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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常

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32.今ハルの周りにいる者達


モスグレイ山への道中、馬車の中でハルはタブレットで神獣検索をし続けていた。

神獣ワードで紹介される神獣は、普段英雄達が討伐している魔獣とは何かが違って見えた。

とても強そうだし、どこかケルベロスやオルトロスに通じるものがある。

それを知ってしまったら調べるしかないだろう。



真剣な顔でタブレットを眺めるハルを、皆は静かに見守っている。神に呼ばれた黒戦士のみが使えるというタブレットは、他の者の目にはただの真っ黒な平たい板にしか見えない。

何かを読み取るように目を動かすハルの言葉を待っていた。



「神獣って色んな子がいるよ。蛇系の子とか翼を持ってる子が多いかな。みんな格好がよくて惹かれるけど、私はモフモフしてる子が一番良いと思うんだ。

わ、7つの頭を持つワンちゃんだって。ツノもある。7匹になったらこの子だけで魔獣カフェが開けるよね。

……この子にしようかな。

あ、身体がワンちゃんで頭がネコちゃんの子もいる。

王道癒し系だね、ケルベロちゃんとオルトロちゃんに次いで人気が出るかも。

……どの子と会えるかな。オヤツ足りるかな」


最初は双子に話しかけていたようだが、だんだんハルがブツブツと呟くひとりごとになっている。

ハルの言葉に不安を覚えたセージは、ハルに釘を刺しておく。


「ハル、たとえ使役できそうな魔獣がいても、連れて帰ってはダメだからな」

「え〜〜〜〜」



不満げな声をもらすハルに、新参の男達は衝撃を受ける。

『英雄の叔父でオルトロスの使役者でもある者が、こんな時にふざけた言葉をかけるなんて』と冷たい目をセージに向けたが、それはふざけて放った言葉ではないようだった。



「ケルベロちゃんとかオルトロちゃんくらい、大人しくて良い子だったら?」

「ケルベロスもオルトロスも、本来大人しい魔獣じゃないぞ」


セージの言葉に、ハルは隣に座ってハルを見つめていたオルトロスを慰めた。

「オルトロちゃん、気にしちゃダメだよ。あんなひどい事言うなんて信じられないよね。オルトロちゃんもケルベロちゃんも、世界一可愛い良い子だよ」


ぎゅっとオルトロスを抱きしめてよしよし撫でているうちに、やっぱり眠たくなってくる。


昨夜はぐっすり眠ったけど、今はもう外は薄暗くなってきていて夜になろうとしている。

寝るには少し早い時間だが、もっちり感触に包まれたら誰でも眠たくなってしまうだろう。



「……ハル様?眠ってしまわれましたか?」


遠くで双子の声がする。

「寝てないよ」と返事をしたいけど、今は声が出ない。

そのままハルは意識を手放した。




「まさか……また寝たのか?」


「今日はオルトロス様のスペシャルブラッシングコースをしたと話されてましたからね」

「とても頑張られたのですよ」


「お前ら……昨日も同じ事言ってたじゃねぇか……」





カーマインと双子の会話、それからハルの様子を見て、セルリアンはハルと出会った短い時間で、ハルの自由人さを深く感じていた。


神託の討伐で幼馴染のシアンが戦士として選ばれた時、ずっと同じ隊をくんでいたセルリアンは、特に思う事はなかった。

セルリアンも腕のある討伐者だと言われているが、シアンほどではない事は自分がよく分かっている。

英雄戦士とまで言われるようになったシアンは、幼い頃から「見た目は違うが双子のようだ」と言われ続けた鬱陶しい相棒だったが、いくら腕があっても、超える事の出来ない存在でもあった。


黒戦士に出会った時、そんなシアンの魔力のこもったネックレスを身につけている事に気づき、『そういう仲か』と思ったが、黒戦士がシアンに――そして英雄達に向ける言葉に温度がない。


『シアンの一方通行の想いのようだな』とも気づいたが、シアンの好みがよく分からなかった。

『確かに神に呼ばれただけの能力がある事は認めるしかないが、自由人すぎる者だ』とセルリアンはハルを分析する。


『分かりたくないアイツの考えはいつでも分かってしまっていたが、これだけは分からんな』とセルリアンはオルトロスにしがみつきながら眠るハルを眺めた。




馬車に揺られながらセージは、呆れたようにハルを眺めるカーマインとターキーを眺めていた。


二人はモスグレイ山でルビーが攫われた後すぐに、「自分達だけでは救出は無理だ」と判断して、オルトロスの使役者のセージを頼る事にしたらしい。

セージの屋敷でセージの不在を聞いて街まで追って来た二人は、動揺し過ぎていてなかなか話が上手く伝わらなかった。

同行者のルビーが魔獣に攫われたという事だけは分かったので、とりあえず落ち着けと二人を先に馬車に乗せて、セージはハルの元へと向かったという流れだった。


あれだけ動揺を見せていた二人は、ハルの神がかった情報に落ち着いたようだった。

通常ならば緊迫した空気が流れるはずのこの状況は、ハルの格好と言動で良い意味で力が抜けている。


『あの森での討伐の時も、ハルが来た途端に空気が変わったな』と、セージは前回の討伐を思い出す。


『こういう誰にも出来ない事を簡単に成し遂げるから、英雄達もハルに惹かれるのだろうな』とセージは思う。


今回の捜索も、英雄達がいれば早く片付く問題なのかもしれない。

英雄達に今回の事情を説明したというハルの手紙は、今日には着いている事だろう。早ければ今日遅くに屋敷に迎えに来るかもしれない。

屋敷にはモスグレイ山に向かった事を伝えているし、『どれだけ遅くても明日には英雄達もこっちに来るだろう』とセージは予測している。



ハルがこの世界の文字を書けないという事実を知らないセージと、書けない事実を知りながら失念しているミルキーがここにいた。




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