表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第一章 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/147

26.白戦士は虚弱体質①


「セージさん、お世話になりました。ここまで送ってくれてありがとう」

ハルは国境まで馬車で送ってくれたセージに挨拶をして、オルトロスの背を優しく撫でた。

「オルトロちゃん、また会おうね」


「クロイハル、またいつでもおいで。今度マラカイト国に来た時は、アイスクリーム屋に行こう。そこにも色んな色のアイスあるから、クロイハルも気にいると思うよ」

「それは気になるね。次に来た時は連れてってね」

セージとそんな約束をして、ハル達はマラカイト国を出た。







「ミルキーさん、大丈夫?交代でケルベロちゃんに乗せてもらおう?」

「ハァッハァッハァッ……だ、大丈夫です…ハァッハァッ……お気になさらず……ゲホゲホッ」

「全然大丈夫じゃないじゃん…」


歩いて15分も経たないうちに、白戦士に明らかな疲れが見えた。

ケルベロスの背に乗せてもらっているハルが、そんなミルキーに声をかける。

ハルはケルベロスから降りて、ミルキーに場所の交代を促す。こちらにどうぞ、と手をケルベロスの背中に向けて見せた。


「ヒイッ…!ケルベロスのお背中になど、恐れ多くて乗ることなど出来ません…」

必死で遠慮するミルキーに、普段温厚なフォレストが低く冷たい声をかける。

「…ケルベロスにはミルキーさんも乗せるよう指示を出すので、とっとと乗って下さいませんか…?日が暮れてしまうのですが」

「ヒッ!…すぐに、すぐに乗ります」


「さあ、クロイハルも一緒に乗りなさい。クロイハルとミルキーさんの二人くらいなら大丈夫ですよ」

「うん。ケルベロちゃん、よろしくね」

フォレストの言葉に、ハルはありがたく従った。


二人を背に乗せ終わったケルベロスが立ち上がると、ミルキーがグラグラ揺れた。

ケルベロスの端に遠慮がちに乗ったミルキーを、ハルが手を引っ張って隣に寄せる。

ミルキーが落っこちそうで、見ていて怖くなるのだ。



「ちゃんと真ん中に座りなよ。はい、こうして寝転ぶ事も出来るから」

ぐいぐいとミルキーを押して、隣に寝転ばせようとするハルを見て、戦士達のミルキーを見る目が益々冷たいものになる。

「大丈夫です。これでも鍛えているので、本当にお気遣いなく。クロイハル様も、危ないですからどうぞ前を向いてください…」

キリキリと痛み出した胃を押さえながら、ミルキーが力無い声を出した。





予定より遅れてしまったが、今日の目的地に着いて、メイズがログハウスを出す。

部屋が6部屋しかない為、部屋割りをどうするか話し合っているところだ。


ハルが元気よく提案する。

「ミルキーさん、前の私の部屋を使いなよ。お風呂だけ貸してくれたら、私は獣舎でケルベロちゃんと寝るよ!」

「私の部屋のお風呂を使いなさい。そのまま泊まってもいいわよ」

「お断りします」

マゼンタの誘いを即断る。


「獣舎で寝るのは禁止だ」

「じゃあリビングで寝るよ。ケルベロベッドがあるし」

フレイムに応えたハルの言葉を、シアンが一蹴する。

「リビングで寝るのは禁止です。…だいたい護衛が部屋を譲られてどうするのですか」


冷たいシアンの声に、ミルキーが息をのむ。

「クロイハル様、私はリビングで大丈夫ですよ。どうぞクロイハル様はごゆっくり部屋でお休みください」


「本当にいいのに…。じゃあミルキーさんに、ケルベロちゃんを貸してあげる。温かいからよく眠れてお勧めだよ」

「ヒッ!いえ、私は一人じゃないと眠れないので」

「そうなの?じゃあお風呂は私の部屋を使いな」


深いため息をついたフォレストが声をかける。

「ミルキーさん、お風呂は僕の部屋をどうぞ」

「ありがとうございます…」


またキリキリキリと痛み出した胃を押さえながら、ミルキーは小さくお礼を言った。




夕食の席で、あまり食が進んでいるように見えない白戦士を心配したハルがまた世話を焼く。


「ほら。お魚をひとくちサイズにカットしたから、これを食べな」

「ありがとうございます…」

「ほら。この具沢山スープは絶品だから、これはちゃんと食べな。よく噛んでね」

「ありがとうございます…あの、私の事はお気遣いなく」

ハルは困った顔で、ミルキーの背中を撫でる。



ハルは会って間もないが、ミルキーの事が心配だった。

この世界に来てから、屈強なイケメン戦士達に囲まれ、それに見慣れてしまっている。

遠巻きに自分達を見てくる街の女性達でさえ、ハルよりは遥かに大きかった。

そんな人々に比べると、ミルキーはとても弱々しく見えて、風が吹いただけでも飛んで行ってしまいそうに思えたのだ。


今までハルは、人に心配される事はあっても、人を心配する立場に立った事はなかった。


ハルは人より華奢で体力もない。

だけどそれよりもミルキーは頼りなげに見える。

インドア派で色白のハルの肌よりも、ミルキーは青白い肌を持ち、髪の色も白い。

ケルベロスの背に乗っている時も、グラグラ揺れるミルキーに、不安な気持ちにさせられた。

ハルが見てあげないと、その辺で倒れてしまうように見えるのだ。


ちゃんと食べてる?もう少し食べれる?

ミルキーが気になって様子を伺い、ハル自身の食事の手が止まってしまう。



「クロイハルもちゃんと食べろ。さっきから口が動いてないぞ」

「あ、うん。冷めちゃう前に食べないとね」


メイズの声かけに、ハルがそう応えながらも、いつもより食が落ちている事にメイズも苛立ちを見せる。

他の戦隊達も、討伐仲間のハルの意識を奪う事に、静かな苛立ちを見せていた。


そんな戦隊達の空気を敏感に感じ取り、繊細なミルキーはキリキリキリキリと胃を痛めていく。



討伐地初日は、どこか不穏な空気が漂う事となった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ