表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三姉妹爆笑交響曲 — 大学生篇から陽翔&結音誕生まで  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/111

全豪オープン開幕──翼、熱戦の渦へ

全豪オープン開幕──翼、熱戦の渦へ


一月の真夏のメルボルン。

灼熱の太陽の下、青柳翼は静かにベースラインに立っていた。

光子は東京の音大寮のリビングで、テレビの前に正座。

「よっしゃ、いけっ翼っ!」

手に握るのは、なぜかM&Y特製お守り(うにゃステッカー付き)。



◆ 一回戦──完璧な立ち上がり


序盤からサーブが冴え渡り、エース連発。

相手を寄せつけずストレート勝利。

試合後のインタビューでは翼らしく、


「今日は風も味方してくれました。たぶん博多から届いた応援の風です」

と笑いを誘うコメント。


光子:「……こら、博多からメルボルンまで届く風って台風やろ!」



◆ 二回戦・三回戦──安定の勝ち上がり


技術と冷静さが光る展開。

寮のテレビ前には、優子・ソフィーア・小雪・早苗が集合し、

**“うにゃ応援団”**を結成。

寮中に「うにゃ〜!」「いけ〜翼〜!」の声が響き渡る。


途中で寮母さんが様子を見に来て、

「……ここ、音大よね?」

と苦笑いして帰っていったという。



◆ 四回戦──ベスト8をかけた死闘


相手は世界ランキング12位の強豪。

1セット目を落とし、光子の手は汗びっしょり。

「落ち着け、翼……! ミスしてもええ、うにゃスピリットで!」


2セット目、攻めの姿勢を取り戻した翼が逆転。

3セット目はタイブレーク。

ボールがネットにかかりかけた瞬間、翼が叫んだ。

「うにゃぁぁっ!!」


寮中が息をのむ中、ボールはギリギリのイン!

試合終了の瞬間、光子は叫んだ。

「勝ったああああ!! 翼ぁぁぁぁ!!」


テレビの前で優子が拍手しながら、

「さすが、うちらの旦那組!やっぱ本番強かね〜!」



◆ 翼の試合後コメント


「この勝利は、うにゃパワーと、彼女(光子)のお守りのおかげです」


その瞬間、実況席のアナウンサーが笑いをこらえきれず、

「……“うにゃパワー”というのは、どういったトレーニング法なんでしょうか?」

と真顔で質問して、世界中がクスッとした。



次は準々決勝。

対戦相手は、昨年準優勝のカナダの選手。

光子の応援魂はさらに燃え上がる。





応援作戦会議 — 準々決勝編


光子「作戦名は……《全豪うにゃストーム》! 目標:翼をベスト4へ押し上げる!」

優子「副題:《実況さんを笑わせすぎない》……反省点も入れとく」

小雪「まず時差!配信開始は日本時間・昼過ぎ。午前講義は受けて、ラウンジ集合ね」

ソフィーア「応援セクションを分けます。私は“冷静分析班”、優子は“ツッコミ班”、光子は“祈祷いのりと気合い注入班」

早苗「私は“軽食&カフェイン補給班”。勝負の鍵は血糖値や!」



① ラッキーアイテム&ルーティン

•光子:M&Y特製“うにゃお守り”+白Tラケットプリント

•優子:左手グリップバンド(卓球用を流用)「同じ“ラケット族”としてリンクさせる作戦」

•全員:試合前に10秒サイレント“うにゃ”瞑想 → 両手でハート作ってパワー送信


優子「送信の合図は“うにゃビーーム”。※周囲に人がいたら小声でね」

寮母さん(通りがかり)「今回は小声でお願いしますね」



② コール&レスポンス(静かに盛り上げる版)

•サーブ前:

全員小声「いける…いける…(リズム刻み)」

•エース獲得:

全員指先で“パチパチ”(音出さない拍手)→ 囁き「ナイスうにゃ!」

•ピンチ時:

光子「深呼吸うにゃ×3」→ 優子「“ファースト入る入る”念押し」

•セットポイント:

全員で手のひら三角にして**“勝ち三角”**のジェスチャー



③ スカウティング・簡易戦略(真面目枠)

•相手はカナダの長身サーバー。序盤はリターン深め、浅く来たら早いテンポで先手。

•ラリーが長くなると相手のフットワークが甘くなる傾向。配球の揺さぶり+前後で。

•暑熱順化は済み。チェンジオーバーでの補水&ナトリウム補給を画面越しに確認したら“OK”サイン出す。


ソフィーア「分析は私が合図出す。みんなは“うにゃ”で温度を上げすぎないこと」

優子「はい、温度管理(=テンション)ね」



④ 応援メニュー(早苗’s キッチン)

•うにゃおにぎり(梅・鮭・塩昆布)

•勝カツサンド(ミニ):重くならないサイズ

•赤紫蘇ソーダ:家伝のやつを軽く(ノンアル)

•レモン水:集中切れ対策


早苗「食べるときはポイント間、こぼして転倒禁止!」

優子「前回コロッケ落としてスローモーション事件あったもんね」



⑤ メンタル・ボード

ホワイトボードに大書:

•「一球入魂、一笑入魂。」

•「“いまできる最善”で充分最強」

•「相手も人間、翼は“人外じんがい的メンタル”」

光子「最後の一行、言い方!」

優子「ほめてる」



⑥ 非常用プラン

•笑い過ぎ警報:ラウンジの**“静音ベル”**をポチ → みんな口チャックジェスチャー

•緊張MAX時:10秒ストレッチ+肩回し → “勝ち三角”で再集中

•通信遅延:片方はTV、片方は配信。遅延係が“3秒遅れ歓喜”で二度おいしい方式



最後の円陣


光子「翼、楽しんでこい。楽しんでる人がいちばん強い!」

優子「プレッシャー? それ、**“期待”**っていう名札に付け替えとき!」

全員「せーの——うにゃぁぁぁ!!(小声)」


(場内ざわ…寮母さん:にっこり親指)





灼けるコートに蜃気楼がゆらぐ。センターコート、スコアはセットオール。

翼はベースライン一歩内側、相手はサービスライン付近から食らいつく。

フォア、バック、深いクロス、逆突きのダウン・ザ・ライン——応援ラウンジの空気も、ラリーのテンポに合わせて波打っていた。


「いける…いける…」と小声のコール。

優子が左手で“勝ち三角”を作り、光子は胸の前でぎゅっと手を結ぶ。

真夏の白光が容赦なく体力を削る。三時間を越えた。

チェンジオーバー、翼は目を閉じて一度だけ長く呼吸を沈め、タオルを顔に押し当てる。――再開。


相手の渾身サーブ。翼のリターンは深いスピンで足元へ。

浮いたボールを待たず、前へ二歩。

「今!」とソフィーアが囁き、寮生全員の背筋が伸びた。

フラットのカウンターがサイドラインをなぞるように突き刺さる——ウィナー。


歓声が波になって飲み込む。相手がラケットを軽く掲げて頷く。

サーブゲーム、翼のマッチポイント。

トスは高く、打点はぶれない。外へ逃がすスライスサーブ。リターン浅い——前。

ショートクロスをちらつかせてから、逆へ、ストレートの決定打。

白いボールがコートの隅で跳ね、審判の右手が空を割る。


ゲーム・セット。翼、準決勝進出。


「……っ」

光子の喉がつまる。次の瞬間、目の底からあふれた光が頬をすべり落ちた。

拳をぎゅっと握る。小さく笑う。

「やった…!」


優子がタオルを差し出しながら、いたずらっぽくささやく。

「泣き顔、かわいすぎ注意報。記録より記憶残るやつ」

「うるさい……でも、ほんとに、すごかった」


ラウンジは静かな拍手(音出さないパチパチ)で満ちる。

ソフィーアが短く祈りの印を結び、「彼はきっと、まだ行ける」と微笑んだ。


――試合後。ビデオ通話がつながる。

画面の向こう、汗に濡れた額、少し枯れた声。


翼「見てくれてた?」

光子「全部。…全部、届いた。最後の二歩、あれは反則級」

翼「相手の足が止まるの、見えた。…でも正直、途中で視界が白くなった」

優子「じゃあ処方箋。クールダウン15分→アイスバス→炭水化物+塩分→ストレッチ→睡眠。あと“うにゃ呼吸”三セット」

翼「うにゃ呼吸、ね。了解」

光子「明日も楽しんで。結果はあとからついてくる。あなたが楽しんでる時、いちばん強いから」

翼「うん。…泣いてくれて、ありがと」

光子「泣かせた責任、とってもらうからね。準決勝の分まで」

(二人、同時に笑う)


通話が切れ、ラウンジに余韻だけが残る。

光子は目頭を指で押さえ、深く息を吐いた。

「さ、“全豪うにゃストーム”第2章準備。次は、勝ち三角もっと大きくしよ」

優子「了解。あと、泣き顔はスクショ厳禁」

ソフィーア・小雪・早苗「(声をそろえて)了解です、隊長。」


窓の外は白い陽炎。

流れ込む蝉時雨のリズムに、心臓の鼓動がそっと重なっていた。






国際プレスセンター。照明が落ち着き、フラッシュがやむ。

マイクの前に立った翼が、深く一礼する。


記者1「まずは準決勝進出おめでとうございます。今日の勝因は?」

翼「ありがとうございます。日本で待ってくれている――最愛の光子と、寮のみんな、家族、仲間の応援です。ラリーが長くなっても、画面の向こうで“もう一歩”って背中を押してくれる声が聞こえた。技術的には配球の我慢と、暑さへの準備がうまくハマりました。」


記者2「第4セット終盤、流れを引き戻したポイントがありました。狙いは?」

翼「相手のバック深めへの高回転を軸に、前後のギアを混ぜました。浅く返った瞬間に前へ二歩。ショートクロスを見せてストレート——“見せて逆”は、練習から光子に散々見破られてきたパターンなので(笑)、精度が上がってます。」


記者3「灼熱コンディションでしたが、フィジカルの手応えは?」

翼「想定内です。水分・塩分の計画摂取、アイスバス、呼吸法までルーティン化してます。日本の“爆笑発電所”の二人(光子&優子)直伝の“うにゃ呼吸”も効きました。」


記者4「メンタル面。勝負所で何を考えていましたか?」

翼「“楽しむ”一本です。結果はあとからついてくる、と光子に言われ続けてきたので。スコアじゃなく、いま目の前の一球を好きになれるかだけ。」


記者5「準決勝の鍵は?」

翼「レシーブゲームの質と、ファーストサーブ確率。あとは前へ出る決断の速さ。相手は強い、でも僕も成長してきた——その事実を信じきること。」


記者6「最後に、テレビで応援している方々へ一言を。」

翼「日本から届いた声、全部受け取りました。光子、寮のみんな、家族、そして各地で見てくれた皆さん、本当にありがとう。次も一緒に行きましょう。」


翼が軽く笑って、カメラの赤ランプを見つめる。

「じゃ、約束どおり——光子、息合わせよう。せーの…」


翼&(テレビ前の)光子「うにゃ〜あじゃぱー!」


会見場に笑いと拍手が広がる。翼はもう一度会釈し、コートに戻る準備へと歩き出した。




――全豪オープン準決勝。


朝の空気に熱がこもるセンターコート。スタンドでは白い帽子がちらつき、太陽がまるで試合を試すように照りつけていた。

前日の完全休養で体力は回復している。だが、ラケットを握った瞬間、緊張の電流が背筋を走る。



試合展開 ――炎の4時間


序盤から激しいラリー。

フォアで押し込み、バックで粘る。相手は長身のパワープレーヤー。1セット目をタイブレークで奪い返すと、コートの上に立つすべてが揺れているようだった。


第3セットのチェンジエンド。翼は心の中で呟く。


「光子の笑顔、また見たい。優子の拓実も優勝したんだ。俺だって、やれる。」


拓実が国際大会で優勝――それは大きな刺激だった。

「俺にもできる。俺は強いんだ。」

その言葉が、胸の奥のエンジンを再点火させる。



第4セット――死闘の渦中


ラリーが百を超える。観客も審判も固唾をのむ。

汗が目に入り、視界が滲む。だが、ボールの音だけが鮮明だった。

光子の声が、遠くの風の中で聞こえるような気がする。


「楽しんで。翼。」


そこからは、自分でも驚くほど集中できた。

相手のバックハンド側をじわじわ攻め、角度をつけてスピンを効かせる。

コーナーギリギリ、芝の上でボールが弾み、観客のざわめきが爆発へと変わった。



決着――魂の一球


4時間を越えた。両者フルセット。6-5、マッチポイント。

太陽が傾き始めた午後、翼はトスを上げる。

サーブは外角へ大きく逃げるスライス。相手の返球が甘く浮いた。


一瞬の静寂。

――ステップイン。

フォアハンドのスピンが、サイドラインぎりぎりに突き刺さる。


主審「ゲーム・セット・マッチ!」


コートが揺れる。観客総立ち。

翼は天を見上げ、ラケットを胸に抱く。

その頬を伝う汗と涙が、陽光にきらめいた。



勝利の余韻


実況:「翼選手、準決勝を制して決勝進出です!信じられない闘志、そして笑顔です!」


ベンチに腰を下ろし、翼は小さく呟く。


「光子、見てた? 俺、やったよ。」


ベンチ裏に戻ると、スマホに届くメッセージ通知。

——【うにゃストーム観測完了! 泣いたばい。by光子】

翼は笑い、目頭を押さえた。


「ありがとう。俺、次も行く。」






――全豪オープン準決勝。


朝の空気に熱がこもるセンターコート。スタンドでは白い帽子がちらつき、太陽がまるで試合を試すように照りつけていた。

前日の完全休養で体力は回復している。だが、ラケットを握った瞬間、緊張の電流が背筋を走る。



試合展開 ――炎の4時間


序盤から激しいラリー。

フォアで押し込み、バックで粘る。相手は長身のパワープレーヤー。1セット目をタイブレークで奪い返すと、コートの上に立つすべてが揺れているようだった。


第3セットのチェンジエンド。翼は心の中で呟く。


「光子の笑顔、また見たい。優子の拓実も優勝したんだ。俺だって、やれる。」


拓実が国際大会で優勝――それは大きな刺激だった。

「俺にもできる。俺は強いんだ。」

その言葉が、胸の奥のエンジンを再点火させる。



第4セット――死闘の渦中


ラリーが百を超える。観客も審判も固唾をのむ。

汗が目に入り、視界が滲む。だが、ボールの音だけが鮮明だった。

光子の声が、遠くの風の中で聞こえるような気がする。


「楽しんで。翼。」


そこからは、自分でも驚くほど集中できた。

相手のバックハンド側をじわじわ攻め、角度をつけてスピンを効かせる。

コーナーギリギリ、芝の上でボールが弾み、観客のざわめきが爆発へと変わった。



決着――魂の一球


4時間を越えた。両者フルセット。6-5、マッチポイント。

太陽が傾き始めた午後、翼はトスを上げる。

サーブは外角へ大きく逃げるスライス。相手の返球が甘く浮いた。


一瞬の静寂。

――ステップイン。

フォアハンドのスピンが、サイドラインぎりぎりに突き刺さる。


主審「ゲーム・セット・マッチ!」


コートが揺れる。観客総立ち。

翼は天を見上げ、ラケットを胸に抱く。

その頬を伝う汗と涙が、陽光にきらめいた。



勝利の余韻


実況:「翼選手、準決勝を制して決勝進出です!信じられない闘志、そして笑顔です!」


ベンチに腰を下ろし、翼は小さく呟く。


「光子、見てた? 俺、やったよ。」


ベンチ裏に戻ると、スマホに届くメッセージ通知。

——【うにゃストーム観測完了! 泣いたばい。by光子】

翼は笑い、目頭を押さえた。


「ありがとう。俺、次も行く。」





――全豪オープン準決勝の翌夜。

翼が試合を終え、ホテルの部屋でストレッチをしていると、スマホの画面が光った。

「光子(ビデオ通話)」の文字。


画面をタップした瞬間、光子の顔がぱっと映る。

背景は東京の寮ラウンジ。後ろでは優子と仲間たちが手を振っている。



光子「……もう、照れるやん。世界配信で“最愛の光子”とか言われたらさぁ。」

(頬を指でつんつんしながら照れ笑い)


翼(笑いながら)「いや、あの場面で他に言葉が浮かばんかったんよ。ほんと、支えてくれてありがとう。」


光子「ありがとうね。ほんと、うちもハラハラして見よった。

でもさ、あんたの笑顔見たら、泣くより先に笑ってもうた。やっぱ、うちらのモットーは“笑って勝つ”やけん。」


翼「うん。次も、楽しむ。光子の笑顔、また見たいけん。」


優子(背後から乱入)「はいはい、甘か空気はそこまで〜!

うちは“国際応援部隊長”として、全力で応援するけんね!」


仲間たち「がんばれ翼ー!」「次もうにゃ決めろー!」

(寮全体が小さな応援スタジアムに変わる)


翼「みんなありがとう!マジで力になる。…じゃ、決勝の朝もビデオ通話つないでくれる?」

光子「もちろん。うちらの“うにゃ中継隊”、フル稼働やけん!」


翼「よし。じゃ、せーの……」

全員で「うにゃ〜あじゃぱー!!」


画面越しの笑顔が重なり、翼の胸の奥に静かな炎が宿る。

光子は画面を見つめながら、思わず呟いた。


「……行きたいな。現地まで。

生で、あの一球を見届けたい。」


優子が隣でにやりと笑う。

優子「あんたの顔、完全に行く気スイッチ入っとるやん。

マジで、飛ぶ?」


光子「……かもしれん。だって、次は――決勝やけん。」





夜の便で教授の許可と単位調整を一気に済ませ、光子は成田から一路メルボルンへ。

早朝、Melbourne Airport に降り立つと、そのままトラムを乗り継ぎ Rod Laver Arena へ直行した。


観客のざわめきがまだ柔らかい午前。選手用通路の手前で、スタッフに事情を伝えると、前日に大会メディアで話題になっていた「遠距離エールの恋人」としてすぐ通じ、短い面会の時間が設けられた。



センターコート脇・通路


光子「現地で応援したくて――来たよ。

泣いても笑っても、明日が最後の1試合。楽しまんともったいないけん。」


翼はタオルで汗を押さえ、ふっと笑う。その目に、燃えるような静けさが宿っていく。


翼「……うん。大丈夫。やれることは全部やってきた。あとは“楽しむ”。」


短く指先を触れ合わせるだけの、二人きりの数分。

それで充分だった。翼の顔つきが、勝負の顔に切り替わる。



全豪オープン 決勝


対戦相手:アレックス・ローソン(Alex Lawson)

※元世界1位、現在ランキング3位のオーストラリア人・地元の大声援を背にする万能型。


第1セットから、ラリーは1ポイントに30〜40本が当たり前。

翼はバック側の深いスピンとクロス→ストレートへの揺さぶりでじわじわ削る。

ローソンは猫のようなフットワークで、信じられないボールを返し続ける。


1セット、ちょうど1時間。

互いに1セットずつを取り、スコアは1-1。

第3セットもタイブレークの末、翼が**7-6(7-4)**で先行。

だが第4セット、地鳴りのような「Aussie! Aussie!」コールに乗ったローソンがギアを上げ、2-6で五分に戻す。


――勝負は最終セットへ。

時計は4時間を超えていた。


第5セット 5-4(翼リード)・リターンゲーム


デュースが三度重なった末、マッチポイント。

光子は客席で両手を胸の前で組み、そっと息を飲む。


サーブは外へ逃げるスライス。翼は軸足を我慢して踏ん張り、フォアの逆クロスへ高回転のヘビースピン。

ベースラインの角にギュッと食い込むボール。

ローソンは届く――が、ラケット面がわずかに下を向く。

白いストリングに乗ったボールはネットの白帯をかすり、ふっと落ちた。


……返らない。


一瞬の静寂。

次の瞬間、ロッド・レーバー・アリーナが噴き上がる。


主審の右手が上がる。

Game, Set, Match—Shota Ayanagi!(※あなたの設定に合わせて翼のフルネームがあるなら置き換え可)


スコアは7-6, 5-7, 7-6, 2-6, 6-4。

試合時間4時間21分。

日本人男子として初の全豪シングルス優勝の瞬間だった。



勝者の瞬間


翼はその場に崩れず、空へラケットを高く突き上げた。

視線は――客席の一角、手を振る光子へ。

人差し指で自分の心臓をトン、トンと叩き、**“ここに君がいる”**の合図。


光子は目尻を光らせながら、うにゃポーズで応える。

(周りの観客が真似して小さなうにゃの波が広がり、実況席が苦笑いしつつも「This is adorable!」)



表彰式


銀の皿のように輝くノーマン・ブルックス・トロフィーが手に渡る。

フラッシュの光のなか、翼はマイクを握った。


翼(英語)

「I’m beyond grateful. This trophy is for everyone who believed in me.

Back home in Japan, my family, my friends—and Mitsuko, my love.

You told me to enjoy the last match. I did. We did. Thank you.」


(歓声。スタンドの光子が小さく会釈)


翼(日本語)

「応援してくれたみなさん、本当にありがとうございます。

“楽しめ”って言葉を胸に、最後まで戦えました。

光子――約束どおり、笑って勝てたよ。」


最後は二人だけに聞こえる音量で、マイクから顔を外して。

翼「せーの」

客席の光子(小声)「うにゃ〜あじゃぱー」

近くのカメラマンがにやり。画面の視聴者は「何の合言葉!?」と一斉にざわつき、SNSは秒で**#うにゃあじゃぱー**が急上昇した。



ロッカールーム前


検査・メディア対応を終えた翼が、ようやく光子と再会する。

言葉はいらない。

額と額を軽く合わせ、二人で小さく笑う。


光子「おめでと。……“楽しんだ人”の勝ちやったね。」

翼「うん。隣で笑ってくれる人がおるって、こんなにも強い。」


通路の先では、オーストラリアの少年がサインを求めて待っている。

翼はトロフィーを胸に抱えなおし、振り返って指で円を描いた。


翼「行こう。まだ、届けたい笑顔がいっぱいある。」


光子は頷き、ふたりでセンターコートへ続く明るい通路を歩き出した。

――笑って勝つ、を合図に。





――ロッド・レーバー・アリーナ、センターコート。

優勝トロフィーが翼の手に渡ると、会場の照明が少し落とされ、スポットライトが二人を包む。

司会のマイクが差し出された。観客は総立ち。



翼・優勝インタビュー


司会(英語):「翼さん、Congratulations! まずは優勝おめでとうございます! いまの気持ちは?」


翼(息を整え、笑みを浮かべながら)

「……最高です。でも、僕ひとりの力じゃありません。」


マイクを持ったまま、翼はゆっくりと観客席の方を振り返る。

スポットライトが、スタンド中段で立ち上がった光子を照らした。


翼(会場に向けて)

「紹介させてください。あそこにいるのが――

僕の大切な人で、将来、僕の妻になる光子です。」


会場どよめき。

スクリーンに映し出された光子は、驚きながらも涙をこぼしていた。

拍手と歓声が一気に広がる。



「光子のおかげで、コートの中でも強い気持ちで戦えました。

彼女の“楽しんで”という言葉が、何度も心を支えてくれたんです。


今日ここで、この素晴らしい結果を手にできたのは――

光子、そして僕を支えてくれたチームスタッフのみんな、

そして世界中で応援してくれたすべての人たちのおかげです。

本当に、ありがとうございます。」



司会が思わず「Beautiful…」と呟く。

観客席では立ち上がって拍手を送る人々。

その中で翼はゆっくりと客席の階段を上がり、光子の前へ。


一瞬、時が止まったかのような静けさ。

光子の手を取り、そっと抱き寄せ、唇を重ねた。


会場の照明が一斉に輝き、

拍手、口笛、歓声が嵐のように湧き起こる。

カメラのフラッシュが無数に走る中、翼は光子の背に手を添え、

そのままインタビュールームの出口へと歩き出す。


通訳も、記者も、ただその背中を見送るだけだった。



ナレーション(現地局)


「この瞬間、全豪オープンはひとつの愛の物語を見届けた。

“笑って勝つ”――その言葉が、世界のテニス界に新しい風を吹き込んだ。」




国際プレスセンターは、夕刻の光を吸い込んだガラス壁が琥珀色に沈み、記者たちのキーボード音とカメラの作動音が、試合の余韻みたいに細かく震えていた。

壇上には優勝トロフィー、その横に翼。少し遅れて扉が開き、光子が案内される。拍手がふくらみ、フラッシュが一斉に弾けた。


最前列、モデレーターがマイクを手にする。



「それでは、全豪オープン男子シングルス優勝者、青柳 翼選手の会見を始めます。まずは英語圏メディアから。質問のある方は挙手を」


黒服の通訳が翼の右隣に立つ。翼は短く息を吸い、笑ってうなずいた。


海外メディアQ&A


Q1(英紙)「第4セット中盤、リターン位置を半歩下げました。あの調整が流れを変えたように見えましたが、意図は?」


翼「相手のフォアのスピンが深く伸びてきて、ベースライン上だと差し込まれ始めた。半歩下げることで“高さの山”の頂点を少し遅らせて、ラケット面を長くボールの後ろに置けるようにしたんです。そこからはバックのコーナーを粘り強く突けた」


**(通訳)**が滑らかに英語へ。記者席の何人かが頷く。


Q2(豪州TV)「最後の1ポイント、フォアの逆クロス。あなたは叫びもガッツポーズも小さかった。何を感じていました?」


翼「“やっと一球、芯で捕まえられた”って安堵が先でした。歓喜より、まず“終わった”という実感」


Q3(米誌)「トロフィー掲出の前、観客席の女性――今日、皆さんが騒然とした“お相手”を指さしました。あの瞬間の決断は、事前に?」


翼(微笑む)「いえ、事前には。…彼女が『楽しんで』とメッセージをくれて、僕は最後までその言葉に支えられました。だから、最初に礼を言いたかっただけです。結果として“決定的な一言”になりましたけど」


会場が柔らかくざわめく。光子が苦笑して、軽く会釈した。


Q4(欧州通信社)「メンタル面のコーチングで一番効いた言葉は?」


翼「“勝とうとするな、今のラリーを良くしろ”。スコアじゃなく、1本の質。これは彼女(光子)からも同じことをよく言われるんです。“音で言えば、次の小節に全力”って」


記者たちが一斉に光子へ視線を向ける。モデレーターが配慮してマイクを差し出した。


光子「舞台もコートも似てると思うんです。拍手や点数って“後からついてくる結果”で、いま鳴らす一音、一歩の“質”が先。…なので、『次の小節、丁寧に』は、私たちの合言葉みたいなものです」


さざ波みたいな拍手。


Q5(豪紙)「最後に、メルボルンの観客へ一言」


翼「暑さも歓声も、最高でした。ラリーが30本超えたとき、客席の“うぉ…”って波が背中を押してくれた。ありがとう、メルボルン。また戻ってきます」


拍手が大きく膨らむ。モデレーターが区切りを告げ、日本メディアのブロックへ。



日本メディア合同インタビュー(光子同席)


列の先頭、キー局アナが立つ。


Q(キー局)「改めて優勝おめでとうございます。まず翼さん、ここまでの“しんどさ”を、ひとことで」


翼「“長かった、でも楽しかった”。…しんどいはずなのに、どこかずっと楽しかったんです」


Q「光子さん、決勝の間、どんな目でコートをご覧になっていました?」


光子「“音”で見てました。フットワークの刻む“タン・タン・タタン”とか、インパクトの“パシン”の位置が、途中から良くなっていくのが分かって。第5セットは完全に“良いテンポ”でした」


(会場、くすりと笑い。記者の何人かがリズムを指で叩く)


Q(スポーツ紙)「優勝の直後、まさかの“公開プロポーズ宣言”がありました。…お二人、いまの率直なお気持ちは?」


翼(少し照れて)「世界一の舞台で、人生一の想いを言うのは、ちょっとズルいかなとも思いました。でも、嘘なく言いたかった」


光子(真っ直ぐに)「…嬉しかったです。驚きすぎて、最初“酸素が薄い?”って思ったぐらい。あとでちゃんと、二人で静かに話します」


Q(通信社)「技術的なところを。第5セットは相手のファーストサーブ攻略が鍵でした。トスの高さに合わせてスプリットステップのタイミングを遅らせたように見えましたが?」


翼「はい。相手のトスが頂点で一瞬止まるタイプ。なのでスプリットを半拍遅らせて、始動の無駄を削った。加えて、バックハンドのリターンは面を少し被せて、浅く落とす“短めの返球”でネットプレーを誘い、その頭上をロブで抜く――を3本に1本混ぜました」


Q(総合紙)「お二人は、音楽や支援活動でも知られています。今回の優勝と、その活動の結びつきは?」


翼「“届く”感覚は同じです。センターコートの最後列にも声援が届くように、音楽も、支援のメッセージも、一番遠いところまで届けたい。今日の優勝が、その“届く範囲”を少し広げてくれた気がします」


光子「私たちはいつも“笑ってる時がいちばん強い”って言っていて。ステージ裏でも、今日は小さくギャグを2、3本…(と、翼を見て小声で)『サービスエースは“挨拶”です!』」


翼(肩を震わせる)「……彼女のこういうのに、力をもらってます」


会場に笑い。緊張が霧みたいに薄まっていく。


Q(女性誌)「決勝の朝、交わした言葉は?」


翼「“大丈夫、楽しんで”。それだけ」


光子「“勝とう”って言葉はあえて使わなかったです。“楽しんで”のほうが彼には効くので」


Q(テニス専門誌)「日本男子として史上初の優勝です。次の目標は?」


翼「“このテニスを続けること”が先です。ランキングも結果も“おまけ”。でも、やる以上は四大大会で継続的に勝つこと、そして国を背負う大会――代表としても、ベストを尽くしたい」


Q(社会部)「お二人はこれまで、災害地や海外の施設での音楽・笑いの支援も行ってきました。今日、世界中に見られたキスは“私的”でありつつも、“公的”なメッセージにも見えました。意図は?」


翼(少し考えて)「“自分が大切にしているものを、大切にする”。スポーツも音楽も、その延長線上にあると信じています。勝つために誰かを切り捨てるんじゃなくて、大事なものを抱きしめたまま強くなる――それが僕のやりたいことです」


光子「“やさしさを持った強さ”が広がるといいな、と思ってます。笑いは人をゆるめ、音楽は人を支え、スポーツは人を鼓舞する。三ついっしょだと、もっと届く気がするんです」


Q(地元局)「福岡のご家族へメッセージを」


翼「お父さんお母さん、みんな、起きて見てくれてたかな。…帰ったら“うにゃ〜あじゃぱー”で乾杯しよう」


光子「じいじ、ばあば、そして双子(春介・春海)へ。…お姉ちゃん、ちゃんと帰るけん、待っとってね」


Q(最後の一本/キー局)「では最後に。日本の子どもたちへ、ひと言ずつください」


翼「“下を向くとボールが見える、上を向くと空が見える”。どっちも大事。しんどい時はボールを見て、終わったら空を見よう」


光子「“笑ってる自分を信じて”。笑いは弱さじゃなくて、強さのしるし。今日、それを彼が証明してくれました」


拍手が大きく広がる。モデレーターが会見終了を告げ、記者たちが立ち上がる。

カメラのフラッシュが最後にもう一度、白い稲妻のように走った。



バックステージ


通路に出ると、ざわめきが壁の向こうで波のように続いている。

スタッフが「おめでとう!」と肩を叩き、花束が手渡される。

二人は人の流れから一歩外れて、短い静けさを探した。


「…おめでとう」

光子が囁くと、翼は照れたように笑って、トロフィーの縁を指で叩いた。

「ありがとう。…隣にいてくれて、ほんと助かった」


「うちららしく、帰ったらまず爆笑して、それからゆっくり話そ」


「うん。まずは、ちゃんと食べよう。長い試合のあと、腹、減った」


二人は顔を見合わせ、同時に小さく吹き出した。

会場の外は、オーストラリアの夜。

熱の余韻と笑いの体温を連れて、二人は歩き出した。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ