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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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15.それぞれの幼馴染


「ハルのいた世界で、今ハルを心配している人は誰ですか?」


シアンに聞かれて、ハルは「それは家族とか友達とか―」と答えようとして、ハルはふと神様の言葉を思い出した。


確か神様は言っていた。



「ハルは長い旅行に出たことになっています。私がハルの周囲にいた者達に、上手い感じでお伝えしたところ、ご両親もご友人も納得してくださいました。『お土産よろしく』との事です」


――今真剣にハルを心配している者はいないようだ。


そのうちさすがに両親は心配するかもしれないが、基本ハルの両親は「どこかで元気にしているなら、それでヨシ」のスタンスだ。

神様に「ハルは遠くにいるけど楽しそうにしてますよ」と伝えてもらえれば。なんならメールひとつ送らせてもらえれば、「そうか、無事ならいい」と納得しそうだった。



「今そこまで私を心配する人はいないかも。神様が良い感じで、私の周囲の人に不在理由を伝えてくれてるみたいだし。

考えてみれば、私がいなくても私が元気にしてたら納得してくれる人達ばかりだったよ」


「そうですか。それではもう元の世界に戻る必要はないですね」

「え?そうかな?そんな話だったっけ?」

「そうでしたよ」


シアンが力強く言い切るので、「あ、うん。そうかも?」とハルは答えると、なんだかそんな気がしてきた。

「そうだね。戻らなきゃいけないって事はないかも」


ハルの答えに、満足そうにシアンは頷いた。





ハルはポリポリと神殿かりんとうを食べながらシアンに尋ねた。

「そういえばさ、シアンさんは神託の討伐前に、フレイムさんと会った事は無かったの?」


「ないですね。フレイムの事は、噂には聞いていましたが。基本的に討伐の中心になる人物は、討伐隊の中にひとりで十分ですからね。担う役割が同じフレイムと、本来隊を組む事はないんですよ。

ハルと出会った日が、フレイムと初顔合わせした日です」


「そうなんだ。最初から仲良さそうに見えたのに」

「別に今も仲は良くないですよ」

――シアンは討伐仲間にも塩対応の男だった。


神託の討伐前に組んだチームは、いつもほぼ同じメンバーだったとシアンは話していた。

この冷たい男といつも一緒にいた人は、どんな強い心を持った人だったのだろうとハルは気になった。



「シアンさんの以前の討伐チームは、ほぼ同じメンバーだったんだよね?どんな人達なの?」


自分の事に興味を示すハルを嬉しく思いながらシアンが答えた。


()の幼馴染ですよ。私は少人数チームを好みましたからね。いつも組んでいたのはその幼馴染だけです。討伐内容によっては、討伐補助する者や料理人や治癒魔法使いとも同行しましたが。……幼馴染は、気持ち悪いくらい感覚が似ている男ですね」


「シアンさんに似てるの?」

「容姿は違いますが、その日に着るシャツの色とか、オーダーする料理とか、気分転換に出かけたくなる場所とかタイミングとか、どこ行っても同じ事をしているあの男がいて、本当に嫌でしたね」


おかしくなってハルは笑う。


「すごいね。もう運命を感じるくらいだね。女の子だったら良かったのに」

「女でも気持ち悪いでしょう」


あはははと笑い過ぎて涙が出る。

「いいね、そんなシアンさんの幼馴染なら私も会ってみたいな。シアンさんの近くにいたら、そのうち会えそうだね」


「あんな男に会う必要なんてないですよ」

シアンは即答する。





自分の幼馴染は、笑い事ではなく本当に気持ち悪いくらいに感覚が同じ男だった。

討伐に出る時は息が合ってスムーズに討伐が進むのだが、出来ることなら一緒にいたくない人物だ。

自分があの男を気持ちが悪い奴だと嫌悪するように、きっとあの男も自分を嫌悪しているだろう。


あれだけ好みが似ているならば、あの男もきっとハルを好ましく思うに違いない。絶対に会わせなくない男だった。

違う話題に移る時だろうと、シアンは話題を変える。


「カーマインとルビーの無礼は気にならないですか?もし不快に思うなら対処しますよ」


「別に気にしてないよ。フレイムさんとずっと離れていて寂しかっただけだと思うし。

一緒に過ごせる時は、なるべく一緒に過ごしたらいいと思うんだ。しばらく一緒に討伐を楽しんでもらったらいいんじゃないかな?

私だってパールちゃんとピュアちゃんと、長い時間一緒にいれて楽しかったしね」


「双子は本来の目的は護衛で、遊びに来てるわけじゃないでしょう?――でもまあそうですね。私もこうしてゆっくり出来ますし、悪くないかもしれませんね」


『そう考えると、あの二人は良い奴と言えるな』とシアンはフレイムの幼馴染を見直した。


「ルビーちゃんって、みんな話していた通りに、本当に綺麗な人だよね。森で一緒に暮らしていた女の子達もすごく可愛かったけど、ルビーちゃん見てたら、フレイムさんが心を動かされなかったのは当たり前だって事が分かるよ。

早くルビーちゃんの気持ちに気づいてあげたらいいのに。鈍感って、時に残酷だね」



「確かに鈍感さは残酷ですね」

誰の気持ちにも気づこうともしないハルを見ながら、シアンが相槌を打つ。


シアンは今日初めてルビー達に会ったが、ルビーもカーマインもフレイムによく似ていた。 

自分に似ている者ほど鬱陶しい者はない、と思っているシアンにとっては、「あいつを女として見た事はない」というフレイムの言葉は本当ではないかと思っている。

――思うだけで言う必要のない言葉だが。



「多分ね。カーマインさんはルビーちゃんの事が好きなはずだよ」

「どうしてそう思うのですか?」


妙に確信を持ったように断言するハルに尋ねる。


「妹の漫画で読んだことがあるんだ。

カーマインさんはルビーちゃんを想いながらも、自分の気持ちを押し殺しているところなんだよ。この後フレイムさんとルビーちゃんが両想いになった時に、『幸せになれよ』って言う役だよ、きっと」

「あの三人はそんな関係なんですか?」

「そうだよ」

「なるほど」



あんな自己主張激しそうなカーマインが、『自分の気持ちを押し殺して』そうな男には見えなかったが、しょせん他人事だ。


自信満々に言い切ったハルが楽しそうなら、それでいいだろうとシアンは適当に相槌を打っておく。






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