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11月、雨が降っている、

「寒くなってきたな」

今は11月。ぼくはそんなことをぼんやり思った。

そして今日は土曜日。本当は今日彼女に会いに行く予定だったけれど、陽介が買い物をしたいと言うから断念した。買い物の最中も彼女の事を考えてしまった。ついに明日、彼女に会うことができる。いつも通り生活して指輪をはめて寝に入る。ゆっくりと目を瞑る。あの暑い夏の日からいろいろなことをたくさん話した。勉強のこと。友達のこと。趣味のこと。たくさん話した。明日はどんな話をしよう?そう考えるのが楽しかった。



目が覚める、こっちの天気は雨らしい。少しがっかりしたが彼女と話せるという喜びの方が強かった。傘を持って家を出る。雨の音が音楽を奏でているように聞こえる。そして彼女の家に着いた。少し前に教えてもらった桔乃の家は坂道にある。

チャイムを押すと、桔乃が笑顔で出てきた。

「おはよう!颯太!」

「うん!おはよ!」

この声を聞くだけで落ち着いた気持ちになる。不思議な感じだ。

「今日は散歩とかあんまできないね、雨だから」

「まあそうだね」

「家、入りな、風邪ひいちゃうかもだからさ」

「、、いいの」

「全然いいよ!」

「じゃあお邪魔します、、」

家の中はすごい家具とかいろいろ整っていて落ち着いた雰囲気だった。リビングからは手入れされた綺麗な庭が見える。

「お茶どうぞ」

「わざわざありがと」

「大丈夫だよー」

桔乃がぼくと反対側に座ってから

「今日はなんの話しするのー?」

と聞いてきた。

今日する話は、寝る少し前に決めた。

「恋バナ、してみない、」

なんかすごい恥ずかしくなる。桔乃は驚いた顔をしてから、

「いいよ!しようよ!」

と乗ってきた。

「急にそんな話切り出すなんて、もしかして好きな人でもできたのかー?」

「ちがう!ぼくの友達の話だよ、そいつ好きな人がいるらしいから」

「なんだー、颯太のじゃないんだ」

桔乃はなんだか少しだけ寂しそうな表情をした。

「けど気になる人くらいいるんじゃない?」

「いない、ぼくは恋愛しないから」

そう言った瞬間、なんだか心がモヤっとした。なんでかはわからないけど、、

そのあと陽介の恋のお話をした。なんか意外と盛り上がって楽しかった。

「それでー、颯太はー?」

「だからいないって」

「えー、こんな人になりたいっていう人は?」

「っ、、、」

言葉に詰まる。そういう人はいる。僕の目の前にいる。笑顔が素敵で優しい人。けどこんなこと絶対言えない。言えない。そっと彼女の方を見る。

彼女は真っ直ぐな眼差しで見ている。それを見てぼくはまあそれくらいならいいかと思った。そして口を開く。

「、、、、、、」



目を開けると真っ暗だった。夢、だったのか。

そう思って体を起こそうとすると、、

「いっっ、、、、」

激痛が走った。感じたことのない。頑張って体を起こした。けど、その頑張った先には変な光景が広がっていた。

「誰か、、倒れてる、?誰だ?」

その人を認識するのに1秒もかからなかった、、

「桔、、乃、?」

そう気づいた瞬間、ぼくは痛みを忘れて桔乃の元へ近寄った。

「桔乃!大丈夫か!返事しろ!」

声をかけても目を覚ます様子は見られない。

意味がわからない。なんで現実世界に桔乃がいるんだ。なぜ倒れている。なぜこんなにも土砂みたいなのが、、土砂?雨?

違う、ここは異世界のままだ、、

その瞬間、ぼくは理解した。

キッチンの方に目をやると、、

黒いものが流れてきていた。

すぐに桔乃の家の電話を探す。

「1、1、9、、、プルルル、、」

早く繋がれ!早くしろ!

「はい、消防司令センターです。火、、、」

「救急です!早く!」

「分かりました。場所は?」

「、、、だ!早くしろ!お願いだ!」

「分かりました。救急車を出動させ、、」

ぼくは電話を切った。そしてすぐに学校で習った心肺蘇生をする。

なんで、なんで、なんでこんなことになるんだ、

酷すぎる、ひどい、、気づくと泣きながらぼくはただただ静かな部屋で、薄暗い部屋で救急車を待った。







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