作戦会議
日下部家、夜の境界線
玄関の鍵を回した瞬間、日下部ひよりの耳に、居間から激しい声が飛び込んできた。
蛍光灯の白が、テーブルの縁だけをぎらりと光らせている。
母・日下部玲子「私はみんなが幸せになれると信じて一生懸命やってるのよ。なんでわかってくれないの!」
父・日下部浩司「おまえとひよりは親子だ。だけど、ひよりにはひよりの人生がある。ひよりの幸せを願うなら、ひよりを自由にさせてやれ」
玲子「ひよりの幸せ? 私の言うことを信じてついてくれば間違いないのよ。あなたも私の言うこと聞いてたら間違いないのよ!」
浩司「俺には俺の生き方がある。夫婦でも、それは当然の権利だろ」
空気がピンと張り詰めた。
ひよりの手が、鞄の持ち手をぎゅっと握りしめる。
「……もうやめて」
居間の入口に立ったひよりの声は、震えていたけれど、真っすぐだった。
ひより「こんな言い争いが続くなんて、もう嫌。
私は、何があっても、私らしく、自分の信じた道を歩いていきたい」
玲子が一歩、こちらへ踏み出す。
浩司がそっと手を上げ、言葉を挟まない合図だけを送る。
玲子「ひより、あなたはわかってない。世界には——」
ひより「お母さんが信じる世界を、否定したいんじゃない。
でも、信じるかどうかは私が決めたい。
今は行けない。怖いと思う場所には、行きたくない」
言い切ると、胸の奥がドクンと鳴った。
玲子の口が何かを言おうとして、音になる前に止まる。
浩司は、息を吐くだけで、誰も責めない目をしている。
ひより「——ごめん。自室にいる」
靴下の足音が廊下を渡り、ドアがカチャと閉まる。
部屋の明かりは柔らかいオレンジ。
鞄を置いて、ひよりは机に座り、スマホを開いた。
画面のメモには、夕方ベンチで教わった**“出来事メモ”**のフォーマット。
指が動く。
日付:○月○日
出来事:居間で入信の話。参加の強い誘い。
気持ち:怖い、でも言えた。
境界線:**「今は自分で考えたい/行けない」**と伝えた。
保存の音が小さく鳴る。
次に、ひよりは録音アプリを開いた。
深呼吸——4つ吸って6つ吐くを3回。
さっき練習した8小節を、小さな声で吹き込む。
スピーカーから返ってきた自分の声は、体育館みたいに大きくはないけれど、温度があった。
「……ぬくい」
つぶやいて、ひよりはLINEを開く。
家族グループではない、約束のスレッドに、青をひとつ送る。
—いまは大丈夫の合図。
続けて、浩司に「話した。境界線、言えた」と短くメッセージ。
既読がすぐに付いて、「よく言えた。ここにいる」の返信。
少し間を置いて、「日曜の件、時間OK」と一文が続く。
ベッド脇の棚には、レシートを三つ折りにして作った小さな瓶。
紙を一枚ちぎって、さらさらと書く。
“またあした”
今日は線を引けた。怖かったけど、言えた。
紙片を落とすと、コトンとやさしい音がした。
胸の張り詰めが、ほんの少しゆるむ。
廊下では、まだ遠いところで低い話し声が続いている。
ひよりは、枕元のライトを落とし、スマホの通知をおやすみモードに切り替えた。
目を閉じる前に、もう一度だけ録音を再生する。
重いと言われた自分の声が、ぬくいと感じられる。
その差分が、今夜の味方だった。
——またあした。
ひよりは小さく口の中で言って、毛布を肩まで引き上げた。
ドアの向こうで、誰かのため息がひとつ、静かにほどけた気がした。
夜の小さな作戦会議
ノックが二度、やさしく続いた。
「……ひより。入っていいか」
日下部ひよりは枕元のライトを少し上げ、「どうぞ」と言った。
ドアの隙間から父・浩司が顔を出す。ネクタイは外れて、目の下にうっすら疲れがある。
「ひより……ごめんな。どう言っていいのか、俺にもわからん。俺はどうしたらいい」
ひよりはベッドの端をぽんと叩いた。「座って。今日のこと、順番に話すね」
深呼吸をひとつ。4吸って6吐く。それから、ゆっくり言葉を置いた。
「今日ね、音大前のコンビニに立ち寄ったの。双子の店員さんがいて、私の異変に気づいてくれて……。小倉さんっていう姉妹。
お母さんが博多で幼稚園の園長先生、お父さんが子どもの保護と権利の仕事をされてるんだって。
それで——今度の日曜の19時半から、リモートで相談に乗ってもらえることになった」
浩司の肩が、目に見えて下がった。「……ほんとに?」
「うん。しかも、コンビニの店長さん(篠崎さん)や、他のバイトの人にも共有してくれて、私が駆け込んだら助けてくれる体制まで作ってくれたの。
合言葉も決めてある。『ホットのM、ゆっくりで』って言ったらバックヤードに通してもらえる。
外ではこの**合図(青=平気/オレンジ=迎え希望/赤=至急電話)**を使う」
浩司は何度もうなずいた。手のひらが膝の上でぎゅっと握られて、ほどける。
「……ありがとう。ひよりが自分で動いたんだな。父さん、正直、無力で、どうしてやればいいか迷子だった」
ひよりはスマホを開き、さっき録った8小節を再生した。
小さな声が、部屋の空気にふくらんで、温度を作る。
「重いって言われたけど、私、自分で聴いたらぬくいと思えた」
浩司は目を細めた。「ぬくい。包む声だ。父さんはそう思う。……だから、怖いと感じる場所に、無理に連れて行かせたりはしない。
明日、父さんから学校にも連絡する。担任とスクールカウンセラーに、一緒に相談したいって。
それと、家では夜に言い争わない。今日のは父さんも悪かった。ひよりの前で声を荒げない。約束する」
ひよりは小さくうなずいた。「ありがとう。境界線、私も言う練習するね。『今は自分で考えたい』『怖いから行けない』って、**“私は”**で始めて」
「いいね。父さんも言い方、気をつける。……それから、避難ポイントをもう一度確認しよう。学校の正門、図書館、交番、例のコンビニ。地図に星つけておく。家の冷蔵庫にも貼ろう。
緊急連絡カード、父さんが作る。番号と手順を一枚に」
ひよりの表情が、少しだけほどける。「ありがとう」
廊下のほうから、食器が触れる微かな音。母の気配がかすかに揺れた。
浩司は一度そちらを見、それから娘に向き直る。
「母さんとも、時間を置いて話す。責めるんじゃなく、線の話をする。
『好きだけど、これはしない』っていう線は、愛情と両立するって、教えてもらったから」
「うん……。父さん、日曜、一緒に出てくれる?」
「もちろん。顔出しナシでも、ありでも、ひよりの安心に合わせる」
部屋の空気に、少しだけ余白が戻った。
浩司は立ち上がりかけて、ふと動きを止める。
「……抱きしめてもいいか?」
ひよりは、瞬きひとつ。それから、うなずいた。
短いハグ。深呼吸が同じテンポになって、離れる。
「これ、“またあした瓶”」
ひよりは小さな瓶を見せ、紙を一枚ちぎった。
さらさらと書く。
またあした
父さんと線の話ができた。一緒に相談の約束。
紙片がコトンと落ちる。
浩司もメモ帳を取り出し、四角い字で一行だけ書いた。
父の役目:守る/聞く/一緒に考える
二人は顔を見合わせ、同時に小さく言った。
「またあした」
ドアに手をかける前、浩司が振り返る。
「合図、必ず見る。赤が来たら、即電話。オレンジが来たら迎えに行く。青は親指ちょんで返す」
ひよりは笑って、親指ちょんを返した。
ドアが静かに閉まり、廊下の足音が遠のく。
ひよりはライトを落として、スマホをおやすみモードに。
枕元の録音をもう一度だけ再生して、目を閉じた。
——今日の「線」はまっすぐ引けた。
日曜の線路は、もう見えている。
線を引く前夜:三姉妹の作戦会議
夜。寮の部屋。
光子と優子がタブレットを立て、ビデオ通話のアイコンを押す。
数秒後、画面に美香の顔。いつもの柔らかい笑みは影を潜め、目の奥がまっすぐだ。
美香「あんたたち、顔つきが違うね。……何かあった?」
光子「うん。ひよりちゃんの件。さっきコンビニに来てね、話を聞いたんよ」
優子「学校のソロ降ろされたこともやけど、お母さんが宗教に深く傾いてて、入信を迫られとる。お父さんとひよりちゃんは拒んで、家で対立が続いとる」
美香の表情が静かに固まる。
「わかった。……続けて」
光子「うちらから日曜19:30にリモートで繋げる段取りにした。お父さん・お母さん(優馬・美鈴)、ひよりちゃん、ひよりちゃんのお父さん、それと美香お姉ちゃん。虐待サバイバーとしての視点も、言葉の選び方も、力を貸してほしい」
美香は一度だけ深呼吸して、短くうなずく。
「受けるよ。その前に——その宗教団体の名前、わかる? 相手の素性が見えんと、手の打ち方の準備が難しいけん」
優子「まだ聞いとらん。連絡先は交換しとうけん、今から確認してみる」
光子「公開情報や相談事例も、事前に洗っとく」
美香「よし。こっちもできる限りやる。ただね——一番大事なのはあんたたちの安全。不利益を被らんように、名前や詳細の扱いは慎重に。当日の役割分担も明確にしとこ」
光子「役割、決めよっか」
優子「うちはファシリ。開始と終了、ルール宣言と時間配分。
“中断して深呼吸していい”“録音はしない”“誰かがつらくなったら休憩”を冒頭に共有する」
光子「うちは事実整理と境界線の言い回しをサポート。
“私はで始めるメッセージ”“好きとできないは両立”の型」
美香「私は安全計画と支援ルート。学校・スクールカウンセラー、地域の相談窓口、避難ポイントの確認。あと、記録の付け方」
優子「父(優馬)は制度・手続きの説明、母(美鈴)は子どもの権利の視点と聴く姿勢の見本、でええね」
美香「完璧。……それから、当日は対立の勝ち負けに行かんように、“今夜決めるのは線だけ”って最初に地図を引く。
“信仰の否定”やなくて“ひよりの自由と安全”の話に軸を置く」
光子「了解。……じゃあ今、ひよりちゃんに確認LINE入れるね」
(光子、画面の外で素早く打つ)
『日曜の打ち合わせに向けて確認です。お母さんが傾倒している団体名、わかる範囲で大丈夫。無理はしないで。あと、**当日のルール(録音なし・途中休憩OK)**を共有してもいいか確認させてね』
優子「店長の篠崎さんにも、合言葉と避難導線は共有済み。“ホットのM、ゆっくりで”が来たらバックヤードへ」
美香「ナイス。現場の明かりがあるのは大きい」
タブレットの向こうで、美香が一度、視線を落としてから顔を上げた。
「最後。あんたたち自身のために、当日終わったあとのクールダウンを決めとこ。三人で15分、“よかった一言だけ”を出し合って、それ以上は深掘りしない。眠ることも支援のうち」
光子「了解。**“またあした瓶”**に一枚ずつ入れる」
優子「**眉ピッ45%**で締めやね」
ちょうどその時、光子のスマホがピロンと鳴る。
ひよりからの返信だ。
『団体名、これです。学校にも相談予約入れました。日曜お願いします。
“好きだけど、これはしない”の言い方、練習してます』
光子「来た。名前、届いた。学校予約も取れたって」
美香「受け取った。事前資料、まとめとく。日曜は私が一番後ろで支える。
——よく動いたね。半歩じゃなくて、半歩×三くらい進んだよ」
優子「ありがとう先出し」
(胸に手→うん→親指ちょん)
光子「またあした」
美香「またあした。ちゃんと寝ること」
通話が切れて、部屋に静けさが戻る。
光子と優子は同時にメモを一枚ずつちぎった。
光子:地図は描ける。線はまっすぐ引ける。
優子:守る順番——命・心・言葉。まず深呼吸。
二枚がコトン、コトンと瓶に落ちる。
その音だけで、部屋の空気が少しだけやわらいだ。
夜の下調べ—「線」を守るための準備
双子から届いたメッセージに、団体名が添えてあった。
美香・優馬・美鈴はそれぞれの端末に名前を打ち込み、静かに画面を追う。
数分後、三人の眉間に同じしわが寄る。
美鈴「……なんばこれ。被害対策の弁護団ができとるやん」
優馬「被害報告、多数。高額物品販売に、多額の現金要求。それに——」
美香「“教祖による淫行の疑い”。脅しや中絶強要の事例報告まで……。“口外すれば地獄”って、露骨な支配やん」
三人は同時に、短く息を吐いた。
優馬「構造ははっきりしとる。金銭要求、恐怖による支配、性的搾取疑い——家族の分断で孤立させる」
美鈴「ひよりちゃんとお父さんが、よう踏ん張っとる。今はまず安全確保と事実の整理やね」
美香「うん。日曜19:30のリモートまでに、役割と手順を固めよ」
⸻
当日の役割(確定)
•優馬:全体の安全設計と制度の道案内。
「学校の相談窓口/スクールカウンセラー」「地域の公的相談」「必要時の警察・児相へのエスカレーション」を地図化。
•美鈴:子どもの権利と境界線の言い方。
「私はで始めるメッセージ」「好きだけど、これはしないの線引き」を言葉に整える。
•美香:トラウマ配慮と記録の付け方。
事実を書き残すテンプレ(日付/出来事/言われた言葉/感情)を用意し、呼吸法・クールダウンをガイド。
優馬「冒頭でルール宣言しよう。録音しない、途中離席OK、誰かがきつくなったら即休憩、今日決めるのは“線”だけ」
美鈴「“信仰の是非の討論には入らん**”と明言。話題はひよりの安全と自由に限定」
美香「同意。対立の勝ち負けにいった瞬間、泥沼になる。合図(青/オレンジ/赤)は父子で運用継続。避難ポイント(学校正門・図書館・交番・例のコンビニ)も再確認」
⸻
事前に準備するもの
•スクショ・メモ:SNSや発言の記録(日時・内容・スクショ)。
•相談先カード:学校窓口/地域の相談機関/必要時の通報窓口(具体名は当日画面で提示)。
•言い回しカード(美鈴作):
•「今は自分で考えたい」
•「怖いから行けない」
•「私が信じるかどうかは私が決める」
•「好きだけど、これはできない」
•クールダウン手順(美香作):4吸って6吐く×3回→保温飲料→**“よかった一言”で締め→睡眠**
⸻
美香「双子ちゃんには“団体名の取扱いは慎重に”“不用意にSNSで触れない”も伝えとく。実名や詳細の公開は弁護士の指示待ち」
優馬「当日は感情の沸点に触れたら、俺が即中断の合図を出す。言い合いにしない。
それと、母親の孤立を深めん工夫も要る。“あなたが悪い”ではなく、“これは家庭の安全の手順”として伝える」
美鈴「“あなたの信仰を否定しない。でも、娘の自由は守る”——両立の言い方やね。非難語は使わん」
美香「了解。日曜までに、私のほうで過去事例の一般的対策もまとめとく」
三人は画面越しにうなずき合った。
空気は張りつめていたが、次の一手が形になっていく感触は確かだった。
優馬「……腹を据えよう。線はこちらが引く」
美鈴「ひよりの歩幅に合わせて、半歩ずつね」
美香「届く声で、まっすぐ」
最後に、美香が短く付け加えた。
美香「そして、あんたたち(光子・優子)も守る。圧が来たら即共有。一人で受けない。
——よし、動こ」
三人は、それぞれの机の上に小さな紙片を置いた。
“またあした”
線はまっすぐ。言葉はやさしく。手順は具体。
紙片がコトンと落ちた音が、夜の準備完了の合図になった。
日曜19:30、線を引くためのリモート
午後。
光子と優子は、グルチャに最終の共有を投げた。
•進行(優子):録音なし/途中休憩OK/今日は“線”だけ決める
•整理(光子):出来事メモと言い回しカード(「私は〜」「好きだけど、これはできない」)
•安全(美香):呼吸法4–6×3回/クールダウン手順
•制度(優馬):学校・公的相談の道順
•権利(美鈴):子どもの自由と境界線
•合図:青=平気/オレンジ=迎え希望/赤=至急電話(父娘で運用継続)
•駆け込み先:学校正門・図書館・交番・例のコンビニ(合言葉「ホットのM、ゆっくりで」)
「ありがとう先出しで始めて、**眉ピッ45%**で締め。—OK?」
全員:了解
⸻
19:30 通話開始
画面に並ぶ顔。
ひより、父・浩司、優馬、美鈴、美香、そして光子・優子。
優子(進行)「こんばんは。最初にルールだけ。
録音はしません。途中で離席・休憩OK。今日決めるのは“線”だけです。信仰の是非の討論はしません。よかですか?」
全員がうなずく。
光子「それと、ありがとう先出しから始めさせて。
ひよりちゃん、まず話してくれてありがとう。浩司さん、娘さんを守るために動いてくれてありがとう」
ひよりの目が、少しやわらぐ。
⸻
1)近況と事実の整理
ひより「この数日、出来事メモを続けました。学校には相談予約、担任とスクールカウンセラーに会います。
家では『今は自分で考えたい』『怖いから行けない』って**“私は”**で伝えました」
浩司「合図は運用中。赤が来たら即電話、オレンジなら迎え、青は親指ちょんで返します」
光子「よか流れ。事実は日付/言われた言葉/気持ちの三点を一行で。SNSはスクショして時刻だけ添えてね」
⸻
2)安全の地図
優馬(画面に簡単なフローチャートを出す)
「明日以降の道順です。
① 学校窓口(担任・SC)で共有
② 必要なら地域の相談機関へ同席
③ 緊急時は最寄り交番へ→父へ連絡→安全確保
家の中では——夜間に言い争わない、連れ出しの強制はしない、録音・撮影はしないを“家庭の手順”として紙にします」
美鈴「言葉の型は優しいけどぶれないように。
•私は今は行けません。
•私は自分で考えたい。
•私は怖いから、ここにいます。
—この**“私は”**で始める形が、線になります」
ひよりがメモに書き写す。
⸻
3)体と心の守り方
美香「きつくなったら体から整えるよ。
4吸って6吐く×3回→あったかい飲み物→**“よかった一言”で締める。
メモは事実と自分の気持ちだけ。相手の人格評価は書かない。将来の自分の味方**になるから」
ひより「……できます」
美香「えらい。できることだけやればいい。半歩で十分」
⸻
4)家庭の“線”の言い方(試作)
光子「今、ひより→母への言い方、一緒に作ろ。
『お母さんの信仰は否定しません。でも、私が信じるかは私が決めます。今は行けません』
——この三点セット、覚えやすい?」
ひより「はい。覚えます」
美鈴「好きとできないは両立するよ。『好きだけど、これはできない』は大事な線」
浩司「俺も、夜の言い争いはしないと約束します。言い方を守ります」
⸻
5)合図と駆け込み
優子「合図は据え置き。
青平気/オレンジ迎え/赤至急電話。例のコンビニは合言葉『ホットのM、ゆっくりで』でバックヤードに通されます。
避難ポイント(学校正門・図書館・交番・コンビニ)は地図に星で印を」
ひより「もう印つけました」
⸻
6)クールダウンの約束
美香「今日の最後は**“よかった一言だけ”**。深掘りしない。眠ることも支援」
ひより「言えたこと。『今は自分で考えたい』が、ちゃんと言えた」
浩司「一緒に地図を見られた」
優馬「線を“手順”にできた」
美鈴「“私は”で始める言葉が届いた」
光子「半歩が道になった」
優子「合図が味方になった」
美香「眠る準備ができた」
優子(進行)「時間です。次の約束だけ確認。
•明日:学校で担任・SCに相談(父同席)
•メモ:一行で継続
•合図運用:継続
•家庭の手順:紙で可視化
みんな、ありがとう先出し」
(胸に手→うん→親指ちょん)
全員「またあした」
光子・優子「眉ピッ45%」
通話が切れる。
静かな画面に、自分の顔だけが残った。二人は同時にメモを一枚。
“またあした瓶”
線=言葉+手順。今夜、まっすぐ引けた。
コトン。
瓶の小さな音が、日曜の夜をやさしく締めた。




