表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/117

89 ピクニック魔女6


「先ほどは、とても面白いものを見せていただきましたわ」


 船の縁に手をついて、リズと一緒に湖面を眺めていたエディットは、思い出したようにクスリと笑みをこぼした。


「私がつまずいてしまったばかりに、雰囲気を悪くしてしまいました……」


 妹愛が過剰なアレクシスの態度は平常運転とも言えるが、ローラントとフェリクスまで雰囲気が悪くなるのは予想外だった。


「皆様、公女殿下をご心配してこそですわ。フェリクス様も、私のことなどすっかりお忘れのようでしたし」


 リズもそれについては特に、不思議でならなかった。散歩へ出かける前の彼は、確かにリズに対して冷たい態度を取り、これでもかと言うほどエディットを大切にしているようだった。興味をなくしたはずのリズを気にする理由がわからない。


 何はともあれ、アレクシスとエディットの作戦を邪魔をしてしまったのは事実。リズは素直に頭を下げた。


「作戦を邪魔してしまい、申し訳ございません」

「頭を下げる必要はございませんわ。一日や二日で、フェリクス様とお気持ちを通わせられるとは思っておりませんもの。これからも地道に活動を続けて参ります」


 まるでエディットは、この作戦を幸せに思っているかのように、胸に手を当てヒロインのようにふわりと微笑んだ。


「王女殿下は本当に、フェリクスのことがお好きなんですね」


 きっと前世のリズがフェリクスに抱いていた好意よりも、実際に本物の彼と接してきたエディットのほうが、ずっと強い気持ちを抱えているのだろう。

 リズは小説のファンだからこそ、小説には無い彼の一面を見てがっかりもしたが、エディットはちゃんと一人の男性として、フェリクスを見ているのかもしれない。


「公子殿下からお聞きになられたかもしれませんが、私はとても傲慢なんです。私の夫に見合う方は、誰もが恋する素敵な方でなければ。――公女殿下は、どのような方がお好みなんですか?」 

「私は…………。アレクシスみたいに、優しくて守ってくれるような人がいいです。私の性格とは合わないですけどね……ハハッ」


 小説のヒロインのような恋に憧れたが、残念ながらリズはヒロインらしくない。ヒーローに助けられる前に、虐めを自ら回避できてしまうようなたくましさだ。

 そんなリズを守ってくれているアレクシスは、ある意味ヒーロー以上ではなかろうか。実状は過剰な妹愛だが。


「ご自分を卑下しないでくださいませ。公子殿下と公女殿下は、とてもお似合いだと思いますわ」


 二人を応援すると言いたげな表情のエディット。リズは顔を赤くして慌てた。


「あ……あの、今のは例えなので、アレクシスを好きなわけじゃ……」

「恋のご相談には、いつでも乗りますわよ」


 ふふっと優雅にエディットが微笑むと、停泊中の船にそよそよと風が吹いた。ふわりと髪をなびかせる姿も、ヒロインのよう。花の背景がよく似合いそうだ。


(アレクシスもやっぱり、癒されるような子が好きなんだよね……)


 完璧すぎるエディットの姿をみてリズが自信を無くしていると、エディットのボンネットを留めているリボンがするりと解け。強風でもないのに、ふわっとボンネットが湖に向かって飛んでしまった。


「あっ……、フェリクス様にいただいたボンネットが!」


次話は、日曜の夜の更新となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

gf76jcqof7u814ab9i3wsa06n_8ux_tv_166_st7a.jpg

◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ