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20.この気持ちは本物だから

 息が止まったという言葉が正しいのかもしれない。

それが止まったのではなく、止められたと気づいたのは、口を塞ぐ一人の少女が唇を離したときだった。


「あ…え…?」


困惑した僕を他所に、秋山さんは僕の目を見てこう言った。


「ずっと…好きでした」


と。

それが嘘だと思えるほど、秋山さんの顔は赤くなっていき、弱々しい声で「何か言ってください」と呟いた。


「あ…う…」


どうしてだろう。胸が痛くて、涙が溢れて、でも、心の中では嬉しくて。


…ああ、そうか。きっとこれはーーーー




 ある秋の季節を迎えた年。僕は二人の女の子と一緒に遊んでいた。

見覚えがある、白銀色の髪の女の子と、黒い髪の頼れるお姉ちゃん。

白銀色の髪の女の子は、いつも楽しそうだった。


「歩くん! いっしょにあそぼ!」

「歩くん、けがしてない?」

「歩くん。わたしね、かなでっていうの。」


僕は、その女の子にいつも笑顔にさせてもらっていた。忘れられないあの笑顔で。


「かなでちゃん、いいなまえだね」

「かなでちゃんのかみ、きれい」

「ぼく、かなでちゃんのことーーー」



でもそれは、長くは続かなかった。次の年の秋、女の子はいなくなってしまうのだ。


「ごめんね、歩くん。わたし、ひっこすの」

「さいごに、いっしょにあそぼ?」


僕は泣いたのだろうか。それとも、怒ったのだろうか。


「…もう、あえなくなるの?」

「いやだよ。いっしょにいたいよ」


でも、女の子は僕の左頬に口をつけ、僕の目を見て言った。


「だいじょうぶだよ。わたし、歩くんのことわすれないから。ずっと『すき』でいるから」


そのとき、僕はこう言った。


「なら、ぼくも、かなでちゃんを『すき』でいる!」



……そっか。答えなんて、最初から決まってたんだ。


「僕も、奏を好きでいたよ」


この声は届いたのだろうか。不安だ。どうして何も言ってくれないの?


「……。」

「……。」


ああ、そうか。覚えているのは…きっと僕だけ。

奏は、もう忘れているんだ。仕方ないことだ。もう、何年も前のことなんだから。


でも、その諦めは、まだ早い。僕は歪んだ視界で、奏の口が震えるのを捉えていた。


「ずるい…です」


「なんで、歩くんも、覚えてるんですか」


そうだ。だからこそ、奏には笑顔にさせられるんだ。

だって…


「好きだからだよ」


今ははっきり分かる。『彼女』は笑っているのだと。

だから、彼女の言うことなんて、すぐに分かる。ずっと好きな彼女だから。


「私もですっ!」

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