優勝インタビュー
拓実はマイクを握り直し、少しだけ目を閉じてから静かに答えた。
会場の熱気の中でも、言葉は驚くほど落ち着いていた。
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「はい。
まず――この日本代表という重みを、しっかりと感じています。
団体戦と個人戦、どちらも一球の重さが違う戦いになりますが、
“自分のため”だけじゃなく、“日本のため”“仲間のため”に戦えることを誇りに思っています。
団体戦は、一人の力では勝てません。
互いを信じ、支え合い、チーム全体で呼吸を合わせていく。
それが勝敗を左右すると思っています。
僕もその中で、確実に一本を取れる選手になりたい。
個人戦は、自分自身との勝負です。
緊張も、プレッシャーも、世界中が見ている中で、自分の卓球をどこまで貫けるか。
でも、僕には“呼吸”を整えてくれる存在がいる。
どんな場面でも、優子の言葉を思い出せば、冷静でいられると思います。
ストックホルムでは、これまで支えてくれた人たち、
そして今日ここで一緒に喜んでくれた皆さんに、
『この人を応援してよかった』と思ってもらえるような試合をしたいです。
まだ通過点ですけど――ここからが、僕の“挑戦の本番”です。」
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インタビュアーが笑顔で頷きながら言う。
「ありがとうございます。力強い言葉ですね。ストックホルムでのご活躍を、みんなで楽しみにしています!」
拍手と歓声が再び巻き起こる。
拓実は深く頭を下げ、客席の優子に視線を送った。
その瞳は“勝者”のものではなく、“挑戦者”の輝きだった。
――次のステージは、世界。
約束を果たした男は、今度は“日本の呼吸”を世界に響かせに行く。
優子はマイクを受け取ると、一瞬だけ深呼吸した。
客席のざわめきがすっと静まり、優しい照明が二人を包む。
彼女は笑みを浮かべながら、少し照れたように口を開いた。
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「拓実さんは……そうですね、**“静かに燃える人”**です。
外から見たら落ち着いていて、クールに見えるかもしれませんけど、
心の中では誰よりも情熱を持っている。
そして、それを“言葉”じゃなく、“努力”で示す人です。
試合前の朝も、黙ってコーヒーを飲んで、
静かにトレーニングバッグを持って出ていく姿を何度も見てきました。
その背中を見ていると、**“ああ、この人は本当に夢に誠実な人なんだな”**って思うんです。
恋人としては……うーん、意外とおちゃめですよ(笑)。
練習が終わって疲れてるのに、私が作ったごはんを見て“今日も勝った気がする”とか言うんです。
でも、そういう小さな言葉に、私がどれだけ救われたか分かりません。
選手としても、恋人としても――信頼できる人。
一緒にいると、“私も負けられない”って自然に思わせてくれる。
たぶん、拓実さんの一番の魅力は、“努力を当然のように積む強さ”だと思います。」
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観客席から温かな拍手が起こる。
拓実は隣で少し赤面しながらも、笑ってうなずいた。
優子は最後にマイクを見つめ、少しだけ声を柔らかくした。
「これからは、“恋人”としてだけじゃなく、
“夫婦として、一緒に戦う仲間”になります。
世界の舞台でも、私は音で、彼はラケットで――
同じ“呼吸”を、世界に届けたいと思います。」
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拍手がひときわ大きく広がり、司会者が感極まったように言った。
「まるで映画のようなお二人ですね……! 本当におめでとうございます!」
二人は顔を見合わせ、自然に笑い合った。
その笑顔には、恋人としての温かさと、アスリートとしての覚悟が、
ひとつの光になって溶け合っていた。
表彰式が終わり、照明が少し落ちたあとも、
会場にはまだ熱気が残っていた。
拓実はトロフィーを胸に抱えながら、マイクの前へ再び歩み出た。
静かに息を吸い、客席の奥――テレビカメラの向こうに向かって言う。
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「最後に……ひとこと、いいですか。」
フラッシュが一瞬止まり、会場全体が耳を傾ける。
拓実は、少しだけ笑って――
「翼くん。
テニスと卓球で、競技は違うけど……
お互いに、表彰台のいちばん高いところに上がろうぜ。
そして――
大事な人の首に、“いちばん輝く色”のメダルをかけてあげようぜ。」
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その瞬間、客席から小さなどよめきと拍手。
優子はその横で、思わず顔を赤らめたまま、
手で口を覆いながらも笑ってしまう。
「……もう、ばか。」
そう言って、彼の肩を軽く叩く。
拓実が少し照れたように笑うと、
優子はそのまま――
そっと彼を抱き寄せた。
カメラのフラッシュが幾つも走り、
記者席からは歓声と涙混じりの拍手。
二人の影が、ひとつに重なって映し出される。
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観客の誰もが、その光景に息を呑んだ。
アスリートとアーティスト。
違う舞台で戦いながらも、同じ夢を見ている二人。
そして、ステージの上で抱き合うその姿は、
次の約束――“世界のてっぺんで、もう一度会おう”
という無言の宣言のように、
静かに、力強く、アリーナ全体に刻まれていった。
博多・小倉家のリビングは、再び“優勝パレード会場”。
ちゃぶ台の上には手作りのくす玉、壁には〈Wings & Taku ▶︎ STOCKHOLM〉の横断幕。
優馬が鼻を赤くして叫ぶ。「うちの界隈からオリンピック選手が二人も出るとはなぁ!」
美鈴が笑ってツッコミ。「界隈て。ご近所の誇りよ、誇り!」
玄関前は近所の人たちと報道陣でごった返し。RKB、FBS、NHK福岡…中継車がずらり。
「小倉家の皆さん、喜びの声を—」
光子と優子は並んでマイクに向かう。
光子「約束が、現実になりました。二人とも“同じ呼吸”で世界に行きます」
優子「福岡から、音とラケットで世界へ!応援ば、頼むけん!」
――同時刻。
青柳家もお祭り騒ぎ。表札の前に小さな旗が揺れる。
父・**青柳 修**は感極まりつつも凛と。「翼は“続ける勇気”を持ち続けた。ただ、それだけです」
母・**青柳 美和**がやわらかく微笑む。「朝いちばんのトースト一枚でも、あの子は“勝ちにいく味”って言うんです。親バカですけど、今日ばかりはバカでいいですね」
妹・**青柳 穂乃果**は照れ笑いでピース。「兄ちゃん、約束通り“てっぺん”行ってね?ストックホルムで兄ちゃんより先に泣くの、私の予定やけん!」
柳川家の前でも、のぼりと提灯がぱたぱた。
父・**柳川 誠**は胸を張る。「拓実は“静かな炎”。あの子の炎は、周りを焦がさん。温める炎や」
母・**柳川 千佳**はハンカチを握りしめて。「台所でフットワーク練習しないでって何回言ったか…でも、今日は許します」
弟・**柳川 水湊**はカメラに向かって一言。「兄ちゃん、かっけぇ。オレも中学で全国行く。—って、これ放送されるよね?(にやり)」
近所の商店街も総立ち。魚屋の大将が威勢よく。
「今日は“優勝割”じゃい!翼セットと拓実セット、各10%オフ!中身?気合いだ!」
ミライマート音大前店・篠崎店長も出張コメント。「応援ポップ、増刷済みです!」
報道陣が最後に小倉家へ向き直る。
「ご家族として、今の心境を一言!」
優馬「世界一のボケとツッコミ…いや、世界一の伴走家族になります!」
美鈴「“ただいま”と“いってきます”を、いつも通り言える家で待っときます」
光子・優子「“いつも通り”で世界へ。」
夕暮れ、福岡の空に手持ち花火の光が咲く。
スマホの通知が同時に鳴った。
—翼《福岡のみんな、届いとる。てっぺんで会おう》
—拓実《次は日本代表として、音と一緒に走る》
拍手と笑い声。
“ご近所の誇り”は、いまや“街の誇り”、そして“日本の誇り”へ。
祭り囃子みたいなニュースの見出しが、夜風に軽く踊った。
東京・音大の学生寮。
夕方のニュース番組が、福岡の盛り上がりを中継したあと、画面がふっと切り替わる。
キャスターの声が続いた。
「そして、もう一人のオリンピック選手の婚約者、
音大生の小倉光子さん、優子さん姉妹にお話を伺いました。」
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寮の談話室。
窓の外はオレンジ色の夕焼け。
壁には祝福の花束と、ミライマート音大前店から届いた差し入れのプリンが並んでいる。
光子と優子は、少し照れたように並んで座っていた。
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記者:「まずは、拓実さんと翼さん、それぞれの優勝、そしてオリンピック出場が決まりました。今のお気持ちを聞かせてください。」
光子:「もう……信じられません。翼くんとは幼なじみのような関係で、努力してきた姿をずっと見てきたから、嬉しくて胸がいっぱいです。」
優子:「拓実は…本当に静かな人なんですけど、心の中では熱い炎を持ってて。今日、その炎がやっと“世界”に届いたんだと思います。泣くまいと思ってたけど、結局、泣きましたね(笑)」
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記者:「ご自身も音楽で世界を目指されていますが、彼らの活躍はどんな刺激になりますか?」
光子:「私たちも音で、彼らはラケットで。それぞれ“表現の形”は違うけれど、根っこは同じ。
“自分の呼吸で世界と向き合う”。そういう意味で、すごく共鳴するんです。」
優子:「ステージもコートも、結局“勝負の場”ですから。
私も、彼が台の上で戦ってる時、自分の心拍まで同じテンポで動いてる気がします。
だから、これからは音で彼を支えたいし、隣で戦う覚悟でいます。」
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記者:「ストックホルムでは、どんなふうに応援したいですか?」
優子:「もちろん全力で!でも、本人の前ではあんまり言わないです(笑)。
“呼吸を信じて”ってだけ伝えたい。それで十分です。」
光子:「あと……福岡の皆さん、見てくださってると思いますけど。
“うちらの町から世界へ”――この言葉、ちゃんと届きましたよ!」
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インタビューの最後、優子は笑いながらカメラに向かって手を振った。
「拓実、ほんとにおめでとう! でも、テレビの前で“あのセリフ”言うとは思わんかったよ。もう、ばか!」
その言葉に、光子も吹き出してしまう。
画面のテロップには、
《東京音大学生寮より 小倉光子さん・優子さん》
《“音とラケットで世界へ”》
という文字が静かに映し出されていた。
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その夜、音大の廊下には拍手が響き、寮生たちが口々に言った。
「ストックホルム行き、二人もすごいね!」
「小倉ツインズ、もう世界のニュースやん!」
光子と優子は笑いながら手を振る。
「うちらも負けとれんね!」
「次はファイブピーチ★で、オリンピック応援ソングやね!」
夜風の中、東京の空まで、福岡の笑い声が届いていた。
博多—小倉家の玄関が開くたび、歓声と拍手が道路までこぼれていく。
ちゃぶ台の上には“祝・ダブル五輪!Wings & Taku”の手描き横断幕、台所からは唐揚げの香り。
優馬が腕組みでうなずく。「俺たちの知り合いから、オリンピック選手が二人も誕生するとはな!」
美鈴が笑ってエプロンで手を拭う。「ほんと、町内の誇りやね」
外は近所+報道陣で人だかり。RKB、FBS、NHK福岡のマイクが林立する。
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青柳家(翼サイド)
門柱の前で小旗がはためく。
父・青柳 修:「翼は“続ける”しか能のない子でした。でも、それがいちばん強いんです。」
母・青柳 美和:「朝ごはんのトーストにも“勝ちにいく味”って言う子で…今日は親バカ全開で許してください。」
妹・青柳 穂乃果(中継に手を振りながら):「兄ちゃん、ストックホルムで先に泣くのは私やけん!てっぺん待っとる!」
近所の子ども:「翼にいちゃん、かっこよかったー!」
商店街の魚屋:「“Wings勝利盛り”本日限定やー!」
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柳川家(拓実サイド)
提灯が揺れて、のぼりがパタパタ。
父・柳川 誠:「拓実は“静かな炎”です。周りを焦がさんで温めるタイプ。」
母・柳川 千佳(目を潤ませて):「台所でフットワークやめてって何回言ったか…でも今日は全部チャラ!」
弟・柳川 水湊(肩にラケット背負って):「兄ちゃん超え、宣言しとく。テレビの前で言ったけん後戻りなし!」
近所のパン屋:「“呼吸クリームパン”焼けました!深呼吸して食べて〜」
ミライマート出張販売の篠崎店長:「応援ポップ増刷済みです!」
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小倉家(応援団本部)
庭先に簡易スクリーン、ニュースのダイジェストが流れる。
記者:「小倉家はどう支えますか?」
優馬:「“ただいま”と“いってきます”を普通に言える家で待つ。それが最強の後方支援!」
美鈴:「勝っても負けても、帰ってきたらまずご飯。うちのルールやけん」
ご近所の拍手が起こり、紙吹雪がふわり。
その上を、通知音が二つ。
—翼《福岡の声、ぜんぶ届いとる。てっぺんで会おう》
—拓実《次は日本代表として、呼吸で勝ちに行く》
“町内の誇り”は、その夜、福岡じゅうの誇りになって、
ストックホルムへ向かう追い風になった。
――福岡空港。
到着ロビーには、朝から長蛇の列。
手作りの横断幕や旗を掲げた人たちが詰めかけていた。
「おかえり翼くん!」「拓実選手おめでとうー!!」
「福岡の誇りたい!」
報道陣のカメラが並び、テレビ局の中継ライトが一斉に点く。
到着ゲートが開くと、
青いジャケット姿の青柳翼と、白いスポーツスーツの柳川拓実が並んで姿を現した。
二人とも大きな拍手に迎えられ、照れくさそうに会釈。
空港アナウンスのBGMも聞こえないほどの歓声が広がる。
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福岡空港・特設ブース 記者会見
壇上には「祝・ストックホルムオリンピック代表 内定!」の横断幕。
背後のモニターには、笑顔で手を振る光子と優子の映像メッセージも流れている。
司会者がマイクを取り、
「それでは、青柳翼選手、柳川拓実選手、帰福記者会見を始めます!」
翼のコメント
「地元・福岡に戻って、あらためて“応援してくれる人の多さ”を感じました。
試合中も、コートの向こうで福岡のみんなが見てくれている気がしていました。
ストックホルムでは、テニスで“自分のプレーを貫く”ことをテーマに、
日の丸の重さを背負って戦いたいです。」
報道陣の「光子さんへの想いは?」という質問に、
翼は少し笑って答えた。
「……約束しましたから。『お互い、世界のてっぺんで会おう』って。
彼女が音で世界を目指すなら、僕はラケットで証明します。」
会場が静まり、拍手が起こる。
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拓実のコメント
「まず、こうして地元に戻ってこれたことが嬉しいです。
オリンピックという舞台は、憧れではなく“覚悟の場所”だと思っています。
団体戦では仲間と、個人戦では自分自身と。
どちらも、“呼吸”を整えて挑みます。」
記者:「優子さんの存在は、やはり大きいですか?」
拓実:「もちろんです。
彼女の言葉ひとつで、試合の流れを変えられるくらいの力があります。
“呼吸を信じて”っていう言葉は、僕の勝負の合言葉です。」
その言葉に、会場後方の女性ファンたちから「あ〜〜♡」とどよめきが起きる。
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共同コメント
記者:「お二人はそれぞれ競技は違いますが、お互いをどう感じていますか?」
翼:「同じ時代に、日本代表として立てることが光栄です。」
拓実:「僕たち、福岡の誇りを背負ってる仲間ですから。
表彰台の一番高いところで、二人とも笑いたいですね。」
翼:「あの日の約束、忘れてないよ。
――“大事な人の首に、いちばん輝く色のメダルをかけようぜ。”」
拓実:「おう。ストックホルムで、福岡の風を吹かせよう。」
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記者会見が終わると、空港の外にはファンが波のように押し寄せた。
子どもたちが手を振り、「がんばってー!」と叫ぶ。
翼と拓実は、互いに軽く拳を合わせた。
その瞬間、福岡空港の大スクリーンにはテロップが流れた。
「青柳翼・柳川拓実、ストックホルム五輪代表正式決定!」
「福岡から、世界へ――WINGS & TAKU、挑戦の夏へ。」
博多の空の下、再び拍手が鳴り響いた。




