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三姉妹爆笑交響曲 — 大学生篇から陽翔&結音誕生まで  作者: リンダ


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松山ライブ

爆笑発電所ラッピング新幹線・車内アナウンス台本


(♪車内チャイム/ポーン)


光子(車掌風)

「ご乗車ありがとーございます。本日、博多発・東京行き“爆笑発電所ラッピング新幹線”でお送りしまーす。担当はわたくし、車掌っぽいベーシスト・光子と——」


優子(車掌風)

「安全第一、ボケ第二、ツッコミ無制限のドラマー・優子です。どうぞ最後まで、腹筋シートベルトをお締めになってお楽しみください。」



(♪ポーン)

光子

「まもなく小倉〜小倉〜。小倉名物は“駅で迷っても人のやさしさに出会える”でおなじみ。お降りの際は、財布・スマホ・笑いのツボのお忘れ物にご注意ください。」


優子

「発車しまーす。ツボを落とされたお客さま、『拾って!』と叫ぶと車内が二度ウケしますので、静かに肩で笑ってください。」



(♪ポーン)

光子

「次は広島〜広島〜。“わろうていこうや”の精神で有名な街です。お好み焼きは“二枚重ねるとダブルコント”、三枚重ねると“コント三段重ね”になります。」


優子

「なお、車内でのお好み焼きの実演はご遠慮ください。鉄板より熱いのはあなたの情熱だけで十分です。」



(♪ポーン)

光子

「続いて岡山〜岡山〜。桃太郎が犬・猿・キジと旅立った故郷。“きびだんご”は配給済みですが、“ギャグだんご”は各自脳内でご用意ください。」


優子

「当列車の鬼退治は不要です。たまに“眠気の鬼”が現れますが、窓の景色と隣の笑顔で撃退できます。」



(♪ポーン)

光子

「ただいまより倉敷・相生・西明石あたりは——」


優子(食い気味に)

「通過ぁ〜! でも心は通過しません。皆さんの心にはしっかり停車いたします(キメ顔)。」


光子

「※決して戻りませんので、今のうちに写真と思い出は早めに保存してください。」



(♪ポーン)

光子

「新大阪〜新大阪〜。ここで大量乗車! ボケとツッコミの乗り換えはスムーズに。ホームでは“ボケ優先レーン・ツッコミ優先レーン”を設けておりません。譲り合いの心でお願いします。」


優子

「関西の皆さま、本職の方々に囲まれて震えますが、うちらは“九州直送・旬の笑い”で勝負します。どうぞ手拍子で味付けください。」



(♪ポーン)

光子

「京都〜京都〜。千年の都に新鮮なギャグを一粒。寺社仏閣に向かって“オチがつきますように”とお願いするのはセーフ。鐘を鳴らして“ドーン!”と締めるのはアウトです。」


優子

「和菓子は三方良し、ギャグは四方良し(言った本人・聞いた人・隣の人・SNSの人)。拡散は節度を守ってお願いします。」



(♪ポーン)

光子

「名古屋〜名古屋〜。味噌カツ・手羽先・ひつまぶし。三段オチのように味が変わる名店多数。車内で“お腹がグー”の音はBGM扱いです。」


優子

「“ういろう”は滑舌強化に最適。『ういろう売り』を早口で言えた方は、終点東京でささやかな自己満足が得られます。」



(♪ポーン)

光子

「新横浜〜新横浜〜。スタジアム帰りの皆さん、お疲れさまです。勝っても負けても“帰り道の笑顔”が真のチャンピオン。」


優子

「なお、車内での優勝インタビューはマイク故障のため、心の中でお願いいたします。」



(♪ポーン)

光子

「品川〜品川〜。ここから終点までは“オチ回収区間”です。拾い忘れたボケがございましたら、今のうちに回収して各自で着地してください。」


優子

「スマホ・ゴミ・フラグの回収もお忘れなく。回収できないフラグは、次回公演で回収いたします。」



(♪ポーン・到着チャイム)

光子

「終点、東京〜東京〜。本日も“爆笑発電所ラッピング新幹線”をご利用いただき、誠にありがとうございました。」


優子

「このあとも安全第一、健康第一、腹筋はほどほどに。みんな、また乗ってね〜!」


(♪エンディングジングル/拍手SE)


——窓の向こう、ビルの谷間に朝の光。

“笑いは心の酸素”を合言葉に、ふたりの旅はまだまだ続く。





東京への帰還 ― 音大の街で再び始まる日常


成人式を終えた翌朝。

冷えた空気の中、光子と優子は博多駅のホームに立っていた。目の前には、あの“爆笑発電所ラッピング新幹線”。

今度は福岡から東京への帰路である。



■ 車内の笑顔と帰路の余韻


座席に腰を下ろすと、光子が微笑んだ。

「なんか、昨日の成人式が夢みたいやねぇ」

優子も頷きながら、窓の外を見つめる。

「ほんとよ。大人になった実感、まだ半分くらいやけど……でも、“あの言葉”はみんなに届いた気がするね」


静岡の山々を過ぎ、夕陽が傾く頃には、2人の心もまた、少しずつ“学生”のモードへ戻っていった。



■ 東京駅到着 ― 学生寮の仲間たちの拍手


新幹線が東京駅に滑り込むと、改札口の向こうに音大の学生寮仲間が立っていた。

「おかえり〜!ニュースで見たよ!スピーチ最高だった!」

「“言葉は毛布”って、あれ刺さった〜!」


寮の玄関をくぐると、ロビーには小さな横断幕が貼られていた。


「祝・成人!爆笑発電所 in Tokyo 寮支部」


光子と優子は顔を見合わせ、声をそろえて言った。

「……ただいまーっ!!」



■ ミライマート音大前店 ― 再会のあいさつ


翌朝。

2人はいつもの“ミライマート音大前店”に立ち寄った。

自動ドアの「ピンポーン♪」という音とともに、店長の篠崎圭一が笑顔で手を振る。


「おっ、おかえり!成人式のニュース、見たよ〜。あれ、全国放送だったやん!すごかったねぇ」


光子が照れ笑いしながら、深く一礼する。

「ありがとうございます。今日からまた、お世話になります!」


優子も隣でぺこりと頭を下げる。

「大人になっても、変わらずここに帰ってこれる場所があるって、なんかホッとするね」


店の奥からは、アルバイトの大学生たちの拍手が起きる。

「これからも、笑いと癒しを頼むよ、光子ちゃん、優子ちゃん!」


2人は笑って手を振った。

「任せとって!うちら、笑いの棚卸しは得意やけん!」



■ 再び動き出す“日常”


寮に戻ると、ピアノ室から聞こえる和音、遠くの廊下から響くトランペットの音。

それぞれの場所で、仲間たちが新しい一年を始めている。

光子と優子も、机にノートを開きながら微笑んだ。


「さ、明日からまた、“爆笑発電所 東京支部”の始動やね」


窓の外、冬の陽光が差し込み、桜の枝が静かに揺れていた。

笑いと音楽の調べが、再びふたりの日常を満たしていく。



  

作曲の日 ― 「20歳の組曲」始動


夕暮れどき、東京の学生寮の部屋。

カーテンの隙間から射すオレンジ色の光が、机の上の五線譜をやわらかく照らしていた。



■ パソコンを立ち上げる瞬間


光子は深呼吸を一つして、ノートパソコンの電源を押した。

「……よし、今日こそ始めようかね。」


優子が隣で紅茶を持ってきて微笑む。

「ついに“10代最後の日から成人式まで”の曲、形にするっちゃね。」


モニターが光り、音楽ソフトの起動画面が現れる。

光子の指先がキーボードの上で静かに止まった。

この数年――笑いと涙と挑戦で過ぎていった季節の音が、いま脳裏によみがえる。



■ 組曲「二十歳の祈り(Prayer of 20)」構想


光子が五線譜をめくりながら、静かに語る。


「第1楽章は“十代最後の日”。

 夕暮れの色、少しの不安と、明日への希望。

 ピアノとストリングスで、光と影のゆらぎを描きたい。」


優子がメモを取りながら頷く。


「第2楽章は“二十歳の朝”。

 朝日が昇る感じやね。

 トランペットとホルンで、堂々と、でもちょっと照れくさく。

 “笑って大人になる”ってテーマ入れよう。」


「で、第3楽章は“成人式”。

 自分たちの言葉が届いて、拍手が広がるあの瞬間。

 最後は静かな合唱で“ありがとう”を繰り返す。

 その声が風になって未来へ届くように。」


二人の間に言葉ではない共鳴が走る。

音ではなく、“記憶”が曲を形にしていく瞬間だった。



■ 音で綴る時間


光子がピアノを弾き始め、優子がリズムを刻む。

画面の波形が少しずつ伸びていく。

音が、日々の思い出を解きほぐすように、優しく部屋を満たしていった。


「……うちら、ほんとにここまで来たんやね。」

「うん。音があの頃の自分たちを抱きしめてくれよる。」


画面のタイトルバーには、ゆっくりと文字が打たれていく。


“Suite for 20 ― 光と笑いの旅路”



■ 夜のメッセージ


日付が変わる頃、二人はSNSに短い投稿をした。


光子:

「今日、新しい曲の制作を始めました。

 10代の終わり、二十歳の朝、成人式。

 どの日も“笑いと音”がそばにありました。

 あの瞬間を、音で残します。」


優子:

「タイトルは“Suite for 20”。

 うちらのこれまでと、これからの“証”。

 完成したら、みんなに届けたいけんね。」


コメント欄には、

“楽しみ!” “二人の人生そのものやね” “泣ける予感しかしない”

――そんな言葉が溢れていた。



そして夜更け。

光子と優子はモニターを閉じ、肩を並べて窓の外を眺める。

遠くのビル群の灯りが、まるで五線譜の上の音符のように並んでいた。


「この光の一つひとつが、うちらの音になるんやね。」

「うん。明日もまた、笑いと音の続きを作ろ。」


春に向けて動き出す“二十歳の組曲”。

それは、笑いに包まれた青春の記録であり――

未来への“ありがとう”を込めた、最初の大人の作品だった。





組曲《Suite for 20》発表の日


春の柔らかな光が差し込む音大のホール。

そこには、静かな期待と緊張が混ざり合った空気が漂っていた。



■ 提出の日 ― 画面の向こうの“ありがとう”


「よし、提出完了。」

光子がクリックすると、音大の課題提出システムに“送信完了”の文字が浮かんだ。


優子が安堵の笑みを浮かべる。

「なんか、試験っていうより“人生”を提出した気分やね。」

「うん。十代から二十歳までの全部が詰まっとるけんね。」


2人の手元のモニターには、ファイル名が並ぶ。


『Suite for 20 – 光と笑いの旅路(by Mitsuko & Yuuko).wav』


提出後、数秒間の沈黙。

画面の反射に映る2人の顔には、達成感とほんの少しの涙がにじんでいた。



発表当日 ― 音が語る「歩んできた道」


発表会当日。

講義棟のホールには、教授、学生たち、そして招待された保護者や関係者の姿があった。


司会の学生が静かにマイクを持つ。

「続いて、声楽科2年、小倉光子さんと小倉優子さんによるオリジナル組曲《Suite for 20》。

“十代最後の日” “二十歳の朝” “成人式”の三部作です。」


拍手が静かに広がる中、会場が暗くなり、ピアノの一音が鳴り響く。



第1楽章:十代最後の日 ― “終わりと始まりの狭間で”


静かなピアノのアルペジオ。

光子が弾く和音は、まるで夕暮れの光が消えかける瞬間のよう。

ストリングスが加わり、優子のリズムが少しずつ心拍のように重なっていく。


モニターには、10代の頃の映像――

小学校の卒業式、初めてのライブ、事故を乗り越えた日々。

観客は息を呑み、ただ音の流れに身を委ねていた。



第2楽章:二十歳の朝 ― “光の中の笑顔”


軽快なトランペットとホルン。

優子がドラムスティックでリズムを刻み、光子のピアノが笑うように踊る。

画面には、成人の日の朝、鏡の前で笑う2人の姿。


教授が思わず小声で漏らす。

「……これは、音で人生を語る詩だな。」


会場の空気が少しずつ明るくなる。

音が人の記憶を優しく撫でていく。



第3楽章:成人式 ― “ありがとうと、未来へ”


合唱が流れる。

録音には、学生寮の仲間や、ミライマートのスタッフたちの声も。

「ありがとう」「また会おう」「笑顔でいこう」

――そんな声が重なって、音が空へ溶けていく。


そして最後の一音。

光子が目を閉じ、優子が深く息を吸い、

ピアノとパーカッションが静かに消える瞬間――

会場に、涙をこらえきれない拍手が起こった。



終演後の会話


教授が静かに歩み寄り、言葉をかける。

「技術を超えた“心”があった。これが芸術なんだよ。」


光子が小さく微笑み、優子が答える。

「ありがとうございます。うちら、笑いと音でここまで来ました。」

「そしてこれからも、笑いと音で歩いていきます。」



SNSでの反響


その夜、大学公式チャンネルで発表の映像が公開される。

コメント欄には数千件のメッセージが並んだ。


「音が人生そのものみたいだった」

「涙と笑いが同時に出た」

「“ありがとう”って言葉が、音で伝わるってすごい」


そしてトレンドには――


#Suitefor20 #光子優子 #爆笑発電所組曲


翌朝には、音楽配信サイトのクラシック部門で堂々の1位を獲得。



二人の言葉


光子:「人生って、リズムもテンポもいろいろ変わるけど、最後は笑顔で終わるように作りたかったっちゃ。」

優子:「“笑い”と“祈り”は、どっちも音になるんやね。うちら、その真ん中で生きとる感じがする。」


そして画面の隅に、二人が書いたメッセージが光る。


『音は時間を越えて、笑顔を残す。』


――二十歳の春、光と笑いの旅路は、まだ始まったばかりだった。




年明け初陣・松山スパーク!—爆笑発電所、四国初始動—


松山市文化会館。ロビーに漂うみかんの甘い香りと、客席から立ちのぼるざわめき。

広島からのフェリー組、大分から八幡浜に上がってきた陸路組の手には、手作りうちわ——

「M&Y腹筋注意」「発電お願いします!」の文字が踊る。


暗転。SEに伊予節のフレーズが混ざり、会場のどこかで“ポンッ”とミカンがはぜる効果音。

ステージ中央に現れたのは、黄色と黒の作業ツナギに「爆笑発電所」と大書きの腕章をつけた光子と優子。

背後には巨大な“笑力わらりょくメーター”、左右に風車とタービンのオブジェ、

床には電源ケーブル風のテープが走る。演出の赤とオレンジのライトが温かく染めた。


光子(博多弁・拡声器片手に)

「みなさん、松山のみなさん!そして広島・大分からの遠征のみなさん!

 本日は——爆笑発電所・四国松山支局、臨時操業ばい!準備はよかね?」


客席「イェーーイ!!」


優子(点検表をめくりながら)

「では安全確認いくけん。客席右、笑顔ブレーカー“ON”?」

客席右「ONーー!!」

「客席左、拍手コンデンサー“充電完了”?」

客席左「完了ーー!!」

「2階席、ツッコミ避雷針“装備済み”?」

2階席「……装備済みーー!!」


笑力メーターが「0→30%」へググッと上がる。


光子

「よっしゃ、予熱OK。今日は“笑い”で灯りば点ける新ネタ——

 **『発電コント・四国初運転』**ば初公開するけん、腹筋許容量を超えんごと気を付けて!」


第一段:ウォーミングアップ回路


二人がテンポの良いコール&レスポンスで会場を踏みならす。


優子

はつ!」

客席「でん!」

光子「腹!」

客席「筋!」

二人「定!格!超!過!(ドン・ドン・ドン・ドン)」


メーターが50%へ。ステージ背面の“街のシルエット”照明が半分だけ点灯。


光子

「まだ半分やね。ここから地域連系いくよ。広島パート、準備は?」

広島ブロック「おう!!」

優子

「『カープは?』」

広島「『今日も勝〜つ!』」

光子

「『お好み焼きは?』」

広島「『ソース二度づけ上等!』」

(※文化的ツッコミで優子がすかさず)

優子「それ串カツの文化混線やろ〜!」

——笑いで針が65%。


光子

「大分パート、準備は?」

大分ブロック「いいちこーー!!」

優子「いや、の・み・た・い願望やめんかい!」

光子「『だんご汁は?』」

大分「『ほっこり最強!』」

針が75%。

ステージの“風車”がゆっくり回りはじめ、会場が「おお〜」とどよめく。


第二段:松山シークエンス


優子(真顔で)

「ここ松山は道後、坊っちゃん、みかん……つまり“温・文・甘”。」

光子(即座にフリップ)

「対するうちら爆・笑・発!」

優子「“温文甘” VS “爆笑発”の異種格闘技!」

(効果音:ゴング)


即興ミニ落語「坊っちゃんが発電所に就職したら?」を超特急で披露。

“山嵐”ならぬ“山笑やましょう”、電流でんりゅう電流なみだの言葉遊び、

「過電流で過剰流涙」など、言葉の譜面が立て続けに決まる。

針は90%。街シルエットの灯りがぐっと増す。


光子

「最後は“笑雷しょうらい”落として100%行くけん、いくよ——

 四国一周ツッコミ高速巡回!」


二人が四国4県を歌うように畳み掛ける。

高知:カツオ一本釣り→「笑いは入れ食い」

徳島:阿波おどり→「ツッコミは二拍三連」

香川:うどん→「コシ強すぎてボケ戻る」

愛媛:みかん→「ビタミンC=“笑いのシー(sea/see)”」


ここで会場全員立ち上がり、手拍子サークル。

優子がドラムパッドを叩き、生のグルーヴが走る。

光子がベースを一閃。「ドゥン」と一発、客席の心拍が揃う。


フィニッシュ:全館点灯


光子「松山——点灯っ!!」

優子「爆笑——送電っ!!」

二人「発電完了ゲンカイブッチギリ!!」


“笑力メーター”が100%に達し、背面の街がフル点灯。

天井からは白金色のスパーク模様のライティングが雨のように降り、

会場は総立ちの拍手と口笛で震える。


MC & セット


光子

「遠く広島・大分からも来てくれて、ほんとありがとね。笑いでちゃんと灯り点いたばい。」

優子

「このあと音楽部——行きます。愛媛初披露の新曲、『だいだい』。

 “つながる色”ばテーマにしとるけん、耳も心も預けてよかよ。」


— セット流れ —

1.爆笑発電所・導入ジングル(短)

2.発電コント(本編)

3.新曲「橙」— スロー・バラード

4.「ロマンティックが止まらない」(C-C-Bオマージュ・アカペラ・ショート)

5.「爆笑発電所・再起動リプライズ」—客席コール込み

6.アンコール「笑顔NIPPON - 四国Mix -」


アンコールの小噺


優子

「今日は“電力需給ひっ迫注意報”じゃなくて“腹筋ひっ迫注意報”やったね。」

光子

「整骨院のみなさん、いつもすみません。請求書は牧原監督宛で——(嘘です!)」

客席、ドッと崩れる。


最後は、会場全員で“笑力メーター”をスクリーン上でもう一押し。

「3、2、1——スイッチON!」

スクリーンに“THANK YOU MATSUYAMA”と“SEE YOU IN SHIKOKU AGAIN”が踊る。


退場BGMは、四国民謡のモチーフにベース&ドラムの軽快ビートを混ぜたファイブピーチ★流アレンジ。

ロビーに出た観客は口々に言う。「ほんとに灯ったね。心の灯りが。」


年明け初陣。

爆笑発電所は四国で確かに発電した。

そして、その電気は——笑顔という名の明かりとして、各地へ送られていった。





バロックの朝、カデンツの午後


連休明けの東京は、うっすら春の匂い。音大の石畳を踏みながら、光子と優子はいつものように肩を並べた。

「今日、うちは発声で“バロック・ボイス”やろ?」

「こっちは作曲で“通奏低音とアフェクト”。頭ん中、数字だらけになりそうやね。」

小さく笑い合って、別々の教室へ。



前半:声楽実技「バロックの息」


レッスン室の中央にはチェンバロ。薄金の蓋板が朝の光を跳ね返す。

講師の片桐先生が手を叩くと、空気がきゅっと締まった。


「今日は“バロックの声”に切り替えます。基本はまっすぐな息柱、ビブラートは“香り程度”。長い音はメッサ・ディ・ヴォーチェで“感情の楕円”を描くつもりで。」


優子は譜面台の「Lascia ch’io pianga」に目を落とし、そっと吸う。

—肋骨を外に、下腹部は静かな張力。首筋の余計な力は置いてきぼりに。


「一行目“Làs-cia”のアポッジャトゥーラ、ため息を落とすように。Cadential trill は“前取り”から。trilloとgruppoの違いも意識。」


チェンバロの和音が置かれる。優子が声を乗せると、室内に薄絹のような直線が伸びた。

「……うん、その“揺れない勇気”いいね。次、小さなポルタメントで涙の重さを足して。」

「はい。……あ、先生、語尾の“pianga”は少し開く感じですか?」

「伊語で。母音は縦長、“a”に薄く微笑みを。イタリア式ラテンの発音も後でやります。」


後半は装飾の即興。

「二回目のリフレインに経過音のパッセージを入れてみて。三度の分解和音から順次進行→頂点で控えめなターン。」

優子は頷き、指先で小さく拍を刻む。「……行きます」

ほんの一匙の銀粉みたいな装飾が旋律に灯った。


終わると先生が親指を立てた。

「バロックは“誇張しない劇”。**レトリカ(修辞学)**で心を動かす。今のは“嘆願”のアフェクトがよく出た。」

優子は肩で息をしながら小声で笑う。「よかった……腹筋、まだ爆笑用に残っとる」



後半:作曲講義「数字の海、情念の羅針盤」


別棟の作曲科。黒板一面に書かれているのは数字と矢印、そして「アフェクトの学説」。

「今日は**通奏低音(basso continuo)**から入ります。」三条教授がチョークを走らせる。

「数字付き低音(figured bass)は、“和声の設計図”。数字は“上に積む音程”、転回形の指示。奏者は状況に応じて省略・補強する。」


プロジェクターにはコレッリの楽譜。

「序盤は“嬉悦”のアフェクト。明るい長調、順次上行のシークエンス、弦のマルテラート短弓。

 後半は“嘆き”。短調、半音下降のラメント・バス、4–3懸垂で涙の停滞。」


光子は五線紙にローマ数字と通数字を並べながら、低音の流れを描く。

(ここで I6 → ii°6 → V7/V → V。上声は反行、内声で禁則並達を避ける……)

教授が続ける。

「舞曲組曲(allemande–courante–sarabande–gigue)の性格差も重要。サラバンドは拍三の強勢、“沈潜”。

 リトルネッロ形式は“帰巣本能”。主題は帰ってくる——聴衆はそこに“安心”を感じる。」


「課題。16小節のリトルネッロ主題を作り、二つのアフェクトで対比させなさい。

 一つは“穏やかな希望”(長調、分割されたブロークン・コード、開放弦的素朴さ)。

 もう一つは“静かな決意”(短調、バスの執拗なオスティナート、上声は音価を切り詰めた簡潔な修辞)。

 どちらにも**カデンツァ(完全終止)**を設定、カデンツァ前の属七は根音省略可。」


(静かな決意……春の夜明け前みたいに。低音はド–シ–ラ–ソの地を這う四度下降、上は二度で絡めて対位法二種……)

光子の鉛筆が走る。音価、休符、息の位置。

気付けば五線紙の端に小さく“Allegrezza pacata(静かな歓び)”と標題が生まれていた。


休み時間、廊下の真ん中で二人は合流。

「どうやった?」

「声、めっちゃ削ぎ落として歌う感じ。ビブラートは“香り程度”やて。」

「作曲は“感情の設計図”ば見える化やね。低音が歩けば、心が付いて来る感じ。」


ふと、二人は同時にニヤリ。

「今夜、“バロック漫才”やる?」

「数字付きボケと即興ツッコミで?」

「『ここで 6 の指示が——』」

「『先生、それはろくでもない!』」

——廊下で抑えきれない笑いがこぼれ、二人は慌てて口を押えた。


教室の鐘が鳴る。

窓の外、淡い雲が千切れて光が差した。

声と数字。息と低音。

爆笑発電所のエネルギー源に、今日またひとつ“静かな技術”が積み上がった。

舞台で輝くあの一瞬のために——バロックの朝は、丹念に、静かに燃えていく。


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