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10/16

10.デートだね 後

 昼食を終えた僕たちは、ショッピングモールの中をぶらぶら歩くことにした。姉さんはまたどこか気になるところがあったそうで別行動をしている。


 お昼過ぎということもあり、お客さんが少し増えているのが分かる。

 僕たちはできるだけ離れないようにしながら一階にあるお店を見て回った。一階は車を売っているところや文房具売り場、本屋にスーパー、服屋、フードコートが並んでいた。食器売り場もここにある。

 秋山さんは特に気になったお店はなかったようで、フードコートとは反対側の果てにあったエスカレーターで二階へ上がった。


 二階では一階の通路の両端の幅5メートルほどの上にだけ通路がある。それより内側は吹き抜けになっていて一階を見渡せる。

 たまに二つの通路をつなぐ通路があり、反対側の通路へと渡ることができるようになっている。

 通路には店舗が沿っていて、主なお店は映画館に本屋、服屋、100均ショップ、家電量販店がある。


「なかなか広いですね」

「そうだね。迷子になりそうでちょっと不安かも」


僕がそう言うと、そっと左手を握られた。繋がった手から腕へ、さらに肩、顔まで目で追っていくと、頬が赤くなっているのが分かる。


「これなら不安にならないですか…?」

「う、うん…!」


はぐれる不安はなくなったけれど、これを同じ学校の人に見られないかが不安になってきた。

 でも、勇気を出して手を繋いでくれた秋山さんにそんなことを言うのは酷いと思い、言葉は飲み込んでおいた。



 三階より上は立体駐車場なのでお店はなく、フードコートの方に向かいながら二階を探検しながら歩き始めた。特にめぼしいお店もなく、いつの間にかフードコートの上にあるお店のゲームセンターにやってきていた。

 なぜゲームセンターにいるかと言うと、秋山さんがクレーンゲームの装置の中に、気になるものを見つけたからだ。

 秋山さんが狙っているのは高さ10センチくらいのデフォルメされた猫のぬいぐるみ。白猫と黒猫がたくさんのピンクや水色のボールの上に倒されて置いてある。やはりアームの掴む力が弱く、掴んだと思っても穴の上に来る前に落ちてしまう。

 底に敷かれたたくさんのボールによってバウンドもなく、ラッキーで落ちることもなさそうだ。またアームから離れた白猫は、ボールの間に落ちてほぼ垂直に立って秋山さんを見つめる。


「うぅ、取れません……」


5回プレイをして、白猫が取れなかった秋山さんは悲しそうにする。そんなにほしいなら手伝ってあげたいけれど、本人が取った方が嬉しいのでは?とも思ってしまう。


「歩さんは、こういうの得意ですか?」


秋山さんは期待に満ちた視線を送りつけてくる。これ、もしかして僕がやるパターンか…?


「得意…といえばそうかもしれないけど、姉さんの方が上手だよ?」

「でも、忍さんにいきなり来てほしいとも言いにくいですし…」


秋山さんがしゅんとした顔になっている。一緒に回っているのに秋山さんが楽しめないのは僕も辛い。姉さんには昔、『男には覚悟を決めるときがある』って言われたことがある。覚悟を決める…。秋山さんの笑顔のために、覚悟を!


「…分かった。頑張る」


秋山さんから操作を変わってもらい、垂直に立つ白猫を見る。確かにかわいいけれど、僕としては黒猫の方が好きかもしれない。でも、今回は秋山さんのため。じっと見つめてくる白猫を取るために、百円を投下する。

 クレーンゲームを忍から教えられたことがあり、大抵のクレーンゲームでは5回以内に取れることの方が多い。秋山さんに操作を慎重に観察されながら、一回目のチャレンジを始める。

 この手のゲームはどれだけ商品の重心を捉えられるかだ。先程までの奏のチャレンジを見ていて、アームの強さ関係なく、技術だけで取れると思う。

 1のボタンで横に移動させて、良さそうなところで離す。もう一度1のボタンを押すことができなくなったので、次は2のボタンを押して奥へと移動させる。2のボタンを離すと、アームは自動で下がっていき、白猫の頭を挟む。

あれ?意外にアームの強さある?

 一回目だったのに、たまたま良いところを掴んだのか、白猫は穴の上までアームに支えられてきた。アームがゆっくり開き、穴に白猫が落ちた。


「落ちました!凄いです!」


はしゃぐ秋山さんを見て、もしかしてとても下手なのでは?と思ってしまったけれど、本人の前では絶対に言えない。クレーンゲームの取り出し口に落ちた白猫を取り出して秋山さんに差し出すと、秋山さんはきょとんとする。

 これじゃなかった…?


「あ、いえ、いらないというわけではなくて…!その、取ったのは歩さんですし、これは歩さんが持っていてください。私は黒猫ちゃんのほうを…」


秋山さんがクレーンゲームの前に立ち、お金を入れようとしたそのとき、どこからともなく現れた男性店員さんが話しかけてきた。


「お客様!おめでとうございます!商品は取ったら、先にあちらのカウンターまでお持ちください」

「そうでしたか。初めて来たのでそういうことはよく分からなくて。ご親切にありがとうございます」


秋山さんと共にクレーンゲームの台の前を離れると、男性店員さんは商品を補充した後、何やらしゃがみんこで調整をしている。あれは確実にアームの強さを調整している。この後奏がプレイするのに、その調整は厳しい。


「おめでとうございます!こちらの袋に入れておきますね」

「こんなことまでしてくれるんですか!ゲームセンターはすごいです。ね、歩さん?」

「え、ああ、うん」


カウンターにいた女性店員さんが袋に商品を入れている間に調整が終わったのか、男性店員さんは先程までいたクレーンゲームの台の前から離れていく。


「では、私は黒猫ちゃんを取りに行きます」

「え、あ、その……」

「取れたら交換しましょう?プレゼントみたいでいいかもしれませんね!」


きっと調整されてアームの力が弱くなっていて取れないオチが分かり、止めようと思ったけれど、彼女のやる気の前で水を差す気にはならなかった。



 再びクレーンゲームの台の前に戻ってきて、秋山さんは取った白猫が戻っているのに驚いていた。そして、棚から補充された白猫に加え、さっきまで端の方にいた黒猫が中央の取りやすそうな位置で奥側に倒されるような配置にされている。

 秋山さんは100円を入れて、ゲームにチャレンジする。

まずは1のボタンを押してアームを横に移動させていく。いい位置で1のボタンを離し、今度は2のボタンを押してアームを奥へと移動させる。

 だか、離すのが遅かったため、アームは倒れた黒猫の頭を掴んだ。


……そう、そこまでは良かった。


 なぜか先程より黒猫を掴むアームの力が強くなっていて、黒猫の顔がアームで少し潰れている。

 重心を捉えていないのに関わらず、黒猫は穴の上でアームから解放され、顔の形を戻しながら、ストンと穴に落ちた。

 一発クリア。先程までのアームの強さでは確実に取れていなかっただろう。

 まさかさっきの男性店員さんが…?


「と、取れました!歩さんがお手本を見せてくれたおかげです!」

「上手だったよ!」


さっき話しかけてきた男性店員さんが急ぎ足で現れ、先程と同じことを言う。


「お客様!おめでとうございます!商品はあちらのカウンターまでお持ちください!」

「はい。分かりました!」


黒猫を取った喜びで秋山さんは男性店員さんが鍵をすでに取り出していたことには気づかなかったようだが、僕は男性店員さんに一礼して、カウンターへと向かった。


「おお、おめでとうございます!袋は別の方がよろしいですか?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

「では、袋はお渡ししておきますね。また来てくださいね~!」


女性店員さんに見送られ、クレーンゲームの台の横を通りすぎるときに、一番奥の壁際にさっきの男性店員さんがグットサインを作っているのが見えて、アームの強さを強くしたのはあの人で間違いないだろう。

 ありがとうございます店員さん……どうか他の店員さんたちにバレませんように。



 ゲームセンターを出て一階へ。姉さんから一階の本屋の近くで待っているという連絡があったので、区切りがよかった僕たちは一階の本屋へと向かう。

 そこには数人の人だかりがあった。


「なあ、あんた一人だろ?俺たちと一緒に来ねぇか?」

「来たら楽しいことしてやるからさぁ!ぐへへ」

「後悔させねぇよ!なぁ!」

「行くわけないでしょ。気持ち悪い。てか、私は連れがいるんで、そういうのは他所でやってくれない?周りが見てるし」


あれはまずい。姉さんが、ではなく、絡んでいる男たちが。

 一人の男が手を出そうとしたとき、その男が床へと倒れる。他二人は何が起こったのか分からなかったのか、倒れた男の体を揺する。


「お、お前か!こいつに何した!」

「…死にたい?」


凍てつくような視線に男二人は言葉が出なくなる。倒れた男を支えて逃げていく。

 姉さんは僕たちに気づいて駆け寄ってくる。


「やっと合流できた~!よかった~」

「さ、さっきの人はどうしたんですか…?」


姉さんは秋山さんの質問に「体調が悪くなったみたいだよ?」と嘘をつく。本当のところは関わるのが面倒になって腹パンを一撃おみまいしただけなのだが。まあ、知らない方がいいこともある。


「二人は調理器具見に行くんだっけ?」

「いえ、あらかた買ったので、あとは興味があるものを見ようかと思ってました」

「なら、弟くんもついてくよね?」

「そうだけど…」

「じゃあ、頼み事を引き受けてほしいんだ」


姉さんは日野さんからの呼び出しがあったらしく、ここで帰るらしい。なので、次に来たときに持っていけるように買っておいてほしいものがあるそうだ。頼まれたのはプラスチック製の200mlの計量カップと、紙皿と紙コップ。パーティーでもするのだろうか。大学生だしそういうこともするのだろうと思い、引き受けておいた。

 なんで単独行動していたのに、先に買いにいかなかったんだろう?


「あ、そうでした。私、ゴミ袋をそろそろ買い足さないといけないんでした」

「さっきあっちで見た気がするし、分かれて回る?」

「そうですね。私も私の物を買ってきますので、会計が済んだらそこの通りのところで待ち合わせしましょうか」

「分かった。それじゃあ、また後で」


秋山さんが少し戻ったところにある通路に入っていき、ようやく見えなくなると、僕は一息ついた。

 スマホのメモ帳に頼まれたものを書いておいたので、それを頼りに調理器具コーナーやパーティー用品コーナーを回る。

先に調理器具コーナーに行くと、同じような調理器具が並んでいて、何が違って、何が使いやすいのか判断ができない。


(こんなときに秋山さんがいてくれるとなぁ……)


 昼ごはんの後からずっと秋山さんが近くにいるだけで気にしてしまっていた。別々の目的で回っているのに、わざわざ呼び出すのも悪いと思い、200mlの計量カップを手に取る。多分これでいいはず。

 次にパーティー用品コーナーに行くと、二人組の女性がパーティー用品を見ている。邪魔にならないように端の方の商品から見ていると、背後から2人組の女性が話しかけてきた。どちらも僕と同じくらいの背で、一人はサングラス、もう一人はハットで目線を隠している。


「ねぇ、お兄さん。今一人?」

「今はそうですけど……」

「じゃあさ、ちょっとウチらと遊ばない?」


こういうのは断れと姉さんに言われてきたので、控えめに断ってこの場を逃れたい。


「その、一緒に来てる人がいるので」

「え~、お兄さん、さっき一人って言ってたじゃん」

「嘘は良くないよ~?」


一人の女性が通路で対応に困っていると、さらにもう一人、2人組の女性と反対側から女性が現れる。こちらの女性はサングラスもハットも身につけていない。

 逃げ場をなくした僕に、三人の女性はじりじりと距離を詰め、僕は足が竦む。

 三人組のうちのサングラスを身につけた女性は僕の手首を掴み、ニヤッと口元で笑みを浮かべる。


「やめてください……」

「やだな~。可愛がってあげるのに」

「そうそう。ウチらがイイコトしてあげるからさ~?」


ぐいっと手首ごと引き寄せられ、一歩踏み込んだとき、前に立つ2人組の女性の間から手が伸びた。

その手は僕の手を掴むとすぐさま引っ張り、僕は2人組の女性の間を通り抜けることができた。

 手を伸ばした人を見ると、普段見せない真剣さで、少し怒った様子も見て取れる秋山さんが女性三人組を見ていた。


「すみません。私の彼氏に何か用ですか?」

「かっ…!?」


彼氏!?

 秋山さんはぎゅっと僕の手を握り直して、もう一度要件を聞く。さっきよりも語尾を強くして。


「私の彼氏に何か用ですか!」

「あー、彼女ちゃんいたんだ~。ごめんね~?」

「それはざ~んねん。ウチは結構好みだったんだけどなぁ」

「アタシも好みだったけど、仕方ないか」


それぞれ一言ずつ言い残して三人組は去っていき、パーティー用品コーナーの通路に残された僕たちは、少しの間気持ちを落ち着かせるため動かなかった。

 秋山さんの勇気ある行動で難を逃れたが、秋山さんがいなかったら今頃どこへ連れていかれたのか想像もしたくない。


「その、大丈夫でしたか?」

「秋山さんのおかげでなんとか。ありがとう」


感謝を伝えると、秋山さんはほっと一息つき、

「やっぱり一緒に回りましょう」

と、見たことない優しい笑顔を見せてから、ずっと繋いでいた手をゆっくり引いた。



 予想外のハプニングに見舞われてからは二人で一緒に行動していた。

 時刻は15時を回り、さらに人が増えてきたようにも見える。

今、僕たちは本屋で参考書やメモ帳を片手にレジが空くのを待っている。


「お財布の方は大丈夫ですか?もし足りなかったら、私も持ってきているので言ってくださいね?」

「うん。大丈夫だよ。心配させちゃってごめんね」

「謝ることじゃないですよっ」


そう言って秋山さんは肩を寄せる。100均ショップを出てからずっとこの調子で、僕の方はずっと緊張している。

 一つ前の人が会計を済ませて空いたレジに移動すると、正面で仕事をしていた店員さんに微笑まれる。

 そんなに緊張した顔が出てる…!?

 秋山さんから離れようとすると、ぎゅっと手を握られた。秋山さんからすればまたいつ声をかけられるか分からないから、守ってくれているのだろう。

 僕も助けてくれた人にする行動ではないなと思い直して、秋山さんに従って肩を寄せてみた。

 でも、その後本屋で秋山さんが頬を赤くして、

「ちゃんと注意もしてください!」

と、お説教を受けてしまった。どうして…。


 お手洗いを済ませてから、マンションに帰るため数ヶ所存在する出入口の一つに向かう。


「秋山さん、今日はありがとう。こんなに晴れ……て?」


ガラスでできた窓には水滴が無数につき、重力に従って下へと流れていく。

 慌ててスマホの天気予報アプリで天気予報を見ると、明日の朝まで続く予想が出ている。それに、今の時間はまだ弱いそうで、深夜にかけて雨脚が強まるそうだ。


「私、折り畳み傘を持ってます。歩さんは持ってますか?」


持っていたはず。たしかこのバックには、ずっと入れっぱなしの折り畳み傘が……ない。


「……歩さん?」


バックを探っていた僕を気にした秋山さんが名前を呼ぶ。仕方ない。正直に言っておこう。


「ごめん。忘れてきたみたいなんだ…」

「それなら、一緒に入りますか?」

「でも、二人で入ったら濡れちゃうよ」

「大丈夫ですよ。マンションまで帰るだけですし」


おめかししてくれた秋山さんの服を濡らしたくないのもあるけれど、秋山さんはその心配を見抜いているのか「大丈夫ですよ」と、強気になっている。

 僕は一抹の不安を抱きつつも、秋山さんの折り畳み傘に入れさせてもらった。背丈は僕の方が少し高いので、僕が傘を持つことになった。

 それでも、小さめの折り畳み傘には荷物まで入らなさそうだったので、クレーンゲームで貰った大きめな袋を二つ使って荷物を雨から守ることにした。


「工夫次第でなんとかなるものですね。クレーンゲームで貰った袋が大きくて助かりました」

「そうだね」

(調整してくれた店員さんにも、店番の店員さんにも感謝だよ)


 時々、秋山さんの肩が濡れていないかを気にして帰っていたから、自分の右肩から下にかけてびっしょり濡れていたことに気がつかなかった。

 それを見た秋山さんがエレベーターの中で血相を変えて僕の肩を触って確かめてくる。

 これだけ近いとまた試着室での感覚が…!


「びしょびしょじゃないですか!お風呂の準備とかしてないですか!」

「え、いや、してないけど……」

「ならシャワーでもいいですから!」


秋山さんは何事もないように僕の部屋に上がり、僕は押し込められるようにお風呂場に入れられた。

 なんだか、暖かいような…?

 浴槽を見ると蓋がされていて、給湯器のスイッチもついている。これは多分、姉さんがつけてくれていたのだろう。


「ありがとう、姉さん」


ここにはいない姉さんへ感謝して、お風呂場へと入る。温かいお湯を使って頭や体を洗っていると、コンコンコンとノックが聞こえてくる。


「どうかした~?」

「着替え、置いておきますよ!」

「ありがとう~!」

「ゆっくり入っていてくださいね~?」

「は~い!」


秋山さんの足音が遠ざかっていき、その後何度か足音が聞こえたり聞こえなくなったりする。

 もしかして、早く出た方がいい…?

 早く出ようとするけれど、ゆっくり入ってくださいとも言われた。どうするべきなんだ…!?



 歩さんをお風呂場に押し込めてから、私は今日のデートでお金を払ってくれたお礼として、そして、歩さんが食材を買っていないのを知っているから、晩ごはんと朝ごはんを作っておくことにしました。

 食材を歩さんの部屋に持ち込み、早めにできるチャーハンを作り、歩さんがお風呂場から出てくる前までに完成を目指します。


(あれ?歩さんいつまでお風呂に…?もうチャーハンできちゃいますけど……)


そう思うと、歩さんがお風呂場で気絶しているのではないかと心配になってきます。


 チャーハンをすぐに完成させてから脱衣場の扉を開けると、私が用意した白色のシャツと黒のパンツを身につけ、半ズボンを履こうとしている歩さんと目が合いました。


「ひゃっ!あゆ、むさん…!」


私は手で目を隠しましたが、指の隙間から歩さんを見てしまいます。だって、体のラインが綺麗で…、はっ、違います。そんなつもりはないですから!

 それでも歩さんは気にせずズボンを履くのを再開し、すぐに全身着替え終わりました。もう少し見ていたかったのですが…。


「そ、その……」

「ごめん。今日はこれでお風呂済ませようと思って、全身洗ってたら遅くなっちゃった」

「そ、そうでしたか。ごはんできてます。食べますか?」


ごはんと聞いて歩さんの顔が上がりました。かわいい顔が見えて嬉しいです。少し幼さを残した顔がよりかわいいを引き出してます。フォルダに保存したいくらいには…!


「え、ごはん作ってくれたの!?全部秋山さんに任せちゃってるね…。ごめん」

「いえいえ、今日はお世話になりましたし、食材も買っていないのは知っていましたし、私のできることと言えばこれくらいなので」

「あっ、帰るのに必死で買うの忘れてた!」


焦った様子もかわいいです。でも、ここは透かさず遠回しのフォローを入れておきます。


「明日は部活はあるんですか?」

「先輩たちが大会の後だから部活は休みだよ」

「なら、明日の朝とお昼は私が作りますので、明日の午後からでも買いに行きましょうか」


このフォローで明日の放課後にお買い物に…!完璧です。これで少しでも歩さんの近くにいられます。


「本当に助かります。どうお礼したらいいか…」

「いえいえ。気にしないでくださいよ」


やりました!放課後のお買い物が確定しました!嬉しいです!

 明日の予定まで作ったので、今日はチャーハンを一緒に食べたら一度引きましょう。嬉しいことが後にあるのが分かっている時間は何を食べても美味しいです。

 というわけで私は部屋に戻って、歩さんのために明日の朝とお昼用のお弁当の献立を考えます。ああ。どうしましょう。嬉しさがいっぱいで献立がどんどん出てきます!

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