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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 3章:亜人の婚約者
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落ちてしまった小鳥3



 時間をかけて川の近くまで来たがチビらしきものは見当たらない。人影もないし誰かがいた形跡もない。

 ユリアは呆然と川を眺めていて何かを見つけたかと思うと川に入っては出るの繰り返しだった。

 俺に背を向けて立ち尽くすユリアに堪えきれず声をかける。

「おい、ユリア。もう――」

「もう、何ですか? ケイト君はこんなことで私の前からいなくなったりしません……いなくなるなんてっ!!」

 振り返ったユリアは両目に涙をためていた。こんな表情、見たことがないだけに衝撃だった。今にも泣きそうなのに泣けない、そんな表情。

「ケイト君は約束してくれたんです!! 私の記憶が戻るまで、必ずそばにいてくれるって!! 不安にさせないって!!」

 縋るように俺の服に掴みかかったかと思うとそのまま顔を俯けてぽろぽろと泣き始める。俺の胸に頭を押し付けてみっともなく声を殺して泣くユリアをどうすればいいのか、俺にはわからない。

 だからぎこちなく頭を撫でてやるしかできなかった。


 心の拠り所をなくしてしまえば壊れるのはあっという間。だから気に食わないけど――せめてユリアのためにも生きててやれ。




「それでエレナさん、これからどうするんですか?」

 エレナの治療をしながら壊滅しかけた村を見渡してルカは聞いた。

 サラとシルヴィアは生き残りがいないか探して回っている。が、あまり期待はできそうにない。トーマスは生き残った村人を集めて今後のことについて話し合っているようだ。

 生き残ったのは三十人弱。何とか瀕死だったのをルカが安全圏まで癒したからである。

「癪だけど協会にちょっと頼み事とこの村の人たちの保護、あとケイト探しかしら」

「意外と優先順位が低いんですね。驚きました」

 ちっとも驚いていないように言うルカにエレナはどことなく既視感を覚えた。

「弟子が死んでるかもしれない状況でよくもまぁそんな冷静だな、と」

「冷静ではないわよ。焦ってもパニックに陥っても解決することじゃない」

 エレナは内心、ルカの言動について既視感と同時に違和感をも覚えていた。普段のルカはここまで過激ではないはず。

「へぇ……まあ今はその言葉を信じますよ。――ケイトはまだ死なせたらいけない存在だってあなた知ってるでしょう?」

「――そうね」

 エレナが同意の言葉のようなものを呟くとサラとシルヴィアが戻ってきた。

「エレナさん、村のみんなが協会保護の話を受けるって――」

「あー、ツテあるからそれは大丈夫。シルヴィア、あんたはトーマス……じゃないお父さんと一緒にいてあげな――」

「それと私、エレナさんについてくから」

 沈黙がその場を支配する。ついでシルヴィアを除く三人が「は?」と首を傾げる状態になった。

 やがて深く息を吸い込んだエレナがやや顔をひきつらせながらシルヴィアに問いかけた。

「あの、さ……一応聞くけど、弟子になるってことでいいの?」

「ええ、そういうこと」

「……え~っとね……トーマスは何て?」

「『行ってこい』って許可は降りてます」

 どんどん引きつっていくエレナの表情を見たサラは「うわぁ……」とだけ呟いた。

「アタシは嫌なんだけど?」

「それでも最悪、ケイトを見つけるまで! できればエレナさんに修行つけてもらいたいです!! パパがエレナさんの弟子になれば確実に強くなれるって」

「トーマスの奴……余計なことを……!」


「だからお願いです! 私を弟子にしてください!!」








「釣れないネー。うーん、今日は諦めて帰ろっかナー」

 川に釣り糸を垂らしながらぼやいているのは変わった身なりの女性。結い上げているくすんだ金髪の髪を無造作にかき回しながらぼやいている。とろんとした瞳は割と一般的な色である茶色。欠伸をしながら眠そうに目をこすっていると竿が揺れたことに気づき引き上げようと力を入れる。

「おっ、もしかして大物? よーいしょっ!」

 力一杯引き上げると釣り針には魚ではなく人が引っかかっていた。うまく服の部分に引っかかっていて本人の意識はないようだ。腹部は赤く染まっており怪我をしているのが見て取れる。

「んにゃ? 人が釣れるなんて珍しいこともあるネー。さてさて、どうしよっかナー……食べたらマズイよネ」

 ぽたぽたと水が滴る少年を見て彼女は眉をよせた。



次回からまたも新章……はい、中途半端で超展開でごめんなさい

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