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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 3章:亜人の婚約者
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そして森は赤く



「うぅ……六千なんてまだ出したことないのに勝てるわけないじゃない……」

 泣き崩れるシルヴィア。負けたことがショックなのか座り込んで落ち込んでいる。

「うぅ……ひっく……なんで私が負けるのよー! うわああああああん」

 そんなシルヴィアにユリアは手を差し伸べた。

 優しく微笑むその様子はやっぱり可愛らしいものがある。

「泣かないでください。これで仲良くできるじゃないですか。喧嘩する理由もないですし仲良くしましょう」

「うっ……あんな意地悪言ったのに……」

 ユリアの表情を上目遣いでちらりと見ている。こうやって見ると可愛いなと思える。

「意地悪? 気にしてないですよ。それよりも仲良くしたいです。……………………もちろん、ケイト君とべたべたするのは控えてください」

「え、いや……えーでも……」

「ひ・か・え・て・く・だ・さ・い」

 最後の方は聞こえなかったがシルヴィアがびくりと体を震わせている。いったい何言ったんだ。

「女こえー……」

 アベルの呟きにうんうんと頷くルカ。サラは複雑そうな顔で視線を泳がせている。

 いつの間にかユリアとシルヴィアは握手を交わしている。これが昨日言い争っていた二人とは到底思えない。

「お友達ですー! わーい」

「えっとー、わーい……?」

 シルヴィアって流されやすいんだな。よくわからないまま一緒に喜んでいる二人を見て横の三人はすごい複雑そうな顔をしていた。

「というか、修行どうするんだ」

 アベルの呟きにシルヴィアがはっと我に返る。しばらくあたふたと色々していたがしょんぼりと肩をおろした。

「うぅ……完全に叩きのめす気だったからノープランで……」

「そもそもハナから期待はしてないけどな」

 いつも通りの厳しい言葉。しかしシルヴィアはかちんときたのかアベルに詰め寄る。

「うっさい! 言っとくけどあんたはまだむかつくし絶対負かしてやるから!!」

 ぎっと睨み合う二人。どうもこの二人は相性がどうしても合わないらしい。

 今にもぶつかり合いそうな雰囲気になってきたので無理やり話題を変える。

「そ、そういえば修行どうする?」

 一応気をひけたのかシルヴィアが反応してくれる。

「じ、実は……叩きのめすことばっかでプラン考えてなかった……」

 主にアベルとユリア辺りから非難の眼差しが向けられているシルヴィア。まあこればかりは怒られても仕方ない。

「じゃ、じゃあ! 村案内してあげる! せっかくだし……」

 これに反応したのは意外なことにルカとサラだった。エルフェリアに興味をもっていた二人からすれば願ったり叶ったりなのかもしれないが。

「いいでしょ! はい、決まり! とりあえずいこー!」

 結局強引に押し切られ村の方へと向かった。



 村の規模はそこまで多くないが一家庭に人数が多いのか割と大勢いるように感じる。下手するとルカたちの村よりいるかもしれない。

「正直これと言ってすごいところはないんだけど……あっ、でも一個見せたいところあるんだよね」

 シルヴィアを先頭にして案内されたのはまるで小さな庭ともいうくらい花が咲き誇り整備されていた。そしてその真ん中には石碑がある。

 その石碑を見て俺はあることに気づいた。ちらりとルカを見るとルカもどうやら同じようだ。

「これはかの英雄『レイフィア・カタルシス』の墓よ。彼女はここ出身なの」

「嘘!? まさかここだったなんて……」

 サラが驚き石碑に近づく。アベルとユリアは石碑よりも周りを見渡していた。

 そんな中俺とルカは夜中のことを思い出す。エレナさんがいたのは間違いなくここだ。

 エレナさんの真意はわからない。けれど石碑に語りかけるようにしていたエレナさんのことを考えると関わりがあるのは間違いないはずだ。

「エレナさんは本当に何者なんだろうな……」

「知らないで一緒にいる僕らもどうかしてるとは思うけど。あの人は不思議な力があるよね」

 しみじみと呟くルカはそのままサラの隣に移動し石碑を見つめはじめた。

 そういえば二人はエルフェリアに興味津々だったし気になることがあるんだろうな。

 いつのまにかシルヴィアが傍に来ており腕をつかまれる。

「ケイトはさ、数日したらどっか行っちゃうんだよね。やっぱ寂しいな」

「何でだよ。別に――」

「ケイトは覚えてなくても私には大切な思い出だもん。辛いことだって乗り越えられるくらい……」

 悲しそうな笑みを浮かべ俺の手を握った。

「無理に思い出してとは言わないけどいつか――」

「シルヴィアちゃん」

 突然、俺とシルヴィアの間に割って入るようにユリアが声をかけてきた。シルヴィアは何か言いたそうだったがユリアの気迫におされたのか無言になった。

「ユリア……どうし――」

 その時、村に轟音が響いた。




「な、何!?」

 シルヴィアは慌てて村人たちの元へ駆け寄った。村人たちも困惑しておりその場は混乱していた。

 特に異常はないはずだ。それなのに先程の轟音はなんだろうか。

「みんな! 何があったの!?」

「そ、それが結界を無理やり破ろうとしてる奴らがいるみたいで……!」

 エルフェリアの若者が焦りを隠しつつもどこか落ち着かない様子で教えてくれた。

「ど、どうしよう……パパもいないっていうのに……!」

 再び轟音が響きパリンとガラスが割るような音が村全体に響きわたった。

 そして村に入り込んだ人物は短く息を吐き呟いた。


「あーあ、手こずらせやがって……さて、と……害虫駆除といきますか」


遅くなりました!そのくせ短い……申し訳ありません……!

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