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人外転生  作者: 雪鼠
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5・既知との遭遇

 さて、いつまでもグダグダと考え続けても仕方ない。

 なにもせずにここで過ごしても、いずれ餓死するか人間に襲われるかするだけだろう。

 なんせ、俺はスライムに似ているらしいからな。

 Q.スライムといえば?

 A.最弱モンスター

 うん、格好の的すぎる。

 とりあえず、移動する方法を考えなくてはならない。

 そうじゃないと何かあった時に逃げられない。

 でも……。

 どうやったら動けるんだ?これ……。

 足はないから当然歩けない。

 這いずれば案外簡単に行けるかもしれないな。

 マンガとかの作中でも、スライムってズルズルと動き回ってるし。

 スライムにできて、俺にできないことはないだろ。



 そう思ってた時期が私にもありました。

 なにこれムズい。

 超!ムッズい。

 当たり前のことだが、俺はスライムの動き方なんて知らない。

 スライムは動くもの。

 なんとなく、固定概念としてそういう考えが頭に染み付いていた。

 でも、実際にやってみるともう何もできない。

 全力で体を変形させまくってみたものの移動はできず。

 果ては天に祈ったがどうしようもなかった。

 しかし、意外とスライムってのは動かない生き物だったのかもしれないな……。

 そうだよ、うん。

 きっとそうに違いない。

 こんなに難しいのに、他のやつらにできるとは思えない。

 これで、「他のスライムは皆できますよ」なんて言われたら、ちょっと精神的ダメージを受けてしまう。

 ……はあ、動かないはずもないか。

 第一、動かないと餌が取れない。

 そうすると、生命活動に必要なエネルギーを補充できない。

 光合成でもするってんなら話は別だが、スライムが光合成なんて聞いたこともない。

 ……いや、俺そもそもこの世界のスライムの生態知らなかったわ。

 これはワンチャン、光合成する可能性も……。


 1人で考えにふけりながら虚しい努力を続けていると。

 頭の中に、声が響いた。



『スライムは光合成なぞせん。阿呆なのか、貴様は。』



 どわああああ、あ? お?

 こ、この聞き覚えのあるダンティーな声は!

 思い出すと怒りがふつふつと湧いてゲフンゲフン、麗しいこのお声は!

 もしや神様!?

 神様ですか!?

 ここで会ったが百年目、じゃなかった、またお会いできて光栄です!


『……訂正しよう。貴様は阿呆だ。よっぽど消し炭になりたいようだな』


 いえ断じてそんなことは。

 それにしてもいい天気ですねー。


『今日は曇天だ。話をずらすのも下手だな……』


 なにぶん会話が不得手でして。

 特にあなたみたいな人が相手だと。


『腹芸すらできんのか。悪意が漏れているぞ』


 心を読まれた状態で、どうやって腹芸をしろと。

 無茶言いやがりますなあなたも。

 おふざけになるなよ。


『ついに敬語すら崩壊したか……』


 お褒めに預かり光栄です。


『貴様はいつか耳鼻科に行け』


 耳ありませんけどね。

 にしても今日はよく喋りやがr……お喋りになりますな。


『……無理やりな敬語を聞いているとしゃくに触る。もう対等に話せ。』


 よっしゃ分かった。

 で、何の用?


『……これはこれでしゃくに触る……』



   ■ ■ ■


 

 神によると。

 神はあの後、娘さんにこってりしぼられたそうだ。

 異世界から集団で連れてきたのに、1人だけ別の場所で魔物に転生しているのはどういうことだ。

 しかも、それを放置するとはどういう了見だ。

 彼らの意思に関係なく連れてきたのだから、それ相応の誠意を見せるべき。

 自分のミスは自分で対処しろ。

 まずは顔を見せて謝って来い、と。


 こいつに娘がいた事にびっくりだが、その娘がわりかし常識人なのにもびっくりだ。

 人間なのかどうかは知らんが。

 そうだな、神よ。

 誠意を見せると言うのなら、いくつか質問に答えてもらいたいのだが。

 もちろん良いよな?


『それで良いのか?もっと業腹な頼みをするのかと思ったが……』


 え?

 それだけな訳ないでしょ。

 何言ってんだこいつ。

 何?

 1つしか願いを叶えてくれないような、そんな神様だったの?


『……何だと?』


 ああいや、そんなわけないよな。

 あなたがここに来てくれたってことは、あなたはきっと、人間1人を気に掛けることのできる素晴らしい神なんだろう。

 違うか?


『う、うむ。違わないな』


 でしょう?

 そしてあなたは偉大な神だ。

 僕の存在なんか、あなたの前では塵芥に等しい。

 あなたはちっぽけな人間の、何十倍も、何千倍も、力を持っている。

 そうですよね?


『ま、まあ……』


 そんなお方にすがることしかできない、私の弱さをお許しください。

 どうか、どうか私の願いを聞き届けてください!


『…………』


 …………


『……そ、そこまで言うのなら、まあ、仕方あるまい。叶えてやろう』


 数秒の沈黙の後に帰ってきたのは、了承の言葉。

 神様って意外とちょろいな。

 いいカモだぜ。


『おい聞こえとるぞ貴様』

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