うってのに……」

「あの……」

 今まで黙っていたサラがエレナに声をかけると不思議そうな顔をして二人が振り返る。

 サラは言葉を飲み込みかけたがこのままだといけないと感じ諦めたように言った。

「どちら様ですか……その人」

「……ああ、これ? アタシの古い知り合いのシャオリー。まあ元仲間って感じかな……」

 指を指して示すとシャオリーは照れたように頬を掻き「えへへ」となぜか笑い出した。

「ミ……エレナちゃんに仲間って言われると照れるナ~。あっ、あそこワタシの家だヨ」

 見えてきたのは少し寂れた感じの建物。どちらかというと家というより店のような印象だ。

 あちこち薄汚れておりいかにも古そうな建物だった。

「うわ……なにこれ廃墟?」

「あー……実は安くて広いとこ探してたらこれしかなくて……まあ中はちゃんと綺麗にしているシ」

 苦笑しながら扉に手をかけると軋むような音を立て家の中にいた人物が気づいたように振り返った。


「あ、シャオリーさんおかえりなさい」


 シャオリーを除く者が思わず言葉を失った。

 黒目黒髪、どことなく幼い顔立ち。どう見てもケイトその人だった。


 しかし、なぜか俗に言うメイド服を着用している。黒を基調としたシックなデザインのものだ。


「ただいまー。いい子いい子ー、ちゃんと掃除してくれて偉いネー」

「ちょ、頭撫でないでくださいよ……って、お客さんですか?」

 彼はまるで『全く知らない人を見るような目』でユリアたちを見た。

 そして、愛想笑いを浮かべ丁寧におじきをして言った。


「初めまして。俺は居候のケイです」




久しぶりにも関わらず超展開ごめんなさい……!これから人物がわんさか増える、かも……

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