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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 2章:二人の魔法使い
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変動、村の危機? その一


 村の一角で人だかりができていた。一点を取り囲むように集まっており何が起こったのか見当もつかない。

 サラはそれをかきわけ中心にいた長老と――エレナさんがこちらを振り返った。

「長老!」

「サラ、こっちに来たらいかん」

 険しい声の長老は視線を戻す。視線の先には――


 大量の血を流し倒れている男性だった。


「ひっ……ロレンスおじさ……」

 その場に崩れ落ちそうになるサラをルカが支える。ルカも顔色が悪く目をそらしている。

 俺は倒れてい男性を直視できなかった。

 腹から胸にかけて何本も刺さる棘。大量に流れる血はそこからの出血で間違いない。

 問題はその刺だ。人工物ではない。しかし自然のものとも思えない。まるで生き物のような……。

「魔物……この辺にはいないタイプ……」

「だろうな、突然変異でもこの辺の魔物からはこんな棘を持つ魔物はできん」

 あくまで冷静、に見える二人。

 エレナさんは顔をしかめると人の輪から外れた。

「エレナさん! ど、どうするんですか!?」

「どうするも何も魔物退治――」

「それは認めん」

 長老はエレナさんを引き止める。真剣な眼差しでエレナさんと向き合う。

「この村のことはわしらが自分たちで対処するべきことじゃ。余所者のお前さんに任せられん。今日はこの村から出ないでもらうぞ」

 そう言うとエレナさんの肩に手を置く長老。するとエレナさんが心底嫌そうに顔を歪める。

「はっ、相変わらず融通きかないジジイね。アタシはあんたのそういうところが嫌い」

「構わん。くれぐれも魔物と接触しようとするなよ。みんなもわかったな! 明日総出で退治じゃ!」

 村の人々は長老の声に賛同し各自準備に移った。さすが魔法使いの村といったところだろうか、対応が早い。

 エレナさんは苛立たしげに舌打ちする。

「あのジジイ……早く逝けってーの」

「エレナさん、本当にどうするんですか……」

「残念ながらアタシは今この村から出れない。あのジジイが許可するまでね」

 長老はルカとサラに何か小声言っている。二人は何やら抗議をしているが長老は力なく首を振ると準備に向かっていった。

「あのジジイ、さっき肩触ったときに結界内から出られないようにしたのよ。まったく、相変わらず頭の固い……」

「じゃ、じゃあ、私たち三人は出れるんですか?」

 ユリアの言葉に俺たちは思わずえっと間抜けな声を出す。

「私とケイト君、それにアベル君は出れるんですよね」

「……行きたい、なんて言ったらとりあえずぶっ飛ばすけど」

 やや機嫌の悪そうなエレナさん。そんなエレナさんに怯むことなくユリアは言う。

「ほっとけないです」

「今回の魔物はケタが違う」

「でも」

「駄目ったら駄目! おとなしくしてなさい!」

 エレナさんの叫びに周りの人も反応していた。

 我に返ったように頭を抑えそのまま長老のところに行ってしまった。

 エレナさんがいなくなった瞬間ルカとサラがこちらにやってきた。

「あの人、どうしたの?」

「エレナさん、長老さんに村から出られないようにされたっぽい……」

「なるほど……アタシたちも出ちゃダメって言われた」

 辛いのか顔を俯けるサラ。殺された男の人の名前を知っていたんだし辛いのは当たり前か。

「結界も強固だし入れるわけないのに……どうして」

「ロレンスおじさん、今日は村で子供たちに魔法教えるって言ってたのに……どこで殺されたんだ……」

「二人はこれからどうするんだ」

 頭を抱える二人に問いかける。すると二人はあっさりと答えた。

「決まってるじゃない」

「おじさんを殺した魔物を倒すよ」

 しっかりとした意志に満ち溢れている声だった。

「倒すって言ってもお前ら、手掛かりもないし長老とやらに出るなって言われたんだろ」

 アベルが呆れたように口を挟む。するとおかしなことを聞いたかのように首をかしげる二人。

「何言ってるの。手掛かりならあるわよ」

「それに結界から出ることはできるよ」

 嫌な予感しかしない。

 アベルも同じことを考えたのか俺と同じく後ずさる。

 しかしルカとサラはどこからそんな力出てるんだというくらい強い力で俺たちを掴む。

「協力、してくれると嬉しいな」

 にこり、とルカの爽やかすぎる笑みがやけに不気味に感じた。




今回少し短いです。

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