日曜散歩〜春の東京散歩〜
日曜さんぽ、低出力モードでお願いします
日曜の昼前。
空はきれいに晴れてるのに、風だけはまだ冬の名残。マフラーに鼻先をうずめて、大学の外周をぐるっと歩く。
「外、気持ちいいね。」
「うん。でも耳が冷たい。耳たぶ、氷菓子。」
正門の前で、最初の声が飛ぶ。
「ファイブピーチ★だ! いつも聴いてます!」
「ありがとう。今、曲作りも進んでます。もうすぐ新曲いきます、楽しみにしててくださいね〜。」
小さな拍手。つられて自転車の高校生まで手を振ってくる。よそ見して縁石にコツン——「あぶな!」で、無事。こっちも胸に手を当てて一礼。
校門脇のベンチでは、おばあちゃんと孫がパンを半分こ。
孫が恐る恐る近づく。「テレビの人?」
「うん、でも今日は散歩の人。」
「…がんばってください。」
「がんばります。」
丁寧にお辞儀したら、おばあちゃんまで立ち上がって90度。こちらも慌てて90度。風だけが100度。
角を曲がると、ジョガー集団がすれ違う。先頭の人が息切れ気味に「新曲…ほんとに…出るんですか…?」
「出ます! 走り切る前に配信されると思います!」
「じゃ…全力で…期待してます…!」スッとペース上がった。応援がカロリーになるタイプだ。
横断歩道の前、柴犬がリードをぐいっとくわえて飼い主をストップ。「え、自己主張つよ…」
飼い主さんが笑う。「この子、音に反応するんです」
しゃがんで小さく“タタン”と指でリズム。柴の前足がタッ、タッ。
「天才。」
「うちの新メンバー、決定かも。」
「ギャラはササミで。」
コンビニ前では大学の後輩たち。
「先輩!ライブ配信見ました!」
「ありがとう。寒いから風邪ひかんごとね。」
「はい!…って言ってるそばからアイス買ってました。」
「若いって強い。」
スマホが震える。篠崎店長からメッセージ。
《今店内BGM“TOKYO”デモ流してます。お客さん、足が止まる止まる》
思わず立ち止まる二人。
「うちらの足も止まったね。」
「なら、店にお礼言いに寄ろ。」
途中、三人組に声をかけられる。
「すみません、写真いいですか?」
「もちろん。風で前髪が自由なので“自然派”でお願いします。」
撮り終えたら、ひとりが遠慮がちに手を挙げた。
「…あの、ウィンクと投げキッス、見てみたいです」
「本気のは危険物指定なので、今日は体験版で。」
右目チラッ、手のひらヒョイ。超低出力。
「ぎゃー! 充分です!」
その場の誰かが「腹筋にくる…」とお腹を押さえる。
「整骨院いかんでいい強度でやりました!」
「すごい配慮!」
校舎の影に入ると、風がやわらいだ。
「…こうやって歩くの、好きだな。」
「うん。『届いてる』って、直接わかるもん。」
ポケットの中で指先がぶつかる。ふたりで苦笑して、マフラーをいっこ分け合うみたいに近づいた。
最後に守衛さんへ会釈。
「おかえり。今日もファン多かったね。」
「ありがたいです。守衛さんも新曲、ぜひ。」
「出たら、ここで流しとくよ。」
「校門で初オンエアは、アツい。」
寮までのラスト100メートル。
歩数計が軽く震える。
「じゃ、作業再開だ。」
「うん。歩いた分だけ、言葉がほどけた気がする。」
扉を開ける前に、振り返って手を振る。
道ゆく人へ、今日へ、次の曲へ。
「ありがとうございます。またすぐ届けます——ほんとに。」
現役高校生セット(ライト&ギャグ)
•勉強系:赤シート/ルーズリーフ厚盛り/タイマー(テスト本番ごっこ用)
•音系:スマホのメトロノーム&録音アプリ(先生の一言メモ用)
•体調系:のど飴/水筒/小さめ加湿スプレー(教室乾燥注意)
•メンタル系:小さいお守り+“受かるノート”(よかったことだけ書く)
•交渉系:提出物“秒で出すフォルダ”(内申は味方に)
⸻
ミニ小説:高1・音大志望の朝
目覚ましの二回目で起きる。カーテンを開けたら、空がやたら青い。
「今日いける気しかしない」——と毎朝言う係の優子。
「毎朝言ってるけど、そのうち本当に当たるやつ」——と光子。
朝ごはんをもぐもぐしながら、昨日の“受かるノート”を開く。
・英語の長文、時間内クリア
・体育のシャトルラン、笑ったまま完走(気合いで)
・音階録音、前より滑らか(自画自賛OK)
玄関で靴ひもを結ぶと、母の声。「ハンカチと自信、持った?」
「ハンカチOK、自信は増し増し。」
父が新聞越しに「帰ったら録音聞かせなさいよ、オーディション面接想定でツッコミ入れるから」
「家の面接官が一番手ごわい件。」
通学路。信号待ちで、ふたりは小声リハ。
「自己PR、30秒版で」
「はいどうぞ」
——隣の小学生がガン見。「お姉ちゃんたち、ラジオ?」
「受験ラジオの生放送中です。」
教室に着く。席に座る前に深呼吸一回。
プリントが配られる。進路希望調査。
第一志望:音大。第二志望:音大。第三志望:音大(で違う学科)。
担任がニヤリ。「背中押すけん、押される準備しときなさい」
「はい、靴ひも二重結びにしてます」
放課後、練習室の空きを確保して、録音ボタンを押す。
ワンテイク終わって、ふたりで顔を見合わせる。
「今日の“よかった”は?」
「最後のフレーズ、心が前に出た」
「採用。受かるノート、追記っと」
帰り道、夕焼け。
「音大、遠く見えて、近づいてきた感じする」
「うん。明日も“いける気しかしない”でいこう」
⸻
オープンキャンパス・ワンシーン(ショート)
キャンパスの門をくぐったら、在学生スタッフが爽やかに手を振る。
「ようこそ!何学科?」
「まだ迷い中です(でも心はほぼ決まってる)」
体験レッスン後、先生が一言。「続けてたら、ちゃんと光るよ」
帰りのエスカレーターで、ふたり同時にガッツポーズ。
「光るって言われた」「磨くのは自分」
「…あと内申と睡眠」
「大事〜」
21:00で終了!充電タイム
20:40。
光子がノートPCを閉じて手をパンッ。「はいここで区切り。21時までに風呂→ストレッチ→就寝準備、いきます」
優子は即うなずく。「徹夜は美徳じゃない。健康は正義」
食堂で軽めに夜ごはん→浴場へ直行。湯に沈みつつも時計はチラ見。
小雪「あと15分で上がろ」
ソフィーア「了解。今日は“リラックス優先デー”ね」
20:55。脱衣所でドライヤー隊が一斉稼働。
梢「恋バナの続きは土曜!」
優子「異議なし。睡眠は最強の美容液」
部屋に戻って、歯みがき→軽いストレッチ。
光子「今日の成果メモ:新曲BメロOK、コーラス案◯、あとは寝て脳に整理させる」
優子「明日の自分に期待して——」
21:00、タイマーがピッ。
ふたり同時に「消灯!」
布団にもぐり、短くハイタッチ。
光子「おやすみ」
優子「おやすみ。健康で勝つ」
廊下はすぐ静かになり、寮の灯りが一つ、また一つと落ちていく。
21時就寝、明日フルパワー。これが、二刀流の秘密。
学年末テスト、静かな快勝
週明け。校舎の空気が少し硬い。
講義は学年末モードに切り替わり、いよいよ一年の総決算——期末テスト。
教室に配られる問題用紙。カウントダウンのような静けさ。
最初のページをめくった瞬間、どこかでシャーペンの芯が「ポキ」。
前列の梢が小声で「あ、終わったかも」とつぶやき、後ろの小雪が“替芯どうぞ”とメモ用紙でスライド。机の下で小さな助け合いが連鎖する。
光子はテンポよく解き進める。譜面を書くときの集中力が、そのまま数式にも言語にも乗る感じ。
優子は見直し前提で一周目をサクッと回収。余白にミニ図解、要点に下線。呼吸は一定、目線は滑らか。
二人とも予定より早く本体を解き切り、同時に深呼吸。
「誤字チェックいく」「うん、数え落としなし確認」
静かなアイコンタクトだけで会話は完了。解答欄を指でなぞり、最後に名前の字形まで整える。
提出の列。
小春は「第3問の地雷原、なんとか突破…!」と胸を押さえ、
ソフィーアは「論述、言い切りで締めたから加点くるはず」と小さくガッツポーズ。
梢は「芯が4本消えた。努力の可視化」と笑う。
みんなの“悪戦苦闘”が、汗と消しカスで足元に積もっている。
放課後。掲示板の前は人だかり。
成績一覧が更新され、ざわめきが一段高くなる。
——年間総合順位:
1位 小倉光子
2位 小倉優子
「うわ、やっぱ双子トップ」「今年もワンツーか…!」
歓声とため息が混ざる中、当の本人たちは派手に喜ばない。
光子「一年ぶん、ちゃんと返ってきた感じ」
優子「支えてくれたみんなの点も入ってる気がする」
講師が近づいて、短く一言。
「おめでとう。ただし——“ここから”が本番」
二人は同時にうなずく。「はい」
その夜、寮のキッチン。
紙コップのホットココアでささやかな乾杯。
光子「一年、おつかれ」
優子「来年も、更新しよ」
コップが小さく触れ合って、静かな音が鳴った。
外は冬の気配。中は、次の挑戦に向けて温まっていた。
3月、帰省の段取り
昼下がりのミライマート。
レジに立つ光子と優子が、会計の合間に店長へ一礼。
光子「店長さん、今度のお彼岸に福岡に帰ります。3月中旬〜月末は帰省で、4月1日に東京戻ってきます。」
篠崎店長「了解。シフトは僕が調整しておくから、安心して行っておいで。向こうでも無理はしないこと。」
優子「ありがとうございます。戻ったら“土産話”と“おはぎ話”持ってきます。」
店長「おはぎ話って何(笑)」
横で品出し中の先輩・茜がひょい。
茜「つまり——粒あん派か、こしあん派かで全国討論会?」
光子「壇上に“きな粉界の伏兵”も控えてます。」
優子「決勝は“ご先祖さまが微笑む方が勝ち”。」
店長「お彼岸に優勝トロフィー持ってかないで(笑)。」
常連さんにも一言。
光子「今度、福岡に帰省します。4/1には戻ります!」
常連さんA「うわ、じゃあこの10日間、レジ前の“笑い声BGM”が欠品だ。」
優子「録画して置いときます?“いらっしゃいませぇ!”の高音質版。」
常連さんB「それはそれで欲しい。」
⸻
寮に戻ると、帰省リスト会議。
優子「墓参りセット、よし。実家への手土産、よし。春介・春海には東京バナナ+キラキラシール。」
光子「みらいのたね事務所にも顔出し連絡。おっちゃんの現場は何日目安?」
優子「中3日で押さえた。あと“おはぎ最終決戦”は祖母の台所で。」
光子「勝ち筋:粒あん。」
優子「対抗:きな粉。大穴:黒ごま。」
家族グルチャに日程送信。
美鈴〈了解。空港→家まで直行コース用に冷蔵庫パンパン〉
優馬〈庭の桜、つぼみ。帰ってくるまで待機宣言〉
美香〈春介・春海、カレンダーに“おねえちゃん帰還”って書き込み済み〉
⸻
翌日、店頭ポップに小さくお知らせ。
《双子スタッフ・帰省のお知らせ:お彼岸中は席を外します。4/1に帰還。代わりに“笑顔”多めで営業します(店長)》
篠崎店長「戻ったら春の新作BGMも頼むね。」
光子「“桜とコロッケ”の二部作、鋭意制作中。」
優子「後半、なぜかコロッケが主役。」
レジを閉める頃、風はまだ冷たい。
でも、カバンの中には新幹線eチケットと、帰省のスケジュール。
光子「よし、準備完了。」
優子「福岡、待っとって。4月1日、ちゃんと戻ってくるけん。」
二人の“春の往復便”が、静かに走り出した。
土曜はピンポン、日曜は歌詞──そして“スタートライン(仮)”
午前。
ノートPCの画面に、ほぼ埋まりきった歌詞ファイル。
光子「……ここ、“夢の残像”より“笑いじわ”の方がウちらっぽくない?」
優子「採用。副題は“腹筋に咲いた花”。」
二人は執筆で振り返った出来事を、そのまま曲に落としていく。
—事故からの再起、仲間、家族、あの日の舞台袖の震え。
キメすぎない言葉で、でも芯は熱く。
「保存」→「クラウド同期」→「深呼吸」。
優子「よし、午後は“拓実の卓球”応援モード。」
光子「翼は沖縄だよね。福大テニス部の公式配信、寮のラウンジで流すけん。」
⸻
都内アリーナ:拓実、出陣
客席。
手作りの“TAKU・WIN”タオルと応援うちわ(※裏面は“優子LOVE”)。
アナウンスが響くと同時に、会場に軽快な打球音が散る。
優子「(小声)た、た、拓実の前髪が今日も爽やかすぎる……」
光子「ボール見てボール。」
第一ゲーム。
ラリーが伸びるたび、優子の喉も伸びる。
優子「たーくみ! ナイスレシーブ! そこ! サイド! いやミドル! あ、取った! 取ったぁぁ!」
周囲の席の人がつられて笑い、でも拍手は揃う。
—デュース3回目、バックのカウンターがズバン。
ゲームセット。
拓実、ガッツポーズ。スコアボードに“2-0”。
優子「っっしゃあああ!」(立ち上がりタオルぶんぶん)
光子「優子、落ち着き。係員さんがにっこり見てる。」
試合後の通路で合流。
拓実「応援、聞こえた。というか、響いてた(笑)」
優子「ナイスゲーム! これ、スポドリ。あと“勝利のどら焼き”。」
拓実「甘やかしが過ぎる。」
光子「糖分は正義。」
パシャっと記念写真を撮って、次の対戦エリアへ送り出す。
優子の頬は、しばらく赤いまま。
⸻
寮ラウンジ:翼 in OKINAWA
同時刻、寮。
大型テレビに「福岡大学テニス部 公式SNS配信」の文字。
小雪・ソフィーア・梢たちがポップコーン片手に集合。
光子(配信コメント打ちながら)「#翼が飛ぶ #南風フォア」
小雪「サーブのルーティンかっけぇ〜」
ソフィーア「この落ち着き、絶対ポイント取るやつ」
—サーブエース。
歓声の代わりにラウンジでクッションが宙を舞う。
光子「っしゃ! 翼、ベスト8進出!」
梢「コメント欄“博多ノリ”で賑やかになっとるよ(笑)」
⸻
祝・勝利、ビデオ通話
夜。
画面分割で、拓実(都内アリーナ裏)、翼(沖縄の夕焼けコート脇)、寮の双子が繋がる。
翼『応援ありがと。コメント欄、光子バレバレやったぞ(笑)』
光子「“匿名の観客A”やったのに!」
拓実『どら焼き効果、出たわ。次も頑張る』
優子「どら焼きスポンサー契約、組みます?」
—そこへ春介・春海からも一瞬乱入。
春介『拓実兄ちゃん、スマッシュ速かった!』
春海『翼兄ちゃん、夕日よりイケメン!』
全員「言い方がプロ。」
⸻
夜更け、ふたたび歌詞机
今日の鼓動を、そのまま曲の設計図に。
・Aメロ:上京してからの秒針の速さ
・Bメロ:笑っても泣いても隣にいた手の温度
・サビ:ラリーのように続く“挑戦→応答→前進”
光子「タイトル、どうする?」
優子「“スタートライン(仮)”……いや、“笑いじわのスタートライン”にしよっか。」
光子「長いけど、好き。」
保存を押す指先が、少し震える。いい意味で。
窓の外は春の手前。
明日もまた、練習とバイトと、ちょっとのコント。
そして、歌。
ラケットの音と、波の音と、キーボードの打鍵が、同じテンポで胸に響いていた。
1本目:光子 → 翼に捧ぐ「SWING! TSUBASA」
夜、寮ラウンジのホワイトボード。
光子はマーカーを握って、まずタイトルをでっかく書く。
光子「“つばさ”って言葉自体がもう飛ぶやん。テニスのスイングと、“羽ばたく”のダブルミーニングで行こう。テンポは軽快、ギターはカラッと、ストリングスはきらめき多め」
優子「心拍数が上がる感じをリズムで出したいね。観客の手拍子みたいなクラップ入れるとライブ映えする」
光子「サビ、試しに——」
君のラケットが空を切るたび
迷いが風に変わってく
ねぇ、飛べるよ もう怖くない
ここが二人のスイング・スタートライン
優子「うん、まっすぐで好き。比喩が軽やか。Aメロは“朝の練習コート”とか“乾いた風”とか、具体物ちょい入れしよ」
光子「OK。ブリッジで“負けた夜も笑わせてくれた既読のハート”とかどう?」
優子「その“既読のハート”、完全に翼のこと(笑)」
⸻
2本目:優子 → 拓実に捧ぐ「P!NG-P!NG HEART」
優子は机をトントン叩いて、リズムの核を探す。
優子「卓球の“ピン→ポン→間”がカワイイけん、リズムは跳ねさせる。スネアは軽く、間に“キュッ”ってラバーの摩擦音“風”の効果入れたい」
光子「音オタ(笑)。言葉で遊ぼ。“デュース”“ラリー”“マッチポイント”——全部“日常の押し引き”のメタファーに」
優子「じゃ、サビ叩くわ」
ねぇ 言えないままラリーしてた
心のコース読まれてたかな
デュースの夜を越えて今
君に決めるよ——マッチポイント
光子「優子、ズルい。ストレートすぎて刺さる。Bメロで“汗の粒”“体育館の木の匂い”とか入れると、情景が立つ」
優子「了解。最後に“君となら、負けても笑える”って一発しめたい」
⸻
こっそりデモ録り計画
二人はスマホのボイスメモを同時に起動。
光子はギターで「ジャラ〜ン」。優子は膝で「トン・トン・カッ」。
30秒デモを2曲分サクッと録音してファイル名を付ける。
•SWING_TSUBASA_demo01.m4a
•PINGPING_HEART_demo01.m4a
光子「翼と拓実には、完成まで内緒でサプライズしたい」
優子「異議なし。次の空きスタジオで一気に骨組み固めよ」
⸻
そして、乱入の2人
そのとき、ビデオ通話がピコン。画面に春介と春海。
春介「タイトル案あります! “つばさのバコーン!”」
春海「“たくみのシュバババ!”」
光子「擬音が強い(笑)」
優子「でも嫌いじゃない(笑)サブタイトルに入れるか」
春介「じゃあ“ハイパー誘惑ウィンク”のSEも作ってね!」
春海「最後に“チュー”の音も!」
二人「——検討します!」
⸻
仕上げロードマップ(ざっくり)
•明日:A/Bメロの詞を磨く(情景ワード追加)
•週内:スタジオで仮アレンジ(SWINGはギター中心、P!NGは打楽器遊び)
•来週:小春・奏太・美香にアイデア投げ、コーラス当ててみる
•再来週:恋人たちに“サプライズ初聴き”実施(カメラ回す)
光子「よし、恋の曲は“照れ”がスパイス。“照れ”は私たちの必需品」
優子「でも最後はちゃんと言う。“好き”は言葉で届ける」
モニターには、白いテキストカーソルが小刻みに瞬く。
二人の指が、また同時に走り出した。
PayPayドーム開幕シリーズ:双子の“投げて・喋って・笑わせる”完全台本
メールの件名に「【開幕戦】タイムテーブル共有」が光った。
二人は同時に開封→スクロール→顔を見合わせてガッツポーズ。
光子「よし、金曜ナイターの場内アナウンスは私、始球式は優子。」
優子「土曜デーゲームは逆ね。MCは両日とも“爆笑モード全開”っと。」
⸻
タイムテーブル(概略)
Day1:金曜ナイター vs イーグルス
•15:30 現地入り・音響チェック(BGM:ファイブピーチ★/インスト)
•16:00 MC/アナウンス導線リハ
•17:00 開場
•17:20 場外ミニトーク(5分)→場内MCへ移動
•17:30 場内MC(二人):開幕ご挨拶&爆笑ウォームアップ
•17:40 スタメン受領
•17:45 始球式:優子
•17:50 セレモニー(国歌独唱:球団手配/二人は舞台袖)
•17:58 場内アナウンス:光子 に切替 → 選手紹介
•18:00 プレイボール
•3回表後 “笑ってストレッチ”60秒(双子の場内コール)
•7回表後 ラッキーセブン演出で短尺コント(30秒)
•試合終了後 勝利時ヒロインタビュー → 〆の一言
Day2:土曜デーゲーム vs イーグルス
•10:30 現地入り・リハ
•11:00 開場
•11:20 場内MC(二人):デーゲーム限定の“お昼の笑い補給”
•11:45 始球式:光子
•11:50 セレモニー
•12:00 プレイボール
•3回裏後 “客席カメラで早口言葉チャレンジ”
•7回表後 ミニギャグ → スタンド一斉ウェーブ誘導
•試合終了後 勝利時コメント → 退場導線アナウンス(優子)
⸻
爆笑MCネタ(両日)
オープニング(二人)
優子「開幕おめでとうございます!今年も“真面目にふざけて全力応援”!」
光子「全力で声出す人、手あげて!——ありがとう。じゃあ次、全力で笑う人!」
(客席わー)
優子「今、笑った人はもうウォーミングアップ完了です。」
光子「選手より先に仕上がらないように気をつけてください。」
客席巻き込み“笑ってストレッチ”
光子「両手を上に〜、深呼吸〜。はい笑顔キープ!」
優子「その顔のまま、推し選手の方向にハート送って!」
(ビジョンに客席。ハートで埋まる)
⸻
始球式:演出メモ
金曜(投手:優子/ドラム女王)
•イントロSE:ハイハット刻み→スネア・ロール→「ピン!」(卓球ネタじゃなくスティックを回してから硬球へ)
•ひと言:「今日は“フォーク”じゃなく“フォート(Fort)=勝ちの拠点”、ここに作ります!」
•投球は“テンポ良く”ワンバン無しを狙う。外したら即ツッコミ。
•外した時の回収:「すみません、テンポ200で走りすぎました!」
土曜(投手:光子/“SWING”作曲者)
•ルーティンは“テニスのサーブ”風トス→静かに一拍置いて投げる。
•ひと言:「ダブルフォールトはしません。一球で決めます。」
•投げた直後、客席に向けてガッツポーズ→ビジョンに“SWING!”ロゴ。
⸻
場内アナウンス原稿(抜粋)
金曜:アナウンス担当=光子
「Ladies and gentlemen, welcome to Fukuoka PayPay Dome.
本日の対戦は、福岡ソフトバンクホークス 対 東北楽天ゴールデンイーグルスです。
ただいまより、スターティングラインナップを発表します——」
(各選手名は通常読み。テンポは軽快、噛まない、笑いはMCパートに集約)
土曜:アナウンス担当=優子
「本日はご来場ありがとうございます。球場内は飲食OKですが、笑いすぎて咳き込むのは自己責任でお願いします。
それではスターティングラインナップです——」
(審判交代・攻守交代・注意喚起はきっちり、声色は明るく)
⸻
7回ラッキーセブン:30秒ミニコント
タイトル:「今日イチの“見逃し”」
光子(審判モノマネ)「今のは……見逃し笑い三振!」
優子(打者役)「いや、笑いは振り切るもんやろ!」
二人(客席へ)「せーの——“全員フルスイング!”」
(客席ウェーブ、ビジョンに“SMILE FULL SWING”)
⸻
ヒロインタビュー(勝利時)
光子「今日のヒーローです!ナイススイング!」
優子「最後にファンへ一言——“開幕から全員で突っ走ろう!”」
(選手コメント受け、二人で〆)
二人「今年も“勝って、笑って、また来週!”ありがとうございました!」
⸻
裏導線チェック(制作メモ)
•フィールド入退場:一塁側通路 → センター寄りアウトで集合→規定位置へ
•マイク:ハンド&ピン2系統(風防あり)
•BGMキュー:
•MC入場=“TOKYO”インスト(-10dB)
•始球式=各人テーマSE
•7回ミニコント=SEなし(客席音を活かす)
•安全配慮:ファウルエリア立ち位置マーキング、球団担当と再確認
⸻
光子「準備OK。緊張よりワクワクが勝ってる。」
優子「うちらの役目は“空気を上げる”。点も声も笑いも、全部取りにいこう。」
——開幕は、球も、声も、笑いも、全てが走る夜と昼になる。
桜トレイン、満開ツアー
日曜。開花宣言から最初の晴れ。
二人はICカード満タン、鼻セレブ、レジャーシート、からあげ棒——花見フル装備で出発。
1駅目:上野
改札を出た瞬間、空がピンクに切り替わる。
屋台の焼きそばの香り→即吸引。
「写真撮るよ!」
—シャッター:
〈スナップ#1〉桜の海の真ん中で、からあげ棒を掲げる二人。
キャプション「花よりタンパク質」
公園の路上ミュージシャンの横で、つい口笛ハモり。
通りすがりの子どもがチップ箱に小銭を投入。
「いや、うちらはギャラいらんよ!」
ミュージシャン:「そのままで大丈夫です(ニコ)」
2駅目:九段下(千鳥ヶ淵)
ボート待ち“120分”の行列。
「二時間あればアルバム一枚仕上がるね」
「じゃ、橋の上で“空中ボート”にしよ」
風が吹いて、桜吹雪が顔に直撃。
「無料のスノーマシン、季節限定」
3駅目:中目黒(目黒川)
橋の上、桜トンネル渋滞。
優子が小声で“車内アナウンスごっこ”。
「次は、恋バナ〜恋バナ〜、お降りの方は覚悟の上で〜」
周りのカップルがクスッ。
すれ違うおばあちゃんに席を譲られる勢いで、なぜか飴ちゃんもらう。
「え、関西式優しさ、ここで発動?」
4駅目:吉祥寺(井の頭公園)
スワンボート列の横で、スワンと目が合う。
光子「あなた、推し選手は誰?」
優子「返事は“クワー”だって」
ベンチでおにぎり広げ、鯉の視線が痛い。
「分かったよ、一粒だけな」→即大群。
学び:鯉はSNSより拡散が速い。
5駅目:浅草(隅田公園)
桜×スカイツリーの最強ツーショ。
強風で前髪が完全に“さくらサイクロン”。
〈スナップ#2〉髪ふわっふわの二人と、遠景のツリー。
キャプション「映えとバエてる」
電車内の小ネタ
山手線で、二人シート端っこ。
光子「今日のコール&レスポンス、“花より?”」
優子「“睡眠!”(昨夜2時までデモ修正)」
周囲の乗客、肩を震わせる。
降車時、ドア前で小声の早口言葉バトル。
「さくらさくらさくさくさくさく——」
「サクッと噛んだね?」
「花粉のせい(責任転嫁)」
〆:中央線の夕景
オレンジ色の車窓に、線路脇の桜が流れる。
コンビニで桜餅といちごミルクを買って寮へ。
レジャーシートは花びらだらけ。
グルチャに今日のベストショットを投下して、句会ごっこ。
光子「桜より 改札出たら 腹へった」
優子「満開と 満腹どっちも 優勝だ」
——電車に乗って、笑って食べて、また笑った。
東京の桜は、今年もちゃんと、うちらの春を連れてきた。




