紅白からドームツアーまで
クリスマス前夜、雪が降るスタジオ/そして紅白リハへ
スタジオの廊下は金糸のガーランドでぴかぴか、扉にはでっかい赤いリボン。
ケータリング台にはシュトーレン、ジンジャークッキー、温かい紅茶。スタッフのサンタ帽が行き交い、空気が少しだけ甘い。
「本番、二曲目が『雪の約束』ね」
光子がベースのストラップを肩にかけると、優子がスティックケースをぽん、と叩く。
「OK。雪の演出、降りすぎ注意だけ確認しよ。吹雪いたら歌詞見えん」
場当たり。
美香がピアノの前で軽く音を拾い、小春がキーボードで雪粒みたいな音を置く。
奏太はギターを鳴らして、スタッフに親指を立てる。
天井のスノーマシンがテストでふわり。……ふわり、のつもりがボフッと来た。
「ちょ、猛吹雪!」
優子が顔だけ出して救助を求め、照明さんが大慌てで出力を下げる。
「今の、ホワイトアウトバージョン…」
「いらん!」
笑いながらも、立ち位置とカメラ目線のチェックはきっちり。
「一枚目は静かに。二枚目から前を見る。MCは“静か→笑い→希望”の三段構え」
「うちらの冬の三種の神器やね」
本番:『雪の約束』
照明が少し落ち、LEDに淡い雪が舞う。
美香の一打で空気がやさしく揺れて、小春の薄い和音が広がる。
光子のベースは心拍みたいに低く温かく、優子のスネアはやさしく背中を押す。
奏太のギターが夜空に筋を引くたび、場内のざわめきが溶けていく。
サビ前、ためる。
二人のハモりが重なった瞬間、客席のどこかで小さく息を呑む音。
“約束は、雪みたいに静かに降りて、景色を変える”——そんな絵が、音でできていく。
最後のロングトーンが消えると、スタジオに一拍の静寂。すぐに拍手が広がった。
MCも短く。「誰かの夜に、少しでも白い灯りがともりますように。——そして、メリークリスマス!」
他のアーティストのクリスマスソングが続く休憩中、楽屋へ戻る廊下。
タレントさんたちと「よかったよ!」と笑顔でハイタッチ。
ケータリングのシュトーレンを一口。粉砂糖がこぼれて、優子が慌てて拭く。
「積雪注意報、発令」
「食べるのに気象庁いらん!」
終演後、家族グルチャに動画を投下。
春介・春海から即レスのビデオ通話。「クリスマスの雪、きれいだった!」
「ありがとう。……って、それは粉砂糖やけどね」
二人がいつものウィンクと投げキッスを画面越しに乱射し、寮の同室勢が背後で笑い転げる。
「本番前に心拍上がるけん、やめなさい!」と優子。止まらない。
⸻
紅白リハ、開幕
会場のロビーに巨大な紅白の花。案内板には細かい秒単位の進行。
「さぁ、秒針と仲良くなる日々の始まり」
受付でパスを受け取り、ステージ裏へ。
まずは動線確認——入る位置、止まる位置、出る位置。
「カメラ3、間奏で寄ります」「トークは床の赤丸、15秒でまとめ」
スタッフの声がテキパキ飛ぶ。
歌リハ一本目。
イントロ、雪模様のライトが床に落ちる。が、なぜか魚群っぽい。
「え、スノーフレークがイワシの群れに…」
照明さんが即手直し。「すみません、冬の海になってました」
二本目、ちゃんと雪。全員で親指。
MCリハ。
光子「まずは今年の感謝を短く」
優子「31秒目でひと笑い入れる。**“笑いの踏切”**は一旦停止」
司会さんがにっこり。「その踏切フレーズ、今日いちばん好きです」
「年越し標語にどうぞ」
合唱パートの合わせでは、出演者みんなのコーラスが場内にふわっと積もる。
「“声の温度”がちょうどいい。ここでお客さん、年越しそばすする準備入るね」
「お腹鳴る音、マイク拾わんように気をつけよ」
小さな事故も、笑いで回収。
スモークが濃すぎて優子が一瞬見失われ、インカムで「ドラム見つかりません!」と報告が飛ぶ。
すぐに薄くなって、優子が手を振る。「ここにいます。冬の妖精じゃないです」
リハが終わると、鐘の音みたいなアナウンスが会場に響く。
外は冷たい風。手袋をはめながら、光子が息を吐く。
「クリスマスは“約束”で温めた。年越しは“希望”で温めよう」
優子がうなずく。
「よし。大晦日、笑って、泣いて、ちゃんと今年にありがとうを言う」
二人の歩幅は、行きよりも少しだけ大きい。
準備は、もうほとんど整っている。
大晦日、紅白本番。笑って歌って、年を越す。
オープニング〜舞台裏
17:30。NHKホールの袖は、緊張とキラキラで満ちていた。
ファイブピーチ★の5人は袖で輪になり、手の甲を軽く合わせる。
「深呼吸、一回。笑顔、二回。――行こう。」
オープニングの合図。大階段のライトが一段ずつ点り、総出演の海に混ざってファイブピーチ★も登場。
カメラがスーッと寄る瞬間、紙吹雪の雪片が優子の髪にふわり。優子は片目でちょん、と合図。小さなウィンクに客席がくすっと湧く。
(※この瞬間、SNSのトレンドに「#優子の雪ウィンク」が入るのはのちほど知る。)
本番までの助走
出番までの間、彼女たちは“働く出演者”。
・昭和ポップスの大合唱では、光子と奏太が後列でコーラスに参加。
・ダンサブルな最新曲では、優子と小春がサイドステップで手拍子リード。
・ゴスペル・ブロックでは、美香がピアノの横でハーモニーを支え、グッと会場の温度を上げる。
「裏方もステージ。全部本番。」――それが5人の合言葉だ。
後半トップバッター:ファイブピーチ★
21:00、後半の幕が上がる。トップは彼女たち。
MC「今年の“笑いと音楽の二刀流”――ファイブピーチ★!」
暗転。心拍みたいなベースが柔らかく鳴り、ピアノが雪の粒を置く。
1曲目は『雪の約束 -KOUHAKU ver.-』。
静かなAメロ、ハモりが重なるたびに、客席の呼吸がそろっていく。サビの“手を離さない”でスノーが薄く降る。
間髪入れず、2曲目は『TOKYO』ショート。ダイナミックなシティの疾走を、ギターのフレーズとツインボーカルの掛け合いで描き切る。
ラストは“希望”のフレーズだけを切り出した『サンライズ小章 – choir tag –』。
総立ちの客席に、年越し前の静かな熱が宿った。
即興ミニコント(ステージ上)
曲間のMCで、司会者がニヤリ。「リハでスモークに迷子になったって?」
優子が一歩前へ。「はい、さっきまで“冬の妖精”でした」
光子が肩をすくめて続ける。「妖精は迷子になる前に、位置マークに帰ります」
(袖のADが床の赤丸を指さして親指を立てる。客席、ふふっと弾ける。)
短く、清潔に、決めて歌に戻る――“紅白の間合い”を掴んだ双子の仕事。
ほかアーティストのサポート
出番を終えても、5人の夜は続く。
・レジェンド歌手の大合唱で、光子と美香が厚めのハモりを追加。
・ダンスボーカルのステージでは、優子と小春が後列でシンプルなステップを揃え、笑顔で手拍子を導く。
・アンカー前のサプライズ合奏では、奏太のギターと美香のピアノに合わせ、双子が短いコーラス・リフを重ねて会場を温め直し。
サプライズVTR
終盤、客席スクリーンにVTRが映る。
春介&春海からの30秒メッセージ。「お姉ちゃんたち、がんばって!新年もいっぱい笑わせてね!」
最後におなじみのハイパー誘惑ウィンク+投げキッス(今日は控えめバージョン)。
会場が一段柔らかく笑い、双子が遠い客席へ小さく手を振る。
フィナーレ直前
総出演で手をつなぐ並び。
光子が小さく囁く。「ここまで来たね」
優子が頷く。「まだ行けるね」
二人の指先は、客席の見えない誰か――テレビの向こうの誰か――に向けて、そっと力を込めた。
エンディング
エンディングの大合唱。
光子の低いハモりが土台を作り、優子の澄んだ上ハモが灯りをともす。
客席に手を振って下手へ。袖に消える最後の瞬間、双子は同時にカメラへ小さくウィンク。
――一年の歌い納め完了。
楽屋に戻ると、差し入れの温かいお茶と、家族からのメッセージの雨。
「お疲れさま!」「最高だった!」
スマホの画面には、春介・春海の連続ハートスタンプ。
光子と優子は、顔を見合わせて笑う。
「よし、来年も“笑って、歌って、ちゃんと届ける”」
外は冬の空気。
年の境目が近づいているのに、胸の温度は上がる一方だった。
元日スペシャル:帰省→即コント、年明けフルスロットル
紅白、カウントダウンの瞬間
本放送が終わると、舞台袖は「お疲れさま!」の嵐。
ファイブピーチ★の5人は同業の先輩後輩に深く礼をして、マイクを外しながら握手のラリー。
スタッフの拍手に包まれたまま、場内カウントダウン――
「3、2、1……あけましておめでとうございます!」
抱き合う人、泣く人、笑う人。双子は目を合わせて小さくウィンク。
(この瞬間の写真、のちほど公式に上がって“年明けの合図”としてバズる。)
元日昼—東京→福岡
仮眠を挟んで羽田へ。
保安検査で、優子のスティックケースがピンポーン。
係員「中、スティックですか?」
優子「はい、叩かないと落ち着かない性分で」
光子「心拍数のメトロノームです」
係員さんが吹き出しそうになりながらも、にっこり通過。
機内。CAさんが小声で「紅白、拝見しました。感動しました」。
離陸、雲海、初日の光。窓に指で“202X→202X+1”と書くと、となりの席の美香が親指を立てた。
福岡到着—玄関フルコース
到着ロビーで、家族の横断幕(手書き)。
「おかえりファイブピーチ★」「今年も笑わせて(ください)」
優馬「お疲れ!今年も“さみちいでちゅ”で泣かすぞ」
双子「やめて、それは年越したから封印して!」
春介と春海が一直線に突撃。
春介「おかえり!」
春海「お年玉は?」
優子「直球!!」
光子「交渉の余地をくれ!」
自宅—こたつがステージになる
こたつ、みかん、鏡餅。テレビは“初売り”のテロップ。
「じゃ、年明け一本目――**『お正月コント三本立て』**行きます!」
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コント①「お年玉・監査室」
春介=監査官、春海=会計担当。
光子と優子は“お年玉希望者”として入室。
春介「では申請理由をどうぞ」
優子「紅白で頑張ったので」
春海「昨年も同じ理由でしたね。継続性は評価します」
光子「使い道は“笑いの糧”です」
春介「最高です、満額判定!」
優子「監査ゆるっ!」
春海「ただし領収書は“腹筋の筋肉痛”でお願いします」
美鈴「はい、明日の整骨院予約入れます」
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コント②「おせち内閣、入閣争い」
お重の前で配役。
光子=数の子、優子=黒豆、美香=伊達巻、アキラ=栗きんとん、優馬=雑煮担当官。
数の子(光子)「コリコリ担当の私が主食寄りです」
黒豆(優子)「いや、健康と美を司る私が正義」
伊達巻(美香)「甘さは世界を救う」
栗きんとん(アキラ)「黄金色は景気回復!」
雑煮官(優馬)「最後は私が全部まとめて飲み込みます」
全員「権力の味がする!!」
春介・春海「雑煮、最高!」
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コント③「初詣—お願い事が渋滞」
玄関に簡易鳥居(段ボール)。賽銭箱はティッシュ箱。
優子「今年は健康第一と――」
光子「作曲の神様、良曲100曲ください」
美香「保育現場が平和でありますように」
アキラ「楽器のリード代が下がりますように」
優馬「“さみちいでちゅ”に代わる新ネタが降りてきますように」
全員「最後の願いが一番リアル!」
春介「ぼくは……みんなが笑ってる一年」
春海「私も。あと、チョコ多め」
双子(即答)「叶える」
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そして、必殺の年明けご挨拶
春介がくるっと振り返り、ハイパー誘惑ウィンク+極上投げキッスを一発。
春海が続けざまに精密ツッコミ。「年明け一発目から全開は反則!」
居間がどっと崩れ、こたつが揺れる。テレビのリモコンが飛び、優馬がナイスキャッチ。
美鈴「今年も無事故でお願いします」
光子はこたつに頬を乗せて、ゆっくり言う。
「よし――“笑って、歌って、ちゃんと届ける”。新年、スタート」
外はぴんと冷たい空気。家の中は、笑いでほんの少しだけ早い春だった。
2040→2041 元日アップデート版
ステージの背面モニターにでかでかと「2040 → 2041」。
カウントダウンがゼロになった瞬間、家族全員で両手を突き上げる。
光子「二〇四一年、開幕ー!」
優子「ドタバタ、よーい、スタート!」
美香「まずは深呼吸!」
アキラ「まずは乾杯!」
春介「まずはウィンク!」(ハイパー誘惑ウィンク→極上投げキッス)
春海「まずはツッコミ!」(即座にペチンと空振りツッコミ)
こたつの上には、手書きの新年目標ボード(2041)。
•光子「ドームツアー完走。ネタ帳を+3冊」
•優子「本を書き上げる。スティック回し誤落下0回」
•美香「園児と家族の笑顔毎日更新」
•アキラ「楽器のリード代前年比−20%」
•春介「おねえちゃん笑わせる回数2,041回」
•春海「ツッコミ命中率204.1%(当社比)」
優馬が神妙に頷いてから、急に真顔でひとこと。
優馬「“さみちいでちゅ”の封印は2041年末まで延長で」
全員「まだ引っ張ると!?」
初詣ごっこ(段ボール鳥居ver.)では、賽銭が2041円ぴったりで入って歓声。
光子「今年も“笑って・歌って・届ける”」
優子「二〇四一年、全力でいくけん」
春介&春海「いってらっしゃーい&ただいまを、いっぱい言う年に!」
玄関の外はひんやり。家の中は笑いでぽかぽか。
二〇四一年、開幕。
ドームツアー開幕:PayPayドーム、笑いと音のフルスイング
開演三時間前。
グラウンドに降りると、人工芝の匂いと、わずかな潮の気配。ステージは外野までせり出した巨大十字型。センターステージの床に貼られた白いガムテープには、黒マジックででっかく「初日。カマス。」とある。
「“かます”は動詞。やるぞ、の意」優子がスティック回してドヤ顔。
光子はベースのケーブルを踏みそうになって自分に小声でツッコミ。「初日から転けるのはアンコールまで取っとけ」
サウンドチェック=前哨戦
「ベース、A弦から」「ドラム、タム回しちょうだい」
PA卓の赤や緑のランプが踊る。美香がピアノで“さみちいでちゅラプソディ”のイントロを軽く鳴らすと、スタッフの笑いが客席に跳ね返るように広がった。
「まだ昼なのに笑わせない!」小春が親指を立てる。奏太はギターのピックを咥えたまま、「よし、今日の目的は“ベースでホームラン、ドラムで盗塁”」と言って自分で意味が分からず首をかしげる。
開場—入ってくる“うちの人たち”
LEDリストバンドが配られ、客席が入るごとに色が増える。
外野席の通路では、うちわに「投げキッス求む」の行列。売店横のモニターには“公式応援隊長 ファイブピーチ★”のテロップ。ベンチ裏ではホークスの柳町コーチが差し入れの“勝つサンド”を持ってきてくれて、「今日は君たちが試合の主役ね」とウィンク。光子、優子、同時に“ありがとうございます(とりあえず二個ずつ)”。
開演五分前—家族は最前列(の気持ち)
最前列のブロックには、優馬&美鈴、アキラ&美香、そして今日も画面越しに春介・春海(幼児語がすっかり抜けてきた二人)がスタンバイ。
「お姉ちゃん、初球から全力!」
「了解、球種は“笑い”と“低音”の二刀流で」
OVERTURE—2041カウントイン
暗転。ドーム天井に巨大な数字が浮かび、心臓みたいにドクドク脈打つ。
10…9…1!
爆光。ドラムの16分タムが落ち、ベースが地鳴りを起こす。
——一曲目「TOKYO」
スクリーンには東京と福岡、センダイ、キーウの街の息遣いが交互に映る。間奏で光子のスラップ→優子のツーバス→美香の連打→小春のシンセ上昇→奏太のチョーキング。初手から“全振り”。
MC①「初日あいさつ(にしては騒がしい)」
優子「PayPayドーム〜!」
客「イェーー!」
光子「初日、笑って泣いて、声、置いてけ!」
優子「置き忘れ注意!」
美香「拾得物はピアノの上へ」
小春「鍵盤の隙間に入れると鳴ります」
奏太「現象名:音の貯金」
セット前半
2.「はじまりの合図(新曲・ロックチューン)」
3.「星屑の街へ(合唱アレンジ×ゴスペル隊)」
4.「ドーム・ドーム・ドーン(客席ウェーブ付コメディ曲)」
曲終わりで、スクリーンに**“投げキッス注意報”**が点滅。
リモートで繋いだ春介&春海がビジョンにドーン。
春介「PayPayドームの皆さん、受け取って〜!」
——ハイパー誘惑ウィンク+極上投げキッス(200%)
客席、数千のリストバンドが一斉に赤点滅。「きゃーー!」
春海「はい、落ち着いて!深呼吸して!推しは逃げない!」
優子「名司会!」
光子「キッズ司会、採用」
コント・インタルード「球場あるある」
バンドがBGMをループ。
光子「売り子さんが近づいた時だけ手を振る人〜!」
客、手を上げる。
優子「ビール買った直後に隣の人が“同じの余りそうだからあげる”って言いがち〜!」
客、うなずき笑い。
美香「トイレ行ったタイミングでホームランが出る選手〜!」
優馬、そっと挙手。
美鈴「うちの旦那です」
中盤ブロック—“伝える”時間
5.「祈りのうた(アカペラ)」
6.「サンライズ小章(合奏版・夜明け演出)」
スクリーンに夜の瀬戸内、橋、列車の窓。フィールドの照明がゆっくり“夜明け色”に上がる。
終奏、客席から自然に湧く長い拍手。優子が胸に手を当てて一礼。
光子「あなたの“朝”が、きっとまた来るように」
MC②「QRでできること」
美香「今日は会場限定で、地雷除去・復興支援の寄付窓口をQRで用意しました」
小春「休憩中や帰り道、無理ない範囲で、ね」
奏太「俺たちは音と笑い担当。あなたの“一歩”が、現地の一歩に変わります」
客席のLEDが柔らかい白に変わる。ざわ…と優しい空気。
後半、畳みかける
7.「さみちいでちゅラプソディ(2021→2041 Ver.)」
—途中で優馬の**“さみちいでちゅ”**サンプルが飛び、ドームが爆笑で揺れる。
8.「ドラム・ベース殺陣セッション」
—優子が回すスティックを光子がスラップで打ち返す“寸劇”。
9.「FUKUOKAアンセム(ホークス応援スペシャル)」
—柳町コーチ、マスコット登場。外野席がタオル旋回。
アンコール—笑いのラストスパート
EC1. 「恋はアンダースロー(客席コール&レス)」
EC2. 「雪の約束(冬の定番、満天の紙吹雪)」
EC3. 「TOKYO(Reprise)〜PayPayドームだけの“HAKATA Mix”」
最後の最後、優子がマイクを握る。
「初日から飛ばしすぎた自覚はあります。が、後悔はありません!」
光子「だって、ここがうちらのホームのひとつだから」
美香「笑い皺は勲章」
小春「筋肉痛はご褒美」
奏太「声枯れは、帰りに温かい飲み物で回復」
客席のリストバンドが金色に染まり、上空に“THANK YOU HAKATA”のドローン文字。
ステージ上、全員で深く礼。
グラウンドから去る直前、スクリーンに次会場の文字が走る。
NEXT:京セラドーム → バンテリンドーム → 東京ドーム → FCOMフィールド
“ふつうの毎日を、もっと良い毎日に。音と笑いで。”
バックステージに入った瞬間、春介と春海から家族グループにメッセージ。
「初日、点差“笑い+音=100対0”で完勝」
光子「スコア、盛りがち!」
優子「でも、勝った!」
PayPayドーム初日。
音は轟き、笑いは跳ね、約束は始まったばかり。
ドームツアー編② ― 金曜終礼ベル→新大阪行きのぞみ
講義終了のチャイムが鳴った瞬間、二人は同時に立ち上がった。
「出席カード!」「忘れてない!」
判子をもらって、廊下ダッシュ。寮でドラムスティックとベースを背負い、キャリーをごろごろ。エレベーター待ちの間に、MC案を小声でリハる。
優子「大阪のみなさん、粉ものは飲み物です!」
光子「言い切った!」
東京駅19:40
小春と奏太も合流。改札の向こうで美香が親指を立てる。
「機材は今日の午前便で京セラ搬入済み。人間だけ乗車、笑いは手荷物扱いで」
「手荷物にしてはサイズ超過」と光子が自分の口を指差す。
のぞみ号のデッキに入ると、ぷーんと551の香り。
「買ったな?」
「買った。罪深い匂い」
車内:21号車 静かに賑やか
席に落ち着くなり、優子は譜面台がわりにトレイテーブルを出し、スティックで空ドラム。
光子はスマホでセトリ最終チェック。「大阪は“FUNK寄せ”3曲目に差し替え。あと“さみちいでちゅ”は関西弁サンプルを新録したい」
「お父さんに『さみちいでおま』って言わせるのは酷やろ」
「じゃあ“さみちいでちゅ 〜関西出張版〜”でいく」
通路側のサラリーマンがクスッと笑い、そこから一両分くらい笑いが伝染。光子がそっと会釈。
「(小声)すみません。音量じゃなくて言動がうるさい系です」
新幹線、夜景MCミニ会議
美香「京セラは天井高いから、合唱ブロックを天頂リバーブ活かす配置に変える」
小春「コーラス隊の立ち位置、外野方向に扇型」
奏太「ギターはワウ多め。大阪っぽくね」
優子「大阪っぽさ=ワウ理論、雑だけど好き」
車窓に名古屋の街。遠くでスタジアムらしき光の輪。「次はここでもやりたいね」
「やる。全部やる。笑いもやる」
“のぞみ車内限定”ショートコント
トイレ帰りにすれ違った車掌さんのアナウンスを勝手に演出し直す二人。
光子(車掌声)「次は—新大阪〜新大阪〜、本日も“笑いの乗車券”は改札で回収しておりません。お持ち帰りください」
優子(添乗員声)「ただし翌朝の筋肉痛は当社の保証対象外です」
近くの親子が肩を震わせ、母が「しっ」と制すけど自分も笑ってる。
「車内芸、つい…」
新大阪 到着 22:30
ホームに降りた瞬間、湿った夜風にソースの幻影。
「粉、焼きたい」「胃が拍手してる」
でもまずは地下鉄でドーム前千代崎へ。ホテルにチェックイン、ロビーで合流ミーティング。
柳町コーチからメッセージが届く。
『明日、京セラに顔出すかも。初日、かましたれ』
「背中押し、強っ」
客室:深夜セッション(音出さない縛り)
ベッドの上でタオルをスネア代わりにする優子。
「タム回しはドームより短め。反響違う」
光子はベースの運指だけ動かす。「FUNK寄せのブリッジ、拍の後ろに乗せるの、忘れんように」
美香がノートPCでクリック作成。「BPM128、4曲繋ぎのメドレー版。MC入りの隙間12秒」
「12秒で笑い一口、入れます」
翌朝:大阪食からの会場入り
朝。御堂筋線の車内、スティックが覗く女子大生二名。向かいの席の子どもが小声で言う。「ドラマーとベーサー?」
優子「正解」
光子「言い方かわいい」
会場に入ると、昨日送った機材がステージにずらり。PA卓のエンジニアが手を振る。
「大阪は低音、気持ち多めに出すね」「出してください。遠慮は福岡に置いてきました」
リハ:京セラ版“ドーン”
「ラインチェック—ベースOK、ドラムOK、ピアノOK、ギターOK、コーラス確認」
センタースクリーンのテスト投影に“粉もの食べ過ぎ注意”。
優子「注意するのはあなたです」
光子「終演後にね(すでに食べる気)」
本番前、最終MC稽古(30秒)
優子「大阪〜!笑ってるかー!」
客(予想)『わー!』
光子「今日は“さみちいでちゅ 関西出張版”を—」
二人「—持ってきました!」
美香「お父さ…じゃなくてサンプルの人格守って」
スタッフ全員の拳が真ん中に集まる。
「一本!」「かます!」
⸻
ツアー進行メモ
•福岡・PayPayドーム:3Days(完了)
•大阪・京セラドーム:土日+成人の日の3Days
•金曜夜:講義→のぞみ→新大阪→前日入り(いまココ)
•土:初日FUNK寄せ/日:合唱リバーブ強化/祝:スペシャルメドレー
•以降は毎週末ベースで移動(名古屋→東京→千葉)、合間は大学&バイト&制作。
電源を落とし、舞台袖の暗がりへ。
福岡で始まった“音と笑いの遠征”は、いま大阪の空気を吸い込んで、次の一拍を待っている。
カウントは、いつだって—
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
京セラドーム・笑撃レポ — 博多×大阪、腹筋非常事態
ライトが落ち、スクリーンにでっかく「笑って鳴らせ。」の文字。どーんと地鳴りみたいな歓声。
ステージ中央に光子がベースを掲げてひと言——
光子「まいど〜!博多から愛と低音とツッコミ要員を満載して来ましたー!」
優子「ツッコミは大阪さんの専売特許やろが!」
客席(即座に)「なんでやねん!」(ドッ)
イントロ一発、FUNKで客席がうねる。曲終わり、MCへ。
優子「京セラのみなさん、よう来てくれました!」
光子「今日は“音楽8:笑い2”の…つもりで来たっちゃけど、大阪は笑いの追い炊きが激しいけん、最終的に“音楽6:笑い4”くらいになります!」
客席「追い炊き頼むでー!」(ワー)
⸻
ショートコント①「粉もん vs 明太子」
(BGMにシャッフル。美香がピアノでB級感のあるブギを鳴らす)
光子(明太子担当)「ほな、白ごはん持ってこい」
優子(粉もん担当)「ソース湖に沈めたる」
小春「両者、炭水化物を盾に一歩も引かず!」
奏太(ギター効果音)「ジャーン!」
客席「腹へるやろそれ!」(笑)
——ここで最初のチン(珍)現象。前列の女子高生グループ、笑い過ぎで膝から崩れ落ち、友だちが肩を支える。モニターに「※腹筋は各自管理でお願いします」のテロップ(会場さらに爆笑)。
⸻
曲ブロック
「TOKYO(OSAKA MIX)」→「スタート」→「サンライズ小章」
合間に優子のドラムソロ。リムショットに合わせて客席が「なんでやねん!」コール。
光子のベースがうねった瞬間、三塁側スタンドから謎の合いの手職人登場。
客席おじさん「ええ音やでぇぇ!」
光子「おじさんの合いの手、もはや打楽器!」
優子「スネアに組み込みたいレベル!」
⸻
MC:さみちいでちゅ(関西出張版)
光子「うちのお父さんがね、娘が東京行ってから言うたんよ。“さみちいでちゅ”って」
優子「今日は関西出張版、いきます」
(小春がゴスペル風コーラスをかぶせる)
二人「さみちいで——ちゅ!」
客席(練習なし合唱)「さみちいで——ちゅ!!」(ドームが震える)
モニター:「腹筋注意報」発令。
通路係がそっと湿布を差し出す演出に、二層目まで笑い波状攻撃。
※ここでチン現象(珍現象)その2:中段ブロックで“笑いすぎで立てない”人が続出、周囲がうちわで扇いであげる優しさまで含めて大爆笑。
⸻
ショートコント②「新幹線アナウンス・大阪仕様」
(美香のピアノで“発車ベル”風ジングル)
光子(車掌)「次は〜しんおおさか〜、お笑いの終点ではございません。降りても続きます」
優子(添乗員)「なお、車内での“なんでやねん”は自由席です」
客席「自由席ーー!」(笑)
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柳町コーチからの差し入れMC
スクリーンにメッセージが映る。「かましたれ」。
優子「背中の押し方、豪速球」
光子「じゃ、豪速球でアンセムいくばい!」(※勢いで博多弁ぶっ放し)
⸻
終盤ブロック
「さみちいでちゅ・リプライズ(関西合唱付き)」→「雪の約束(冬先取りVer.)」
客席のコール&レスポンスが止まらない。笑い→曲→笑いの波でチン現象(珍)カウンターが天井。
⸻
アンコール
光子「大阪——!」
優子「笑い過ぎて明日腹筋筋肉痛でも、心は軽いはずや!」
二人「おおきに、そして——ありがとー!!」
最後は全員で手を繋いで一礼。スクリーンに**「#腹筋は資産」のハッシュタグ。
SNSは瞬時に「チン現象(珍現象)連鎖」「京セラ腹筋喪失」**で埋まる。
音楽を浴びに来たのに、笑いで汗びっしょり。
——それが、博多×大阪の正しい化学反応だった。
照明がスッと落ちて、ステージだけが白く浮かぶ。
優子がスティックを頭上でクロスして合図、光子が客席にマイクを向ける。
光子「ラスト、いくよ——せーの!」
全員「うにゃ〜!」
客席「うにゃ〜!」
優子「もういっちょ!」
全員「あじゃぱー!」
客席「あじゃぱー!」
美香「畳みかけるよ!」
全員「うにゃだらぱ〜!」
客席「うにゃだらぱ〜!」
小春「フィニッシュ!」
全員「あじゃたらぱ〜!」
客席「あじゃたらぱ〜!」
一拍の静寂。
ドームいっぱいの拍手と歓声、紙吹雪が夜空みたいに舞う。
光子「京セラ、最高!」
優子「また会おうね——ありがとう!」
最後の一礼、暗転。
音も笑いも満タンのまま、コンサートは幸福な余韻だけを残して幕を下ろした。
ドーム外、夜風。紙吹雪がまだ靴にくっついてる。
観客たち、腹おさえながらゾロゾロ。
観客A「…あかん、腹筋が独立国家になった」
観客B「わたし、明日ぜったい整骨院直行や」
観客C「さっき予約アプリ見たら“京セラ帰り枠”って特設タブ出とったで」
観客D「公式、湿布まで物販に置いとったの伏線やったんやな…」
タクシー運転手「どちらまで?」
観客B「いちばん近い整骨院まで…」
運転手「本日それ三台目っす」
売り子さん(最後まで働いてる)「本日の人気ランキングでーす!1位:Tシャツ、2位:タオル、3位:湿布!」
客「ライブで湿布が3位て何事や!」
中学生カップル
彼「“さみちいでちゅ”の合唱、ヤバかったな」
彼女「言うな、また笑う…っ、イテテテ!」
遠征組の友だちLINE
『京セラ民、明日みんなで整体ハシゴね』
『タグは #腹筋は資産 で』
『起きれんかったら #起き上がれない民 で』
会場アナウンス(撤収BGMに混じって)
「本日の落とし物:笑い過ぎて置き忘れられた腹筋と声帯—お心当たりの方は…」
観客(地べたで前屈)「取りに行ける状態ちゃうねん…!」
最後尾で、親子。
子ども「うにゃ…(小声)」
父「やめろ、パパの腹筋が再発…ああぁ!」(崩れ落ちる)
——音は鳴り止み、笑いは続く。
明日の整骨院は満員確定。
それでもみんなニヤニヤ顔で言うのだ。
「最高やった。」
ドームの照明が落ちて、客電がついた瞬間、わたしは腹を押さえた。
——あかん、笑いすぎて腹筋ひきつってる。
通路に出ると、みんな同じ姿勢で前かがみ。エスカレーターは“腰さすり渋滞”。
耳の奥にはまだ「うにゃ〜」「あじゃぱー」のコールがこだまして、思い出し笑いが波みたいに押し寄せてくる。
外に出たら夜風。紙吹雪がスニーカーにくっついたまま。
屋台の前で友だちが言う。「湿布、物販で買っときゃよかったな…」
わたし「タオルより必需品やったかもな」
すぐ横のサラリーマン二人組は、看板見上げて合掌してた。「明日、整骨院…頼むで…」
タクシー乗り場のアナウンスが聞こえる。
「本日、『腹筋つった』のお客さまが多数のため、順番にご案内します」
そんなジャンルあるんかい、と心の中でツッコんだら、また笑ってしまって脇腹がつる。
スマホが震える。SNSのトレンドに
「#腹筋は資産」「#京セラ帰り湿布品薄」が並んでる。
グループチャットは「明日11:00に整骨院集合」「昼はうどん(噛まずにいける)」で満場一致。
帰りの電車、吊り革につかまりながら息を整える。
閉じた瞼の裏で、ドラムのキメと、あの即興コントが再生される。
笑いが込み上げてきて、わたしはこっそり深呼吸。
——あの子ら、ほんま“音楽”と“笑い”で体温上げる天才やわ。
最寄り駅。改札を出ると、コンビニのガラスに映った自分の顔がまだにやけてる。
氷枕と湿布を買いながら、レジのお兄さんに言った。
「明日、起き上がれんかったら救助お願いします」
お兄さん、笑って会釈。「同罪っす。僕も行きます、整骨院。」
家の玄関。紙吹雪を一枚、財布にそっと挟む。
痛いのに、心は軽い。
ベッドに倒れ込みながら、明日の予定を一行だけ書く。
「AM:整骨院 PM:余韻」
そして小声でつぶやいた。
「最高やった。また行こ。」




