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人外転生  作者: 雪鼠
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8・神サマッ!

 ねえ、クロノっさん。


『……くろのっさん、だと?貴様、死にたいようだな。私としても、この不毛なやり取りを終わらせるのは悪くない……』


 質問の続きなんだけど。


『サラッと流すな』


 やっぱ情報だけじゃ割に合わないと思うんだ。

 なんてったって人外にされたんだからね。

 その元凶たる君は、もう少し誠意を見せる必要があると思うんだ。

 ねえ、元凶たるクロノっさん?


『相手の精神状態を最悪にしてから交渉を持ち込むのは良い手とは言えないぞ。あと元凶は私ではない』


 ねえ、元凶たるクロノっさん?


『話聞いてる?』


 で、追加条件なんだけど。


『本当に耳鼻科行け貴様』




    ■ ■ ■




 俺は目をもってない。

 耳も無い。

 鼻も無い。

 果ては手足すら無い生き物になってしまった。


 不便。

 実に不便!

 まず、周囲の状況を把握できない。

 五感のうち、視覚、聴覚、嗅覚、味覚の4つが存在しないからだ。

 単純計算で、人間の頃の五分の一の探知能力。

 いや、人間は情報収集の九割を目に頼っていると聞くから……ええと、今は何分の1の探知能力になるのだろうか?

 よく分からんがとにかく、状況を把握することがほとんどできないということだ。

 今だって、俺がいるのはおそらく岩でできたなにかの上に違いない、といった程度のことしか分からない。

 これはまずい。

 非情にまずい。

 クロノっさんの話によると、ここは剣と魔法のファンタジー世界。

 バリバリモンスター達による生存競争の真っ只中。


 Q.そんなところに索敵能力ほぼゼロの俺が巻き込まれたら?

 A.危機察知ならず。死、有るのみ。


 目隠ししてドッヂボールで勝てるやつとかいるか?

 いねーよな。

 というわけで、索敵能力は必須。


 そしてもう1つ。

 移動に関してだ。


 今の俺には手足が無い。

 つまり、走ること歩くことは勿論這いずることにも難儀する。

 這うっていうのは手があってこその行為だ。

 いま手ないからね。

 どうしようもないね。


 移動の不可能は、そのまま死を意味する。

 考えてみてほしい。

 ベットから1人で起き上がることもできない要介護者が、山の中にでも放置されたら?

 用を足すこともできないし、食料も取りに行けない。

 熊やライオンが現れても逃げられない。

 もうホント、どうしようもない。


 今の俺は、山の中で縛られ動けない状態で放置されながら目隠しドッチボールをやってるようなもんだ。


『は?』


 とにかくそんな状況だ。


『は?』


 そんな俺の縄を解き、目隠しを外してくれるのがこの方!

 Mr.クロノっさん!


『あ?(怒)』


 さあ、そんな感じの俺の状況をどうにかしていい感じにしたまえ!




   ■ ■ ■



 頼むよクロノっさん、お願いだよクロノっさん、ねっ、クロノっさん?


『ここまで人間ごときに対して殺意を覚えたのは初めてだ』


 まあほら、そんな事言わずに〜。

 小一時間話した仲じゃな〜い。


『私とて好きで貴様と話している訳ではないのだが。何故こんなことをしているのかと言うとだな……』


 あ、そういうのはいいです。

 俺が聞きたいのは君が何をしてくれるかだから。

 経緯とか正直興味ない。


『………』


 ほら、何を恵んでくれるんですか?

 クロノっさん?


『……はぁぁぁぁぁ……』


 神は大きく嘆息した。

 疲れているのだろうか。


『主に貴様のせいでな』


 あらそうですか。

 すいませんね、仕事増やしちゃって。


『……否、仕事の量の問題ではなく……はぁ……もう良いわ……』


 ……で?

 結局何をしてくれるのかな?


『……結論から言うと、私はほとんど何もしてやれん』


 ええ!?

 いやそりゃないっすよ神様。

 見よこの体!

 モンスターだよモンスター!

 化け物だよ!?

 流石にそれは真心ってもんがないんじゃないですかぁ?


『そういう決まりなのだ。神々は、地上界に大きく影響を与えてはならない。基本的には、放置主義なのだよ。一部例外はあるがな。こうして貴様と長話しているのも、かなり危ない……言わば、グレーゾーンといった所か。』


 いや、バリバリ異世界から人転移させて影響与えてるだろ。

 今更だろ。


『それこそが『例外』と言うやつだ』


 都合良いな。


『なんとでも言え。今言った通り、世界への介入は制限されている。決まりを厳守するのならば、私が貴様にできることは、無い』


 えぇー……。

 ……あれ?

 これって、詰んだ?


 チート無し。

 移動不可。

 五感ほぼなし。

 ……あれ?

 詰んでない?

 確死じゃない?

 ヤバない!?


 ああああぁっっっっっっっっっつんだ!

 詰み!

 死ぬ!

 ああ!

 異世界転生って思ってちょっとウキウキしたのに!

 ウキウキしてたのに!

 死亡フラグはやくね!?

 ああ糞が!

 ンああもう!


『静かにしろ。決まりを厳守するのならば、と言っただろう』


 ……え?


『神々の中にも派閥というものが有る。大まかに分けると、古くからの神と、新生の神の2つ。過度な干渉はしない、という決まりを作ったのは新生の神。私は古い神だ』


 ……お?


『まだ生まれて千年もたっておらん若造だというのに、新しい条例だとか、新体制だとか言って騒ぎよる。温故知新という言葉は知っておろう?それが著しく欠如した者たちなのだよ』


 ……ほほう?


『まあつまり、なんだ。……大きく規則から逸脱はできないが、多少目を瞑るのもやぶさかではないと言うわけだ』


 ……神サマッッッ!

 ああ、ありがとうございます神サマ!

 なんとお優しいことでしょう!

 貴方様はそう、山よりも高く海よりも深い……。

 否!

 あの世よりも高く、地獄の果てよりも深い心の持ち主です!


『何故じゃろうか。絶妙に嬉しくないのう』

 嬉しくないなら言い換えましょうか?

 そうだな、例えば……。

 月に届かんとするほど遠く、南アメリカ沖に到達するほど潜っていく御心、とか。


『だいぶ迷走しておるのう……』

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