怪奇事変 猫の手招き
今回は短めを意識して書きました、書けたかな?
こんぐらい短い方が読みやすいのかな?
第七怪 猫の手招き
「わぁ~可愛い!」
活気溢れる店内の一部に、ペットショップがあった。
そこに多数の犬、猫、小動物が販売されており、中でも目を引いたのはまだ生後数か月の黒い猫だった。
何故か……耳は片方折れているのが特徴的だが、ただ可愛い仕草にやられてしまい、飼いたい!っと言う衝動が強くなった。
綿貫桃子は今年で24歳になるも、全く男運がなく未だに彼氏などいない。
同僚には素敵な彼氏がいる様で、食事の時によく話される所謂てぇてぇな話だ。
何時もそんな話を聞く桃子は嫉妬と孤独感を感じる中、同僚のペットを飼っている画像を見せられた事から休日を使ってペットショップに訪れていた時、
この黒猫と出会ってしまった。
「(運命だ!可愛い~、本当に可愛いよ~)」
直ぐにでも飼いたい……が、猫と言うより、動物全般飼うには様々な条件をクリアしなければならない。
偶然桃子の借りているアパートはペット相談可と言う事で飼えるチャンスはある……が、問題の育てる為の時間とケージやらなにやらが整ってない。
「(せめて実家だったらな~……)」
親に頼み込む事になるだろうが、育ててくれるだろう。
だがそもそも自立している時点で身の回りの事は自分で熟さなければならないし、何よりペットを購入するなら計画性がなければならない。
ましてや親に面倒を見てもらう事を前提に購入など言語道断だ。
そんな事から財布と相談して――飼ってしまた、ペット用品一式を車の中に詰め込む。
「大丈夫、まだ飼ってないから!ただペット用品を買っただけだから!」
誰に言うまでもなく、店員に勧められた商品を購入しただけにすぎない。
大丈夫、まだ飼わない、飼わない、買わない、飼いたい!
結局、流されるまま契約の手続きをしてまい後日引き渡しとなる事が決定された。
大家さんには早めに事情を説明して猫を飼うっと言う事で話が進んだが、特にこれと言った注意はなかったものの、退去日に引っかき傷の損傷などで多額の請求を求められたな
どをネットで目にしてしまった為、ある程度の覚悟は必要となってくるだろうと肝に銘じた。
「(衝動買いはダメなのに……でも)」
寂しいのだから仕方ないじゃないかって思う。
当日、会社休みを使って猫を引き取った。
書類に幾つかのサインと現段階でワクチン接種が何処まで進んでいるのかとか、そう言った話で飼育の話に関しては一切出てこない。
これは自分で調べろって意味なのかもしれないなーっと思い、何処のペットショップも同じ対応なのだろうか?っと疑問に思う。
「お待たせしました、こちらが仔猫ちゃんになります」
「うわぁ~!」
抱きかかえるとモフモフが、モフモフが!っと僅かにだが皮膚の柔らかな感触も気持ちよく、何より可愛い!
「あれ?」
「?」
店員さんの声に抱いたまま振り返ると少し困惑した様子で桃子の疑問に答えてくれた。
「その子、実は抱っこあまり好きじゃないんですよ。あ!でも別に急に引掻いたりとかしないので、すみません、先にお話ししとくべきでしたね」
「い、いえいえ、可愛いですね!この子」
「ええ、何よりとても大人しいんですよ」
「そうなんですか~?」
「ええ、普通は他の子みたく活発に動いたりするはずなんですけど、大人しいすぎて心配で……もし飼育してて何か疑問とかあれば遠慮なくお電話下さいね」
「はい~わかりました~」
「あの……聞いてます?」
「はい~――あ、いえ!聞いてます!」
桃子はしまった!っと素に戻る。
どうしても夢中になってしまうと人の話も聞こえなくなってしまうのは致命的だ。
「それではお会計になります」
「クレジットでお願いします」
猫はローン払いで購入する事にし、そのまま連れ帰る事になった。
名前はまだ決めていないが、キャリーバックの中にも大人しく入り、車の中でも鳴くなのか?って思ったが、意外にもその傾向はなく、あの店員さんが言ってた
他の子とは違うと言う意味が少しだけ理解できたような気がする。
とは言え、まだまだ生まれて生後何か月も経たない子供だ、これから元気に走り回って忙しくなるんだろうなっと家路に着く。
早速昨日付けで作り上げたケージの中に猫を入れると、猫はすんなりと入ってくれた。
飼い主の匂いが付いた物を入れておくと懐きやすくなるとか、そんな情報をネットで見たので、あまり着なくなった服などを入れておいたが、まるで桃子を観察する様に
こちらを見るだけで何もしていない。
「大人しいな~、可愛いな~」
だがジっとみられるのは何だか照れくさいっと思うも、撫でられるかなと思い手を伸ばそうとした瞬間。
「シャー!」
「わぁ!?」
いきなりの威嚇に驚き手を反射的にひっこめた拍子にケージにぶつかり、皮膚が少し切れてしまう。
「いたた……」
「ウゥー!」
「なんで怒ってるの?」
あんなに大人しかったのにっと猫を見ると、猫は桃子ではなく、別の場所を見ていた。
そこに対してとても威嚇している様な……そういえば、犬や猫も、何も無い所で吠えたり威嚇したりする行為があるのは聞いた事あるけど、諸説ある中に“幽霊”と言う
ワードが頭の中に浮かんでしまう。
「まさか……ね?」
ゆっくりと振り向くも桃子には何も見えない、嫌な感じも何もしない。
ただその一点を見つめ、猫は唸り続けていた。
「えっと……どうしよう、こういう時はどうしたら……」
携帯で検索すると「そっとしておこう」っとの事なので、扉を閉めようとした途端、猫は反射的に飛び出し唸っている場所に飛び掛かって行った。
「え!?な、なにしてるの!?」
「シャー!」
空中で猫パンチを繰り出し続けて何かと格闘を続けている様な事を繰り返し行っている。
それを茫然と見ている桃子はそれが数分、或いは数十分行われ、ようやく猫は落ち着き始めた。
「こ、こう言う時……触れたらまずいんだっけ?」
そう考えてどうするか決めようと考えていると、猫はまるで分っている様にトコトコ歩き始め、大人しくケージの中に入って行った。
「……えっと」
大人しいと言うより、利口なのかな?っと桃子は考えた。
そして忘れていたが、ケージの扉を閉めて猫に目線を合わせてこう伝える。
「今日から貴女は桃子の桃をとってモモね、宜しくね、モモちゃん」
桃子は自分の名前の一部をちぎる様に渡し、こうしてモモと奇妙な同棲生活が始まった。
モモは定員さんの言った通り、普通の子とは違い、基本的にはとても大人しい。
夜泣きもなければ、遊ぶことはせず日向ぼっこ、餌は最初お湯で蒸かしていた物を与えていたが、食べる事はせず、飼い主の桃子に分かりやすく餌袋の手を置いて
報告する。
最初は何を意味しているのか分からなかったが、どうやら「自分は硬いので大丈夫」と伝えたかったのだろう。
そのままの餌を与えたら嘘の様に食べていた。
ただ――時折本当の意味で“普通とは違う”と言う瞬間があるのは、何も無い所に威嚇をすると言う行為。
何故その様な行為をするのかは不明で、一度医師に見せたが身体には問題がなく、その動画を見せたが先生の方でも不明。
念の為、専門の獣医大学などで精神などを研究している方にアドバイスをもらうことも検討されたが、一旦保留にした。
「ただいま~」
「シャー!」
「あ~、またモモ怒って!ダメなんだ、そんなことをする子は悪い子なんですよ~」
「ウゥ~……」
桃子に威嚇ではなく、その後ろに向かって威嚇する行為は日に日に増えている事を桃子は身をもって体験している。
そう、日に日にだ。
本能的に後ろを振り向く事はせずにドアを閉めて、モモの怒りが無くなってから鍵を閉めると言った日常が必然的に増えた。
後日同僚にその話をしてみると怖い事を言われた。
『桃子、アンタ何か持って帰って来てるんじゃないの?』
もしそれが本当だとしたらモモの行動は――きっと招かざる客を追い出している行為なのかもしれない。
猫にも縄張り意識があると言われている、恐らくモモにとってのテリトリーに“入れる者”と“入れない者”が居るのだろう。
それが――生きている人間だったならどれだけ良かっただろうかっと思ってしまう。
それから数日が経つ。
毛づくろいをしているモモを見ながら、持っていたB級ホラー映画を試しに映すもまるで興味がないようだ。
だが、その動画を視聴して1時間が経とうとしていた頃に、急にモモは豹変し、ベランダのドアに体当たりをしはじめた。
「あ、こ、コラ!モモ!?」
怪我はないか?窓は割れてないか?そんな心配をするも、何時も以上に暴れて手に負えない。
爪が肉を抉り、続け様にベランダのドアに攻撃を繰り返す。
「モモ辞めて!怪我しちゃうよ!!」
だがそれでも止めない、何時も以上に狂暴化したモモが止めたのは数十分経った後だった。
まだ唸っており、ベランダのドアから離れようとはしない。
「一体なんなの!もう……」
携帯してあった医療用品を使って消毒をする。
染みる腕を優しく患部に当たらない様に摩りながら、ガーゼとサージカルテープを貼るも、そのテープを思わず落としてしまう。
「……モモ?」
一瞬、一瞬だがモモが巨大な猫の様な、薄っすらとした巨大な猫の様な姿に変貌したような気がした――いや、見間違いではない。
「モモ、どうしたの?」
心配になり声をかけるも、ゆっくりと振り返ったモモの目は未だにギラついており、それはまるで獲物を探してる捕食者の様な眼だった。
あのペットショップで見た愛くるしい姿とは裏腹に狂暴になった一面が映し出され腰を抜かしてしまう桃子。
桃子よりも興味があるのはリビングのドア―ーの向こう側の何かの様な気がした。
最近、モモだけじゃなく桃子にも異変が起きていた。
薄っすらとだがそこにあるはずのないモノが視える。
電車では薄い手がつり革に視え、花瓶が添えてある場所をたまたま通った時は足の様なモノが
視えたのを今でも覚えている。
それと同じでモモにも視えてしまったのだ。
翌日――
モモを連れて桃子は有名な霊媒師だと言う宮司の元に行くことになった。
「初めまして、海卯と申します」
「綿貫桃子です、こっちはモモって言います」
「その子が電話で聞いていた――!?」
次の瞬間、モモがケージの中でまた一昨日の様に臨戦態勢をとり、暴れ出した。
「モモ!」
「綿貫様、事情は分かりました、どうぞまずは中へ」
「……えっと、動物を境内に入れても?」
「大丈夫です、その子も――恐らくはそれを望んでいるはずです」
そうして宮司にあとに続き、閉められた本殿の中に入ると一層、モモは激しく暴れ出す。
ケージをこのまま壊して飛び出してくるんじゃないかと思うぐらいに。
「ハハハ、お元気なお方だ」
「あ、あの、申し訳ありません」
「いえお気になさらず、そのお方が暴れる原因も分からなくはありません、さて、どうぞお寛ぎください」
「……お邪魔します」
目の前にあった座布団に正座し宮司と対面する。
怒っている様子はなく、ただ優しい表情のまま、桃子とモモを見比べ口を開き始めた。
「動物はお好きですか?」
「はい?」
意外な問いに困惑しながらも頷くと、宮司は嬉しそうにまたモモを見る。
「このお方は貴女の元へ来られて幸せでしょ、恐らく生まれて――いや、転生前はとても酷い生活を送っていたに違いない」
「……えっと、て、転生?」
「“輪廻転生”と言う言葉を聞いた事はあるでしょうか?人も、動物も死後輪廻の輪の中を巡り巡って再生し、転生をへてこの世に生まれ落ちる――“宿命”なのでしょうね」
「モモは生前の誰かだったって事ですか?」
「左様、その者は強大な力を宿した“守護神”とでも呼べばよいのでしょうか?守護の力で言えば私なんか足元にも及びません」
「そう……なんですか」
なんだか急に漫画の世界に没入した様な感覚に陥るが、もしそんな強大な力があり、“守護神”と言わしめるならば、今までの不可解な行動原理も納得するしかない。
「安心して下さいませ“守護の加護を受けし魂”よ――貴方様を無暗に浄化などは致しません、此処は貴方様を受け入れる神殿でございます、どうか、怒りを御納め下さい」
「ウゥー!」
「とは言え、流石に直ぐは無理でしょうね」
はにかむ様に笑う宮司は既に宮司と言う役職を被った人ではなく、普通の人と何も変わらない姿だった。
それを見た桃子も安心し、肩の力が抜け脱力した姿勢になる。
「ご安心を、このお方は正常です、ただ貴女様はこのお方と共に生きて行くならば覚悟をしなければなりません」
「覚悟?」
「はい、我々霊媒師には“彼岸の向こう側へ渡る行為”を硬く禁じております、分かりやすく言えば“彼岸の向こう側”とは“あの世”の境です」
「……え?」
急に真横を殴られたかのような発言だった為、気の抜けた返答をしてしまった。
彼岸……あの世?何を言っているのだろうか?
「最近、貴女が本来視えないはずのモノを視えたりしませんでしたか?」
「ッ!?」
つり革、花瓶の足!そしてモモに視えた巨大な薄い猫――アレは見間違いでも幻でもなかったのか。
「一時的に“視える様になる者”もいますが、彼岸に近づき過ぎればハッキリと“視えてしまう”……それは現実とあの世の境を統一した異次元の世界を体験するのと等しい」
「……どう、なんって……しまうんですか?」
「貴女は視えないモノの正体はなんだと思いますか?」
「……お化け」
「ええ、簡単に言えばこのお方と暮らせば、貴女は確実に幽霊を目視できる様になる、それ以上にそれが本当に実在する人物の様に鮮明に」
頭のネジが飛んだ内容だが、きっと宮司さんが言うなら本当の事なのだろうっと何故か信じてしまう。
だって現に桃子は“視てしまった”。
「残念ながら既に貴方は無意識とは言え“彼岸へ渡る行為”をしている以上、手の尽くしようがありません」
ならば既に桃子にどうするかの選択権はなかった。
「此処で預かる事もできますが、あまり私としてはお勧めしません、そのお方は貴女様を守っていらっしゃる、下手に引きはがせば罰を食らうの私だけでは済まないでしょう」
「……いいえ、私は、モモは家族です、家族を手放すつもりは、ありません」
「……分かりました、ならば定期的にこちらにお越してください」
「え?」
「遅かれ早かれ面倒な連中に狙われる可能性は十二分にある、最低限ですが対策の方法など講じる手段が必要でしょう」
それはつまり、此処で修行と言うものをしなければならないっと言う事だろうか?
「貴女はそう近くない内にあの世の者を視る事になる、その時、その者に目を付けられた時、どうすべきか、全て教えます」
「あの、えっと、し、仕事が――」
「死にたいのならば別ですが」
にっこりと笑いながら答える宮司の笑みは本気だった。
本気の警告、断っても良いがその先は知らないよって様な顔付きだった。
「もっとも、そちらのお方がいる間は安全です、絶対ではないですが、低級霊程度なら確実に祓えるでしょう」
「祓う?」
「さて、大体このぐらいの時間は開いておりますので、いつでもお越しになって下さい、そちらのお方は……どうやらもうお越しになりたくない様子ですね」
ケージを除くとお尻をこちらに向けて不貞腐れている様子のモモが映りなんだか笑ってしまう。
お尻をちょこんと突くと反応して、こちらに顔を向けるも、不機嫌そうだ。
「それじゃお世話になります」
「帰りはお気をつけて、決して“間違いない様に”」
意味深な発言をした宮司さんと別れた桃子は境内をあとにし、家路に着く。
その道中で奇妙な光景を目の当たりにする。
ブラコンにつまらなそうに乗る男の子とその目の前にいる赤いワンピースの服を着た女。
静かに見下ろす女性とつまらなそうに漕ぐ男の子、すると勢いを付けた男の子のブランコが女性に当たりそうになり、咄嗟に桃子は危険を叫ぼうとするも、その身体はすり抜けてしまう。
『決して間違いない様に』
あの言葉の真意は既に“彼岸を渡った”桃子にしか視えないモノが鮮明に視える様になる事で、間違いが起きてしまう。
生者と死者の区別がつかなくなる様に。
そして――それは桃子だけが気づく問題ではない。
赤い服の女もこちらに気づき、足のない浮遊状態でゆっくりとこちらに近づいてくるのを視た瞬間、一気に間合いを詰められ、空洞の穴の開いた両目が桃子を捉える。
目からは流血した鮮血があふれ出し、恐怖が支配する中、一匹の果敢な猫の鳴き声がその恐怖を打ち消す。
「シャーーーー!」
いつもよりも長い威嚇と唸り声、それを見た赤い服の女は逃げる様にその場から消えていなくなってしまった。
腰が完全に抜けてしまった桃子はアレが現実とあの世の境を超えた世界線、今そこに桃子は存在している。
そこで生きなければならない、常に死と隣り合わせの世界で、この猫と共に――。
「お寺、行こう」
第七怪 彼岸へと誘う猫の手招き
寒いので皆さん風邪引かない様に。
ちなみに猫は毛量が多いからある程度は寒さ対策自分でできるそうですよ、でも寒いから暖はとってあげた方がよさげ……電気代上がるけど仕方ないか……




