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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 2章:二人の魔法使い
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邂逅?潜む影


 空中に浮いて落ちる。そんな感覚を体験したことはあるだろうか。

 普通に過ごしていたらない。ないはずだ。

 今俺は、その感覚を知ることになる。

「うわあああああああ! 落ち、落ちる!?」

「いやあああああああ! ルカ! これどういうこと!?」

「わわわっ、空間移動系の――魔法……!」

 何やら妙な景色が広がっており現実味がない空気が漂っている感じだった。その場でオレらは急に浮いたり急に落下したりと危険な状態で不安定だった。

 いきなり体が浮いたりするとさすがに慌ててしまう。

「おい、てめぇらなんとかしろよ! こんな状態続いたら酔うだろ!」

「うぅ……ぐるぐる回って気持ち悪いです……」

 全員半パニック状態でいると浮遊感は消え失せその場に落下した。

「いでっ! なんなんだいったい――」

 地面に落ちたと思ったら上から何かが落ちてきた。

 思わぬ重さぬうめき声が漏れる。

「げふっ!!」

 まずはアベルが、次にユリア、ルカ、サラの順番に綺麗に俺の上に落ちてくる。

 見事なまでに押しつぶされた俺はどっかの骨折れるんじゃないかと不安すら感じた。

「ご、ごめんケイト……大丈夫?」

「……そう思ってるならどいてくれるとありがたいんだけど」

 ルカが心配してくれたが結構真剣にやばい。

 とりあえず骨とか折れたような痛みはないので大丈夫だと思う。

「って……なんか少し場所違う?」

「みたいだね……どこに飛んだんだろう」

「どうやってここに来たんでしょうね、私たち」

 辺りは先程のように森。それは変わらないが微妙に違うことに全員気づいていた。

 空気が違う。

「まあ空間転移の魔法なんて上級者以外だと短距離移動しかできないはずだからそこまで遠くじゃないと思うけど……」

 まずくうかんてんいって何だよ。頼むからわかること前提で話進めないでくれ。

「あっ、空間転移っていうのは空間を挟んで移動する魔法の一種なんだけど使える人はほとんどいなくてジュエルとかで売られてるやつでしか中々見ないんだけど……」

「それを今誰かが使ったと」

「自力だとしたら才能あるんだろうけど……十中八九ジュエルだろうねー」

 ルカは首を傾げながら辺りを見回している。するとアベルとユリアが同時に後ろを振り返った。

「おい、例の魔物、来るぜ」

「さっきまでのとは違う感じ……空間転移とやらの直前に感じたものとほぼ同一です!」

 全員武器を構え身構える。

 すると木をなぎ倒して現れたのは森にそぐわない白い魔物だった。

 全体的に白骨のようで四足歩行でこちらに歩み寄ってくる。まず亀を連想する動きと見た目の背中と呼べる部分には無数の棘が備わっておりハリネズミを思わせた。

 総じて名前を付けるとしたら棘付き亀といったところだろうか。

「あの魔物……! 頭の部分に大量のジュエルが付いてる! 知能がある魔物ならジュエルを使いこなすって聞いたことあるぞ……」

 アベルが槍で示した先には確かにキラキラと光る宝石のようなものがあった。蒼、紅、翠、透明、紫。全部はわからないが最低十個はあるはずだ。

「白のジュエル……ってことはアレが多分空間転移ジュエルね。どうするルカ」

「とりあえずジュエル潰しながら魔物の弱点探し、かな」

 あくまで冷静な二人に正直驚いた。もっと驚くなり怯えるなりすると思っていたのだ。

 ちなみに俺はもはや慣れた。主にエレナさんの無茶課題で。

「とりあえず、ぶった斬ればいんだよなっ!」

 俺は飛び上がり魔物の頭上めがけて剣を振り下ろす。

 すると、金属同士がぶつかり合うような音が響き剣に衝撃が走る。

 そこにアベルも槍の一撃をかますがほぼ同じような感触らしく素早く後ろにさがった。

 俺もそれにならい後ろに下がると詠唱を終えたユリアとサラの魔法が魔物を襲った。

 ユリアの風魔法とサラの恐らく水の魔法と思われるものを同時に喰らってさすがに無事ではすまないだろうと思われた。

 が、しかし魔物はぴんぴんしていた。それどころか攻撃されて腹が立ったのか地鳴りにも似た唸り声をあげる。

「ちょ、嘘でしょ!? アタシの魔法が全然効いてないじゃない!」

「とりあえず色々試して。今僕長めの詠唱してるから」

 後方で構えるルカの周囲は魔力が溢れているようで空気がざわざわとしている。

「頭硬すぎ……胴体も無理だな。しかし、魔法が効かないってどういうことだ」

 アベルは魔物を睨みながら呟いた。そして、アベルも詠唱をはじめ魔物に雷を落とした。

 予想通り全く効いていないが。

「とりあえず試しにっ!」

 ルカの魔法が発動し魔物に襲いかかる炎。すると魔物は今までとは違う反応を見せた。

「え、効いてる……?」

「いや、効いてないね――ってまずい!」

 亀の体がブルブルと震えたかと思うと背中にあった棘が一斉に当たりに飛び散った。

 全員棘を弾くなりよけるなりすると棘がなくなった亀を見て唖然とした。

 恐ろしいほどの速さで棘が生えてきている。

「あー!! この亀、前に本で見た! 確かこの付近には生息してないやつでアルクスとかの森にいるはず!」

「なんでアルクスの魔物が……遠いところすぎて誰かが意図的に運んだみたいだね」

 アルクスはここマギアからかなり離れている国でアウローラとも正反対の方向だったはず。

 棘が完全に元の状態に戻ると一鳴きしのろい動きでこちらに近づいてきた。

「でも、あんな棘ないはずだよ……確かに見た目は一緒なのに……」

「もしかして誰かが魔物を改良したとか――」

 そのルカの一言が届く前に亀は容赦なく攻撃を繰り出した。




「へぇ~、久しぶり様子見に来たら面白いことになってるじゃん」

 ケイトたちが魔物と対峙しているのを遠くから眺めている一人の男がいた。木の上で双眼鏡片手に見物しているその様子はかなり怪しい。

「ガキが五人……まあ、どっちに転んでも研究のデータにはなるし……ん?」

 男はケイトの姿を確認すると新しいおもちゃを見つけたかのようにはしゃいだ。

「おおー! あいつ、ガウンで見かけたやつだ! ってことはあの女もいるのか!?」

 注意深く観察するがそこにはいなかったようでがっくりと肩をおろす。しかし観察をやめたわけではなく頬杖をつきながら気長にことを構えるようだ。

「仕方ないなー、まああのガキ見てればそのうち出てきそうだし」

 ポケットから飴を取り出して口に放り込み幸せそうに笑った。




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