表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢口の小さな物語置き場【なろう版】  作者: 矢口愛留
隣の国から山をぶち抜いて現れた少女に気に入られて迷宮探索をすることになりました〜魔物よりその子の方が怖いのでとりあえずついていきます〜【にじそらスピンオフ】
2/11

1 春の日、毒茸、降る砂礫

◆当作品は、以下の長編作品のスピンオフとなります。

本編を読んでいなくてもお楽しみいただける内容ですが、よろしければ長編の方にもお立ち寄りいただければ幸いです。

「色のない虹は透明な空を彩る〜空から降ってきた少年は、まだ『好き』を知らない〜」

https://ncode.syosetu.com/n7110hv/



 それは、うららかな春の日のことだった。


 眼前には、碧く澄み切った水を湛える、美しい湖。

 そのほとりには、黄色い花が咲き乱れる青々とした草原が広がっている。

 草原の少し先には常緑の森が広がっていて、小鳥は歌い、栗鼠りすや野うさぎが木々の間を駆け回っていた。


 僕はデイビッド、二十歳だ。

 茶髪で灰色の瞳を持ち、優しげな風貌だと評されることが多い。


 僕が訪れているこの湖は、父が治める領地の東端に位置している。

 風光明媚なこの地は、王国内でも人気の別荘地だ。

 夏の休暇の時期になると、他の領地からも続々と貴族たちが保養に訪れ、舟遊びや狩りに興じて羽を伸ばしている。


 僕がなぜ、オフシーズンにわざわざ、この地に足を運んだのか。

 それは、この湖を囲む森の一部分に、何故か毒を持つキノコが大量に発生し始めた為であった。

 そのため、元狩人である執事のトマスと共に、数日前からこの森と毒キノコの調査を行っているのだ。


 そもそも貴族の嫡男である僕が出向く必要もないと思われるかもしれないが、それにも事情がある。

 僕の生家であるロイド子爵家のルーツは、薬草やハーブの栽培に端を発している。

 そのため、子爵家嫡男である僕も、薬草やハーブ、更には毒草や毒を持つ生物についても造詣ぞうけいが深いのだ。


 毒キノコが群生している場所は森の奥、切り立った崖の近くである。

 到着してみると、確かに、猛毒の毒茸(トードストゥール)が一面生い茂っているのだった。


 僕が顔を布で覆い、細心の注意を払いながら胞子を採取していた、その時——。


 ドゴォォォオン!!


 轟音と共に近くの岩肌が崩れ、ぱらぱらと砂礫されきが降ってくる。

 胞子が舞うのを浴びないように、僕は慌ててキノコの群生地から離れ、崩れた岩肌の方を見た。


 間をあけずに、もうもうと立ち昇る土煙の中から二人の少女が姿を現す。


「アリサったら、やり過ぎですっ! 迷宮ダンジョンが崩れて生き埋めになったらどうするんですか!」


「えぇー? ソフィアは真面目すぎるよー。なんだかんだトラップからも逃げられたし、迷宮ダンジョンも崩れなかったじゃん?」


「次は慎んで下さいっ! ていうか迷宮ダンジョンの外に出ちゃったじゃないですかっ!」


 ——それが、僕の将来の妻との出会いだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ