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心臓の音しか聞こえない。周りの音が全くしない。ただただ心臓の音だけが聞こえる。なにも考えることが出来ない。なにが起こったのかも正直分かっていないかもしれない。だけどひとつだけしっかり分かることがある。それは吉乃が重く、厚い、扉の向こうにいるということ。「手術中」と書かれた扉の向こうでは彼女が寝ている。けどそれはただ寝ているということではないのだ。
こんなことになるなんて思わなかった。確かに今、ぼくは頭が混乱している。しかし、本当は分かっているのかもしれない。ただそのことを自分が認めたくないだけ、、なのかもしれない。彼女は間違えなく昏睡状態、、なのだろう、。
扉の開く音がした、、
医師たちが出てくる、、
めまいがする、頭が痛い、、
医師は口を開いて、ぼくに話した。
聴きたくない、、しかしそれはぼくに聞こえてしまったのだ。視界が白く、霞む。ぼくは立つ力さえ失った。
11月20日、午前8時33分、その子と会うことはもう二度とできないだろう、、。