6 結局みんな、落とし穴にハマる
「で、結局、そこのオジサン以外、みんなして落とし穴にハマったと。何やってるんだ、お前らは。そして誰なんだこの優男は」
落とし穴の底でアリサに食ってかかっているのは、カイという青年だ。
緋色の髪と瞳で、見る者にキツい印象を与える。
身体も大きくて、鎧のようにがっしりとした筋肉が身を固めている。
「うるさいうるさい! 彼はデイビッドよ、優男って優しい男って意味よね、まったくもってその通りよ! あんたとは真逆!」
「でも落とし穴にハマってんじゃねぇか! 馬鹿じゃねえの!」
「いや僕は巻き込まれ……」
「はぁーーー!? うっせぇわよ! あんただってしっかりハマってんじゃないの! そもそもねぇ……」
僕のちょっとしたボヤきは、続くアリサの声に遮られた。
そしてそのアリサの声も、もう一人の青年、オリヴァーの大きくはないが通る声に遮られることとなった。
「おい、君たち、いい加減にしろ。ようやく上まで蔓が伸びたから、脱出するぞ。……おーい、トマスさーん、お願いしまーす」
「ああ、任せなさい。坊ちゃん、気をつけて登ってきて下さいよー」
先程はトマスだけ落とし穴にハマっていたが、今回は逆だ。
狩人であり元々慎重なトマスだけは、華麗に落とし穴をスルーした。
ついでに僕の伸ばした手もスルーした。不服だ。
落とし穴の上にいるトマスに声をかけたオリヴァーは、空色の髪と瞳を持つ、線の細い美青年である。
彼は森の精霊の加護を受けているらしく、植物を自在に操ったり動物と意思疎通することが出来るらしい。
「ごめんなさい、オリー。貴方がいると思って、つい走ってしまったの……」
「いいんだ、ソフィ。君に怪我がなくて良かった。さあ、支えてあげるから先に登って」
オリヴァーが丈夫そうな植物の蔓を伸ばし、トマスがそれを固定したところで、僕たちは蔓を登って落とし穴から脱出した。
オリヴァーはソフィアを優しくエスコートしている。
その様子を羨ましそうに見ていたカイも、アリサをエスコートしようとしたが、思いっきり足を踏んづけられていた。
結局アリサは僕にくっついて来て、カイは恨み言を言いながら最後に蔓を登った。
そうして落ち着いたところで改めて自己紹介をして、僕たちは六人になったパーティーで迷宮の奥を目指すことになったのだった。