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三姉妹爆笑交響曲 — 大学生篇から陽翔&結音誕生まで  作者: リンダ


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問題解決へ。

一か月後の卓上—画面の向こうにある自分


土曜の午後。

リビングのテーブルに、ノートPCが一台。

玲子は両手を膝に置いたまま、視線だけで浩司を見た。


玲子「……ねえ。私は、いったいどうしてこうなってしまったんだろう」

浩司「一緒に確かめてみよう。お前が傾倒した団体がどんな団体か、まずは事実から」


浩司はPCを立ち上げ、被害対策弁護団のサイトを開く。

画面を共有しながら、**「被害事例」「よくある手口」「チェックリスト」**のタブを順にクリックした。


— 被害事例

・高額寄付・物品購入(印鑑・壺・お札 等)

・「選ばれし者」などの特別扱いを餌にした囲い込み

・恐怖の刷り込み(不幸の因果、地獄の脅し)

・家庭の分断(反対者=悪、というラベル)

・性的搾取の疑いと沈黙の強要


玲子は前のめりになって、食い入るように文字を追った。

指先が、無意識にカップの縁を探して止まる。


玲子「……言葉が同じ。私にかけられた言葉と、同じ」

浩司「手口は“偶然”じゃないってことだ」


続いてチェックリスト。


□ 最初に異様にほめられた/救われると言われた

□ 悩みにつけ込む“個別相談”に誘導された

□ 金銭を“お気持ち”でと言われ、少しずつ増えた

□ 反対する家族や友人から距離を取るよう言われた

□ 秘密の儀式/特別指導を求められた

□ やめること=裏切り/不幸と刷り込まれた


玲子は震えるペンで、一つ、また一つ、□に印をつけていく。

紙が黒い点で埋まるほど、喉に小さな石が増えた。


玲子「……私、ぜんぶ当てはまってる」

浩司「悪いのはお前じゃない。仕組みだ。

お前は疲れて、孤独で、そこにつけ込まれた。被害者でもある」


沈黙。時計の針が二つ分、進む。

玲子はゆっくり息を吐いて、画面の「家族が壊される前に」の項をスクロールした。



これからの地図(その場で決めたこと)


浩司はノートを開き、三行ずつ区切って書く。


A. 連絡と金銭の遮断

1.団体・勧誘者:ブロック/着信拒否(記録は保存)

2.退会・返金交渉:弁護団へ面談予約、内容証明は弁護士経由

3.家計:現金手渡し禁止、支出は双方合意+明細共有


B. 安全の手順

1.面会は児相立会い、時間限定

2.夜間の言い争い禁止、感情が高まったらタイムアウト

3.ひよりの合図(青/オレンジ/赤)は父娘優先で運用継続


C. 心の回復

1.玲子:支援グループ・個別カウンセリングを予約

2.ひより:週1面談継続、学校配慮

3.家族:**“よかった一言だけ”**で一日を締める(深掘りしない)


玲子はノートを覗き込み、かすかにうなずいた。

「私は、“信じるかは私が決める”をもう一度学ぶ」

ゆっくり、はっきり言葉にした。



ひよりへの“謝り方の地図”(三分割)


浩司「ひよりへの謝り方も、手順でやろう。三分割」

1.事実:手を上げた/強要した——言い訳なしで言う

2.責任:私の責任で起きた、あなたのせいではない

3.これから:同意保護の継続に私も従う/面会はルールの中で/治療と離脱の手順をやる


玲子は自分用のメモに、同じ三行を書き写した。

「ごめんを、正しく言う。**“私は”**で始める……」



画面の向こうから戻ってくる声


PCの画面には、まだ被害報告の見出しが並んでいる。

読むほどに、玲子の中の結び目が、痛む。

それでも、もう一つ別の感覚が混じった。ほどけ始める痛み。


玲子「……私、怖かったんだね。失うのが。

でも、もう失ってた。ひよりの笑顔も、自分の声も」


浩司「取り戻せる。半歩ずつだ。

まずは電話だ。弁護団の面談予約、来週で取る。

そのあと、児相と学校に今の決意を伝えよう」


玲子「うん。私がやる」


玲子は深呼吸(4吸って6吐く×3)をして、スマホを手に取った。

キーパッドに数字を押す指は、まだ少し震えている。

けれど、押せている。


テーブルの端に置いた小さな瓶に、紙を一枚折って落とす。


またあした

事実を見た。私の責任を言う準備をした。

ひよりに会う前に、手順を決めた。


コトン。

音は小さかったが、二人は顔を見合わせて、ほんの少し笑った。

浩司「今夜はそれで十分だ」

玲子「……うん。またあした」







奪回の月——鳴りやまないベルと、止めた手順


1. 鳴る・残す・出ない


その月は、ベルがよく鳴った。

ピンポーン、ピンポーン——無言電話、非通知、差出人不明メール。

玲子の肩が跳ねるたび、浩司は壁のタイムライン表に印をつける。

•出ない(インターホンは録画モード、玄関は開けない)

•残す(通話録音・留守電保存、メールは未読保存・スクショ、封書は封緘のまま保管)

•知らせる(児相・学校・NPOに一括共有、警察には時刻ログと録画を提出)


ミライマートの篠崎店長は、店の前でのつきまとい映像を防犯カメラから書き出し、USBで渡してくれた。

学校は来訪者記録と電話記録を校務日誌に残し、スクールカウンセラーが週報でまとめる。

光子・優子はグルチャで「赤が来たら即電話、オレンジは迎え」の運用をまめに確認した。


2. 通達—「接近・接触を禁ず」


被害対策弁護団が動いた。

数日後、内容証明郵便+配達証明で、教団側へ通達書が出る。


通達

受任者:被害対策弁護団〇〇法律事務所

本件被害者・家族に対し、一切の接近・接触・通信を禁止する。

違反行為が確認された場合、緊急保全命令(仮処分)等の申立のほか、刑事手続を含む法的措置を直ちに講ずる。

あわせて、精神的苦痛に対する損害賠償及び、支払済金の全額返還を請求する。


玲子は封のコピーを握りしめ、深呼吸(4–6×3)。

「私の線は法の線でもある」——はっきり、そう思えた。


3. 走る警察—崩れる構造


警察は、受け取った記録束を基に、関係法令をフル活用した。

住居侵入未遂・威力業務妨害・脅迫・詐欺の疑い・特定商取引法違反……捜索差押令状が次々と降り、名簿・指示メモ・現金・高額物品の台帳が押収される。


週末の朝、ニュースのテロップ。


教団幹部 数名逮捕

“選別”と称した高額物品販売/恐怖の刷り込み/家庭分断の指示書を押収

性被害疑いでも別件捜査——


浩司は画面の音量を下げ、ひよりと玲子を見た。

ひよりは青を送ってから、静かに座る。

玲子は小さく頷き、ペンを持った。


4. 返す・謝る・守る


民事側では、弁護団が返金交渉と損害賠償に入る。

仮差押えの申立が通り、支払済金の返還合意書が書面になった。

玲子は面談室で、用意してきた三分割の謝罪を読む。

1.事実:「私はあなたに手を上げた。宗教行為を強要した」

2.責任:「それは私の責任で起きた。あなたのせいではない」

3.これから:「同意保護に従う。面会はルールの中で。治療と離脱の手順を続ける」


ひよりはうなずくだけで、深くは応えない。

その代わり、出来事メモに一行を足す。


またあした

大人の言葉が手順になった。私は耳を守れた。


5. 静かな夜—音が戻る


その夜、ベルは鳴らなかった。

窓の外は雨。ポツ、ポツがサラサラに変わる音が、やっと別の音に聞こえる。

玲子はテーブルの端に置いた小瓶に、紙を一枚落とした。


またあした

出ない・残す・知らせるを守った。

法の線と私の線が重なった。


浩司はポットから湯を注ぎ、三つのカップを並べた。

ひよりは湯気を見ながら、眉ピッをほんの少し上げる。

笑う代わりの合図で十分だった。


6. 後日談—失ったものと、戻ってきたもの


返還金は数回に分けて振り込まれ、被害届は告訴へと進む。

教団幹部の公判が始まり、構造が法廷で言葉になる。

学校は配慮登校を続け、ミライマートのレジ前には今も募金箱が置かれている。


光子と優子は、夜のビデオ通話で言った。

「線は言葉で引ける。手順は紙で残せる。笑いは、呼吸を取り戻す」


ひよりは頷き、一行を足す。


またあした

ベルは鳴らない夜もある。

好きだけど、これはできないを、今日も言えた。


——奪回は、一気に起きた奇跡ではなかった。

無数の半歩と、まっすぐな線の積み重ねだった。

そして何より、鳴らないベルの静けさが、家族にとっての新しい音楽になっていった。







灯りが残る家/拍手が響く署


博多・小倉家の居間


湯気の立つ急須。障子越しの夕日。

優馬と美鈴が湯呑みを手に、同じ方向を見て座っとる。


優馬「あの子ら、ほんと小さな変化ば見逃さんかったよなぁ」

美鈴「やね。普段から人と関わって、歌ば歌いよるけん、声の温度とか、表情の揺れに耳と目が効くっちゃ。**“なんか違う”**って、すぐ拾えたんやろね」


優馬「ひよりちゃんの安全と、これからの人生がちゃんと確保されて、ほんとよかった。線ばまっすぐ引けたのは大きい」

美鈴「半歩ずつやけど、半歩が道になるって、あの子らが一番よう知っとる。……えらかね、うちの娘たち」


二人は黙って湯呑みを鳴らす。コトン。

音は小さい。けれど、誇らしか。



警察署・感謝状贈呈式


正面玄関。

「本日の表彰式—地域連携功労」と書かれた立て看板。

ロビーに入った瞬間、署員たちのささやきがふくらむ。


「え、ファイブピーチ★の……」「テレビで見た子たちやん!」「本物や本物!」


スーツ姿の篠崎店長も少し緊張気味。

光子と優子は、深呼吸してから会釈。

(眉ピッは今日は控えめ45%)


壇上、署長が口上を読み上げる。


署長「あなたがたは、地域における安全確保と迅速な通報・記録保全、ならびに未成年者の保護連携において、顕著な功績を挙げられました。ここにその功績をたたえ、感謝状を贈ります」


まずは篠崎店長。

「駆け込みの受け入れ」「防犯カメラ映像の提供」「スタッフ周知」。

店長は深く頭を下げる。「当たり前のことをしただけです」


続いて、小倉光子・優子。

封筒から感謝状が渡される瞬間、後ろの若手警察官が小声で「ベースとドラムの人や……!」と呟き、隣に小突かれている。会場、ちょっとあったかく笑い。


光子(挨拶)「この度は、もったいなか表彰、ありがとうございます。うちらは合図と記録と深呼吸、それだけば愚直にやっただけです。線は言葉で引けるって、教えてもらいました」

優子(挨拶)「歌と笑いは呼吸を整える力があるけん、うちらはいつも通りをやっただけです。これからも、“出ない・残す・知らせる”を、みんなに広めていきたいです。ほんとに、ありがとうございました」


拍手。

署長がにっこりして、少しだけ肩の力を抜いた声で言う。


署長「たまには眉ピッもお願いします」

(会場、どっと笑い)


光子・優子そっと「眉ピッ45%」

カメラのシャッターが連続で切られる。パシャパシャ。


最後に三者で記念撮影。

センターに篠崎店長、両脇に双子。背後に「地域とともに」の横断幕。


式が終わってロビーへ。

若手署員が恐る恐る近づく。


若手「あ、あの……いつもテレビ見てます。今日の合図の話、交番の朝礼でも共有していいですか?」

優子「もちろん!青=平気/オレンジ=迎え/赤=至急電話。短くて伝わるのがコツ」

光子「それと**“私は”で始める言葉**。私は今は行けません。私は自分で考えたい。私は怖いからここにいます。……紙にも残しとってください」


外に出ると、夕風が少し冷たい。

表彰状の紙の張りが、手の中で頼もしい。

光子が空に向かって、ほんの少しだけ指で音符の形を切る。


光子「行こっか。次の“半歩”」

優子「うん。“またあした”の音量、ちょっと上げていこ」


ふたりの足音が、博多の空気にリズムを刻む。

歌と笑い、そして手順。

彼女たちの“いつも通り”が、街の灯りをまた一つ、明るくした。







校内案内のベルが鳴って


「作曲科一年・小倉光子さん、声楽科一年・小倉優子さん。

お客様が来所されています。学校事務室までお越しください」


昼下がりのキャンパスに、アナウンスがふわりと流れた。

ほどなくして、廊下の角から光子と優子が小走りで現れる。事務室のドアを開けると、椅子に並んだひよりと父・浩司、そして母・玲子。三人の顔色は、一ヶ月前とは別物だった。固く凍った表情の代わりに、いまは薄いけれど確かな光がある。


光子「来てくれてありがとう。……ずいぶん明るい顔になったね」

優子「合唱のほうは、いまどんな感じ?」


ひよりは少し照れて笑い、喉に手を当てる。

「重さが取れてきた感じがします。スクールカウンセラーさんにも、声の出だしが軽くなったって言われました」


その横で、玲子が立ち上がり、深く頭を下げた。

玲子「この度は、私たちのことで大変なご迷惑とご心配をおかけしました。……本当に、申し訳ありません」


浩司も続ける。

浩司「あなた方がいなければ、私たち家族はバラバラになっていたかもしれません。ありがとうございます」


光子と優子は顔を見合わせ、ゆっくり首を振った。


光子「いえ、そんな。私たちは声と言葉を仕事にしているだけです。声って心の状態がそのまま出るから、ひよりさんの**“いつもと違う”が耳に引っかかっただけで」

優子「それに、ひよりさん、うちのバイト先のコンビニをよく使ってくれてて、時々おしゃべりもしとったけん。あの日は表情も声の温度も『あれ?』って。だから声をかけた**。それだけです」


事務員が湯のみを三つ、そっと置く。温かい湯気が机の上に広がる。


ひより「“私は今は行けません”って言えるようになりました。あの言い方、効きますね」

玲子「……私も、まず事実と責任を言うところからやり直しています。『好きだけど、これはできない』も、口に出す練習をしています」


優子「それで十分です。半歩でいい。半歩は道になるけん」


ふと、事務室の窓の外を学生たちが通り過ぎ、こちらを見てひそひそと囁く。「あ、ファイブピーチ★の……」

優子が苦笑して小声で囁く。「ばれたね」

光子も肩をすくめ、「**眉ピッ45%**は封印で」と目で合図。三人の緊張が、そこで少しほどけた。


浩司「今日は、直接お礼を言いたかったんです。それと、学校にも挨拶を。配慮いただいて、本当に助かっています」


光子「こちらこそ。学校は味方です。何かあればすぐ連絡ください。合図(青平気/オレンジ迎え/赤至急電話)は、こっちでも覚えています」

優子「それから、ひよりさん。**“よかった一言”**は忘れずにね。深堀りしないで一言で締めるやつ」


ひより「はい。昨日は『合唱の入りが軽かった』って書きました」


玲子は湯のみを両手で包み、まっすぐ二人を見た。

玲子「ありがとうございました。……またあしたと言える夜が、家に戻ってきました」


光子・優子「またあした」


大学のチャイムが鳴る。次の講義の開始を告げる穏やかな音だ。

光子と優子は立ち上がり、ひよりの肩に一瞬だけ手を置いた。


光子「よく来たね。帰りは事務室から案内するけん、ゆっくりしていって」

優子「うちらは授業行ってくる。合図、忘れんで!」


廊下に出る直前、ひよりが小さく親指ちょんを送った。

二人も同じ合図を返し、教室へと駆けていった。

残った湯気の向こう、三人の表情はさっきよりも、もうひとつ明るい。

――声が戻ると、顔も戻る。そんな当たり前を、全員で確かめた午後だった。



去り際の約束、声で握手


事務室を出る前、光子がくるりと振り返った。


光子「ねぇ、去り際にひとつだけ。うちらは声出してナンボの世界やけん——

バイト休みのとき、一緒に歌ってみる?」


優子「軽く合わせて、呼吸合わせて、楽しく出すだけ。難しい話はナシ。どう?」


ひよりの目がぱっと明るくなる。

ひより「……はい! お邪魔させてください!」


横で玲子と浩司もほっと笑う。


光子「じゃ、水曜の放課後。学生会館の小ホールが空いとるけん、うちらで予約しとく」

優子「持ち物は水とタオルと**“よかった一言メモ”**。楽譜は現地支給。**眉ピッ45%**は各自で」


ひより「了解です!」

(思わず親指ちょん)


光子「合図も一応共有しとこ。青=平気/オレンジ=迎え/赤=至急電話。水曜の朝に青が来たら決行ね」

優子「当日は**“4吸って6吐く×3”**やってから入るよ。声は体から。笑いはオマケで」


事務員さんが「小ホール、ファイブピーチ★の方なら大歓迎です」と小声で囁き、三人で照れ笑い。

光子が手帳にでかでかと書く——「ひよりと“歌で合図”」。


玲子「本当に……ありがとうございます」

浩司「水曜、送ります」


ひより「水曜にまたあした!」


光子・優子「またあした(眉ピッ45%)」


廊下に出ると、昼のチャイム。

約束の時間が、もう小さな伴奏みたいに胸で鳴っていた





ひより家族、平穏のあとに天使砲


女子寮ラウンジ。

歌合わせを終えた光子と優子は、ひより、浩司、玲子とテーブルを囲んでいた。湯気の立つカップが四つ、空気は落ち着いてあたたかい。


光子「ひよりちゃん、今日は紹介したい家族がおるっちゃん。美香お姉ちゃんとアキラ兄ちゃん、それと——春介と春海」

優子「ビデオ通話つなぐね。出力注意のやつが来るけん、心の準備しとって」


ピロリン。画面に美香とアキラ、そしてソファからひょこっと春介と春海が顔を出す。


春介「みちゅこおねえしゃん! ゆーこおねえしゃん! こんにちは〜!」

春海「ひよりおねえしゃんも、こんにちは〜!」


玲子「……かわいい……」

浩司「(小声)これは反則だろ」


美香「はーい、ふたり。今日はやさしい出力でご挨拶ね?」

春介・春海「……(こそこそ)200ぱーしゃん?」


光子「いや下げて!」

優子「ほんと下げて!」


——が、もう遅い。


春介「ハイパー誘惑ウィンク——ぱちん! ぱちん! ぱちん!」

春海「極上投げキッス——ちゅっ! ちゅっ! ちゅっ!(連写)」


ラウンジに直撃音が響いた(気がした)。

ひよりの目が秒速でハート、玲子は両頬を押さえて前のめり、浩司は胸を撃たれたふりでソファに沈む。


ひより「うわ、くらった……! 心拍、上がりました……!」

玲子「ごめんの練習中やけど、これは無罪……!」

浩司「200%は法律で規制してほしい……!」


アキラ(苦笑)「ごめーん、調整つまみ壊れとるかも」

美香「ふたり、お姉ちゃんが**“やさしめ”**って言ったとよ?」


春介「やしゃしめ?(首かしげ)」

春海「やしゃしめって、200ぱーしゃん!」


優子「そこはゼロから学んで!」

光子「出力=ゼロ〜20からやり直そ。分数でいこ、5/100ね!」


二人は顔を見合わせ、今度はそっとウィンク一回、ふわっと投げキッス一回。

ラウンジがほどよく溶ける。


ひより「これがやさしめ……尊い……」

玲子「適量でも強い……」

浩司「適量を一生分やられた気がする……」


春介「ひよりおねえしゃん、がっこうがんばってね!」

春海「こえいたかったら、4すって6はく!(得意げ)」


美香「そうそう。深呼吸して、“よかった一言”でまたあしたよ」

アキラ「最後に記念撮影いこうか。**眉ピッ45%**で!」


画面越しに全員でポーズ。

光子・優子・ひより・玲子・浩司、そして春介・春海が眉ピッ。

カシャッ。スクショに笑い皺がきれいに刻まれた。


通話を切ったあと、ひよりが胸に手を当てる。


ひより「今日の“よかった一言”、決まりました。

『天使砲は適量でも効く。深呼吸で受け止められた』」


光子「満点」

優子「合図も忘れずに:青=平気/オレンジ=迎え/赤=至急電話」

玲子「青です。今日は平気。……ありがとうございました」


別れ際、春介から届いたスタンプは巨大ハート、春海からはウィンク顔。

ラウンジの空気がもう一段やわらかくなった。


光子「じゃ、またあした」

優子「またあした(眉ピッ45%)」


——平穏は、こうして笑いと声で上書きされていく。

200%の愛嬌は、今日は5/100に調整済み。

それでも、効き目は抜群やった。

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