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三姉妹爆笑交響曲 — 大学生篇から陽翔&結音誕生まで  作者: リンダ


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27/115

ただいまの方向。

講堂がすっと静かになって、スポットが二人を包む。

光子が一歩前に出て、まっすぐ客席を見た。


「うちらはね、悲しみに暮れとる人、苦しみを抱えとる人の隣に、そっと腰かける人間でありたか。無理やり引っ張らんで、一緒に座って、同じ景色を見て、少しだけ明るく照らす太陽でありたかと」


優子が横で頷いて、言葉をつなぐ。

「それが、うちらのポリシーやけん。歌でも、言葉でも、笑いでも、届く方法で届ける。時間は味方やけん、あせらんで、前へ行こ」


前列の生徒がハンカチで目を押さえ、後方の配信ブースで美香が小さく親指を立てる。

アキラがフェーダーを下げる寸前、光子がほほ笑んで手を広げた。


「最後に——眉ピッ → ぎゅー。今日は聴いてくれて、ありがとう」


大きな拍手が講堂を満たす。

スクリーンの配信画面には「#時間は味方」「#おるばい」が流れ続け、緞帳がゆっくり降りた。

報告会は、温かい余韻だけを残して、静かに幕を閉じた。





ただいまナイト:やさしい質問タイム


夜九時。実家の和室に、ふとんがコの字に並んだ。

お風呂あがりの湯気がまだほっぺに残って、麦茶のコップがカランと鳴る。


光子「歯、みがいたー?」

春介・春海「はーい!」

優子「ほんなら質問タイム、開会〜。…してよかと?」

ソフィーア「もちろん。なんでも聞いてね」


春介が上半身だけムクッと起きて、まっすぐソフィーアを見る。

春介「ウクライナって、どんくらい遠いと?」

ソフィーア「飛行機で、空をずーっと飛んで、海を越えて、また飛んで。地球の反対側に近いくらい遠いよ」

春海「そい、寒いと?」

ソフィーア「冬は雪がたくさん降るよ。でも人の心はあったかい」

光子「名言、いただきましたー」


春海が小さな手を握って、少しだけ真顔になる。

春海「なんで、そふぃーあのおじいちゃんとおばあちゃん、けがしたと?」

ソフィーア「うん…道の下にさわったらいけないものが隠れていたの。昔、戦いに使われた危ないものだよ。だれかを傷つけるために置かれたの。おじいちゃんたちは悪くないのに、見えなかったから踏んでしまったの」

春介「公園の砂場に、とげが落ちとったら危ない、みたいな?」

ソフィーア「そう。だから大人たちが“とげ”を全部見つけて片づけるお仕事をしてる。広いから時間がかかるけど、毎日すこしずつ進んでるよ」


優子がそっと毛布を引き上げる。

優子「お医者さんは?」

ソフィーア「すごく頑張ってくれてる。おじいちゃんは手のかわりになる義手、おばあちゃんは足のかわりの義足をつけて、いま歩く練習をしてるの」

春海「がんばれ…って、風を送ったら届く?」

光子「届くよ。ここからでも、きもちの風は飛んでいくけん」


春介が眉をキュッと上げる。

春介「『じかんはみかた』って、ほんと?」

ソフィーア「ほんと。ケガも心も、時間と人のやさしさが、すこしずつ治してくれる。あせらなくて大丈夫」

優子「困ったら、『おるばい』って言う人の横に座る。うちらのルールやね」


空気がやわらいだところで、春海が小声で手を挙げる。

春海「じゃあね、笑ったらもっと元気になる?」

ソフィーア「なる。笑うと、心の中に灯りがともるの」

光子「ほんなら、寝る前の小さめギャグいくよ。タイトル『ふとんの国境』」

優子「ここが春介の領土、ここが春海の領土。国境線はこのタオルやけん——」

春介にやり「—越境ウインク!」

(ウインクだけ。音量ゼロ)

春海、1秒だけ目がハート→自分の額をコツン。

春海「正気スイッチON。家庭内限定!」

一同、くすっと笑って、空気がふわっと軽くなる。


ソフィーアが二人の頭を順番に撫でる。

ソフィーア「今日はたくさん話したね。質問、うれしかった。ありがとう」

春介「そふぃーあ、また歌ってくれる?」

ソフィーア「うん。子守歌を少しだけ」


明かりを落とす。

ソフィーアの静かなハミングに、光子と優子が薄くハモる。

“時間は味方”—そのフレーズが、窓の外の夏の夜風といっしょに、ふとんの海をやわらかく撫でていく。


春介「…ねむくなってきた」

春海「また、あしたも聞くけんね」

光子「よかよ。なんぼでも聞きんしゃい」

優子「最後に、ちいさく——眉ピッ → ぎゅー」


四人の寝息が、順番にリズムを揃えていく。

“おるばい”の合図は、今夜もちゃんと届いている。





博多案内→さくら572→サンライズ:日曜ダイジェスト


朝九時。雲は薄くて、日差しはやさしい。

三人は身軽なデイパックだけで家を出て、まず**櫛田さん(櫛田神社)**へ。


優子「ここが博多の心臓部たい。夏は山笠がドーン」

光子「今日は静かやけん、ゆっくり空気吸っていこ」

ソフィーア「香りが落ち着きますね。木の匂いが好きです」


手水で手を清めて、鈴を鳴らす。

光子がこっそり願掛けする。「安全、笑顔、そして“時間は味方”」

優子「声に出しとるやん」

光子「強めに念押し」


次は川端商店街。

せんぺいのにわか面を顔に当てて、三人でパシャ。

ソフィーア「これ、表情がキュッと可愛い。お土産にします」

優子「博多の変身アイテムやけん」


小腹がすいたので、路地のうどん屋で朝ごはん。

光子がごぼ天、優子が丸天、ソフィーアはわかめ。

ソフィーア「麺がやわらかい…やさしい味」

光子「“やわコシ”が正義」

優子「いま作った言葉やろ」


食後は東長寺の大仏へ。薄暗い堂内で、静かに手を合わせる。

ソフィーア「ここ、好きです。声を落としても、気持ちが届く場所」

光子「うちらのアカペラも、こういう空気が土台やね」

優子「朝から語るやん。…でも、分かる」


お昼は博多駅近くのカフェで軽めに。

午後は実家で荷造り最終チェック、家族とお茶。

春介と春海が駅まで見送りに同行することになった。



送る側、送られる側


夕方、博多駅。コンコースは旅行客でにぎやか。

売店でかしわめし、明太いなり、お茶を調達。


美鈴「無理せんでね。着いたら一報」

優馬「駅弁は寝る前に食べすぎ注意な。サンライズで夢見が明太になるぞ」

優子「どんな夢やねん」


春介が眉をキュッ。

春介「安全運転キッス!」(ウィンク→投げキッス)

春海、一瞬目がハート→自分の額をコツン。

春海「正気スイッチON。…でもちょっと受け取った」

光子「かわいすぎて没収不可」



20:18、さくら572号


ホームに上がる風が、すこし夜の匂い。

案内板に「さくら572 博多 20:18 → 岡山」。

ドアが開き、柔らかい照明が三人を招き入れる。


優子「ここからは夜の移動モードやね」

光子「岡山でサンライズにバトンタッチ。寝て起きたら東京」

ソフィーア「移動がレールに沿って静かに続くの、好きです」


席に滑り込み、荷物を頭上に。

車内チャイムが流れ、列車が静かに滑り出す。



夜の小さなピクニック


テーブルを出して、かしわめしを分ける。

光子「この甘辛いの、故郷の味すぎる」

優子「明太いなりは一人ひとつ。ケンカ回避条約」

ソフィーア「優しい味付け…落ち着きます」


窓の外で、街の灯りがリボンみたいに流れる。

三人で今日の写真を見返しながら、静かに笑う。


ソフィーア「博多の一日、宝物が増えました。朝の鈴の音、うどんの湯気、商店街の笑顔」

光子「次は屋台もいこ。今日は朝案内やったけん夜の部はまた今度」

優子「その頃には春介・春海の“夜ふかし許可”が出とるかね」

光子「出らんやろ」



岡山での“のりかえ劇場”


定刻のアナウンスが近づく。

優子「作戦会議。降りたら号車位置の逆サイドへ。サンライズは編成長いけん、足運び時短で」

光子「ホームで迷子防止に眉ピッ合図」

ソフィーア「了解。眉ピッ、ですね」


岡山到着。

ホームの夜風が少しひんやり。

サンライズの長いヘッドライトが、遠くのカーブからゆっくり現れる。


優子「来た。寝台車のワクワク音や」

光子「寝台、ほんとに好きやね」

ソフィーア「旅の音楽が変わる瞬間、ですね」


ドアが開いて、夜のホテルが横に並んだみたいな香りがした。

三人は指定の個室へ。リュックを置き、窓のブラインドを少しだけ上げる。


光子「東京まで、おやすみ運転、お願いします」

優子「最後にちっちゃく——眉ピッ → ぎゅー」

ソフィーア「明日、東京で“ただいま”を言いましょう」


列車は夜を編み、月曜日の朝へ三人を運んでいった。





ただいま→ほっと一息→ミライマートでプチ報告


寮に着く。

エレベーターを降りて、廊下の端までガラガラとキャリーを転がす。部屋のドアを開けると、見慣れたカーテンとベッドの匂いがふっと戻ってきた。


光子「到着ー。まずは荷ほどきタスク」

優子「洗濯ものは即・仕分け。旅の砂ぼこりは置いていかん」

ソフィーア「お茶、いれますね」


三人はそれぞれの持ち場で手を動かし、十分で大枠を整える。湯気の立つマグを手に、窓辺の椅子に腰をおろす。


光子「ふぅ……“帰ってきた”空気がしみる」

優子「体も心もいったん中立。で、いま何時?」

ソフィーア「ミライマートの“プチ報告会”、夕方の部に間に合います」



ミライマート・夕方の部「5分で現地報告」


自動ドアが開く。

「いらっしゃいませー」の声と、揚げ物コーナーのあったかい匂い。レジ横には募金箱と「時間は味方」の小さなポップが立っている。


篠崎店長「おかえり! 無事で何より。お客さん集まってるから、**“5分報告・Q&A3問・最後にワンフレーズ”**でいこうか」

光子「了解。5分勝負、任せとって」

優子「立ち位置は雑誌棚前、マイク代わりに“唐揚げ用トング”……はダメやね」

店長「使わないでね」


店内のBGMが少しだけ下がる。

お客さんが自然と半円を作る。常連の大学生、お昼に来る近所の会社員、学校帰りの高校生。


① 5分報告(要点だけ)


光子「ウクライナで見たことを三つだけ——病院のロビーで歌った、畑がまだ戻れん場所になっとった、でも人の心は前向きやった」

優子「空爆は止んどる。でも地雷と不発弾が残っとる。片付けは毎日一歩ずつ進んどる」

ソフィーア「祖父母は手術を終え、リハビリ中です。『時間は味方』という言葉を、医師から受け取りました」


② Q&A(3問)


高校生「危なくなかったですか?」

優子「行動計画を細かく作って、危険地帯は行かない。現地のコーディネーターと常に連絡。無理はしません」


会社員「寄付はどこに?」

光子「地雷除去と義肢支援の団体へ。配分は店頭のQRとサイトに置いとーけん、見てんね。使い道レポも四半期で出すよ」


大学生「笑いって、役に立ちます?」

ソフィーア「痛みを消しませんが、呼吸を戻す助けになります。そこに歌や言葉が届きます」


③ ワンフレーズ・アカペラ


三人で“祈り”のフレーズを一節だけ、小さめの声量で。

店内の空気がすっと澄む。揚げ物の油の音さえ、伴奏みたいに聞こえる。



ちょびっとだけ、いつもの彼女ら


店長「最後、30秒だけ“いつもの”いける?」

光子「了解。タイトル**『レジ前・ただいまの術』**」

優子「“ただいま”と言うたら?」

光子「“おかえり”が返ってくる」

二人「ミライマートも、うちらの“ただいま”の場所!」


拍手と笑い。高校生がスマホを胸の位置でそっと下げて、目だけで「よかった」と言う。



余韻とコロッケの誘惑


報告が終わると、常連さんが募金箱に小銭を落とす音が、ちりん、と鳴る。

店長が軽く会釈する。


店長「ありがとう。で、君たち——コロッケ、揚がったよ」

優子「揚げたての“帰還支援物資”了解」

光子「二個。いや三個。いや、四……」

ソフィーア「まずは一人ひとつ。条約、必要ですね」


三人は店の壁にもたれて、はふはふと頬張る。

衣のサク、じゃがいもの甘み。旅がいつもの味で締めくくられる。


光子「ただいま、東京」

優子「おかえり、日常」

ソフィーア「そして、次へ」


外は夕焼け。ガラス越しに赤い色がのびて、募金箱の上の『時間は味方』の文字を少しだけ明るく照らした。




「ただいま通常運転」な一日


午前:講義ふっかつ


一限の教室。窓の光が譜面台に四角く落ちる。

担当の先生が出席を取りながら、ふっと笑う。


先生「無事戻ってきてよかったね。…で、レポートは通常どおり出してください」

光子「現実復帰、早い」

優子「通常運転、了解」


休み時間、同級生が駆け寄る。

同級生A「配信、見たよ! 泣いたし笑った」

同級生B「“時間は味方”、ノートの表紙に貼った」

光子「ありがとう。うちらも授業は味方にしたい」

優子「テストは…どうやろね」

一同「そこは敵やろ」


夕方:バイトふっかつ


ミライマートの自動ドアが開く。油の音が「おかえり」を言う。

篠崎店長が片手を上げる。


店長「おかえり、ふたりとも。無理はしない。今日はゆるシフトね」

光子「ゆる、助かる」

優子「でもキビキビは忘れんばい」


お客さんの“ただいま”


常連の会社員がコーヒー片手に。

会社員「無事でよかった。これ、少しだけど募金ね」

光子「ありがとうございます。四半期レポ、ちゃんと出します」

会社員「楽しみにしてるよ。…あ、コロッケ2つ」


近所のおばあちゃんがニコニコ。

おばあちゃん「テレビで見たよ。あんたたち、歌う時の顔がよか。心ば明るうなる」

優子「ばあちゃんの一言、最高の給料やね」

おばあちゃん「ほんなら時給上げとってね、店長さん」

店長(ちょっと汗)「…ご意見、ありがとございます」


高校生カップルがレジに来る。

彼氏「配信の“眉ピッ→ぎゅー”、あれマジで良かった」

彼女「やったげて!」

彼氏(照れながら)「…眉ピッ」

彼女(即)「正気スイッチON!」

優子「教育が行き届いとる」

光子「家庭内限定、忘れんごとね」


小さな勘違い劇


年配のお客さんが募金箱のポップを眺める。

お客さん「“きふ”って書いとるね。きのこどこにある?」

光子「寄付はこっち、きのこは三列目でーす」

お客さん「読みが似とうけん紛らわしかねぇ」

優子「次のポップ、『きふ=寄付きのこじゃない』って書いとこ」


夜:閉店後のひと息


シャッターが降り、店内は掃除機の音だけになる。

店長が温かいお茶を三つ置く。


店長「今日もお疲れ。お客さん、みんな待ってたね」

光子「“ただいま”って言える場所があるの、救いやね」

優子「“おかえり”って返ってくる場所も、ね」


外に出ると、夏の夜風がゆっくり吹く。

信号待ちで、二人は同時に小さくウインク。


光子「明日も通常運転。歌って、学んで、働いて」

優子「合間に、ちょびっと笑わせる」


歩道の先で、コンビニの看板がやさしく光っていた。




風呂は寮の“ただいま”会場


寮の廊下に、光子の声が響く。

「風呂いくばい〜! まとめて湯でリセットや〜!」


優子が洗面道具を抱えて鼻歌(あのドリフのやつ風)をハミング。

小春、梢、茜、玲奈、紗英、美優もぞろぞろ合流。


茜「今日の合言葉は?」

光子「はぁ〜が沁みた人から勝ち」

紗英「ルール雑ぅ」


——脱衣所、ガラガラッ。

棚にカゴを置いて、タオルをキュッ。ソフィーアがにっこり。


ソフィーア「順番に入ってね。転ばないようにね」

優子「了解、安全第一。すべり注意!」


ちゃぷん→同時に「はぁぁぁぁ……」


六人+ソフィーア、肩まで浸かって、同時にため息。

茜「光子ちゃんの“はぁ〜”、3小節分あったで」

小春「私は2小節半。くやしい」

梢「風呂で小節カウントすな」


光子「いやでも、沁みるねぇ……今日のバイト、濃かったもん」

優子「寄付きふをきのこと読み間違え事件な」

玲奈「店長の顔、真剣やのに笑いこらえとった」

美優「ポップに“きのこじゃない”って書くらしいよ」

一同「やさしさ〜」


湯気のハモり部


ソフィーアが小さくハミング。

光子と優子がふわっと3度で重ねる。

小春「湯気、天然リバーブ」

梢「ここライブハウスだった?」

優子「浴場ハウスね」


シャンプー実況(短距離走)


紗英「シャンプー切れたー!」

優子「ほい、トス!」(ミニボトルをポーン)

茜「ナイスアシスト。寮シャン・リレー金メダル」

光子「表彰台で“はぁ〜”しよか」

小春「それはもうええ」


ちびっと真面目、すぐ笑い


美優「配信、親にも見せたよ。『時間は味方』って言葉、うちでも流行中」

光子「ありがと。うちらも授業とバイト、ぼちぼち再開やけん」

優子「無理せん、笑いは切らさん、その感じで」

ソフィーア「今日の“はぁ〜”が長かったから、心は回復中ですね」


上がり場で“はぁ〜最終戦”


体を拭いて、ドライヤーゾーン。

茜「最終ラウンド、牛乳で乾杯?」

玲奈「私はコーヒー牛乳派」

優子「私はリンゴジュース派。風呂あがり自由選挙やね」

光子「じゃあ一致団結の“眉ピッ”だけ揃えとこ」

全員(小声で)「眉ピッ → ぎゅー」

梢「整った」


しめの一言


廊下をスリッパでぺたぺた。部屋の前で解散の手を振る。

光子「明日も通常運転——学んで、働いて、ちょびっと笑わせる」

優子「湯のチカラ、偉大やね」

ソフィーア「“はぁ〜”は、世界共通語です」


部屋の灯りが順番に落ちていく。

今日の“はぁ〜カウント”は記録更新。

おやすみの合図は、静かな鼻歌と、すこし軽くなった肩の感覚だった。





追い風・小雪合流


脱衣所のドアがガラッ。

タオルを頭に巻いた小雪が、洗面道具を抱えて小走りで入ってきた。


小雪「遅れたー! レポートのオンライン面談が長引いた!」

光子(博多弁)「おつかれ〜。空いとるけん、ぬる湯レーン入ってよかよ」

優子(博多弁)「熱湯派はこっち。…って言いよるけど、今日は全員“はぁ〜”優先」


ちゃぷん。小雪が肩まで浸かって、即「はぁぁぁ」。

小春「小雪の“はぁ〜”、音程きれい」

梢「風呂でも音程ブレんの、才女」


小雪「で、みんなの“本日のハイライト”を30秒でください」

ソフィーア「バイト復帰→プチ報告→寄付の説明→コロッケ」

優子「“きふ”を“きのこ”と読み間違い事件も追加」

光子「店長、笑いこらえ顔ランキング1位」


小雪「把握。…はい、労いの牛乳買ってきました」

(上がり場に並ぶ瓶牛乳)

茜「女神」

玲奈「風呂神」


ドライヤー前。

小雪「次回、バスボム選手権やらない? 香りで“はぁ〜”の長さ変わるか検証したい」

優子「データ取り、好き」

光子「“はぁ〜秒数表”作るばい」


解散前、みんなで小さく合図。

全員「眉ピッ → ぎゅー」

小雪「よし、整った。明日も通常運転でいこう」




水曜レッスン:日和と合唱部、声と笑いの45分


夕方。大学の小さな練習室。

ドアが開いて、日和と高校合唱部のメンバーがきちんと並んで入ってくる。

(学校の先生から許可済み。保護者連絡もOKの安全設計)


光子「よー来たね。**今日の目標は“楽に、遠くへ”**やけん」

優子「緊張は置いとって。笑ったら半分勝ちや」


日和「よろしくお願いします」

部員たち「お願いします!」



① ほぐし(2分)—“あいうえお体操”


優子「まず“あいうえお体操”。口を縦横にでっかく動かすだけ」

光子「鏡見んでも、隣の人が笑ったら合格」


全員で「あ・い・う・え・おー」。

教室が一気にやわらかくなる。



② 息(5分)—“ろうそくゲーム”


光子「鼻先に小さなろうそくがあると思って、スーッと細く吹いてみて。お腹はペチャンコにせんで“やさしく押す”感じ」

優子「力入れすぎ注意。ペットボトル潰さんくらいの力で」


スーッ。部屋に同じ長さの息の音が並ぶ。



③ 姿勢(3分)—“糸でつられとー”


優子「頭のてっぺんを糸で上に引っ張られとるイメージ。胸はドンじゃなくスッ」

光子「膝はロックせん。軽トランポリンに乗っとるつもり」


部員の肩が一段下がり、首まわりが自由になる。



④ 言葉(10分)—“母音そろえ”


光子「歌詞は母音で友だち。『星屑の街へ』のBサビ、“ほーしーくーずーのー”の**“お・い・う・う・の”をそろえて言ってみよ」

全員「お・い・う・う・の」

優子「いまの感じで小さく歌う→ちょびっと大きく**。声は前に投げずほっぺの内側に置く」


音が丸くまとまっていく。



⑤ 日和のソロ(10分)—“高くじゃなく、遠く”


日和「(深呼吸)…いきます」

♪ Bサビ、日和の声がすっと伸びる。


光子「よか。次は“高く”じゃなく**“遠く”**に投げてみて。体育館の後ろの非常口まで“糸電話”伸ばすイメージ」

優子「最後の語尾、握りしめず“ほどく”」


もう一度。

部屋の空気がスッと澄み、ラストがふわっとほどけた。


日和「…届いた気がします」

部員「鳥肌」「さっきより楽そう!」



⑥ 全体コーラス(10分)—“笑顔は音質”


光子「目尻だけニコで合唱してみよ。音のツヤ、変わるけん」

優子「動きたい人は膝でリズム。肩は踊らせんでよか」


合唱が一段明るくなる。

ソフィーア(見学&記録係)も小さく拍手。



⑦ しめ:60秒Q&A


部員A「高い音が怖いです」

優子「一段下から着陸するつもりで。直前の音を“ちょい低めに楽に”置いて、スライドせずジャンプ短め」

部員B「緊張で声が震えます」

光子「手を太ももにそっと置いて“押す→離す”を2回。体のスイッチ入るけん」



おまけ:ちいさなコント(30秒)


優子「発声“腹筋で支える”って言うやん?」

光子「支える=腹筋ローラーちゃうけんね」

二人「やりすぎ厳禁!」

(部屋、爆笑→空気がさらに軽く)



先生&メンバーのリアクション


顧問の先生「声の色が揃ってきましたね。最後のBサビ、日和さん、とてもよかった」

日和「ありがとうございます。遠くに投げる、覚えます」



解散前


優子「今日のキーワードは**“楽に・遠くへ・ほどく”**」

光子「来週も同じ場所同じ時間。**宿題は“母音の友だち”**やけん」

全員「はい!」


最後は恒例、小声の合図。

全員「(小声)眉ピッ → ぎゅー」

笑いと拍手で、水曜レッスンは終了。

日和のソロは、来月の本番で**“遠く”**へちゃんと届く——その予感まで、しっかり残した。





生放送スペシャル:報告→ゴスペル→爆笑


スタジオの照明がふわっと上がる。

司会「本日のゲストは——ファイブピーチ★!」


(客席拍手。ステージには、光子・優子、小春(Key)、奏太(Gt)、美香(Pf)。後方に小さなゴスペル・コーラス隊も。)



第1部:ウクライナ現地報告(ぎゅっと要点)


司会「この夏、現地に入ったと伺いました。まずは報告を」


光子(博多弁)「病院のロビーで歌って、子ども病棟でも歌わせてもろたっちゃん。空爆は止まっとるって言うても、地雷と不発弾はまだ残っとる。けど、人の目は前向いとった」

優子(博多弁)「畑が荒れとる景色も見た。でも“時間は味方”って言葉ば受け取ってきたけん、うちらも長く寄り添うつもりやけん」

美香(標準語)「支援は地雷除去と義肢支援へ。四半期ごとに使い道を公開します」

奏太「音でできること、ちゃんと続けます」

小春「“笑い”も呼吸を戻す力があるって現場で感じました」


司会「ありがとうございます。では、その時に歌った曲を——今日はゴスペル・アレンジで」



第2部:ゴスペル・セット


美香が祈るように和音を置く。ハンドクラップが重なる。

光子「♪ 祈りは線じゃなく輪になる〜」

優子「♪ 夜はいつか朝にほどける〜」

小春がコーラスを導き、奏太がやわらかくハーモニクス。

客席の手拍子がそろい、最後は**小さな“アーメン”**で静かに着地。


司会「胸が温かくなりました……!」



第3部:爆笑コント「国境なきウィンク」


司会「ここからは恒例の“笑いの時間”で!」


(効果音ポン。光子=ボケ、優子=ツッコミの立ち位置へ)


優子「本日のテーマは“国境なきウィンク”。パスポートより効力強いらしいです」

光子「税関で“目的は?”って聞かれたら——」

二人「『笑いの輸入』です!」

(客席くすくす→拍手)


司会「ここでスペシャルゲスト登場! 春介くん・春海ちゃん!」


(客席「わぁー!」。スタジオ脇から春介と春海がちょこちょこ登場)


光子「二人とも、テレビでご挨拶ばい」

春介「みなさん、ただいまのウィンク便でーす!」(キュッ)

春海「からの——投げキッス特急!」(パッ!)


客席「きゃーー!」

優子「出力200%に上がっとるやん!」

春介「本日の為替はウィンク1=笑顔100です!」

光子「レート高っ!」


——その瞬間、春海の目がハートになる。

春海「……あれ? わたし今、お兄ちゃんのウィンクでメロメロに……?」

(0.5秒の静止→自分の頬をペチッ)

春海「ハッ! 我に返った! そんなことあるかーい!」(ツッコミ手刀・空振り)

春介「正気スイッチON、確認しました!」(眉ピッ)


客席ドッカン。


優子「兄妹でセルフ制御するのやめんね!」

光子「でも今の“我に返り”のテンポ、完璧やったね」

春介「研究の成果です!」

春海「“ウィンク耐性トレーニング”のおかげです!」


司会「そんなトレーニングあるの!?」



連発ミニネタ・メドレー(畳みかけ30秒)


光子「空港案内編:こちら“ウィンク搭乗口A”、投げキッスは“保安検査B”へ!」

優子「危険物扱いになっとるやん!」

春介「電車内アナウンス編:次はメロメロ、メロメロ〜。ドア閉まりまぁす——チュッ」

春海「そんな駅ないわ!」

(客席爆笑)



しめ:小さな祈りと合図


司会「笑って、そして考えさせられる時間でした。最後に一言ずつ」


光子(博多弁)「悲しか人の隣に座って、そっと笑わせる。うちらの仕事は、今日もそれ」

優子(博多弁)「音と笑いは国境越えるけん。長く続ける、それだけは約束する」

美香「支援もステージも、透明に」

奏太「音で橋を」

小春「日常に戻る手助けを」

春介「ただいまを世界に!」

春海「おかえりをいっぱい集める!」


光子・優子・春介・春海(小声で)「眉ピッ → ぎゅー」


(客席スタンディング拍手)


司会「ファイブピーチ★、そして春介くん春海ちゃん、ありがとうございました!」

カメラが引き、ステージ袖で小さく手を振る四人。

報告も、歌も、笑いも——一続きの“ただいま”として、生放送は温かく締めくくられた。

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