国法 第一章 通則 第一条
皆様初めまして、湿気たキラーと申します。
元々本を読むのが好きで、自分で物語を作ってみたくなり此方を作成しました。
拙い文章で申し訳ありませんが、良かったら最後まで読んで頂けると幸いですm(._.)m
『すまんのぅ…どうか許可して頂けないじゃろうか…?』
老人の弱々しい声が周囲の喧騒の中、私に辛うじて聞こえる。はて、どうしたのものか…思わず深いタメ息をつき、天井を仰ぐ。あぁ、偉大なるルート神よ私に何か良い知恵をお与え下さいませ…
私は港にある検問所に勤める、しがない職員の一人だ。朝の点呼から始まり、日中は入国者をひたすらチェックしていく。様々な人がここにはやってくる。北から来たというみずぼらしい格好をした家族連れ、東から来た珍しい鉱石を運搬している年齢の割には筋骨隆々な老人に、西からやって来た全身をフードに包んでいる女性(?)等々…その人達を規則に従いながら入国の許可or不許可を決めていく。不許可になった場合は残念ながら帰って貰うしか無い。規則だからね、しょうがないね…
昼飯を挟んで、午後からまたチェックを繰り返し勤務時間終了までそれが続く。何も問題無ければ、点呼をした後に無事帰宅となる。今日もそうなる筈だったんだけどなぁ…(-ω-;)
いけない、神に祈った所で何も良い考えは浮かばなかった。うーん、どうしよう。取り敢えずもう一度確認してみるかな。
「あのぅ、非常に申し訳無いのですがこの入国証では入国を許可する事は出来ません。」
「先ず此方の入国証は、南のズーン国で発行されたと仰ってますが発行した際に発行される許可印が違います」
「また許可印には、通常偽造防止の為に特殊な識別魔法がかけられています。見えますか?この器具を許可印にかざすと反応が有る筈なんです。どういう反応かとは守秘義務が有るのでお伝えする事は出来ないのですが…」
『そ、そんな…もう一度良く見てくれんかのう?知り合いに頼んでやっと作って貰ったんじゃ。随分と高くついたがこれが相場だといわれてのぅ、偽物な筈が無い…』
『すまんのぅ…どうか許可して頂けないじゃろうか…?』
ハイ、ここで冒頭に繋がります。色々長くなりました。大変、申し訳無い_(._.)_
「おい、どうしたw お前の所、全然列が進んでないじゃ無いか?また何かやらかしたん?」
後ろから急に声をかけられ、思わずビクッとなってしまう。振り向くとニヤニヤしながら制服を着た(私も着ているけど)イケメンが此方を見ている。何を隠そう彼は私の先輩職員だ。イケメンで何事もそつなくこなす。あぁ、妬ましいなぁ…一体前世でどれだけ徳を積まれたんだろうか?
「先輩、まだ何もやってませんよ…やってませんけど…」
「けどって何だよwやっちゃダメなのw」
「いやぁ、此方の方の入国許可証に不備が有りましてこれでは許可出来ないと伝えても納得されなくて…」
「ん~wどれどれ?あー、ズーン国かぁ。彼処は良い所何だけれど、賄賂に密輸に不正が日常茶飯事だからなぁ…あの爺ちゃん騙されたんだろうな。可哀想に。まぁ、しょうがないっしょw不許可だ不許可。お爺ちゃん一名様、ズーン国へご案内~♪」
「いや、先輩でm…」
「いちいちそんなん構ってたら、キリが無ぇよw見てみろ?お前の所全然列進んでないじゃんw」
確かに背中にチクチク視線を感じる…そりゃそうか、長い船旅の後で一刻も早く入国したいのに待たされたら嫌だよね。私も嫌だし。
「ま、サッサと不許可にしてどんどん次の客こなしてかないとなっw」
「後ろでお待ちの皆様、別の受付で対応致しますのでどうぞ此方へっ!」
私の肩をポンと軽く叩き、颯爽と去っていく先輩。その後をゾロゾロと入国希望者がついて行く。う~ん、シゴデキ…私が女なら惚れていたかも…
さて、後ろの列はあらかた先輩が処理してくれるみたいだし私も早くなんとかしないと。改めて老人に視線を戻す。老人はフルフルと身体を震わせながら此方を見つめている。可哀想に、哀しみで身体をあんなに…いや、只のお年寄り特有の物なのかも…
「申し訳有りませんが、入国は許可出来ません。帰りの船代は事情によっては無料になる場合が御座います。此方の書類に」
『頼むっ!この通りじゃっ!許可してくれるまでワシはここを動かんっ!』
いきなり大声を出したかと思ったら老人とは思えない速度で床にうつ伏せに寝そべってしまった!えっ!お爺ちゃん貴方そんな早く動けたの…いやいや、そんな事言ってる場合かっ!どうしよう…
不意に老人の近くの床に注意が向いた。ん?なんだあれ。カウンターから離れてそれを手に取って見る。あ、これ写真だ。大分ボロボロだけれど小さな女の子が写っている。此方に向かって満面の笑みを向けている。これって…
「これは、娘さんですか?可愛らしいですね…」
『…ずっと会えなかったんじゃ、金を貯めてやっと会えると思っとった…』
床に伏せたまま、老人が語る。何やら悪い連中に騙され借金を背負われたらしい。借金返済の為に夫婦で必死に働くが元々身体の弱かった奥さんは病に倒れそのまま亡くなってしまい、当時幼かった娘の面倒をみれなくなりこの国の知り合いに娘を預けたのだそう。借金を何とか返済しやっとの思いでここまで辿り着いたと…いや、これは可哀想過ぎる…私は独り身だから子供は勿論奥さんも居ないけれど、この老人の気持ちは痛い程分かる…分かるんだけれど…。
改めて老人を見る。身に付けている服は一見綺麗に見えるけれど所々解れている、そしてあの手だ。爪も割れて昔付いたのであろう大小の傷…辛かっただろうな…頑張ったんだろうな…良いのか?このまま老人を返してしまって。おい、私っ!お前は本当にそれで良いのかっ!
…
………
………………よし、決めた。
フラフラとカウンターに戻り、入国許可証を取る。震える手で青色のスタンプを……押す。
【カチンッ】
小気味良い音がして入国許可証に青色のスタンプが押された。我が国ミッテトルム国の紋章が記されている。これが有れば入国可能な紋章が…
カウンターを離れ、老人の側に寄る。老人は相変わらず床にうつ伏せに寝そべったままだ。此方を見ようともしない。そんな老人に声をかける。
「…お爺ちゃん、入国許可証ここに置きますね。娘さん、待ってると思うので早く行ってあげた方が良いですよ?」
老人が顔を上げ、床に置かれた入国許可証を見つめる。のそりと立ち上がり許可証を見て目を大きく開く。私と入国許可証を何度も交互に見ている…
『な…これは…アンタさっき許可は出来ぬと。』
「誠に申し訳ありませんでした。どうやら此方の確認不足だった様で。機材が不具合を起こしたみたいでして。」
「ようこそ!ミッテトルムへ!」
「それでは良い旅を!」
~【Happyend】~チャンチャン♪
…あの後は大変だった。老人は何度もお礼を良いながら去っていった。何度もお辞儀をしながら去っていくので只でさえ曲がっている腰が更に曲がってしまったかも...
老人が去った後、なんとか職務をこなし退勤時間となった。ふぅ、今日もなんとかなったな…後は点呼をして帰るだけ~♪
「全員っ集合っ!」
「点呼を取るっ!」
上司の声が部屋に響く。仕事の開始前と終了後に何時もやる事だ。皆、自分の名前を挙げていく。何時も通り何時も通り。
「良しっ!点呼終わりっ!」
「解散っ!」
さて、帰りますかね…今日は何食べようかな?自炊、いや外食?最近出来た新しいお店有ったし行ってみようか?
制服を脱いで私服に着替えて帰ろうとすると、目の前に上司が立ち塞がる。物凄く良い笑顔だ…こめかみがピクピクしているのを除けば。
「お前…私に何か言う事が有るんじゃないのか?ちょっと私の部屋まで来て貰おうか?」
あ、これマズイ奴ですね…上司の後を付いていく。足が重いな~、何でかな~?側を誰かが颯爽と通り過ぎる。先輩だ。ニヤニヤしながら何か口をパクパクしている。何々…【ガ ン バ レ ヨ】か…ハイ、イッテキマス…
外はすっかり暗くなってしまっていた。いかんいかん。早くしないとあのお店閉まってしまう。上司の長い御指導と愛の鞭(物理)ですっかり遅くなってしまった。これは暫くの間椅子に座るのが辛そうだ…薬局で痛み止めの軟膏買っとこ…
まだ熱を持ったお尻を気にしつつ、足を早める。彼処を曲がれば店はもうすぐだ!早く食べたいな~♪
『先程はありがとうございました…』
曲がり角から老人が現れた。危うくぶつかりそうになった、危ない危ない...
「あ、貴方は…娘さんには会えましたか?」
『いやぁ、助かりましたですじゃ。貴方のお陰で無事入国出来ました。』
『恩に着るよ…』「優しい検問官さん♪」
あれ?お爺ちゃんの声、そんな高かった?ん?何でお爺ちゃん背が高くなっていくの?えっ…えっ…?
目の前に居た老人(?)がボキボキと音を立てながら変化していく。曲がった腰が真っ直ぐになり、最後に服をバサッと脱ぐ。するとあら不思議、老人が消えた。いや、消えたのでは無くて…
「ふぅ♪やっぱり自然体が一番ね♪」
目の前に褐色の美女が現れた。滑らかな黒髪、猛禽類の様な鋭さを持つも何処か妖艶な瞳、そして…ナニがとは言うまいが立派な物をお持ちでいらっしゃる(上司が見たら嫉妬しそうだな…)。
「あ?えっ?お爺ちゃっ?えっ?」
余りの出来事に腰を抜かしながら何か言おうとしても上手くしゃべれない。くそぅ、こんな時先輩だったらどうするのかな…
あたふたしている私に女性がツカツカと近寄って来る...え?何?私、○られちゃう…?あぁ、お婆ちゃんお爺ちゃん哀れな孫をお許し下さい。今、そっちに行くからね…ギュッと目を閉じる。○るなら早く済ませて…お願い…。
何時までたっても何も起きない。恐る恐る目を開くと褐色美女が此方を呆れた様子で此方を観ている。
「一体何のつもり?私、貴方に御礼を言いに来ただけなんだけど?」
「あっあっ…い、いえてっきり○されるのかと…」
「はぁっ!?私がそんな野蛮な人に見える訳っ?失礼しちゃうわね!まぁ、良いわ。」
「御礼を言いたかっただけだから私はこれで。じゃあね~優しい検問官さん♪」
そう言うと踵を返して女性は去っていく。そうか…私は騙されたのか…う~んモヤモヤするなぁ…
「お姉ちゃん、探したよっ!勝手に居なくならないでって言ったでしょっ!」
不意に高い声が路地に響く。声のした方をみると可愛らしい少女があの褐色美女に駆け寄って行く。ん?どっかで見たような…?
「こらっ!お姉ちゃんは、用事が有るからあのお店で待つように言ったでしょ!」
「だって待てなかったんだもん…」
「ここは人通りが少ないから危ないのよ?貴方可愛いんだから浚われちゃうわよ?」
「大丈夫だもん!その時はお姉ちゃんが助けてくれるもん!」
「久し振りに会ったけど相変わらずね、そんな所が可愛いんだけれど。」
「ずうっと会えなかった分、たっくさんお話しようねっほら早く早く~♪」
「分かったから分かったから。そんなに引っ張らないのっ。」
…そっか!あの写真の女の子だっ!大きくなったんだなぁ…娘じゃなくて妹だったのね…
姉妹は手を繋いで去っていく。褐色美女が此方を振り向きウィンクをした。う~ん、改めて見ると本当に美人だなぁ…
姉妹を見送った後、此方も立ち上がり歩き始める。痛かったお尻は冷たい地面に座り込んでいたせいか、ちょっと痛みが引いたみたいだ。
…早くお店行かないとっ!
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!




