犯人は菊池
「犯人は菊池だ!」
会議室に響いた声に、菊池は思わず立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってください! なぜ私なんですか!」
事件は単純だった。
社内コンテストの優勝賞品――高級プリン六個セットが、冷蔵庫から消えたのである。
容疑者は四人。
営業の田中、経理の佐藤、総務の山本、そして菊池。
探偵役を買って出た新人社員の中村は、得意げに語った。
「防犯カメラには、昼休みに冷蔵庫へ近づく菊池さんの姿が映っていました」
「そりゃ弁当を入れただけです!」
「さらに、菊池さんはプリンが大好物」
「好きですけど!」
「そして決定的証拠があります」
中村は机の上にレシートを置いた。
『スプーン 六本』
「菊池さん、昨日これを買いましたね?」
「買いましたよ!」
会議室がざわつく。
菊池は観念したように肩を落とした。
「……確かに買いました。でも理由があります」
「聞きましょう」
「うちの子どもが学芸会で“プリン屋さん”をやるんです」
沈黙。
そのとき、経理の佐藤が吹き出した。
「もういいよ。私だよ」
全員が振り向く。
「え?」
「昨日の残業でお腹が空いてさ。六個全部食べた」
「全部!?」
「空き容器も捨てた」
事件はあっけなく解決した。
中村は赤面しながら頭を下げた。
「すみません、菊池さん」
菊池は大きくため息をついた。
「まったく……」
そして冷蔵庫の扉を開ける。
中には『菊池』と書かれたタッパーが入っていた。
田中が首をかしげる。
「それ何です?」
菊池はにやりと笑った。
「昨日なくなったプリンより高級な、私物のティラミスです」
全員の視線が一斉に集まった。
その瞬間、佐藤がそっと席を立った。
第二の事件が起きる予感しかしなかった。




