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絶対理不尽ガール(仮)  作者: 米俵1kg
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1. 新種の特殊モンスター

 右足を前に膝を曲げ、前傾姿勢(ぜんけいしせい)を取りながら全身に青い魔力を(まと)う。


 時間は夕方に差し掛かった頃、場所は魔物の森のゴブリンの集落の前。


 突然自分達の住処にやってきて、逃げもせず戦闘態勢(せんとうたいせい)を取る私に「グギャギャ!?」と驚きながらも、ゴブリンのリーダーと思われる大きな個体の一声で直ぐに冷静さを取り戻し、奇声を上げながら20体程のゴブリンが一斉(いっせい)に襲い掛かって来る。


 想定よりも家族がたくさんいるなと思いながらも、私は魔力で強化した肉体で群れの左側へ回り込みながら、右足でブレーキを掛け、目の前にいた反応の(にぶ)いゴブリンを横から左足で蹴り飛ばし、他の個体へぶつけて動きを阻害(そがい)した。


 回り込んだのは、敵が数の()を生かして私を囲もうとしていたからだ。


 私は最速でゴブリンを倒す為に、そのまま左足を踏み込みの足に変え、戸惑(とまど)いで動きを止めた目の前の敵へ体を加速させる。


 あとは簡単だ。


 強化した手足の破壊力を、連携が(くず)れたゴブリン達に振る舞うだけである。


 左の拳で顔面を殴り飛ばし、左の足を胴体へ、時折(ときおり)適当に右拳と右足も()()ぜていけば――ほら、こんなに簡単に倒せる。


 切り開かれた森の中に差し込む夕日の眩しさに目をしょぼつかせながらも、決して目は閉じずにゴブリン達を苛烈(かれつ)に攻撃し続け、吹き飛ばしたゴブリンが木や、お世辞(せじ)にも立派とは言えない小屋などに勢いよく叩きつけられ、破壊音が辺りに響き渡った。


 周りを見渡し、動き回っていたゴブリンがいなくなったと思った瞬間、横合いから私に強烈な殺氣が浴びせられる。


 殺氣はゴブリンリーダーからのもので、自分の配下を殺された事に激怒している様だ。


 そんなに怒るなら、最初から一緒に襲い掛かってくれば良かったと思う。


「はあ……」


 ここのゴブリンリーダーは知能が低い上に、周囲に展開させている超能力で発動させた若干(じゃっかん)太めの木の棒にも、全く力を感じられない。


 期待外れの弱さに、思わずため息が出る。


「グアアアアア!!」


 私のやる氣を無くした様子に怒り狂ったのか、()たけびを上げながら木の棒が射出(しゃしゅつ)され、それが振るわれた私の左腕によって容易に弾き飛ばされる。


 ――やはり、期待外れだ。


 余程(よほど)自分の攻撃に自信があったのか、ゴブリンリーダーは驚いた様な表情を見せている。


 力の差は歴然(れきぜん)であり、正直言ってこれ以上戦う意味はほとんど無いが、それでも敵である以上、やる事は変わらない。


 私はいつも通り前傾姿勢(ぜんけいしせい)を取り、左手に魔力を結集させてゴブリンリーダーに勢いよく突進した。



 ゴブリンリーダーを瞬殺し、可能であれば完全に暗くなる前に施設に帰りたいと考えていた私は(きびす)を返そうとしたが、元来た方向から冒険者らしき集団がこちらに向かってくるのが見えた。


 わざわざ話す用事も無い上に、早く帰りたかった私は軽く身体強化を発動し、冒険者達を迂回(うかい)して帰宅しようと、斜め前に駆け出す。


 しかし、冒険者達は身体強化を発動し、あろうことか私の前に立ちふさがった。


(男が5人……戦闘力は私より上。逃げられない)


 私は彼らに可能な限り殺氣をぶつけながら、思い切り(にら)み付ける。


 即座に前傾姿勢(ぜんけいしせい)を取り、今にも襲い掛かりそうな様子の私に、真ん中のリーダーらしき人物が(あわ)てて胸に付けた冒険者バッジを見せながら口を開く。


「ちょっと待て、ああ盗賊じゃねえぞ? 俺たちは東の国(ひがしのくに)のBランク冒険者だ」

「……あの、いきなり何でしょうか? 暗くなる前に帰りたいのですが」

「ちょっとあのゴブリンの集落(しゅうらく)の事で聞きたい事があるんだけど、いいか?」

「はい、いいですけど……」


 冒険者達に襲い掛かってくる氣が無いと判断した私は、そう(つぶ)いて前傾姿勢(ぜんけいしせい)を解き、話の続きを(うなが)す。


 集落の殲滅(せんめつ)は自分がやった事なので、聞かれたからには立ち去る訳にはいかないからだ。


 私が臨戦態勢(りんせんたいせい)を解いたからか、落ち着きを取り戻した冒険者が話を続ける。


「俺の名はトム。さっきも言った様にBランク冒険者で、パーティー名『熊の集い』のリーダーをやっている。見たところ10歳にもなっていない感じだし、ギルドでも見かけた事の無い顔だが、この集落を壊滅(かいめつ)させたのは嬢ちゃんで合っているか?」

「はい、確かにたった今滅ぼしましたよ?」

「……ちなみに、今立ち去ろうとしていた様だが、素材は取らないのか?」

「私は()らないので、欲しかったら差し上げましょうか?」


 私がそう提案すると、トムはあーっと右手で顔を抑え、空を(あお)ぎながら(あき)れた様な声を出した。


 急に呆れられて戸惑う私に、トムが続けて質問をする。


「なあ、魔物は何歳の頃から狩り始めたんだ?」

「ええと、5歳の頃ですね。でも、まだ小さかったし弱かったので、本格的に狩り始めたのは最近の事です」


 すると、トムは周りの仲間と顔を見合わせると、腕を組んで思わせぶりに(うなず)きながら、ある一つの事実を私に告げた。


「お前……多分ギルドに、新種の特殊モンスター扱いされているぞ?」


「……え?」

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