表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三姉妹爆笑交響曲 — 大学生篇から陽翔&結音誕生まで  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/166

ストックホルムオリンピック開幕

――大会4日目、午前10時。

ストックホルム南部・国立テニスセンター。

夏の陽射しが、湖面を照らしてまぶしい。

メインコートの観客席は、朝から日本の旗で埋まっていた。


アナウンスが響く。


「Next match — representing Japan… Tsubasa Aoyagi!」


その瞬間、スタンドの一角で、ひときわ大きな拍手が起きた。

光子が立ち上がり、手を胸に当てる。

白地に赤の「TEAM JAPAN」タオルを肩にかけたその姿は、誰よりも誇らしげだった。


翼がコートに歩み出る。

サーブ練習の合間、ふと観客席を見上げた。

視線が合う。

一瞬、周囲の喧騒が消えたように感じた。


光子(口の動きで):「楽しんで。」

翼(小さくうなずきながら):「任せとけ。」


ほんの数秒のやりとり。

けれど、二人にとってそれは、何百時間もの練習より重い、

心を通わせる“約束の合図”だった。



試合開始を前に、ベンチ脇のコーチが光子に声をかける。

少し年配の、コテコテの大阪人。

ユニフォームの上からでも分かるほどの熱血漢だ。


コーチ:「あんさん、光子ちゃんやな? そや、彼の彼女やろ。

いやぁ、今の翼はええ顔してるで。ほんまに“戦士”の顔や。

あの精悍な目、見てあげてな。

大切な人のためやったら、あいつ、どんな相手にもビビらへん。」


光子は姿勢を正して、まっすぐ応える。


「ありがとうございます。

私も、翼が全力で集中できるように、

心から応援します。信じていますから。」


コーチ:「ええ返事や! その言葉、あいつの耳にも届いとるわ。

ほな、勝負の時間や!」



場内アナウンスが静まる。

審判がコイントスを終え、翼がサーブを選ぶ。

空は白夜の光を残したまま、夏の青に染まっていた。


光子の指先は、無意識にピアノの鍵盤をなぞっていた。

翼の一球一球が、彼女の中で音楽になって響いていく。


そして試合開始の笛。

翼の第一サーブが、ストックホルムの空を切り裂く。


その瞬間、光子の胸の中で、

「笑って前進」のメロディが静かに鳴り始めた。




――大会6日目・午後。

ストックホルムの空は今日も高く、透明だった。

白夜の太陽が傾き始めても、コートの上は明るいまま。


センターコートに立つのは、

第8シード・青柳翼(日本)。

世界ランキング10位。

3回戦からの登場だ。

観客席の一角、光子の姿があった。

胸に小さな日の丸のワッペン、手には折りたたまれたM&Yの応援タオル。



試合開始


相手は南米の若手有望株。

強烈なフォアと粘りのラリーを得意とする選手だが、

翼の集中は初球から違った。


サーブ、リターン、ネットプレー――

どれも研ぎ澄まされていた。


コーチがコート脇で小さくうなずく。

「今の翼、ええリズムや。無駄な力がどこにも入っとらん。」


光子の視線は、ただひとりの選手を追っていた。

翼のサーブが、風を裂き、コートに突き刺さる。



スコアボード


第1セット:6-2

第2セット:6-3


観客が立ち上がり、拍手の波。

わずか1時間半。完璧な試合運び。

ミスはわずか3本。

サーブエースは12本。


実況席が伝える。


「青柳翼、まさに危なげなし!世界10位の貫禄です!」



光子は立ち上がって拍手を送り、

その瞬間、翼がコート越しに手を上げて小さく笑った。

まるで、「ちゃんと見とった?」とでも言うように。


光子の目尻が少し潤む。


「うん、見とったよ。

あなたの“努力の音”が、ちゃんと聞こえた。」



試合後


インタビューで翼は笑顔を見せた。


「3回戦からの登場だったので、最初はリズムをつかむまで慎重に入りました。

でも、家族や仲間、そして…大切な人が見てくれてたので、

迷いは一瞬もなかったです。」


記者席から、「その“大切な人”とは?」の声。

翼は照れ笑いをしながら答えた。


「……みなさんご存じですよね。

世界で一番、笑いと音を愛する人です。」



控室に戻ると、スマホに光子からメッセージ。


「お疲れさま。最高やった。

翼のプレー、全部が音楽みたいやった。」


翼は短く返す。


「ありがとう。

君が見てると思ったら、ミスできんかったわ。」


その画面を見て、コーチが笑う。


「ははっ、やっぱりな。

愛されとるやつは、ほんま強いわ。」


翼はタオルで汗を拭きながら、

静かに呟いた。


「次は4回戦。

ここからが、本当の勝負や。」


そして、ストックホルムの白夜の空に向かって、

拳をひとつ、ゆっくりと握った。






――大会7日目。

卓球競技が行われるストックホルム・オリンピックアリーナ。

朝から各国の代表選手が練習を繰り返し、会場は金属音と歓声に満ちていた。

観客席の最前列には、優子の姿。

小さな日の丸を手に、静かに目を閉じて祈る。



男子シングルス3回戦


柳川拓実(日本) vs マシュー・レイン(南アフリカ)


拓実はシード枠として3回戦から登場。

ドローでは、中国代表とは反対側の山に入っている。

勝ち上がれば、決勝で激突する可能性がある。


試合前、コーチが短く告げた。


「焦らんでええ。最初の5点で流れをつかめ。」


拓実はラバーを撫でながら、深くうなずく。

そして、軽くラケットを叩いて呟く。


「優子、見とけよ。」



試合開始


第1ゲーム。

サーブからの3球目攻撃。

相手のリターンを読み切り、最初の5ポイントを連取。

ピンポン玉が弾けるたび、会場の空気が締まっていく。


実況:「柳川、立ち上がり完璧です!ボールがまるで吸い込まれるよう!」


第1ゲーム 11-4。

第2ゲーム 11-6。

第3ゲーム 11-5。


――ストレート勝ち。

わずか23分。

ラリーのテンポ、リズム、間の取り方。

すべてが音楽のように整っていた。



試合後、拓実はタオルを肩にかけ、観客席の優子を見つける。

その顔は汗に濡れながらも、少年のように無邪気だった。


優子(口パクで):「すごかった。ほんとに。」

拓実(軽く笑って):「まだまだ、これから。」


コーチが横で腕を組み、笑う。


「おう、ようやっとる。あの落ち着き、誰の影響や?」

拓実:「……そりゃ、優子の“ツッコミ訓練”ですわ。」

コーチ:「そら勝てるわ!世界一鋭いツッコミコーチやもんな!」



ニュース速報。


「柳川拓実、日本勢第1号の4回戦進出!」


同じ頃、ホテルのラウンジでは光子と翼がスマホでその速報を見ていた。

翼が笑って呟く。


「あいつもストレートか。やっぱ双子の家族は強いな。」

光子:「うん。優子が笑っとる顔が目に浮かぶもん。」


二人は拳を合わせた。

「次は、二人ともベスト8。そこからが勝負やね。」


白夜の空は、また少しだけ明るくなった。





――試合終了直後。

ストックホルム・オリンピックアリーナの中央に立つ拓実の姿が、

スクリーンいっぱいに映し出された。

観客席は大きな拍手に包まれ、

卓球台の上には、白いボールが一つ、静かに転がっている。


アナウンサーがマイクを持って近づく。


「柳川拓実選手、見事なストレート勝ち!

まずは試合を終えた今の気持ちを教えてください!」


拓実はタオルで額の汗を拭き、少し笑って答える。


拓実:「やっぱり、オリンピックの舞台は特別ですね。

緊張もあったけど、最初の1本で“いける”って思えたんで。

今日は自分のリズムで戦えたと思います。」


「序盤から攻めの姿勢が際立っていましたね。

特に第2ゲームのチキータからの三球目攻撃、完璧でした!」


拓実:「はい、練習で何度も繰り返してきたパターンなんで、

そこをしっかり決められたのは大きかったです。

でも今日は、ひとりじゃなく“チーム”で戦えた試合でした。」


「チームで、というのは?」


拓実は、少し照れたように笑い、観客席を見上げた。

カメラがその視線を追う――そこには優子の姿。

笑顔で、小さく手を振っていた。


拓実:「……優子、ですね。

ずっと支えてくれて、

“焦らんでええ、楽しんでこい”ってLINEくれたんですよ。

だから、今日はその言葉を胸にプレーしました。

うまくいったときも、ミスしたときも、

あいつの“ツッコミ”が聞こえてくる気がして(笑)」


観客席から笑いと拍手。

優子は顔を真っ赤にしながらも、立ち上がって拍手を送る。


「素敵な関係ですね。

次は4回戦、さらに強敵との対戦になりますが?」


拓実:「はい。でも、勝っても負けても、笑顔で終わりたい。

それがうちら(優子と)の約束なんで。

次も“笑って前進”で、全力でぶつかります!」


拍手が再び広がる。

実況の声が重なる。


「日本代表・柳川拓実選手、

恋人・優子さんへの感謝とともに、

ストレート勝利で堂々の4回戦進出です!」



その夜、ホテルのラウンジで光子がニュース映像を見ながら笑った。


光子:「やっぱり、言うと思った。拓実らしいね〜」

優子(耳まで真っ赤):「もーっ、全国放送で言わんでいいのに!」

美鈴:「でも、いいじゃない。

あんたたちの“笑って前進”、世界に届いとるよ。」


白夜の街の空に、

彼らの笑い声がゆっくりと溶けていった。





――卓球競技・第2週。

柳川拓実の快進撃は、まだ終わらなかった。


男子シングルスでのストレート勝ちに続き、

彼は男子団体戦とミックスダブルスにも出場する。



男子団体戦


チームメンバーは、

•柳川拓実(福岡出身・M&Yファミリー)

•松浦翔真(大阪出身・ペンホルダー)

•村瀬陽一(東京出身・左シェーク攻撃型)


初戦の相手はスウェーデン。

アウェー同然の大歓声の中でも、

拓実は冷静にサーブを放つ。

団体戦のトップバッターとして、

鋭いバックハンドと切り返しで観客を魅了し、

第1試合を3-0で完勝。


松浦、村瀬も続き、日本はスウェーデンを3-1で撃破。

日本卓球団体、順当にベスト8へ進出。



ミックスダブルス


拓実のペアは――


日向沙羅ひゅうが・さら選手。

広島県出身、23歳。

小柄ながら瞬発力と判断力に優れ、

女子ダブルスでもトップクラスの実力者だ。


試合前、インタビューで彼女は笑う。


「拓実くん、あんま無理して笑わせんでね。

試合中に笑いすぎて、ラケット振れんなるけん(笑)」


拓実も返す。


「うちの家族的には、笑いが原動力なんで。

笑って勝ちましょう!」



ミックスダブルス初戦


相手はイギリスのペア。

前衛に沙羅、後衛に拓実。

息の合ったコンビネーションでリズムを作り、

1セット目から完璧な形でポイントを重ねる。


第1ゲーム 11-6

第2ゲーム 11-8

第3ゲーム 11-7


ストレート勝ち。

会場の観客がスタンディングオベーションを送る。



試合後のインタビューで、司会者が尋ねる。


「お二人、本当に息の合ったプレーでしたね!」


沙羅:「はい! なんか、“阿吽の呼吸”って感じで!」

拓実:「でも、優子に“沙羅さんの方が合わせやすくない?”って

ツッコまれそうで怖いです(笑)」


会場に爆笑が起こる。

優子は観客席で思わず吹き出しながら、


「拓実、あとで説教やけんね〜!!」

と小さく叫ぶ。



男子団体、ミックスダブルス、そしてシングルス。

拓実はどの種目でも順当に勝ち上がり、ベスト8へ。

オリンピックの舞台で、

彼のスマッシュと笑いの波が、

今まさに世界を駆け巡っていた。



光子がストックホルムのホテルのロビーで言う。


「卓球界まで笑いに染まってきたねぇ。」

優子はにっこり笑って答える。

「拓実やけんね。

笑って、打って、勝って。全部“愛のツッコミ”たい。」






――大会は日本勢の勢いそのままに、白夜の空を染めていく。


日本代表の快進撃

•サッカー:男女ともにグループ突破。決勝トーナメント進出を決め、スタンドの「ニッポン!」コールが一段と厚くなる。

•柔道:ここまでに金4・銀2・銅4。畳の上で積み上がる一本の山に、会場スクリーンの国旗が何度も跳ねた。

•競泳:決勝進出ラッシュからのメダル量産。プールサイドに流れる君が代が、選手村の夜を明るくする。



翼・4回戦


昼下がりのセンターコート。

アナウンスが低く流れ、スタンドのざわめきが静まる。翼は視線を落とし、呼吸を整え、最初のサーブへ。


ラリーは最初から“主導”。相手の強打を早い準備のカウンターで跳ね返し、要所はネット際で仕留める。

6-3 / 6-2――ストレート勝ち。

拳を握って軽く掲げるだけの控えめなガッツポーズに、完成度の高さが滲む。


コートサイド。コテコテ大阪弁のコーチが、光子に肩を向けてニヤリ。


コーチ(大阪弁):「光子さん、今の翼は無敵やで。あの目ぇ、完全に“獲りにいく”目や。心配いらん、あとは楽しませたって。」

光子:「ありがとうございます。私も、翼が一番集中できる空気、全力でつくります。」


翼はベンチに戻り、タオルで汗を拭きながらスタンドを見上げ、口だけで「ありがとう」。




拓実・シングルス 4回戦


特設ホールは金属音と歓声の渦。

拓実は立ち上がりからサーブ→三球目→連打の基本形を徹底。相手のコース予測を一段ずらす横回転サーブで凡打を誘い、バックのチキータ→中陣ドライブが刺さる。


11-7 / 11-6 / 11-8――こちらも順当に勝利し、ベスト8進出。

タオルタイム明け、ベンチに戻る拓実の背中に、観客席の優子が小さく親指。


コーチが優子の席まで歩み寄り、深く一礼。


拓実コーチ:「優子さん、ほんまありがとう。彼が崩れそうな場面でも“戻れる場所”がある。あなたが作ってくれた安心の土台が、いちばん強い。」

優子:「いえ……私、横で“焦らんで”“笑って前進”って言ってるだけで。」

コーチ:「それが世界最強のコーチングや。技術はワシらが見る。心は、あなたが連れていく。」


拓実はコートから振り向き、二人のやり取りを見て、照れ笑い。




――オリンピック中盤。

ストックホルムの街は、日ごとに日本の国旗で染まっていった。


各競技での日本勢の快進撃

•フェンシングでは、男子フルーレ団体が劇的な逆転勝利。

キャプテンの勝利後の涙に、会場全体がスタンディングオベーション。

•女子バレーボールは、強豪ブラジルをフルセットで下し、準決勝進出。

“ニッポン、チャチャチャ”のコールがストックホルムに響く。

•バドミントンでは、男女シングルス・混合ダブルスともに安定した強さを見せ、

「シャトルの魔術師」と海外メディアが称賛。

•そして——

テニスの翼、卓球の拓実。

二人の競技も、まるで呼吸を合わせるかのように勝ち上がっていく。



拓実の連戦


男子シングルス4回戦を終えた拓実は、

1日だけのインターバルを挟んで、

男子団体戦とミックスダブルスに再び登場。


ミックスの相方・日向沙羅とのコンビはますます息が合い、

二人の間で交わされる短いアイコンタクトだけで戦術が伝わる。


沙羅:「前詰めるよ!」

拓実:「了解、フォロー任せて!」


息の合った動きで、中国ペアをフルゲームの末に撃破。

観客席では優子が涙をぬぐいながら拍手を送る。


団体戦でも拓実は第1シングルスを任され、

安定のストレート勝ち。

日本は準決勝進出を決める。



翼の健闘とエール


同じ時間帯、別会場では翼が4回戦を制し、ベスト8へ。

スタンドの光子と目を合わせ、拳を突き上げる。

光子も胸の前で小さく手を握り返す。


試合後の取材で翼は笑って言う。


「卓球もテニスも、うちのチームは“ダブルスマイル作戦”でいくんで。」

「拓実も優子も、どっちも笑顔で勝つのが理想っすね。」



ストックホルムの夜


ホテルのロビーで光子と優子、拓実、翼、コーチ陣が集まる。

テーブルの上にはスウェーデン名物のシナモンロールとハーブティー。


翼:「フェンシングもバレーもすごかったね。」

優子:「あの団体の一体感、見てて鳥肌立ったもん。」

拓実:「ほんまやな。俺らも“チームジャパン”で笑顔つなげよう。」

光子:「笑いと勝利のハイブリッド。これが日本代表やね。」


全員が笑い、肩を叩き合う。

その瞬間、記者が偶然通りかかり、

「この笑顔、金メダル級」とSNSに投稿。

数時間後には世界で数百万の“いいね”がついた。



次はいよいよ準々決勝。

金メダルへ——

白夜の街に、再び笑いと希望の光が燃え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ