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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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09.神に愛されし者たち


「あ!ダフニーちゃん見つけた!」

窓の外を覗いていたハルが、弾んだ声をあげる。


茂みに潜んだダフニーが、こっちを窺うような仕草を見せていたのだ。

ハルは窓を開けて、ダフニーに向かって大きく手を振ると、急いで扉の外にダフニーを迎えに行った。

双子も続いて追いかける。





「ハルちゃん、久しぶり!」

ダフニーが駆け寄ってくる。


「ダフニーちゃん、ずっと顔を見せてくれないから心配してたんだよ。忙しかったの?」

「ごめんね、ハルちゃん、双子ちゃん。ちょっとね、結婚式を挙げていたのよ」



いきなりの結婚報告に、ハルは驚いて「ええっ!」と声をあげる。


「ダフニーちゃん、結婚おめでとう!!私、ダフニーちゃんはフリーだと思ってたから、ビックリしたよ」

「前に会った時はフリーだったのよ。あれから色々あってね、今はとても幸せなの。

紹介するわ。私のダーリンのシャモアよ」



紹介の言葉で、ダフニーの背後にいたシャモアがハルの前に立った。

シャモアはミルキーのように細く小柄な人で、ダフニーの背後に回ると姿が見えず、存在が消されてしまうような男の人だった。


「ダフニーの夫のシャモアと申します……。黒戦士のハル様と白戦士のパール様とピュア様ですね。ダフニーがお世話になりました……」


深々と礼をするシャモアは声も弱弱しくて、やっぱりミルキーを思い出す。



「あ。いえいえこちらこそ、ダフニーちゃんのお陰で楽しい時間を過ごせてお世話になりました」

「シャモア様、ご結婚おめでとうございます」


ハルと双子も深々と礼をする。


「ダフニーちゃん、シャモアさん、うちに寄っていきなよ。戦士さん達みんなにも、シャモアさんを紹介するよ」


ハルがそう話すと、シャモアがビクリと肩を震わせた。


「いいえ、英雄様達とダフニーを会わせる訳にはいきません」

キッパリとシャモアが告げる。


「そうなの?」とハルは不思議に思って言葉を返す。


「あ……ごめんなさいね、ハルちゃん。私はもう英雄様達に会うわけにはいかないわ。彼等の愛には応えられないし、もう会わない方がいいと思うの」


ダフニーが申し訳なさそうにハルに説明を始めた。


「あのね、私とシャモアは幼馴染なのよ。ずっとこの関係は変わらないってお互い思ってたんだけど……ほら、私ったら英雄様達と王子様に狙われちゃってるでしょう?その話をシャモアにしたら、この人ヤキモチ焼いちゃったのよ」


キャッと嬉しそうにダフニーが染めた頬を両手で隠す。

そんなダフニーを優しい目でシャモアは見つめ、キリッとした顔でハルに自分の思いを話してくれた。


「僕は今までダフニーに対する気持ちは、家族に対する気持ちだと思っていたのです。

だけどダフニーが多くの男に望まれていると知ったら、お恥ずかしながら嫉妬に狂ってしまいまして……。そこでやっと自分の気持ちに気づいたのです。

英雄様相手に敵うわけがないと思いながらも、勇気を出してプロポーズしたのですが、ダフニーには受け入れてもらえました。

ダフニーは僕の妻となった訳ですが、それでもやはり他の男には会わせたくはないのです……。ハル様、申し訳ありませんが、ここで失礼しようと思います」


弱々しくもキッパリと言い切ったシャモアの、握った拳が震えている。

気弱そうな彼にとって、強気で断りを入れる事は、とても勇気がいる事なのだろう。


どうやら国宝級美貌の戦士達とドンチャ王子は、当て馬だったようだ。

『さすがダフニーちゃん!あんなハイスペックな者どもを軽くあしらうなんて、可愛い上に格好いい!』と、ハルは笑顔で大きく頷いてみせた。


「分かったよ。確かにそれなら戦士さん達には会わない方がいいよね。ちゃんとみんなには、ダフニーちゃんの幸せを伝えておくよ。二人ともお幸せに」


「お二人に祝福の浄化魔法をかけますね」


双子がステッキ剣を踊るように軽く振ると、キラキラと祝福の浄化魔法が舞う。


ダフニーが「ありがとう」とお礼を伝えて、ハルと双子にこっそり打ち明ける。


「繊細で細身の人って、放っておけないところが胸キュンものよね。あまりいないタイプだから、出会いは奇跡レベルのものになっちゃうけど。

こんなに近くに理想の人がいたのに、シャモアは身近な人過ぎて、存在に気付けなかったわ。ハルちゃん達も素敵な人を見つけてね」


うふふと笑ってダフニーはシャモアと家に帰って行った。





「ダフニーちゃんの好みのタイプって、ミルキーさんだったんだ」

「確かに見ための印象で言うとそうかもしれないですね。だけどミルキー様は本当はお強いんですよ」



双子とミルキーを噂しながらログハウスに戻ると、ミルキーがいた。

ログハウスの裏手側にいたハル達に、ミルキーは気が付かなかったらしい。


「ミルキーさん、久しぶり!元気……じゃなさそうだね。どうしたの?大丈夫?フラフラしてるよ。お仕事忙しかったの?」


「お久しぶりです、ハル様……。ご心配おかけしてすみません。少し忙しかっただけで、なんともないですよ……」


ミルキーの声に覇気がない。

ハルはミルキーが倒れないように腕を取って、ダイニングテーブルまでミルキーを支えて歩いた。


「もうすぐご飯だからね、ひとまず美味しいジュースを飲みな。ビスケットもあるよ」

「あの……本当に大丈夫ですから……ゲホッゲホッ」


話しながらジュースを飲んだせいで、気管にジュースが入って、ミルキーが激しくむせる。

ハルはミルキーの背中を撫ぜながら、「お喋りしないでゆっくり飲みな」とミルキーに注意をする。



咳が落ち着いたミルキーが、ここへの到着が遅くなった事を詫びた。

「実はハル様がアザレ国に向かうという手紙が届いたタイミングで、神から『今は動く時ではない』と啓示があって、すぐに動くことが出来なかったのです。

やっと先日、『このタイミングでの到着を吉』とする啓示が再びあり、今こうしてハル様のもとへ参ることが出来たのですよ」


「え、そうなんだ。ちょっと前にここに来ると、何かあったのかな?」

「それは『神のみぞ知る』というところでしょうか」




ハルとミルキーの会話に、英雄達はミルキーに畏れに近いものを感じていた。


ハルがミルキーに構っている間、英雄達は双子に外から戻ってくるのが遅かった理由を尋ねて、ダフニーの結婚を知った。

それと同時にダフニーの好みのタイプも知ってしまった英雄達は、ミルキーが神に足止めされた訳を悟ってしまったのだ。


ダフニーの推しの強さで結婚へと導かれてしまうかもしれないミルキーを、神は助けたのだろう。


『結果的には互いに想い合って結婚したダフニー達も、神に愛されている者なのかもしれないが』

メイズは、そんなことを考えながら、胃に優しい料理も加えてやろうと、夕食の準備を始めるために立ち上がった。





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― 新着の感想 ―
白井ワールドのお茶目でどこか抜作な神々も良き。
神様ハルの世界に出稼ぎに来た時に結婚相談所とかでバイトしてないですよね… 気遣いが細やかすぎる。
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