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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常

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34. 神に呼ばれた者の気づき


上に登って行くほど足場が少なくなっているようだ。

セルリアンがトンと跳ぶ一歩の感覚が大きくなっている。


「あと少しで崖が終わるから、しっかり掴まっていてくれ。少し続けて飛ぶぞ」


それまでセルリアンの肩に手を置いて、肩越しにみんなを見ていたハルは、ぎゅっとリアンの首にしがみつく。


ハルを片手に抱えたままセルリアンが崖地の足掛かりを見つけながらトン――トンと飛ぶ。

一歩が今までにないくらいに長い。


『怖っわ!』とハルは目を固く瞑っていたが、ハッと息を飲んで目を見開いた。


「リアンさん……!」

「どうした?何か分かったのか?」

「うん……!!」

「あと一回飛ぶぞ。舌を噛まないよう今は話さない方がいい」


急に身体を強張らせたハルに気づき、『神の啓示があったのか?!』とセルリアンは気を引き締める。


ハルの行動も発想も斜め上過ぎて、セルリアンにはハルの全てが予想がつかないものだった。

『神に近いという者は、並の者とは違う感覚を持つものなんだな』と、どこか畏れに近いものを感じる時があった。



身体能力が優れているカーマインや白戦士達やセージ、そして街の噂にいつでも聞き耳を立てているターキーは、聴力が優れている。


崖地を同じく飛びながら聞こえてきたハルとセルリアンの会話に、『黒戦士に神の言葉が……!』と、他の者達も、畏れと興奮と緊張で胸を高鳴らせた。




平地に着くとセルリアンはハルを地面に下ろした。

ずっと抱えられていたせいか、静かに地面に足をつけたハルが足に力が入らずよろけると、オルトロスがハルに駆け寄ってハルを支えてくれた。


「オルトロちゃんは良い子だね」

優しくて可愛いオルトロスをハルは優しく撫でていると、ハルの言葉を待ち切れないカーマインがハルに尋ねた。


「何かわかった事があるのか?」

「あ、うん。リアンさんの髪がね、」

「髪?」

「うん。リアンさんの髪、ケルベロちゃんのたてがみと同じ手触りなんだよ」


「………」


皆が黙り込んでしまうと、山の中で聞こえるものは、木々が風に揺らぐサワサワという音だけだ。

遠くで鳥が鳴いている。


「リアンさん、良い髪の毛だね。大事にしなよ」


オストロスを撫でながら、『やっぱりあの手触りはケルベロちゃんだった』と、しがみついた時に手に触れたセルリアンの髪を思い出しながら、ハルはセルリアンに声をかけた。



「他には……何か分かった事はねえのか?」

「他?……うーん。リアンさんとミルキーさんは懸垂300回出来るって事かな」

「すげえどうでもいい情報じゃねえか……」


カーマインは、期待した分ガックリと肩を落とすと、ハルが慰める。


「疲れたよね。ちょっと休もう?オヤツ持ってきたよ。敷物もあるんだよ」


「ちょっと崖を登ったくらいで休憩なんて必要ねえだろう?しかもお前一歩も登ってねえじゃねえか」とカーマインは言いたかったが、話す気力も削がれてしまった。

いそいそと敷物を敷いて双子とお菓子の用意をし出したハルを、同じく気力を削がれていた者達の中で止める者はいない。


今は緊急事態であるはずだが、急いだところで何も変わらない気がして、皆は休憩する事が正しいような錯覚さえ起こしていた。





サクサクとクッキーを食べながら、ターキーがセルリアンに尋ねる。


「セルリアンさん、ちょっと髪を触らせてもらってもいいですか?」

「投げられてもいいならな」


セルリアンの言葉に、ターキーが残念そうに眉を下げる。

魔獣研究家としての血が騒ぐが、セルリアンというわりと有名な討伐者は、冗談を言わない事も知っているので引き下がるしかなかった。

『しょうがない。せめて他の情報を』と、『英雄戦士大百科』の著者でもあるターキーはハルに問いかけた。


「黒戦士。英雄達の中で、他にケルベロスと手触りが似ている英雄は誰ですか?」

「え〜他の子の髪なんて触った事ないし」

「そうなんですか?」

「当たり前でしょう?あんな子達を触ったら、世の中の女の子達の嫉妬の嵐が向けられるんだよ?危険しかないじゃん。あんな国宝級美貌の子達の髪を触るなんて断固拒否だよ」

「え……?」

「断固拒否だよ」





二度繰り返された。


あの美貌の英雄達を、オルトロソファーで寛ぎながらすごい顔をして拒否しているハルを見て、ターキーが驚愕の表情をしていた。


ハルとターキーのやり取りを見ながら、カーマインは幼馴染のフレイムが少し気の毒になる。

あれほど能力にも美貌にも恵まれた奴はいないと思っていたが、全てに恵まれているわけでは無さそうだった。


元々は「美貌の英雄達に囲まれた黒戦士が調子に乗っている」という街で定着している噂を聞いて、「少し顔を拝んできてやろう」とからかいの気持ちでログハウスを訪問していた。

あの時、カーマインから見た黒戦士はちやほやされて調子に乗っているどころか、見向きもしていなかった。

フレイムに至っては、ルビーの恋人扱いまでされている。


カーマインは『本当に掴みどころのない女だ』と思いながら黒戦士を見ると、驚いた顔のままのターキーに何を思ったのか、慰めるような口調で話しかけている。



「戦士さん達の髪は知らないけど、パールちゃんとピュアちゃんの髪は、ケルベロちゃんとオルトロちゃんよりふわふわで柔らかいよ。ほら、こんなにふわふわだから」


双子の髪に触れながら、黒戦士は要らない情報をターキーに与えている。


「まあ!ふふ。ハル様はサラサラの髪ですよね」

「今日寝癖が付かなかったのは、パールちゃんとピュアちゃんの浄化魔法のおかげだよ」



平和な世間話をする者と、それを眺める皆の中に緊張感は全く見られなかった。


ルビー捜索は全く進展を見せることはない。




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