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■87 つかの間の休息

学生服に着替え終わった会長と合流した後、芳樹おじさんが提案をしてくる。


「暗くなってきた事だし、今日は私が皆の家まで車で送り届けるよ」

「あ、ありがとうございます芳樹おじさん!」


俺は芳樹おじさんにお礼を伝えた後、ワゴン車が止められている場所まで移動する。

車に乗り込む前に、愛花は会長に視線を移す。


「会長、今日はありがとうございます! ……あの、もしよかったらここまで兄さんの為に行動してくれたお礼に晩御飯をご一緒にどうでしょう?」

「いえ、お気になさらずに……」


謙遜する会長だったが、俺は愛花の申し出には賛成だった。


「会長、俺からも頼むよ。……会長がいなかったらここまで皆の誤解を解く事は出来なかったからな。それに愛花の料理はめちゃくちゃ美味いんだ。是非、食べてってくれ」


すると、芳樹おじさんも助け船を出してくる。


「そうだよ。それに夜遅くなっても私が車で家まで送り届けてあげるからね」

「……それなら、お言葉に甘えさせて頂きますね」


なんとか承諾してくれた会長を横目に、俺は部員皆に視線を向ける。


「それじゃ皆、今日はお疲れ様! 芳樹おじさんの車に乗り込んで帰ろうか!」


皆は頷き、芳樹おじさんの車に乗り込んでいく。


「それじゃ、皆乗り込んだかな?」

「大丈夫でーす」


俺は運転席の方を向きながら返答を返す。


「それじゃ出発するね」


芳樹おじさんの号令と共に、ワゴン車は走り出していった。




車で次々と皆を家に送り届けていき、最後の1人を送り届け終わる。

我が家に向かっている最中に、愛花は会長の日ごろの食生活について尋ねていた。


「会長はいつも家で自炊とかされているんですか?」

「……あら、もうここは学校ではありませんよ。……名前で呼んで貰えるかしら」


九条先輩は悪戯っ子のような顔をして愛花に話していた。


「わわ! すみません。えっと、九条……先輩でいいでしょうか?」

「ふふ……えぇ、いいわ。……えっと、自炊の話よね。そうね、自炊はしているわ。……むしろ外食やコンビニで売られている食べ物は食べないようにしているの」

「そうですよね! 私もよく兄さんにコンビニには行かない様に注意してるんです!」

「あら、そうなの? ふふ、気が合うわね」


2人が盛り上がっていたので、俺も参加する事にした。


「そうなんだよ、愛花がコンビニで食べ物は買わないように! っていうもんだから、俺はいつも樹とコンビニに行く時は我慢してるんだよな」

「山守さん、それが賢明ですよ。コンビニの商品は値段も高い上に食品添加物が多く入っていますから、(そう)じて体によくありません」

「そうです! 兄さんの体調管理も私の役目なので、しっかり守って貰いますからね!」

「……う~ん、でも美味しそうなんだよなぁ」

「ふふ、おっしゃる通り、とても美味しそうに見えますが、食べた後に体内で起こる現象を知らない人が多すぎますからね。注意してください山守さん」

「……あ、はい!」


俺は2人の食への(こだわ)りに圧倒されていると、ワゴン車が家に到着する。


「皆お待たせ。到着したよ」


芳樹おじさんは後部座席に振り返って声をかけてくる。


「ありがとうございます! ……それじゃ降りよう愛花。それに、九条先輩も」

「はい兄さん!」

「えぇ」


俺達は車を降りた後、家の入り口まで移動する。

愛花が鍵を開けて中に入る。


「「ただいまー」」

「……お邪魔します」


俺と愛花が先に入り、あとから九条先輩が恐る恐る入ってくる。


「それじゃ私は準備をしてくるのでリビングで待っていてくださいね」


愛花はそう言うと、2階へと姿を消す。


「さ、会長……あ、九条先輩。こちらへ」

「ふふ、失礼しますね」


俺は靴を脱いだ九条先輩をリビングへと案内する。

リビングへ移動した俺はソファーを指さし、九条先輩に視線を向ける。


「九条先輩、ソファーで料理が出来るまで(くつろ)いでいてくださいね」

「えぇ、ゆっくりさせて頂きますね」


テレビを付けて九条先輩が(くつろ)いでいると、リビングに芳樹おじさんが入ってくる。


「おまたせ。……おっと、そのままでいいよ」


芳樹おじさんはそう言いながらソファーに座り込む。

すると、続いて愛花もメイド服姿でリビングに登場する。


「お待たせしました!」

「あ、愛花ちゃん!?」

「……あらあら」


2人は少なからず驚いていたので俺は説明することにした。


「これが普段着です」


俺は(いた)って真面目な顔で答える。


「それじゃ、早く晩御飯の用意をするので待っていてくださいね!」

「あぁ、よろしく頼む!」


俺は台所へと向かっていく愛花に声援を送り、視線を2人に戻す。


「あはは、驚いちゃったよ。えと、それで九条さん……だったかな。今日は和樹君達の為に動いてくれてありがとう」

「いえ、お気になさらないでください」

「……他の部員の方から聞いたよ、生徒会長なんだってね」

「えぇ、生徒会執行部の会長を務めさせて頂いています」

「そんな生徒会長が何でここまで協力してくれるんだい?」

「はい。山守さん……あ、混乱してしまうので名前で呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか?」


会長は俺の方に視線を向けて確認してくる。


「……え? は、はい! 全然いいですよ!」

「ありがとうございます。和樹さん達には既にお昼にお伝えしていましたが、現PTA会長の行いは以前から目に余るものが多く、今回の件で私の中で決定打となり、粛清(しゅくせい)も兼ねて協力させて頂いています」

「……そうだったのか。私も3者面談の場で今の状況を教えて貰ったが、明らかにPTA会長の範疇(はんちゅう)を超えているからね」

「えぇ、本来PTAとは生徒達が(すこ)やかに成長できる環境を守る為の集まりなのに、生徒の学校生活に危害を加えてくるなんて言語道断で、許されない行いでしょう」


俺は唾をゴクンと飲み込み、ただ黙って2人のやり取りを聞いていた。


「……私もそう思うよ。だからこそ、そのような判断をする現PTA会長には退場してもらい、私が代わりに会長の座を頂くつもりさ」

「えぇ、それには私も賛成です。ですが、それだけでは足りません。完膚(かんぷ)なきまでに相手に知らしめる必要があるでしょう。……ただ、それにはまだ準備が必要です」

「……準備ってのは、今日のような部活動のお手伝いの事かい?」

「はい。今日行った事をPTAの臨時集会までに出来る限り繰り返していきます。そして臨時集会の当日、出来る限りの生徒を集めて現PTA会長を断罪(だんざい)致します」


俺は九条先輩の万物(ばんぶつ)を切り裂くような物言いに圧倒されていた。


「わかったよ。私は学校外から、九条さんは学校内から出来る事を行っていこう。私も一度PTA会長に会って話を聞いてみようと思う」

「えぇ、わかりました」

「……芳樹おじさん! 何されるか分からない相手に会うなんて、危ないですよ!」

「なーに、大丈夫だよ和樹君。おじさんに任せなさい」

「……わ、わかりました」


仏のような芳樹おじさんの笑顔に何も言えなくなる俺は、しぶしぶ了承(しょうだく)する。

それからほどなくして愛花の料理が出来上がり、俺達は晩御飯を食べることになる。




九条先輩は愛花の作った料理を一口食べると、顔色を変えて次々口の中に食べ物を運んでいく。

どうやら、愛花の料理がお気に召したようだ。


「ふふ、慌てないでください。まだ一杯ありますからね!」

「う~ん、愛花ちゃんの料理はやっぱり絶品だな。とても美味しいよ」


芳樹おじさんも愛花に笑顔を向ける。


「嬉しいです! 芳樹おじさんもまだあるのでい~っぱい食べてくださいね!」


俺も負けじと食べ続け、晩御飯はあっという間に無くなっていった。


「……ふぅ……満腹満腹」

「……いやぁ、美味しかったよ。愛花ちゃん」

「愛花さん、とても美味しかったですよ」


九条先輩も満面の笑みを愛花に向ける。

俺は珍しい九条先輩の笑顔を横目に愛花に賞賛の声を送る。


「愛花、今日も美味しかったよ! ありがとうな」

「いえいえ、兄さんも今日一日お疲れさまでした!」


愛花は屈託のない笑顔を俺に向けて労ってくれる。


「こんな美味しい晩御飯を頂けるなんて思いませんでした。ありがとうございます。愛花さん」

「よかったらまたいらしてくださいね。その時も是非ご馳走させてください!」

「えぇ、その時はお願いしたいと思います」

「それじゃ、後は私が九条さんを家に送り届けてくるから、和樹君達はゆっくり休んでおくといいよ」

「わかりました!」

「はい!」


それから芳樹おじさんは九条先輩を家に送り届けに家を出て行った。


「……ふぅ」


2人が家から出て行ったのを確認した後、俺は疲れが一気に押し寄せてくる。


「……愛花、片付けをしたいのは山々なんだが、ちょっと疲れが溜まってるみたいだ。……少し寝るな」

「はい兄さん。片付けならお気になさらずに、ゆっくり休んでくださいね!」

「……すまん」


俺はソファーに寝転がり、目を瞑ると瞬時に意識が遠のいていった。

「面白かった!  続きが見たい!」

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