12・肉
目を覚ますと、そこには見たこともない景色が広がっていた。
っていう表現は垢まみれになるほど使い古されているがしかし、俺の心情を描写するのならばそんな感じだった。
無論景色など見えるはずもないけどね。
どうやら俺は眠っていたらしい。
スライムも眠ることがあるのか
夢も見ないほどぐっすり寝たことで、驚くほど体調が良くなっていることに気がついた。
あまり自覚してはいなかったが、やはりこっちに転生してからの数日で相当疲れていたようだ。
正しく不眠不休で、遊んでたわけだし。
てか普通に眠るの怖いし。
寝てる間に捕食されるとか冗談じゃない。
ともかく万全とまでは行かないものの、体調は結構回復した。
そして俺が寝ている間に、恐れていたことが起きてしまったようだ。
睡眠中に、他の生物と接触すること。
これだよこれ。
目を覚まして一番に感じた違和感。
見知らぬ景色、ではない。
さっき言ったように、見えねーし。
それは、地面の材質。
五感で言うところの、触覚だ。
硬い地面ではない。
これまでは岩の床でゴツゴツした感覚があったが、今は何か柔らかいものの上に乗っているのが分かる。
形も、平らではなく妙な凹凸がある。
意識を失う前の最後の記憶では、俺は岩肌に寄り添って休んでいたはずだ。
それがいつの間にか、弾力のある何かの上……言ってしまえば誰かの膝の上っぽいところにいる。
人間か、人型の何かか……。
ちょっと状況が読み込めない。
誰だこいつは。
なんで俺をさらってんの?
疑問は多々ある。
が、今はそんなことどうでもいい。
それ以上に俺の注意はとある一点に集中していた。
俺には分かる。
ああ分かるぞ。
人間のころの感覚。
嗅覚が働いている。
これは……肉だ!
食料だ!!
タンパク質!!!
エネルギー!!!!
肉ううう!!!!!!
次の瞬間俺は誰かの膝の上を飛び出し、匂いのするほうにジャンプした。
ああ美味そうだ。
なんかこう、ただの生肉を焼いたものじゃなくて、ちゃんと調味料がついてる、料理だ。
もう俺の胃袋は(空腹の方の)限界を迎えている!
肉、肉、肉!!!
こっちに来てから初めての食事。
例え腐肉でも文句は言わないつもりだったが、まさか焼肉(多分)が食えるとは、なんと幸運なんだ。
命に感謝!
いただきます!
俺は生物としての本能に従って、目の前の食べ物に飛びつき、覆いかぶさった。
……。
……………。
…………………………!!
こっこれは……!
…………………………………………………不味い!
まず塩!
疲れた体に塩が染み渡るとかはよく言うものだがこれはそんなレベルじゃない。
物理的に染み渡ってる。
塩化ナトリウムが浸透してる。
人間だったら上唇と下唇が腫れぼったいになってしまうわ。
腫れぼったいっていう日本語の使い方としては間違っているけれども。
次に、ハーブ!
確かに香り付けは重要だ。
良くも悪くも油がのった肉に、爽やかな風味を足すことができる。
が、やはり多すぎる。
バケモンみてーに多い。
歯磨き粉ブレンドしてる?気がする。
そして、肉!
なんか、臭い!
日本でぬくぬくと美味いもん食って生きてきた俺にとっては、この肉は臭すぎる。
血抜きとか、ちゃんとしてるのだろうか。
血抜きしてない肉の味など知らんがな。
なんというか、この、なんだろうな。
そう、小学生の頃、母親が半年前の肉をそうとは気づかずに料理して、翌日学校にて地獄を見る羽目になったときの腐った肉に通づるものがある気がする。
詳しく描写はしないが二度とあんな目に合うのは御免だからその時から食料の徹底した管理を俺が行う羽目になった。
……なんかその事思い出してちょっと悲しくなった。
こういう事噂にする女子って、この時から嫌いになったんだと思う。うん。
歯ごたえ……は、分からん。
歯なんてないから。
液体の体の中で溶けていく感じ。
我ながら不可思議だわー。
うん、でも………。
貴重な食料だから、食べるさ。
ありがたく。
総評・しっかりとした塩味の腐肉の濃厚なミント和えは不味い




