■91 戦略
「全校生徒を巻き込むですって?」
高橋先生が驚きながら確認を取る。
「はい。厳密にいえば生徒も参加できるように体育館で開催をしてほしいのです」
「それぐらいだったら変更可能だけど、生徒を巻き込んで一体どうするのよ」
九条先輩は芳樹おじさんと相談した話を高橋先生と共有する。
「――なるほどね。PTA会長の悪事を生徒の中で広めて会長の任を辞めざる終えない状態にするって事ね」
「はい」
「それじゃ、どれだけ臨時集会当日までに準備が出来るかが重要ね。和樹君の親御さんから連絡を受けているんだけど、どうやらPTA役員の方に1人ずつ会いに行っているみたいなのよ」
「……え! そうなんですか?」
俺は驚いて声が出てしまう。
「えぇ、私も驚いていたところよ。でも、これからPTA会長になるって人がどこの誰だか分からない人より、一度挨拶をしている人の方が当選率が天と地の差があるわ」
「さすが芳樹おじさん……凄いですね」
「えぇ、それじゃ先ほど会長が話した内容をまとめると、校内では会長や和樹君達が噂話の解消とPTA会長の悪事を広めるのに手を回して、芳樹さんが学校外でPTAの役員の方と交流を深めていく。現PTA会長の手が届かない生徒と役員の方たちを味方に付けて臨時集会の当日に集結させるって事ね」
「はい。おっしゃる通りです」
「わかったわ。それなら後一週後の27日。GW前にどれだけ仲間を集める事が出来るかが大切ね」
「はい。昨日の放課後から活動を始めていまして、野球部の方には協力をお願いできる状態です」
「あら、そうだったのね」
俺は高橋先生に今日の予定を伝える。
「今日はサッカー部辺りに顔を出そうかなって思ってます」
「サッカー部か……うちのサッカー部、ちょっと問題があるのよね」
「え? そうなんですか?」
「えぇ、過去に練習相手の他校の生徒に怪我を負わせたり、公共施設の物を壊したりいろいろ問題を起こしている部活なの。だから、一筋縄ではいかないと思うわ」
話を聞く限り、相当素行が悪い部活の様だ。
「……でも、話してみないと分からない事もあると思います」
「わかったわ。今日から私も付き添うわね」
「ありがとうございます! それじゃ、放課後は一度この部室に集まってからサッカー部に向かうとしましょう」
皆が頷き、放課後の予定が決まる。
程なくして弁当も食べ終わったので高橋先生と九条先輩は部室を後にした。
2人がいなくなり緊張の糸が切れたように俺は肩から力を抜かした。
「ふぅ……」
「兄さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、ありがとう。……愛花、放課後だけど、やっぱりサッカー部のお手伝いは俺だけの方がいいんじゃないか?」
「……心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です! もしもの事があったら兄さんが助けてくれるんですよね?」
「……わかったよ。でも、無理だけはしないようにな」
「はい!」
俺は他の部員も見回す。
「あと一週間だけど、もう少し俺の問題に付き合ってくれるかな?」
「あぁ問題ないぞ和樹!」
「私もよ。元々は私の問題でもあるし、トコトン付き合うわ」
「……微力ながら、協力したいと思います!」
「まかせて!」
「師匠! 私も協力します!」
俺は皆の元気な返答に勇気をもらう。
「ありがとう! それじゃお昼休みも終わるし、俺達も教室に戻るか」
それから俺達は1年生組と別れて教室へと向かった。
教室に戻った俺達は5限、6限の授業を済まし、放課後まで過ごした。
放課後になり、部室で集まった俺達はサッカー部に会いに校庭に移動する。
「あれ、まだ校庭にはいないみたい……ですね?」
校庭を見回してもサッカー部はまだ活動をしていないようだった。
「……おかしいわね。サッカー部の部室の方に行ってみましょうか」
高橋先生の提案で俺達は校庭からサッカー部の部室へと足を進めた。
部室に近づくと、部室内から男子生徒の笑い声などが聞こえてくる。
「それでは和樹さん、行きましょう」
「はい、九条先輩」
俺はサッカー部の部室の扉を勢いよく開けた。
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