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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 2章:二人の魔法使い
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その一歩は



 俺たちはエレナさんが寝泊まり用に借りていた部屋でお仕置きを受けていた。

「うぅ……顔変形するかと思った……」

「本当に殴り抜いた……」

 俺とアベルは頬を押さえながら呻いた。本当にエレナさんが殴り抜いた。「手は抜いたわよ本気で殴ったらあんたら歯抜けるわよ」と言ってたのだがこれで本気じゃないとか信じたくない。

 ユリアはデコピンされたのかおでこを押さえて少し涙目になってる。デコピン、そんなに痛いのか。

 ルカとサラは哀れにも長老にこってり絞られているみたいで今この場にはいない。

「次勝手なことしたら回数増やすわよ」

 ここまでくると殺人予告なんじゃないかと疑ってしまう。

 だいぶ痛みが引いてきた頃説教から逃げてきたルカとサラが部屋に勝手に入ってきた。

「いたっ! ちょっと匿って!!」

 エレナさんは怪訝そうな顔をしていたが仕方ないという風に受け入れていた。

「どうしたんだ? 長老さんに説教されてたんじゃないのか?」

「……長老が本気で怒るの久しぶりに見た」

「噂は本当だったのね……怖いなんてもんじゃないわよ……本当に燃やされるところだった」

 燃やされるってどういうことだよ。余程恐ろしかったのかガクガクと震える二人。お互いに大変なんだな。

 エレナさんは何を思ったのか無言で部屋から出ていった。

 足音が遠ざかっていく。それを見計らってかサラが口を開いた。

「あー、もう、全員心配症っていうか気にしすぎよね。それにしてもああやって誰かと共闘するの楽しわねー」

「そうだね。僕らは基本二人だもんね」

「村にお前らくらいしか子供がいないわけじゃないだろ?」

 ちなみに俺の故郷は俺と同じくらいの子供が全くいなかった。まだ幼い子供とかならそれなりにいたが田舎が嫌とかでみんな越してしまった。

 なのでユリアが初めて同年代で友人とかだったりする。

「……まあ、色々あるのよ。今年で十五になるのに大人たちは全然子供扱いするし」

「え、お前らって十四歳だったのか!?」

 思わず声が上ずった。正直年上だと思ってた。

「そうだよ。僕とサラは同い年で幼馴染なんだ」

「俺一応少し前に十五歳になった……同い年かよ」

「はぁ!? お前十五!? 嘘だろ? 俺も今年で十五歳だ……よりにもよって同い年かよ」

 アベルが驚きの声を上げる。というか俺もかなり驚いた。

「お前絶対年上だと思ったんだけど……マジかよ」

 身長でかいし無駄に大人ぶってるから絶対年上だと思ってた。なんだろう、この自分だけ小さく見える感じ。

 するとユリアが少ししょんぼりした表情で会話に入ってきた。

「みなさん同い年なんですねぇ……私もみなさんと同じだったらいいなぁ」

 自分の年さえわからないユリアは会話に入りづらいようだ。確かにそうだろう。

「わからないもんだな。偶然出会ったやつがほとんど同い年なんてよ」

 アベルが呟くと同意するかのようにサラが頷く。そして何か考え込むように顎に手をやる。

「偶然……必然……運命……そうよ、そうだわ!!」

 それだけ叫ぶとサラはルカの腕を掴み部屋から出ていった。ルカは特に驚いた感じはせず受け入れているような感じだった。

「……なんだ今の?」

「さあ……何か思いついたんでしょうか?」

 次の日、俺たちは思い知ることになった。




 早朝、旅立つ準備を終え、エレナさんに伝えた。

「もう大丈夫ですけど……かなり早い出立ですね」

「あー、実は目的増えちゃって。早めに向かおうかなって。魔法も大丈夫そうだし」

 ちらりとどこかに目線をやり大きくため息をついた。

 すると、ユリアが悲しそうな顔をしていることに気づき声をかける。

「ユリア、どうかしたか?」

「あ、いえ……サラちゃんとお友達になりたかったなぁって……」

 するとエレナさんがユリアの頭を小突いた。ちょっぴり痛かったのか頭を抑えるとエレナさんは苦笑した。

「まあ心配しなくても平気みたいよ」



 そして、俺たちは村の出入口付近まできた。しかし、エレナさんが急に足を止めたので俺たちに止まった。

 どうしたのかと思い声をかけようとすると突然投擲ナイフをある木に投げた。

 そして、見覚えのある二人が木から降りてきた。

「さすがにばれたかー。まあどうせ出るつもりだったしー」

 サラがにやりと笑いルカが呆れたようにため息をついた。エレナさんは全く驚いている様子もなく額に手をやり尋ねた。

「念のため聞くけど、もしかして家出?」

「家出じゃないわ、夜逃げよ!」

 違う、それは間違っている。そう突っ込みたかったがルカも同じように突っ込むのを堪えているようなので何も言わなかった。

「ずーっとこの村で過ごすのも悪くないけど刺激がないしもっと実力を高めたいの! どうせいつかは旅に出たいと思ってたしついていっちゃおうかなって!」

「そういうわけでよろしくお願いします」

 完全についてくる前提で会話が進んでいる。これでいいのか、と思ったところでエレナさんが言った。

「あーあ、まあ予想してたからいっか……ともかく勝手な行動は慎むようにね」

「よっしゃー! やったわねルカ!」

「うん、よかったね」

 二人でハイタッチをしたところでユリアがサラに飛びつき喜びだした。

「よかったです! サラちゃんとお友達になれますね! いっぱいお話しましょうね!」

「ちょっ、くっつかないでよ! てかまだ友達とか言ってるの!?」

 しかしどこかまんざらでもなさそうなサラ。その様子を見てどこか羨ましそうなアベルが顔を背けていた。

 そしてエレナさんは本日何度目か知れないため息をついたのであった。



『はぁ? 預かれって? まったく何を言い出すのかと思えば』

『二人はお前さんの弟子の条件に一致しとる。ついでに言えばあの子達は勝手についていくと思うぞ?』

『はいはい、じゃあついてきてたらちゃんと弟子にしてあげるわよ。にしても、なんでアタシ?』

『お前さんのもとならいい未来を得られると信じてるからじゃ』



「あーあ、あのジジイの思う壷かよ……うっざ」

「エレナさんどうかしました?」

 何やら不安な言葉が聞こえた気がして声をかけると何事もないようにいつもどおりの表情を浮かべていた。

「別に。さて……じゃあとっとと行くわよ」

 こうして、仲間が増えた俺の冒険は少し楽しく、かなり騒がしくなるのでした。





二人の魔法使い編、ひとまず終わりです! 駆け足感は否めませんがちゃんと二人の話ものちのち書けたらいいなと思っております。次章もよろしくお願いします!

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