3・なんか来た
あの魔法陣(?)はなんだったのだろうか。
もしや、ラノベでは王道の異世界召喚……。
んなわけないか。
殴られる直前に見た走馬灯だろう。
いや、こうして考える事ができるってことは死んでないってことだから、幻覚と言ったほうが正しいか。
死に目にあった時に見た幻覚は、走馬灯と言うのだろうか。
てかまだ目が暗闇になれん。
遅くね?
相変わらず耳も聞こえんし。
殴られた後遺症なのか?
ただ、触覚はある。
どうやら、土の上にいるらしい。
教室にいたはずなんだが。
殴られて運び出されたとしても、病院か保健室だろ。
はっ。もしや、陰キャの俺にそんな優しいことをしてくれる人間はおらず、邪魔だから校庭に放り出しておけ、ってなったとか?
……そうだとしたらかなり凹む。
そんなに嫌われてたか俺。
先生仕事しろ。
今、俺は体が動かせない。
身じろぎ程度はできるんだが、喋ることすらできない。
ここから一人で歩いて家まで帰る、とかもできそうにない。
朝まで放りっぱなしですか?
嫌だよ?
男子高校生が、校庭で遺体として発見されましたー、なんて言われるの。
あ、ちょっと寒い。
凍死コースかこれは。
いま9月なのになんでこんなに寒いんだ。
雨だったからか?
冷え込んでんのか?
まあ、痛みや苦しさは感じないから、死ぬまでには誰かが見つけてくれ……
『ん?なぜこんなところにいる?』
んああああびっくりした!?
2つの意味でびっくりした!
1つは、さっきまで1人の世界に没頭していたのに、急に誰かの声が聞こえたこと。
もう1つは、その声が頭の中に直に響いたこと。
神様!?
神様なのか!?
てことはやっぱり俺死んでたってことか!?
となるとここは天国か!?
いやもしや地獄か!?
地獄ならあなたは閻魔様!?
俺今から生前の罪を裁かれちゃう!?
まずい喋れないから弁解できない!
『五月蝿い、黙れ。』
あ、ハイ。
え、喋ってないよ?
何がうるさいんだ?
『貴様のその表層心理だ。口が3つのケルベロスより五月蝿い。』
す、すみません……。
しかし、思考がうるさいとなると、どうすれば良いのか。
何も考えるなと?
できんの?そんなこと。
……がんばってみるか。
無心、無心……。
……ケルベロス?
『……何故だ、確かに願い通りニンゲンを転移させたはず……不慮の事故など起こりうるはずもない……下位の精霊ならばともかく、この私が?……』
ああ、気になる。
ケルベロスと言ったら、地獄の番犬じゃないか。
その犬は喋るのか?
いや、犬じゃないから喋れるのかな……。
待てよ、神様(?)は表層心理がうるさいって言ってたな。
となるとケルベロスは、いろんなことを考えてるのかな……。
口3つと言っていたけど、口の数と思考の量って関係あるのか?
おっといけない、無心、無心……。
『む、此奴、ニンゲンではないな。しかし、魂は転移させたニンゲンたちのもの……何故此奴だけ、肉体が変わっているのだ?……しかも何だこれは……無生物ではないが……スライムでもない……別に良いか……此方に連れてきたことは変わらぬ……』
え?
……俺人間じゃないの?
てか転移?
人外であることはともかく夢の異世界転移?
異世界転移といえばチート!
異世界転移といえばチート!
神様、俺のチートはなんですか!?
『五月蝿いぞ。……ふむ、貴様の魂には何も付与されていないようだ。……まあ別に構わんか……また付与するのも二度手間だ。これで問題無かろう。』
え?
……俺チートないの?
嘘だろ!?
異世界ノーチート!?
死亡フラグまっしぐらじゃねーか!
神様どうにかして!
『……さて、帰るか。』
帰んじゃねえ!
いや帰らないでください神様!
俺が困るだろ!
いや違った、あなただけが頼みの綱なんですお願いです、せめてここがどこか教えてくださいお願いします、ねえ神様!
神様!
……神様?
あれ?神様?
……まじで帰ったの?
………。
………んあああクソ神があああああああ!!
異世界に来て学んだこと:
神は慈悲深くない。