紅白オファーと爆笑対談の夜
10月、紅白オファーと爆笑対談の夜
10月最初の月曜、昼下がり。
ミライマートの休憩室で、光子と優子のスマホが同時に震えた。
——差出人:「NHK 音楽番組担当」
「……え、マジ?」
「大晦日、紅白歌合戦 出演の打診やって!」
秒でファミリー&メンバーのグルチャが鳴り始める。
美香〈了解、年末のオケ版アレンジは私が主導でいく〉
奏太〈ギターは“東京”ロック版でいこう〉
小春〈キーボードはシンセとピアノの二刀流対応する〉
寮のみんな〈年末空ける!衣装係手伝う!〉
スケジュール表の大晦日に、でっかく「紅白」の赤色丸。
“冬のドームツアー”のゲネは前倒し、年明けに追加ゲネ。
「行ける。全部、噛み合う」
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その日の夜。配信スタジオ。
千鳥・ノブがMCの特番に、光子&優子、さらに春介&春海がゲスト出演。
途中からサンドウィッチマンも乱入して、空気がいきなりバラエティの戦場へ。
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ノブ「はい来ました!ファイブピーチ★の核、双子の光子さん優子さん!言うてる間に紅白!もうクセがすごい!」
光子「クセはおたがいやけどな!」
優子「まずMCのテンポが早い!」
ノブ「ええねん、年末は巻きやから!」
(袖からサンドの二人がぬるっと登場)
富澤「ちょっと何言ってるか分からない」
伊達「分かれや!巻き進行だ!」
ノブ「サンドさん!今日は“恋バナ解禁”って台本に……」
富澤「台本は読んだ。が、ちょっと何言ってるか分からない」
伊達「それ言っとけばええ番組ちゃうのよ!」
優子「恋バナなら、私の彼は拓実。スポーツ馬鹿で優しい」
伊達「最高やないの」
光子「私は翼。ラリー中に『結婚しよ』ってアウトボール飛ばしてくる」
ノブ「もう試合止まるやん!」
(スタジオ笑)
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ノブ「音楽の話も。紅白は何を?」
光子「“東京(大晦日アレンジ)”と“サンライズ小章(合唱付き)”。笑顔で締めるがテーマ」
富澤「笑いも入れる?」
優子「短いショートコントだけ」
ノブ「来た!それや!事前練習しよ!」
即興ショートコント①「年越しカウントダウン」
伊達「10、9、8……」
富澤「ちょっと何数えてるか分からない」
ノブ「分かるやろ!」
光子「5!4!」
優子「3!2!」
全員「……録画予約!」
(客席:ドッ)
ノブ「そこは“1・おめでとう”やろ!」
富澤「ちょっと何言ってるか分からない」
伊達「クセつよ!」
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そこへ、ビデオ通話の“ピコン”。
画面いっぱいに春介と春海。
春介「こんばんはー!今日は**100%**で行きます!」
春海「兄の安全装置は私が持ってます!」
ノブ「安全装置?」
春海「兄が**200%**になったら“ストップ”って額に貼る札です」
(春介の額に“STOP”の付箋をペタ)
春介「ピタッ……(急に大人しい)」
伊達「効き目すご!」
富澤「薬事法」
ノブ「紅白でもそれ使って!」
優子「最前列に貼る係、春海」
即興ショートコント②「恋バナと安全装置」
ノブ「ほな恋バナ。春海ちゃんは?」
春海「将来の話は非公開です(付箋“秘”を自分の口にペタ)」
富澤「自主規制!」
伊達「偉い!」
春介「じゃあ僕はハイパー……」
(春海、素早く“STOP”をペタ)
春介「……普通のウィンクで」
(客席:拍手と笑)
ノブ「出力調整できる小学生おる?」
優子「訓練されてるので」
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ノブ「最後、紅白への意気込みを5秒で!」
光子「音で体温、笑いで心拍、日本丸ごと温めます」
優子「“幸せの隣に座る音楽”を、全力で」
春介「202X→202X+1、おめでとうの助走つけます!」
春海「見てるみんな、今年もおつかれさま!」
富澤「……ちょっと感動してる」
伊達「年末にちょうどいいのよ」
ノブ「よっしゃ!紅白、クセがすごい年越しにしよ!」
(スタジオ、拍手と笑いの渦)
——配信のチャット欄は「#紅白ファイブピーチ応援」で埋まり、
大晦日のカウントダウンは、音と笑いの二刀流で確定演出になった。
即興バトル「スタジオにあるモノだけでコント作れ!」
(照明がキュッと落ち、中央に“お題ボックス”がドン)
光子「ルールは簡単。スタジオの“そこら辺”から3つ選んで1分で台本。出演はノブさん&サンドさん!」
優子「じゃ、お題ひくよ——譜面台/モップ/扇風機!」
ノブ「クセがすごいラインナップ!」
伊達「掃除と風と音楽でどう笑わせるのよ!」
富澤「ちょっと何言ってるか分からない(とりあえず言う)」
(タイマー「60」→スタート。三人、譜面台を囲んでゴニョゴニョ作戦会議。
光子は口ベース「ドゥン…ドゥン…」、優子は口ドラム「ツクタカツクタカ」でBGM)
———ピピピッ(1分経過)
光子「本番いきまーす!タイトル『空港・寿司屋・推し風の3本立て』!」
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①「譜面台、保安検査を通る」
ノブ(保安検査官)「次の方、金属類お出しくださーい」
伊達(大物ミュージシャン)「譜面とハートだけです」
富澤(同行マネ)「譜面台ごと持ってきました」
(ピーーー!)
ノブ「クセがすごい金属音!」
富澤「ちょっと何が反応してるか分からない」
伊達「音楽の情熱が金属探知機を震わせてるんです」
ノブ「ポエムで通れるか!」
(光子:ベース口で「ブン…ブン…」→譜面台が自立)
優子(ツッコミ係)「歩くな譜面台!」
ノブ「やむなし——“臨時パスポート:譜面台”発給します」
富澤「そんな制度あるの?」
(客席:ドッ)
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②「寿司屋のモップ」
伊達(寿司大将)「へいお待ち!本日おすすめ、大トロ……」
(ドン!“モップ”がカウンターに横たわる)
光子(客)「繊維のサシが見事!」
優子(保健所)「ダメです!」
ノブ(ナレーション)「江戸前、床前、心は前」
富澤「ちょっと何言ってるか分からない」
伊達「床ピカピカ、腹ペコペコ!」
優子「寿司握れ!」
(モップでシャリ成形→妙にうまい音。客席:拍手と笑)
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③「扇風機、推し活の風」
ノブ(舞台演出)「それでは“推し風”いきます!スイッチオン!」
(優子:ドラム口で「ブオオオ」/光子:ベース口で「ドゥワァ」)
富澤(アイドル役)「風つよっ!まぶたが乾く!」
伊達(扇風機の声)「弱・中・強・紅白」
ノブ「そんなモードあるか!」
(“紅白”に入れると逆回転、前髪が9:1に)
富澤「ちょっと前髪だけ昭和」
優子「令和に戻れ!」
(光子が譜面台で風よけ→“防風壁”完成)
ノブ「譜面台ディフェンス、クセがすごい!」
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(エンディング)
光子「最後に“安全装置”!」
(優子がノブの額に「STOP」付箋をペタ)
ノブ「ピタッ……はい、巻き進行終わり」
富澤「効くんだそれ」
伊達「年末もそれ貼っとこ」
優子「紅白も、音と笑いで追い風つくります!」
光子「譜面台パスポートで、全国に届け!」
(客席:大拍手。タイムアップの鐘「カンッ」)
即興コント「譜面台・モップ・扇風機」
(スタジオ。小道具ワゴンの前に光子と優子。手には——譜面台/モップ/扇風機)
優子「条件は“スタジオにある物だけ”。じゃ、1分で台本作ったていで行くよ!」
光子「口ドラムは任せて。ツクタカツクタカ——はい、開演!」
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①「譜面台パスポート」
(検査場のテーブル=譜面台を立てる)
優子(保安検査官)「金属類は外してくださーい」
光子(売れかけミュージシャン)「外せるのは虚勢だけです」
(ピーッ!)
優子「反応してるの“虚勢”じゃない。譜面台よ!」
光子「コレがないと俺、立てないの!」
優子「あなたが立つのは自信。譜面台は譜が立つの」
(客席クスッ)
光子「じゃ、譜面台にもパスポートを——」
優子(判子ドン)「はい、“譜旅券”発給」
光子「音符の国籍、五線譜」
(譜面台がコト…とお辞儀した風に見せて退場)
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②「寿司屋のモップ」
(モップがカウンターに横たわる)
光子(寿司大将)「本日のオススメは——床前寿司」
優子(客)「衛生観念が飛んでる!」
光子「見なさい、この繊維のサシ」
優子「サシの意味よ!」
(光子、モップでシャリをチョイチョイ形成。妙に上手い)
優子「形は完璧なの腹立つ」
光子「“雑巾巻き”いっちょ!」
優子「店、閉めよっか」
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③「扇風機、推し風モード」
(扇風機オン。弱→中→強と風の音を口で)
光子(演出家)「風、弱!——推しの前髪、優勝」
優子(新人アイドル)「さわやか!」
光子「中!」
優子「目が乾く!」
光子「強!!」
優子「ちょ、今だけ昭和の九一分け!」
光子「最後、“紅白”モード」
(逆回転。優子の前髪がゼロ位置に戻る)
優子「年越しで帳尻合わせるな!」
(譜面台で風よけを作り、二人で並んでポーズ)
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④「全部のせフィナーレ」
光子「譜面台=客席、モップ=指揮棒、扇風機=盛り上げ担当」
(モップをタクトに、譜面台に向き直る)
優子(MC)「今年もありがとうございました!最後は風に乗って届けます!」
(扇風機オン→風に乗って客席に手を振るふり)
光子「笑う準備できた?」
優子「じゃ、せーの——」
二人「よいお年をーー!!」(深礼)
(扇風機が勝手に“強”に上がり、髪がわちゃわちゃ)
優子「風、暴走!」
光子「安全装置!」(優子の額に“STOP”付箋をペタ)
(風がピタッと止まった“てい”で終了)
——客席、拍手&笑い。即興コント、閉幕。
余韻ドカン!即興の後日談
(暗転→照明。スタジオは拍手の渦)
ノブ「クセがすごいじゃなくて、実力がすごい。」
伊達「完成度、職人。」
富澤「いい意味で、何言ってるか分からない。」
(3人そろって深々一礼)
三人「これからは——師匠と呼ばせてください!!」
光子「や、やめんしゃい(笑)」
優子「弟子取りは面接あるよ?筆記“ダジャレ”と実技“間”ね。」
ノブ「面接のクセがすごい!」
—スタッフ爆笑、作家さんが親指グッ。カンペに「10分押し→なぜか巻いた」と走り書き。
放送直後:SNS、火山噴火
通知「ピコンピコンピコン——」
トレンド欄に**#譜旅券**、#床前寿司、#推し風モードがズラッ。
タイムライン抜粋
•@mogu_mogu「譜面台にパスポートは草。譜旅券の印鑑ほしい」
•@suddenFAN「床前寿司の“繊維のサシ”で腹筋終了」
•@idol_wind「“紅白モード”で前髪ゼロ位置戻るの天才」
•@tv_writer「台本1分て聞いて震えた。間の設計が異常にうまい」
•@grandma_oba「師匠って呼ばれて照れてるの可愛い(尊)」
•@sax_cat「#推し風モード 家の扇風機で再現したら猫だけ盛れた」
再生数:30分で180万回、ハイライト切り抜きが秒で拡散。
公式が特設ページをポン出し→アクセス集中で一瞬落ちる(復旧早)。
楽屋:電話&ビデオ通話ラッシュ
美香「あんたたち、仕事増えるやん(笑)」
春介「師匠〜!ハイパー誘惑ウィンク伝授して〜!」
春海「“紅白モード”ボタンどこ押すと?」
優子「寝る前に押すな!」
光子「おやすみモードにしとき!」
スタッフ会議(廊下で立ちながら)
プロデューサー「年末も**“スタジオのモノだけ即興”コーナーいきましょう」
放送作家「ゲスト巻き込み型で。ノブさん&サンドさん、弟子ロール固定。」
AD「トレンド、さっき世界5位**まで上がりました!」
全員「はっや!」
——そして、夜。
通知はまだ鳴り止まず、タイムラインには譜旅券の手描きコラ、床前寿司の再現動画、扇風機“推し風”検証が溢れかえる。
優子「なぁ、師匠って呼ばれるたびに笑いが1コ生まれる気がする。」
光子「じゃ、年末は“師匠見習い”バッジ配るか。」
(同時にニヤリ)
二人「次も即興で殴り勝つ。」
11月〜12月、走り抜ける準備運動
11月、カレンダーに赤丸が増えた。
「東京⇄博多、音合わせシャトル便出動!」と光子がスーツケースを蹴り出すと、優子がスティックケースを肩にかけて頷く。「体勢OK。あとは心拍数とテンションをそろえるだけ」
博多ラウンド
空港から直でリハスタ。鍵を開ける音がカウントイン。
ベースのケーブルを差し込んだ瞬間、光子の親指が勝手に四分音符を刻み、優子のスネアが**“おかえり”って返事をする。
美香がピアノで和音を敷き、小春がその上に光を散らす。奏太はチューニングしながら「ドーム用の“間”、ここで決めよう」。
三曲通したところで、美香が水を配りながらニヤリ。「MCのネタ、どこで投下する?」
「入りの30秒は真面目**、31秒目から全力バカ」
「はい名案」
夜は屋台で反省会。
「今日の課題は“笑いの踏切で一旦停止”ができないこと」
「分かる。渡り切る前にもう一ネタ差し込みたくなる病」
「譜旅券のハンコ、持ち歩くの禁止ね」
全員、屋台の湯気にうなずいた。
東京ラウンド
翌週は東京チームが学生寮そばのスタジオに集合。
「ただいまー」と入ると、すでに扇風機(推し風モード)がセッティングされていて、優子が苦笑。「これ、髪型おもしろ装置じゃないからね?」
「分かってる、前髪の運命共同体だよ」
通しの後、オンラインで春介・春海に報告。
画面の向こうで二人がハイパー誘惑ウィンク&極上投げキッス200%を乱射。
「やめて本番前に心拍だけ全国ツアーになる」
寮の仲間が背後で崩れ落ちる音まで、Wi-Fiがちゃんと拾った。
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12月、民放歌番組ウィーク
大型音楽番組の当日。
楽屋の前に**「ファイブピーチ★」の名札。ドアを開けると、スタッフさんが笑顔で頭を下げる。「本番前コメント、シリアス→ギャグ→希望の三段構成でお願いします」
「それ、うちの標準装備**です」光子と優子が同時に親指。
再会① YOSHIKIさん
廊下の角を曲がったら、静かな気配と一緒にYOSHIKIさん。
「久しぶり。元気そうだね。」
緊張で背筋が伸びる二人に、穏やかな笑み。「君たちの“届けたい”が音に乗ってる。今日も自分のテンポで行けばいい」
優子がペコリ。「あの、もしよかったら…終演後、さみちいでちゅラプソディのドラム監修を…」
一拍の沈黙——からの、柔らかい頷き。「タイトルが強いね。話そう」
楽屋に戻る途中、全員で小声の歓喜ジャンプ。床がほんの少し共鳴した。
再会② THE ALFEEさん
別楽屋でご挨拶。
高見沢さんのオーラがキラッと差し込み、坂崎さんが優しく場を和ませ、桜井さんの低音が空気を落ち着かせる。
「いつもパワーもらってます」
「いやいや、我々の方が元気もらってるよ」と笑い、
「ドーム、MCの尺は大丈夫かい?」
「はい、笑いの踏切ちゃんと一旦停止します!」
三人同時に吹き出して、「そのフレーズ、いただき」とメモが走る。名人芸の空気に背筋がさらに伸びた。
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本番
1曲目は“TOKYO”。
イントロの一発で客席の呼吸が合う。光子のベースが都心の地脈を伝い、優子のドラムが電車のラッシュを縫っていく。美香が高層の窓に灯りを点け、小春が交差点にネオンを置き、奏太が夜空を切り裂く。
間奏で一瞬だけ、ウクライナで見た空の色がよぎる。言葉にせず、音だけで手紙を送った。
コメントパート。
「遠くの誰かの夜に、今日も笑ってもらえますように。
私たちは、悲しみに座り込む人の隣に座って、一緒に夜明けを待つバンドでいたいです」
一拍、静寂。すぐに優子が続ける。
「で、待ってる間は——笑わせます」
カメラマンが肩で笑って、客席がふっと緩む。予定通り、31秒目に全力バカへ。
二曲目の終わり、客席から“師匠ーー!”のコール。
「だからそれはやめんさい(嬉しい)」と光子。
優子がスティックで軽く敬礼。「弟子志願は筆記“ダジャレ”、実技“間”です」
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打ち上げ=反省会
番組が終わると、通知が川のように流れる。
#笑いの踏切、#譜旅券、#推し風モードが再燃。
プロデューサーからメッセージ。「紅白、即興コーナーやりたい」
作家からも。「ALFEEさんの楽屋、あなた方の“31秒目理論”で盛り上がってました」
YOSHIKIさんからは「ドラム、今度スタジオで」と短いDM。画面を見つめる指先が震え、全員で深呼吸。
帰りのタクシーで、光子が窓の外に息を白く描いた。
「11月、よく走ったね」
「12月は踊りながら走る月」
「そして大晦日は——走りながら笑わせて泣かせる」
「うちらの得意科目、全部盛り」
信号が青になり、車が静かに滑り出した。年越しの鼓動が、もう遠くで鳴っている。




