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■93 譲れないもの

清水部長からサッカーボールを投げ入れられる。

受け取った相手は、俺に視線を移す。


「ゲームを始める前にルールとして、相手に一度ボールを渡して戻してからゲームスタートになる」


そう言うと相手はボールを蹴り渡してくる。


「そのボールを俺に蹴り戻したタイミングから1対1の開始だ」

「……わかった」


俺はボールを受け取ると、すぐに相手に蹴り返した。


『神楽耶、まずはこいつからボールを奪い取ろう』

『分かりました!』


神楽耶は俺にスッと入ってくる。

相手はボールを受け取ると、すぐさま攻めてきた。


「一瞬で決めてやるよ!」


相手はものすごい速さでボールと共に走ってくる。

だが、俺としては全く分からない世界なので、まずは完全に傍観(ぼうかん)する側に(てっ)する。


「ほらほら、俺からボールが取れるかな!」


相手は俺からボールを取られまいと足のフェイントを駆使して、攻めてくるが――


『そこです!』


――ガッ!

神楽耶は的確にボールに足を引っかけ、相手の足元からボールを簡単に奪い取る。


「……なっ!」


ゴールへドリブルをしながら神楽耶が確認を取ってくる。


『……和樹君、取ったのはいいですが……このボールをあの赤い置物の間に入れればゴールなんですよね?』

『あぁ、そうだ! 蹴り入れたら1点だ』

『分かりました! それ!』


思念でやり取りをし終えると、神楽耶はボールをすぐにゴールへと蹴り飛ばした。

ボールがゴールに入ると、清水部長が笛を高らかに鳴らす。


「まず1点だ」


俺は追いかけてくるサッカー部エースの顔を見ながら発する。


「……クソ、まぐれで調子に乗るなよ」


すると、清水部長がボールを投げ入れてくる。

受け取った相手は俺にボールを渡してくる。


「攻守は1点が入ったら入れ替えるルールだ。次はお前が攻める番だ」

「……そうなのか。わかったよ」


俺は受け取ったボールをまず相手に一度渡す。

相手は俺にボールを蹴り戻してくる。


『……いくぞ、神楽耶』

『はい!』


ボールを受け取った神楽耶は、すぐさま攻めに入る。

だが、当然ながら相手が邪魔をしてくる。


『……えっ! ……和樹君! この人、和樹君の足を狙ってきています』

『は? ……ラフプレー上等って訳か。問題ないか神楽耶?』

『はい! 問題ありません!』


神楽耶は巧みなボールさばきで相手の猛攻を防いでいく。

そして――


――バシュッ!

相手の隙をついてボールを相手の股の隙間に蹴り入れる。

すぐさま相手を追い越してボールを足に戻す。


「クッソ!!!」


相手の悔しがる声が聞こえてくるが今はどうでも良かった。


「……ふん」


軽々と相手を追い越した神楽耶は再度ボールをゴールに蹴り入れる。

ボールがゴールに入ると、再び清水部長が笛を高らかに鳴らす。


「これで2点だ。……なぁ、サッカー部は素人の集まりなのか?」


俺は皮肉めいた声で相手に質問した。


「……ぐっ!」


相手は何も言い返す事が出来ずにいた。

そして、清水部長からボールが投げ入れられる。


「ほら、次はそっちの攻める番だったよな」


受け取ったボールを相手に蹴り渡す。


「……ちなみに、あと1点で俺の勝ちだけど、俺が勝った時の条件覚えてるよな? 後で嘘でした! なんて言うなよな?」


俺は先ほど言われた言葉をそのまま相手に突き返す。


「……あぁ、わかってるよ!」


相手はボールを蹴ってきたので、すぐに蹴り返した。

ボールを受け取った相手は、すぐさま攻めてくる。


「……っ!」


相手はドリブルを駆使した戦法を辞め、勢いで俺を追い抜こうとしてきた。

俺は一瞬理解できなかったが、神楽耶は想定していたようで、体が勝手に相手を(とら)える。


「……くそ! 抜けられねぇ!」

「焦ってるな。……それもそっか。あと1点で負けだもんな」


体は神楽耶が制御しているので俺は会話に専念できるぐらい余裕だった。

だが、相手はそうではないようで、余裕のよの字もない状態だ。


『貰います!』


――ポスッ!

神楽耶がそう言うと、相手の足元にあるボールに足を延ばしてボールを弾く。


「……うぅ!!」


相手が唸るのを横目に、すぐさまボールに駆けつけて足にボールを収める神楽耶。


『もうゴールしちゃいますね。和樹君!』

『あぁ』


そして、神楽耶はゴールにボールを蹴り入れる。

すると試合終了を知らせる笛が鳴り響く。


――試合はあっけなく俺の勝利で終わった。




試合が終わり、清水部長は相手の近くに近寄っていく。

それと同時に俺の元へも九条さんや愛花達が近寄ってくる。


「……和樹さん! すごいですね。エースに勝つなんて」

「……はは、なんとかなってよかったです」

「兄さんすごかったです!」

「愛花、ごめんな。愛花を賭けるようなような感じにしちゃって」

「いえ、気にしないでください。……それに、私は兄さんの事信じていましたから!」

「……ありがとう、愛花」


俺は愛花の頭を撫でていると、清水部長が声をかけてくる。


「……すまない。後藤は足の調子が悪かったようだ」


おそらくさっきの対戦相手の名前だろう。


「調子がどうあれ、俺が試合に勝った時の条件はご存じだと思います」

「あぁ、それはもちろんだ。……だが、単純に俺はお前と戦ってみたいのだが、どうだろう? 俺に勝つことが出来たら、協力の件はサッカー部が総力をあげて協力する。……だが、負けた時は……山守、お前をサッカー部に入部させる」

「入部!? ……わ、わかりました。その申し出、受けて立ちます」


それから、先ほどと同じルールで1対1を清水部長とも戦う準備を済ます。


「準備はいいか? 今回は山守から先攻でいいぞ」

「わかりました」


俺は受け取ったボールを相手に蹴り渡し、清水部長は俺に蹴り渡してくる。

受け取った俺は、清水部長に向かって攻め始める。


「それじゃ、行きます!」


それからの試合も先ほどと同じようなもので、3-0で俺の圧勝だった。




「……そんな、私が」


地面で項垂(うなだ)れている部長に手を差し伸べる。


「立ってください」

「あ、あぁ。すまない。……しかし、何故そんなに強いんだ?」

「さぁ、俺にも分かりません。運動神経がいいんじゃないですかね」


俺は本当の事を言っても信じて貰えないので、適当な事を話しておく。


「ふ、そういう事におこう。……しかし、約束だからな。山守達に強力しよう。何でもいってくれ」

「ありがとうございます」


立ち上がった清水部長と俺は握手を交わした。

それから九条さんが、サッカー部を集めて今回の俺の噂話の真相とPTA会長の悪事などを共有し、俺の誤解を解いてくれた。




「……ふぅ、なんとか一件落着って感じですね」


俺達はサッカー部と別れた後、部室に置いてあった荷物をもって昇降口に集まっていた。


「……ですが和樹さん、今日はちょっと無茶な行動が目立ちましたよ。一歩間違えていたら――」


それからしばらく九条さんは俺の行動について説教を始める。


「――分かりましたか? もうあまり無茶な約束はしないようにしてくださいね」

「……はい。気を付けます」

「ふふ、それぐらいにしておきなさい。……もう暗くなってくるし、後は私達に任せて皆は帰ると良いわ」


高橋先生は九条先輩の説教が一区切りつくと、俺達に帰る様に(うなが)してくる。


「ですね。それじゃ、俺達はそろそろ帰ろうと思います! 今日は付き合って頂いてありがとうございました!」


俺は改めて九条さんと高橋先生にお辞儀をした。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

★評価とブックマーク登録をよろしくお願い致します。

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