一宮颯太は異世界へ!?
「桜、きれいだったなー」数学の授業中にふとそんなことを思った。今はちょうど梅雨真っ只中の6月。桜の木には緑の葉がくっついている。高校に入学してから2か月、僕、一宮颯太は正直言って、少し不満のある高校生活を送っていた。友達はいるがずっといじってきてめんどくさいし、担任の先生はネチネチ話すタイプで鬱陶しいし、とにかく不満ばっかである。
「放課後、中央公園行かね?」
小学校からの同級生、倉木陽介に言われ、僕は軽く、
「ん、」
と返事をする。陽介は僕が唯一、親友と呼んでいる奴だ。なぜならこいつは人の嫌がることをしないからだ。だから一緒にいて楽しいと思える。強いて嫌なところを挙げるとしたら顔が超絶イケメンで成績優秀ってとこだろう。そんなことを思いながら歩いていると公園に到着した。
この公園には遊具がない。なにをするかというと、階段に座って本を読むか、陽介のバスケットボールで一緒にバスケをするくらいだろう。
けれど今日は少し違った。
「お前、将来どうすんの?」
急に陽介に聞かれた。将来とかの話は先生と家族ぐらいしか話さないのに、ましてや進路の話ばっかだから学校は嫌いだと言っていた陽介がそんな話をしてきたことにびっくりして、ぼくは少しの間、固まってしまった。
「どうした?」
陽介が不思議そうな表情で聞いてきた。
「いや、陽介が進路の話するのが新鮮だなーって思って。ちょっと驚いた。」
「なんじゃそりゃ。ま、いいや。んでどうするつもりなの?」
「まだ分かんない。何が向いているのかとか、何がしたいのかとか、、」
「そっかそっか。おれと同じ感じで良かった!」
「一緒にすんな」
こんな感じの会話をして今日は解散した。
夜、家に帰ってから陽介と話した将来について考えてみた。10年後、自分はどんな人間なんだろうか。結婚しているのだろうか。他人に迷惑をかけていないだろうか。色々考えたけど頭が混乱しそうになって止めた。携帯を手にとってネットの記事を見る。何気なく見ているとそこに目を引く見出しがあった。
「異世界に行く方法」
「は?」って思った。そんなわけないだろうと。そんな簡単にいけたらきっとこの地球にいる8割くらいの人間が異世界についてSNSなどいろいろなところに投稿して話題になっているはずだ。そう思いつつも記事の内容を見る。
「自分の行きたい世界を赤ペンで書いて、のりでくっつけ指輪のようにして指にはめ、この状態で寝ると異世界に行くことができる」なんともバカげた内容だが颯太は好奇心に負け、指輪を作って指にはめ、布団に入る。
「こんなんでいいのか?」
こんなことをやっている自分に恥ずかしくなったが、それより本当に異世界に行けるのかというワクワク感の方が勝ってしまった。
「明日が楽しみだ!」
僕はドキドキしながら眠りについた。
「ピピッ、ピピッ、、、」
携帯の目覚ましの音でゆっくりとからだを起こす。
カーテンを開ける。晴れだ。
本当に異世界かどうかを確かめるため、すぐに支度をして外に出る。
「なんだ変わんないじゃん」
ワクワクしていた自分が恥ずかしく思えた。まあそれはそうか。
「散歩でもするかー」
気持ちを切り替えようとそこら辺を散歩することにした。しばらく歩くと郵便局があった。もう少し歩くと、ちょっと目立つ大きな家がある。
「なんも変わってねーじゃん、、」
改めてがっかりする、、、ん?ちょっと待って、
「こんなとこになんで郵便局あんの?」
よくよく考えるともう少し山のほうの地域にあった気がする。しかもこの大きな家が立っている場所って、、、
「ここ畑じゃなかったけ、、?」
自分でもよく分かんなくなってきた。
もし異世界だとしたらもっと、こう、派手に、THE異世界っていう感じじゃないのかな?それともこんな普通な感じなのか?
頭をフル回転させて考えた。けどますますよく分かんなくなる。
「あー意味分かんなくなってきたー」
「大丈夫ですか?」
ふと声をかけられた。同じくらいの女の人、かわいらしい人が目の前に立っていた。
「んにゃ!?」
びっくりして変な声が出てしまった。その人は不思議そうな表情を浮かべる。
「失礼ですが、、あなたは誰ですか、、?」
この出会いが、この先ぼくの人生を大きく変えることになると一宮颯太はまだ知らない、、。