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■92 一触即発

扉を開くと、サッカー部の視線が俺達に集中する。

すると、九条さんが一歩前に出る。


「突然すみません。この中で清水さんはいらっしゃいますでしょうか?」


「……俺だが?」


部室の奥から物静かな男性が声をあげる。


「あなたがサッカー部の部長で間違いないでしょうか?」

「あぁ……そうだが? 会長がサッカー部に何の用だ」

「はい。今回、今校内で流れている山守和樹君の噂についての誤解を解く為の協力をお願いしたく伺わせて頂きました」

「噂話ねぇ……」


清水部長は俺に視線を移す。

俺は軽く会釈(えしゃく)をする。


「協力して頂く代わりと言ってはなんですが、今日はサッカー部のお手伝いをさせて行おうと思って参りました」


九条さんが簡単にサッカー部に状況の説明を終える。

すると、部室からは思い思いの声が飛び交う。


「え、何々、そんなことの為に来たの?」

「なんだぁ、マネージャー志願じゃないのか~」


――どうやら、俺達はあまり歓迎されていないようだ。


「マネージャーではありませんが、今日はサッカー部のお手伝いをしたいと思ってます。よろしくお願いします!」


俺も一歩前に出てお願いをする。


「山守君さぁ……君の噂は聞いているよ。何でも1人で3年男子を病院送りにしたそうじゃない。怖いねぇ……そんな問題を抱えている生徒と関わり合いになりたくないってのが正直な気持ちなんだよね」


清水部長は俺に視線を向けて問いかけてくる。


「それが誤解なんです! 兄さんは人を助ける為に戦っただけで……」


愛花は俺が答えるより前にサッカー部に返答する。


「……お、君、可愛いね。サッカー部のマネージャーしてみない?」


すると、サッカー部員の1人が愛花に尋ねてくる。


「……え? 私は……」


返答に困っている愛花を庇うように俺は間に入る。


「あの、マネージャーとかではなく、お手伝いを――」

「――いや、お前には聞いてないから」

「……っ!」


一瞬睨まれた俺は言葉に詰まる。


「……わ、わかりました! 今日だけでしたらマネージャーをしたいと思います!」

「……愛花!?」

「聞いたか皆? 部長! マネージャーになってくれるってさ」

「あぁ、分かった」

「ま、待ってください! 話はまだ途中で――」

「――それじゃ皆、校庭に行くぞ!」


俺の申し出は軽くスルーされてしまい、部長の掛け声と共に部員達は立ち上がる。

俺達は入り口の左右に避けると、サッカー部員の1人が愛花の手を掴む。


「さ、いこっか」

「わわっ!」


愛花はなすがまま校庭に連れて行かれてしまった。


「愛花!」


一部始終を見ていた九条さんや高橋先生は頭を抱えていた。


「九条さん! 愛花が」

「落ち着いてください和樹さん。話はどうあれ、お手伝いを承諾して頂いたことには変わりません」

「……そうね。私もついているから、もしもの時は仲裁に入るから安心しなさい」


2人は焦る俺を落ち着かせてくれる。

俺も深呼吸を一回して落ち着かせる。


「……ふぅ……わかりました。俺達も校庭に向かいましょう」




校庭に向かうと、サッカー部はストレッチをしていた。


「愛花ちゃん、俺の背中も押してくれるかなぁ」

「は~い!」


愛花はサッカー部員のストレッチのお手伝いをしていた。


「俺も手伝ってきます!」


九条さん達に伝えると、俺は愛花の傍へと駆け出す。


「愛花、手伝うよ」

「あ、ありがとうございます兄さん」


すると、サッカー部から声がかかる。


「愛花、俺が行ってくるよ」

「あ、はい!」


俺はストレッチをしているサッカー部員に近づく。


「おまたせしました! 押しますね!」

「……何でお前が来るんだよ」

「まぁまぁ……それじゃ押しますね!」


それからも愛花は一生懸命サッカー部の手伝いをしていく。

俺もそんな愛花のサポートを全力でしていると、複数人のサッカー部員が愛花に集まっていた。


「ねぇねぇ、今日一日じゃなくてずっとサッカー部のマネージャーになってみない?」

「あはは、……私は他の部活をしているので……」

「そんなの辞めちゃえばいいじゃん! こっちの方が絶対楽しいって~」


俺はすぐさま近づき愛花とサッカー部員の間に立つ。


「あの、すみません! 無理やりな勧誘をしないで貰えますか?」


すると、相手は先ほど愛花をマネージャーに勧誘した張本人だった。


「あ? なんだよさっきからお前は……。何度も邪魔してきていい加減目障りなんだけど?」


俺に敵意むき出しの視線を向けてくる。

すると、愛花が裾を引っ張ってくる。


「……愛花?」

「わ、私なら大丈夫です! さ、お手伝いに戻りましょう!」


愛花は精一杯の笑顔を俺に向けてくる。

笑顔を向けられた俺は何も言えなくなってしまう。


「ほら、愛花ちゃんもこう言ってることだし、あまり出しゃばってくんなよな。おにーさん?」

「……くっ!」


あまりの口の悪さに相手を睨みつけてしまう。


「……なんだよ、その目は? ……何なら勝負するか? 別に俺はお前に手伝ってほしいわけじゃないからな。俺が勝ったら愛花ちゃんをマネージャーに貰う。お前が勝ったら……そうだな、誤解を解く協力だっけ? お前たちの要望を聞いてやるよ!」

「あぁ、上等だ!!」


俺は負ける気がしなかったので相手の無理難題の条件を飲むことにした。


「兄さん!?」

「言ったな? 後で嘘でした! なんて言うなよな?」


すると、取り巻きのサッカー部はニヤニヤしながら笑いだす。


「ははは、こいつ勢いに任せて勝負受けてやんの! うちのサッカー部のエースに勝てる訳ないじゃねぇか!」


どうやら、さっきから俺に盾突(たてつ)いてくる(やから)はサッカー部のエースのようだ。

……だが、そんなの関係はない。


「それがどうした? 早く勝負内容を言えよ」

「そう焦るなよ。ルールは簡単だ、お前と俺との1対1で先に3点先取した方が勝ちってのはどうだ?」

「あぁ、分かった」


それから俺達は九条さんや部長に事情を説明することになった。




「和樹さん……あなたは何でそんな無茶な約束を……」

「問題ありません。負けなければいいだけですから」

「そう簡単に言いますが、相手はサッカー部のエースですよ?」

「大丈夫です。任せてください」


俺は九条さんにそう伝えると、神楽耶に確認を取る。


『……神楽耶、いけそうか?』

『はい。ボールを取られずにゴールに入れればいいんですよね?』

『あぁ、そうだ!』

『それぐらいなら問題ありません!』

『わかった。それじゃ行くか』

『はい!』


神楽耶とやり取りを終えた俺は1対1用に作られた空間に向かう。

すると、サッカー部のエースも俺と同じ空間に入ってくる。


「……どうやら、逃げなかったみたいだな」

「当たり前だ」

「まぁいい。簡単にルールを説明する。お前の後ろにある赤いカラーコーン2つの間がゴール範囲で、その間にボールを入れると、俺に加算。そして、同様に俺の後ろにあるゴールにお前がボールを入れたらお前に点数を加算。……ここまではいいか?」

「あぁ」

「スタートはこの中心点からで、ゴールが入ったらまたこの中心点から再開だ。3点先取した方が勝ち……ルールは以上だが、質問はあるか?」

「いや」

「……それじゃ、始めるぞ」

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

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