ひよりの両親の来店・帰省
夏休みの昼下がり。ミライマートのドアチャイムが「ポーン♪」と鳴って、涼しい風と一緒に夫婦が入ってきた。
レジの前でバーコードを切る手を止めた優子が、ぱっと顔を上げる。
「いらっしゃいませ〜……あっ、ひよりちゃんのご両親!」
「父の浩二と申します。こちらは妻の玲子です。合唱のレッスン、本当にありがとうございました。娘、見違えるように自信が出て……」
「この前は取り乱してしまって、重ねてお詫びとお礼を……」
「よかよか、顔見れて安心したばい。」と光子。
「もうすぐシフト終わるけん、ちょい待っとって。終わったらイートインでお茶しよ。」と優子。
奥から店長の篠崎さんが顔を出す。「ラスト10分だし、ここ座ってどうぞ。コーヒーは僕から。アイスとホット、どっちにします?」
浩二がメニューを前に固まる。「……ホットMで。いや、Lで。やっぱ——」
「Mで十分です」と玲子、スパンとツッコミ。夫婦のテンポがいい。
数分後、イートイン。紙コップから湯気、テーブルにはドーナツが二つ。
篠崎さんが引き上げると、場がふわりとゆるんだ。
「合唱、先生から“Bサビの独唱、安定しました”って言われました。娘、帰ってくるなり“ちゃんと歌えた!”って。」と玲子。
「家でも、声が明るくなったっちゃんね」と光子が頷く。
「うん、喉が軽うなっとる音に変わっとったけん、すぐ分かった。」と優子。
浩二が深く頭を下げる。「家のことも、少しずつ片づいてきました。使途不明金の件は弁護士さんと。妻はカウンセリングに通い始めました。娘の前では、ちゃんと笑う練習から」
玲子は小さく笑って、「最初は笑顔が引きつってたんですけどね。最近は本当に笑えてる気がします」
「それがいっちゃん大事たい。」と光子。
「泣く時は泣いてよか。で、息整えて、今日の一段だけ登る。無理せんで。」と優子。
そのとき、再びチャイム。「ポーン♪」
制服姿のひよりが駆け込んでくる。「すみません、遅れました!」
紙袋を差し出す。「これ、手作りのクッキーです。冷めてますけど、あの、ほんの気持ちで……」
浩二が受け取ろうとしてツルっと滑らせ、慌ててキャッチ。
「お父さん、ナイスセーブ!」と光子が拍手。
「ゴールポストは胃袋です」と優子。ひよりが吹き出す。
「水曜のセッション、また行ってもいいですか?」
「もちろん。眉ピッで合わせよ。」と優子が指で小さな合図。ひよりも指で真似して笑う。
篠崎さんが遠くから手を振る。「あ、揚げたてコロッケ、出たよ。感謝祭サービスで一個ずつどうぞ」
「店長、太っ腹!」と光子。
「お腹は腹筋で割って、心はコロッケで満たす」と優子。
「名言っぽいけど、コロッケで満たすは新しいですね」と浩二が笑う。
玲子がそっと言う。「……本当に、救われました。ここに来ると、胸が軽くなる」
「ここは避難場所やけん。コーヒーと笑い、常備しとーよ」と光子。
「困ったら、まずここにおいで。声出して“ただいま”って言えば、うちら“おかえり”返すけん」と優子。
紙コップがコトンと鳴って、夏の午後がゆっくり流れる。
ひよりが小さく歌う。「♪星のかけらを〜」——Bサビ前で顔を上げた。
「本番も、ここ思い出して歌います」
「そげん時は、イートインの神様が見守っとるけん大丈夫」と光子。
「誰それ」と優子が即ツッコミ。テーブルがまた笑いで揺れる。
帰り際、浩二が会釈した。「次は私たちが、どこかで誰かの椅子を一脚、引けるようにします」
「それで十分。今日の一段たい」と優子。
「ほんなら、また水曜に。眉ピッ!」と光子。
ドアチャイムがもう一度、明るく鳴った。
外は夏。だけど胸の中には、ホットコーヒーの温度が、長くやさしく残っていた。
夏、のぞみ。博多へ
水曜セッションが終わり、ピアノの蓋をそっと閉めた。
ひよりが「次は来週…あ、帰省やったね」と名残惜しそうに立ち上がる。
優子「うん、日曜の朝いちで帰る。録音課題は土曜の夜に送るけん、先生に伝えとって」
光子「ひより、Bサビの“たゆたう”んとこ、息ひと粒長めにね。戻ってきたらまた合わせよ」
ひより「任せてください。眉ピッ」
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寮の部屋に戻ると、即・帰省モード。
スーツケースを開けた瞬間、光子のメモが踊る——“財布・学生証・充電器・スコア・お土産・ハンカチ(母指定)”。
優子「さ、連絡回りや。最近ごぶさたのメンツ、どうしとるかね」
光子「まずさおり。あと樹里、朱里、小春。それと…環奈お姉ちゃん、もしかしておめでたとかあったり?」
優子「それ言うなら、さおりと奏太にいちゃんも進展あったりして? 指輪キラリん…とか」
グルチャを立ち上げて、一気打ち。
光子:ただいま東京→博多帰省準備中!日曜の朝いちのぞみ。みんな元気?
優子:さおり&奏太にいちゃん、進捗どうね?(圧じゃなかよ、好奇心やけん)
光子:環奈お姉ちゃん、体調どげん? 暑いけん水分とってね〜
即レスがポンポン飛ぶ。
さおり:元気!帰ってきたらラーメンはしご行こ(意味深)
小春:札幌からも帰省する!千歳→福岡合流〜
樹里:うちの母、土産は通りもん指名制
朱里:空港まで迎え行くよ〜
環奈:みんな愛してる♡ 詳細は会って話す(意味深その2)
優子「“意味深”の嵐やん…」
光子「夏のフラグ立ちまくっとるね。よし、服は“伸びるやつ”多めで」
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パッキングしながら小ネタが止まらない。
優子「下着何日分?」
光子「“母の安心係数×日数+汗対応”で+2」
優子「理系の顔するな」
お金は封筒に振り分け。
“交通/土産/非常ラーメン枠(替え玉含む)”。
優子「非常ラーメン枠て何」
光子「替え玉は文化。予算計上は礼儀」
優子「納得しかない」
寮のみんなのドアをノックしながらご挨拶。
「日曜から博多帰省するけん」「博多の女買うて戻ってくる場合あり」「お土産指名制は抽選」——歓声。
ひよりにもDM。
光子:水曜はオンラインで“10秒ただいま”一緒にしよ
ひより:了解です。眉ピッで
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日曜の朝、東京駅。
早朝の中央通路はもう活気。スーツケースのローラー音、アナウンスの残響。
のぞみ○○号・博多行き、6号車に滑り込む。
光子「駅弁、深川めし行く」
優子「うちは牛めし。あとお茶。コーヒーは機内…いや車内で落ち着かん」
光子「機内て。飛ばさんでよ、新幹線」
座るや否や、スマホが震える。
さおり:空港組と博多駅組、どっちで合流?
朱里:博多駅に決定!
樹里:横断幕作る?(やめれ)
小春:札幌発、雪じゃなくて霧だった!夏でも北海道!
そして、環奈から個チャ。
環奈:体調はね、ぼちぼちすこぶる。会ったら話すね(スタンプ:小さなハート)
優子が目を丸くする。「ぼちぼちすこぶるはほぼ確やない?」
光子「黙秘の概念が粉砕されとる」
車内アナウンスが流れる。「まもなく発車いたします。シートベルトは—あ、要りません」
優子「機内モードの亡霊がまだおる」
光子「それよりラゲッジ棚に博多の女入れとらんやろね?」
優子「まだ買ってない!」
のぞみが静かに滑り出す。ビルの谷間がほどけて、光の粒が窓を流れる。
ふたり同時に、小さく眉ピッ。
光子「帰ったら、まずお母さんの抱擁、それからお父さんの謎ボケ、で春介・春海の全力キス投球」
優子「そしてラーメン」
光子「大事な順は?」
優子「……同列一位」
包みを開けば、朝の匂いがふわり。
箸を割って、目が合って、声が揃う。
「いただきます。」
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窓の外、夏の雲が蓮みたいにひろがっていく。
のぞみは西へ。
博多で待つ“ただいま”の声に、ふたりの“おかえり”が、もう少しで追いつく。
博多駅・新幹線口。
自動改札を抜けた瞬間、カメラの林と手づくりボードがわっと広がる——
「おかえりーー!」
先頭で跳ねてるのは春介と春海。次の瞬間、二人ともロケットみたいに飛んできて、光子と優子の腹にドーン。
春介「おねえちゃん、おかえり!」
春海「おねえちゃん、おかえりーー!」
光子「発音、急成長!」
優子「ちょ、今日から大人扱いするけん!」
後ろで美鈴が笑いながらハグ。「よう帰ってきたねぇ」
優馬は両手を広げてドヤ顔。「お父さんもおかえり(自分に)!」
優子「誰に帰ってきたと?」
光子「自分に“ただいま”言うタイプ初めて見た」
さおり・樹里・朱里・小春も勢ぞろい。
さおり「生で見る“眉ピッ”、やっぱ破壊力あるわ」
小春「札幌からの直射日光、まぶしすぎて溶ける」
樹里「横断幕は自粛したけん安心して」
朱里「でも口上は用意してきた——」
優子「それはもっと自粛して」
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荷物は実家へ直行、リビングにドサッ。
テーブルの上は唐揚げ、南関あげの味噌汁、冷えた麦茶。夏の“おかえり”が並んどる。
美鈴「まず水分。はい、これ」
光子「母の補給所、安定の開店」
優馬「父は情報を補給します。まず近況!」
優子「司会者ぶるな」
近況タイム
さおり「奏太にいちゃんとは順調。この前いっしょにスタジオ入って、音が噛み合って…心拍も噛み合って」
一同「おーーー!」
光子「“噛み合い”の使い方がプロ」
優子「ついでにラーメンも噛み合った?」
さおり「替え玉まで噛み合った」
樹里「うちは母が“福岡ん土産は通りもん固定”の通りもん民主制を採択」
優子「強権政治で草」
朱里「文化祭、ステージ増枠! お笑い枠もあるけん、双子ゲスト枠で3分くれ」
光子「秒で埋まるやつ!」
優子「30秒で勝負しよか」
小春「北海道は涼しかったのに、福岡は湿度がジャンプしとる。前髪がスポンジ」
美鈴「前髪スプレー置いとるよー」
そこへ環奈と塁が顔を出す。
環奈「ただいま〜。みんな、おかげさまでぼちぼちすこぶる」
優子「出た、そのワード!」
光子「つまり?」
塁が照れて環奈の手を握る。
環奈「家族、増えます」
一拍置いて、リビングが爆発。
春海「あかちゃん!」
春介「おねえちゃんになる練習、ぼくもしとく!」
優子「何の役職?」
美鈴が涙目。「よかったねぇ。無理せんでよ」
環奈「ありがとう。福岡パワーで安定してきた」
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春介がふと、光子の顔をじーっと見る。
春介「おねえちゃん、テレビでさみちいでちゅ言いよった?」
優子「それはお父さんの名言やけん」
優馬、得意のドヤ。「著作権は父にあります」
光子「やかまし。あれ言うたら全国が腹筋けがするけん控えて」
春海は優子の膝に乗って、こそこそ話。
春海「きょうね、ようちえんでね、先生が“おかえりのうた”つくってって言ったと」
優子「え、天才オーダー」
光子「ほんなら今つくろ。Aメロ:ただいま、Bメロ:おかえり」
春介「サビは“ぎゅー”!」
美鈴「採用」
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ひと段落して、みんなで麦茶。氷がコトンと鳴る。
さおりが真顔で言う。「それで…二人は? 東京のほうは、心は元気?」
優子はうなずく。「元気。忙しかけど、今日の一段ずつ登れとる。みんなの顔見たら、さらに充電」
光子「帰ってきたら、帰り道が太くなる。それだけで十分や」
優馬「よし、じゃあ夕方はラーメン実地訓練や。こってり隊、あっさり隊、各自集合!」
美鈴「まずは片づけてから!」
一同「はい!」
春介と春海が、もう一回ぎゅーっと抱きつく。
春介「おねえちゃん、きょうはずっとここ?」
光子「ずっとここ。晩ごはんも、寝るまでここ」
春海「じゃあ、おやすみのうたもつくる!」
優子「よし、夕方までにデモ仕上げよ」
窓から夏の匂い。玄関にはスーツケース。
博多の“ただいま”は、今日も賑やかに、しっかりと鳴っていた。
夏夜、乾杯とドキュンの雨
リビングの笑いが一段落したところで、春海が両手をぶんぶん。
「わたち、つばさにいちゃんか、たくみおにいちゃんと、けっこんする〜!」
「お、おぉぉい!」と家じゅう総ツッコミ。
光子「二股宣言は18年早か!」
優子「まずはひらがなフル完走からや!」
すかさず春介が胸を張る。
「ぼくは、しょんぶん(※しゅんすけ)とけっこん…」
美鈴「春介、自分と結婚は高難度ばい」
優馬「お父さんはお父さんと結婚しとる(自分に)」
全員「してない」
⸻
夜は大名のちょい洒落ビストロへ。木の扉、オレンジの灯、グラスに冷たい泡。
店の人「ご懐妊おめでとうございます」
優子が小声でひそひそ。「“解任”やなくて“懐妊”やったね」
光子「危うく塁くんが職を追われるとこやった」
環奈が照れ笑い。「来年の春先、三月くらいが予定日。性別は…まだ秘密。でもね、エコーで手をふってくれたと」
塁はグラスのジンジャーエールを掲げる。「乾杯はノンアルで。母子最優先!」
「かんぱーい!」
グラスが軽く当たって、泡が小さく弾ける。
さおりが目を潤ませる。「環奈お姉ちゃん、ほんとによかったね」
小春「札幌の風も送っとく」
樹里「通りもんも送っとく(買ってくる)」
朱里「命名候補:通りも…」
全員「やめんね」
春海は子どもメニューのポテトをハート形に並べて、環奈の前へ。
「あかちゃん、よろしくねハート」
環奈「もう泣くやん…」
⸻
帰宅。玄関の灯がふたりを迎える。
靴を脱いだ瞬間、例のものの飽和攻撃——
春介「ハイパー誘惑ウィンク!」
春海「きょくじょうなげキッス200%!」
光子「ドキュン!」
優子「ドキュンドキュン! これで心拍数が明日も健康!」
その勢いで春介が宣言。
「きょうは、じいじと、ばあばと、ねるー!」
春海も負けじと。
「わたちも、じいじと、ばあば!」
優馬「よかぞ、添い寝は任せろ」
美鈴「掛け布団の出力は弱でいくけんね」
⸻
就寝ドタバタ・ノンストップ版
布団に吸い込まれた途端、スヤァの天才たち。が、寝相は台風。
——五分後。
春介、縦横無尽のローリングアタック!
「顔面どーん!」美鈴のほっぺに足がふわりと着地。
「おでこボフ!」今度は優馬の額に枕直撃。
「みぞおちドスン!」(※股間描写は安全に置換)
優馬「うぉふっ…でも幸せ…」
美鈴「はい寝返りガード(タオルケットで巻き寿司)」
二巡目。
「顔面どーん(再)!」
「お腹ポスン!」
「スネにコロン!」
優馬「三連コンボや… でも幸せ…二回目…」
光子と優子は隣室から、くすくす。
光子「ばあばの巻き寿司スキルが上がっとる」
優子「じいじの幸せ耐久も伸びとる」
光子「明日の朝は“おかえりのうた”仕上げて、まずはじいじばあばに献奏やね」
優子「決まり。合図は眉ピッ」
障子の向こう、寝息の合唱。
今日の“ただいま”は、笑いとドキュンに守られて、やさしく熟れていく。
—
そして夜更け。優馬が小声で。
「みんな、幸せになれ」
隣で美鈴が「もうなっとるよ」と、安らかに目を閉じた。
夏のただいまラリー
1) 「みらいのたね」に、ただいま
昼前。NPO「みらいのたね」のドアを開けるやいなや——
「おかえりーー!」スタッフ全員が拍手。壁に小さく「眉ピッ歓迎会」の張り紙まである。
光子「ただいま戻ってきたばい。東京土産、みんなで食べり〜」
優子「東京ばな奈とごまたまご、あと人形焼は箱の角が曲がっとるけど、味は生きとるけん」
事務局の安西さんが笑う。「曲がった角にも栄養があります」
代表の優馬が顔出し。「活動報告もあとで頼むぞー」
美鈴「まずは麦茶。報告は麦茶のあと」
光子「母、最強の議事進行」
近況をさくっと共有。大学のこと、ドームツアーが決まったこと、「ただいま基金」の月次レポ準備のこと。
「よし、昼休みにおっちゃんの現場、のぞいてきてん」と優子。
スタッフ全員「よろしく言っとって〜」
⸻
2) おっちゃん、日焼け+ヘルメット、健在
現場の仮囲いの前。休憩のチャイムが鳴る頃合いを見計らって差し入れ。
光子「おっちゃーん、東京ばな奈持ってきたよ〜!」
日焼けの**川原翔太**が、汗を拭きながら近づく。腕、太い。目、やさしい。
おっちゃん「おお、帰っとったか! なんや、二人とも顔つきがまた大人になっとるぞ」
優子「照れるやん。こっちはおっちゃん、二割増しで黒曜石」
おっちゃん「日焼け代で一本多めに食うばい」
光子「誰がそんな課金システム組んだと?」
ベンチであんパンと麦茶、そして東京土産を分けっこ。
おっちゃんが、ふっと真顔になる。「困っとる人の横に椅子を一脚——あれ、ええな。続けり」
優子「任せとって。今日の一段ずつ行くけん」
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3) 若いほうの翔太&健太、順風
次はクラスアパートへ。
ピンポン。「はーい!」中から若いほうの翔太と健太の声。
翔太(保育士志望)「先週ね、園でしゃぼん玉フェスやって、大成功!」
健太(建築士志望)「夜間の単位、前期フル取得。現場も基礎から任され始めた」
優子「基礎は土台、笑いは潤滑油。完璧」
光子「園児の“わーっ”は春介春海級やろ?」
翔太「その上からハイパー誘惑ウィンク飛んできたら負けます」
健太「それは全国規模の天災」
冷たい麦茶で乾杯。帰省の旨を伝えると、二人はうなずく。
健太「戻ってきたら、模型見せる。廊下で眉ピッ可能な建築」
優子「それ、重要設計条件!」
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4) 朝比奈夫妻、舞台袖の光
博多座の楽屋口。
受付さんにご挨拶して、美羽と涼介が顔を出す。
美羽「おかえり! 今日の回、二幕のキラ、特に見て。光、やっと掴めた」
涼介「この街で舞台に立てる幸せ、毎回噛みしめとう」
光子「二幕キラ、眉ピッで受け取る」
優子「終演後、差し入れ置いとくけん。東京ばな奈 in 福岡、逆輸入」
手短にハグ、手短に激励。二人の笑顔は、舞台の光の匂いがした。
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5) ただいまの家
夕方、小倉家。
玄関で靴をそろえた瞬間、春介と春海がコーナーから飛び出す。
春介「おねえちゃん、けいこしよ!」
春海「おかえりのうた、できた?」
光子「できとる。Aメロ“ただいま”、Bメロ“おかえり”、サビ“ぎゅー”」
優子「合図はもちろん眉ピッ」
キッチンから美鈴の声。「ごはんよー。今日は肉じゃがに冷やしトマト」
優馬「父は皿洗いで主演します」
優子「助演で十分」
ちゃぶ台に笑いが並び、皿の音が心地よく鳴る。
今日会えた人、交わした言葉、手渡したお土産——全部が“ただいま”の印になって、家の空気が少し甘くなる。
光子がぽつり。「やっぱ博多の“おかえり”は、音があったかいね」
優子もうなずく。「うん。明日も一段、登れそう」
——窓の外、夏の夕立前の風。
屋根を叩く前に、家の中ではもう、笑いの雨がしとしと降り始めていた。




