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91 契約魔女

 翌日。第二公子宮殿へと戻ったリズとアレクシスのもとへ、知らせが入った。それは第二公子宮殿の放火犯が、毒を飲んで自殺したというもの。


「暗殺の可能性はないの?」


「同じく幽閉塔に収監されているヘルマン伯爵が、自殺する場面を見たのだそうです」


 アレクシスの質問にそう答えたカルステンは、顔を険しく歪めながら続けた。


「これで役目は果たした。妻と娘を頼む。と叫んだ後に、倒れたそうで……」

「それって……」


 リズがアレクシスへと顔を向けると、彼は考え込むようにしながらうなずいた。


「誰かに依頼されたってことだろうね。それも、命を掛けるほどの取引」

「騎士団で捜査した限りでは、公宮の使用人として彼を知っていた者はおりませんでした。命の取引ともなると、死刑囚でも連れてきたのでしょうか」

「毒については捜査中です。使用人の制服以外に所持品はありませんでしたし、容姿もこの地域では一般的。何者かを特定するのは厳しいですね」


 アレクシスの考えに賛同するように、ローラントとカルステンも報告をつづけた。この様子では三人とも『誰の仕業か』については、目星がついているのだろう。昨夜のリズの話を聞けば、他に疑うべき者はいないに等しい。


(これもフェリクスの仕業なのかな……)


「ヘルマン伯爵夫人はどうなってるの?」

「自分も殺されてしまうのではないかと、怯えております。一応、幽閉塔内の警備を強化させました」


 結局昨日は、フェリクスとまともに話せないまま終わってしまった。フェリクスは、リズに頼られることに気分を良くしていたようだが、彼にまだその気持ちが残っているかは疑問である。





 午後。リズは予定通りに、フェリクスと婚約の契約書を交わした。

 あれほどエディットを気に入っていたフェリクスだが、それでもリズとの結婚は必ずするつもりのようだ。


「そなたと結婚せねば、来世の俺が困るからな」


 サインを確認して早々、身も蓋もないことを述べるフェリクス。


(私のことは気に入らないけど、聖女の魂は繋ぎとめておきたいってこと?)


 それに何の意味があるのか。リズには到底理解しがたい考えだ。お互いに愛する気持ちがない者同士が結婚するより、エディットと結婚したほうがよほど幸せな人生を歩めるはずだ。

 どちらにせよ、フェリクスと結婚しない予定のリズにとっては、関係のない話ではあるが。いつまでも聖女の魂に囚われている彼が、少し不憫でもある。



「ああ。忘れていたが、そなたに毒を盛ろうとしていた者の無実を晴らしてやったぞ」


 テーブルの上に、ばさりと報告書のようなものを置かれ。リズは驚きながらそれを手に取った。


「えっ……。ありがとうございます」


 報告書には、第二公子宮殿の放火犯がヘルマン伯爵夫人に罪を着せようとしていたと書かれている。毒の入手ルートや、目撃者の証言などもあり、一日ほどで調べたにしては詳しすぎる内容。

 またも、フェリクスのいいように操作されているように感じてしまう。


「また俺に借りができたな。どう返してくれるのか、楽しみだ」


(うう……。借金の取り立てみたい)


「えっと、王女殿下と上手くいくようお手伝いいたしましょうか」


 リズとフェリクスの間に、『愛』などという言葉はもはや存在しない。リズはそう思って提案してみたが、フェリクスには物凄く嫌そうな顔をされてしまった。


「……そなたの手を借りずとも、エディットは俺にぞっこんだ」


(ぞっこん、って。やっぱり心はおじいちゃんなんだね……)


次話は、日曜の夜の更新となります。



明日は、『推しの妻~』の番外編とお知らせをしたいと思います。

ご興味ございましたら何卒!

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◆作者ページ◆

~短編~

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