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矢口の小さな物語置き場【なろう版】  作者: 矢口愛留
隣の国から山をぶち抜いて現れた少女に気に入られて迷宮探索をすることになりました〜魔物よりその子の方が怖いのでとりあえずついていきます〜【にじそらスピンオフ】
9/11

8 ようやく僕の出番です



 カイの叫びを受けて、僕たちはすぐにその場に伏せた。


 爆発自体は、小規模だ。

 毒茸トードストゥールの胞子も、遠くから魔法攻撃をしていたアリサ達や、僕達には届かない。


 ――しかし。


「カイっ!」


「待て、アリサ! 近づくな!」


 カイに駆け寄ろうとしたアリサを、オリヴァーが制する。


 盾の精霊の力で身体を強化していたカイは、至近距離での爆発をものともしなかった。

 しかし、間近で浴びた毒茸トードストゥールの胞子のせいか、膝を折り、苦しそうな表情をしている。


「蛇じゃない。迷宮ダンジョンの主の本質は、毒の精霊だったんだ。急いで解毒しないと!」


「で、でも、オリヴァー様。解毒が可能な水の精霊の力は使ってしまいましたし、毒茸トードストゥールの解毒薬は持っていないですよ」


「けど、早くしないと、カイが……!」


 オリヴァー達は、胞子の舞う中でカイに近寄ることも出来ず、狼狽うろたえている。


 僕は、森で調査をしていた時と同じように、布で鼻と口をしっかり覆って、無言でカイの近くへと歩み寄っていった。


「デ、デイビッド!? 危ないから――」


「大丈夫だ。坊ちゃんは、()()()だ。坊ちゃんに任せて、出来るだけ空気が綺麗な所で待っていた方がいい」


 トマスが、皆をしっかり退避させたようだ。

 遠くにいれば胞子の影響を受けづらいとはいえ、密室では少しずつ身体が毒に侵されてしまう可能性もある。

 すぐ屋外に出られない状況であれば、出来るだけ離れてもらった方がいい。


「お……俺を置いて、逃……げろ……」


 カイは玉のような汗をかきながら、そんな情けないセリフを口にした。

 だが、僕は黙って口元に人差し指を当て、静かにしろとサインを出す。


 僕は腰に付けたポーチから、数種類の薬瓶を取り出す。


 先程迷宮ダンジョンの外で採取した毒茸トードストゥールの胞子。

 それが、各々の薬瓶に入った薬品と混ざり合い、様々な色に変化していた。


 僕はその内の一つの瓶の蓋を開ける。


 ――これは駄目だ。次。


 ――こっちは逆に毒が増えている。慎重に蓋をする。次。


 ――これは……これなら、いけるかもしれない。


 試しに、水に浸けただけの毒茸トードストゥールの欠片に試薬を垂らす。

 一滴の試薬で、毒茸トードストゥールの欠片は溶けていき、その毒性は綺麗さっぱり消えてなくなった。


 ――これだ。


 僕は、試薬を数滴、清潔なガーゼに染み込ませる。

 ガーゼを少し揉んで薬剤を浸透させると、カイの鼻と口を覆うように当てた。


 ものの数分で、カイの顔は血色を取り戻し、無事、呼吸も安定したのだった。



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