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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第一章 

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63.戦士達のエンディング

「アッシュさん、腕輪に魔力を補充してくれてありがとう。今度からはアッシュさんアプリもあるから、どこに行っても話せるね」


嬉しそうに笑うハルに、アッシュも笑顔を返した。


「私こそお礼を言わせてください。ハル様のお陰で『神の使いを支える者』として、遠くからになりますが私もハル様を支える戦士の一員に加えていただきました。

ただ遠くで待つだけの身から、ハル様の心の支えとなれる栄誉に感謝します。ありがとうございます」


アッシュの言葉にハルはへへへと笑う。





結局ハルは、新しい次の討伐へ向かう事を決めた。


次の討伐任務の完了がいつになるか分からないし、神に再び会うその時に、元の世界への帰還を望むかは分からない。

だけどこのまま元の世界に戻る可能性を閉じては、『元の世界へ未練を持つ日が来るかもしれない』とも思えたので、次の討伐の日々の中でその先を考えて行く事にしたのだ。

戦隊メンバーは、国宝級美貌の戦士達みんなが継続を希望したので、そのまま変わらないメンバーとなった。


そしてアッシュに対するハルの信頼度を見たドンチャ王子が、アッシュを『神の遣いを支える者』として、白い国に身を置きながらの英雄戦士の一員に任命した。



アッシュにその命が下った瞬間―――ハルの持つタブレットに、アッシュのアプリが現れた。


きっとそこはアッシュの執務室に繋がっている。

アプリを開いてみると、部屋の見え方の角度から、ハルの集めてきた石に繋がっているように思われた。

これからはどこにいても、ハルはアッシュの声を聞くことが出来るようになったのだ。




それからハルは、白い国に帰る事が決まったミルキーと双子にも声をかけた。


「ミルキーさん、また街の護衛の時に会おうね。その時は双子ちゃんも一緒に連れてきてね。

パールちゃん、ピュアちゃん、ミルキーさんが護衛についてくれる時は、絶対一緒について来てね。色んな街でたくさん遊ぼうね」


「はい、もちろんパールとピュアもお連れしますよ。ハル様、どうかお怪我のないよう気をつけてくださいね」

ミルキーがそう言葉を返し、双子も涙ぐみながら頷いた。

涙を堪えて言葉も出ない双子の背を、ハルはよしよしと撫で、アッシュにも声をかけた。

「長い休暇の時は、白い国に帰るからね。回転焼き屋さんにまた一緒に行こうね。光る石コレクションも増やしていかないとね」


「またお会いできる日を楽しみに待っています。いつでも連絡してくださいね」

アッシュはそう優しくハルに笑いかけてくれた。






白戦士達となごやかな会話をしていると、少し苛ついた様子のフレイムにハルは声をかけられる。


「おい、そろそろ出ないと今夜の宿に着かねえぞ。ハルがカナリヤ国のピサンリさんの店に寄りたいって言い出したんじゃねえか。

用意が出来たなら、さっさとケルベロスに乗れ」



カナリヤ国のピサンリのお店は、神託討伐の邪魔をした少女戦士達を繋げた場所として、風評被害に合っているらしい。

それを聞いたハルは、ピサンリのお店の噂を塗り替える為に、討伐前に立ち寄ることを英雄達に頼んだのだ。


今やハルは「神の使い」として、世界中でもてはやされている存在だ。

注目される事は、ハルにとっては至極迷惑な話ではあるが、それによって助ける事が出来るケースもある。


それに思い至って、討伐前にピサンリのお店に顔を出したいと戦士達にお願いした。

ピサンリの事も大好きなハルは、彼女に会える事も楽しみにしている。

セージさんとオルトロスも、ピサンリのお店までは同じ旅となるから、賑やかな旅になりそうだ。



『それにしてもこの赤い男は本当に空気の読めない奴だ。白戦士達との別れも待てないのか』


むうっと眉間にシワを寄せて、ハルはケルベロスに身をかがめてもらってから、よじ登った。



「じゃあドンちゃんもまたね。王城ではたくさんお世話になりました。ありがとう、ドンちゃん」


「ああ、ハルも元気でな。またジュースとお菓子も送るから、楽しみに待っていてくれ」


ドンチャ王子はそう言ってハルに手を振り、英雄達にも「よろしくお願いします」と挨拶をした。


そしてまた、神に呼ばれたハルと国宝級美貌の戦士達との旅が始まった。







「ハル、休憩しますよ」


ケルベロスの背中で眠っていたハルは、かけられた声で目を覚ます。

シアンが手を差し出してくれたので、その手を取って、まだ完全には開かない目でフラフラとハルは地に立った。


目を瞬かせているハルに、シアンが何かを差し出した。


「これは魔除けのお守りです。私の魔力を精一杯込めていますから、その腕輪の聖力に消される事はありませんし、大概の魔物はハルに近寄る事も出来ないですよ」


「どうぞ」と、シアンが差し出してくれた物を受け取ると、それは繊細な光を放つシルバーゴールドの魔力のネックレスだった。

以前のブレスレットよりも、かなり頑丈そうだ。


「魔力の塊って魔除けにもなるの?」

ハルが不思議そうにネックレスを見ると、シアンが真顔で頷いた。

「そうですね。私くらいの力を持てば、かなりの効果を見せますよ」

「そっか。それは貴重な物だね。早速つけてみるよ」



ハルがネックレスを首にかけてみると、とても軽くてつけている感のない物で、邪魔になりそうでもない。

「すごいね!これ全然違和感ないよ。これならずっとつけとけそう。ありがとう、シアンさん」


ハルの言葉に、シアンは本当に嬉しそうな笑顔を見せた。

――そこまでの笑顔は初めて見た。いつもほとんど表情が動く事はない彼だというのに珍しい。



ハルはシアンをじっと見つめる。


王城でのシアンはずっと不機嫌そうだった。

アッシュに対しての態度も氷の冷たさだったし、女の子に甘い三人にも向ける目が相変わらず厳しい。

こんな悪魔のような気難しい男が作った物なら、本当に魔除けになりそうだ。


『これはちゃんと身につけておこう』

ハルはそっと首にかけたネックレスに触れ、シアンに尋ねてみたかったことを聞いた。


「ねえ、シアンさん。ドンちゃんから聞いたかもしれないけど、私が元の国への扉を開けようとした時に、『そっちへ行っては行けませんよ』って私に声をかけた子がいたんだ。

アッシュさんにその話をしたら、『その声をかけた人が一番私を想ってくれている』って言ってくれたんだけど。それは合ってると思う?」



シアンはハルの言葉に、ピクリと眉を動かす。


――また『アッシュ』だ。

あの男はハルの中で存在が大き過ぎる。

王城でもアッシュの姿を見かけると、ハルはアッシュに駆け寄っていた。

それにそんな言葉を、そんな場所にいるハルに届けるなんて、あの男くらいしか出来ないだろう。

ハルもその声の持ち主だからこそ、扉に伸ばした手を止めたに違いない。


渡したネックレスは、これでもかというくらいに自分の魔力を込めている。

あれだけ魔力を込めれば、魔物避けになるのは本当だが、アッシュの腕輪の聖力もそのうち消耗するだろう。



「私はそうは思いませんよ。たとえ声が届いたとしても、たまたま偶然です。一番強く想ってるなんて、アッシュさんの勘違いもいいところですよ。そんな言葉は信じるべきではないですね」


キッパリと力強く断言するシアンを見て、ハルはなるほどと納得する。


「そっか。たまたまで、勘違いだったんだ。あやうく間違えちゃうところだったよ」


ハルの言葉にシアンは、満足そうに頷いた。





そんなシアンを見ながらハルは思う。


『あの声はシアンさんの声だったけど、たまたまの偶然だったんだ』


それもそうかとハルは考える。

なにしろ相手は、国宝級美貌のイケメンが過ぎる戦士だ。私みたいな平凡な女子を好きになる訳などない。


危ないところだった。

アッシュの言葉とはいえ、迂闊に信じて痛い目に合うところだった。

この男の前で勘違いなど起こしては、窓から投げ捨てられる事もある。




まだ新しい討伐の旅は始まったばかりだ。

ハルはこれからの旅に向けて、決して自分は勘違いしたりしない事を固く違った。











ここで完結です。

また旅は始まりましたが、この先の旅は今までと違った旅になりそうです。


お話を書き出した時から謎に愛着を感じる世界で、スタート時から私の「代表作」扱いしちゃったヤツです。

代表作の基準とは……?な感じですが。


いきなりの急展開を目指してコメディカテゴリーで楽しませてもらいました。

みなさんの「何だこれは」という心の声が聞こえるようでしたが、

そんなお話に最後までお付き合いいただけた事に深く感謝します。


ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
面白かった! なんか、巻き込まれ日本人のあたふた行脚と思いきや、意外と開き直ってる感じで、国宝級イケメンとはしっかり線引きしているのがなんとも。 ずっと「クロイハル」とフルネーム呼びなのはなんでかなあ…
[良い点] 最後の最後に超致命的な墓穴を掘るシアンに爆笑しました。 この後にたちそうになるフラグまでボキボキ折れる未来が予想できて最高です。 [気になる点] 黒戦士ちゃんチョロすぎて保護者の過労が心配…
[良い点] 完結お疲れさまでした。 最期までハルと戦士たちの嚙み合わなさが絶妙でした。 それぞれの思考のギャップに気づかず空回りする戦士たちと、それを冷めた目でみるハル。 簡単に人と分かり合えちゃうな…
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