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■80 耐える勇気

会長が国枝さんと話をしていると、学食に高橋先生が入ってくる。


「はぁ……はぁ……山守、ここにいたのね。……なんで会長と一緒に? ……まぁいいわ」

「高橋先生……? どうしたんですか、そんな息を切らして……」


俺達の視線が高橋先生に集中する。


「さっき、保健室の先生から聞いた事なんだけど……山守、あなた一方的に3年生に喧嘩を仕掛(しか)けたそうじゃない」

「……え?」


一瞬、高橋先生の言っている意味が理解できなかった。


「……ちょ、ちょっと先生! それってどういう事ですか!」


恵が立ち上がって問いただす。


「聞きたいのは私よ、事実を確認する為に来たの。……どうなの山守?」


俺が答えようとすると、会長が先に高橋先生に話始める。


「高橋先生、私の方から説明いたしましょう。先ほど――」


それから会長は非常にシンプルに先ほど学食で起きた事を高橋先生に伝える。


「――という事で、今こうして一緒にご飯を食べているのです」


高橋先生は終始口を開けたまま、驚きの表情をしていた。


「……何よそれ、明らかに悪いのは相手の方じゃない」


当然ながら、高橋先生の誤解はすぐに解けた。

俺は安堵(あんど)しながら高橋先生に話しかける。


「……先生、恐らく3年男子達が嘘を保健室の先生に伝えていたんだと思います」

「そうみたいね。……でも、困ったわ。こうも簡単に嘘を言われていては私たちは何を信じて良いのか分からなくなるわね」

「……推測(すいそく)ですが、先ほどの方たちが今回の山守さんの噂を流している関係者……という事ではないでしょうか?」


困惑する高橋先生に会長は疑問を問いかける。


「……もし、そうだとしても……それを確認する術は私達にないわ」

「ふふ……それはどうでしょうか」


会長は(ふく)み笑いをしながらスッと立ち上がり、俺に視線を送る。


「……山守さん、少し調べものがあるので私はお先に失礼させて頂きますね」

「はい! あ……そうだ会長! 放課後に3者面談があるので、俺は少し遅れて部室に向かうので待っていてくださいね!」

「えぇ、分かりました。それでは放課後にまたお会い致しましょう」


会長はそう言うと、トレーを持って席を後にする。


「……ま、待ってくださいよぉ~会長ぉ!」


国枝さんも慌てて食べ終わったトレーを持って会長についていき、2人とも返却場にトレーを戻すと学食から出て行った。


「山守……私の様に誤解がすぐに解けるのならいいけど、そうじゃない場合も多いわ。……3者面談もあるし、あまり相手に手を出さない方が良いわね」

「……そうしたいと思います」

「それじゃ放課後、私は生徒指導室で待ってるから、山守は親御さんを連れてきなさいよ」

「分かりました」


俺は軽く返事を返すと、高橋先生は学食から出て行った。


「……ふぅ」


俺は会長や高橋先生がいなくなり、深呼吸をして自分を落ち着かせる。


「……和樹君、大丈夫?」


恵が心配そうに尋ねてくる。


「あぁ、皆もいてくれるし俺は全然問題ないよ。……それじゃ、俺達も戻るとするか」


皆は頷いた後、俺達は学食から出る。




愛花と別れる前に忠告をする事にした。


「愛花……何か言われても挑発に乗らず、相手にするなよ」

「はい、兄さん!」

「梓ちゃん達も愛花の事、よろしくね」

「……和樹さん、わかりました!」

「まっかせて! 何か言われてきても私が守ってあげるから!」

「はい師匠! 私も頑張ります!」


俺は微笑みながら1年生組と別れる。


「それじゃ、俺達も教室に帰るか」

「あぁ、了解した」

「えぇ、……何か今日は学食でいろいろありすぎて疲れちゃったわ」

「だな、俺も疲れたし早く戻ろう」


軽口を叩きながら俺達は教室へと向かうが、その道中も他の生徒の視線は向けられる。

俺達は無視をして足を進めるが、先ほど学食で逃げていった3年男子の1人が俺達の前に立ちふさがった。


「よぉ、さっきは世話になったな?」

「……どいてくれ」


俺は相手を見据(みす)えて手短に答える。


『……和樹君、どうしましょう』

『神楽耶、今回は何もしなくていい』

『え、でも……』

『いいから、もう騒ぎを起こしたくない』

『……わかりました』


俺は神楽耶に思念で伝えていると、相手は不敵(ふてき)()みをしてくる。


「あぁ……すぐにどくさっ!」


――ドコッ!

相手は俺の腹に向かって殴ってきた。


「グッ!」


俺はその場で腹部の痛みに耐える。


「和樹!!」

「ちょっとあんた! 急に――」

「恵っ!」


恵が相手に食いつこうとしていたので、俺は恵の前に手を突き出して静止させる。


「……俺の事はいいから」

「和樹君……っ!」


恵はすぐに静止し、相手を睨みつける。

俺も腹に手を添えて相手に視線を戻す。


「……これで満足か」

「ふん、今日はこれぐらいにしておくが……あまり調子に乗るなよ? クソ問題児が」


相手は俺に忠告を残すと去っていった。


「……なんで、やり返さないのよ!」


相手の姿が見えなくなった後、恵は俺に問い詰めてくる。


「……高橋先生にも言われているし、もうあまり騒ぎを起こしたくないんだ。……それに、また恵に矛先が向かってしまっても嫌だからな」

「和樹君……」


だが、恵はすぐに首を左右に振る。


「……でも、元はといえば私の問題のせいで和樹君がこんな目に会ってるんだから、見逃せないわ!」

「その気持ちだけで十分だよ。……ありがとうな、恵」

「うぅ……」


俺は恵に微笑(ほほえ)みかけると、恵はやるせない表情をしつつ(うつむ)く。

そんな恵を見ていると、樹が謝罪をしてくる。


「すまない和樹、私は学食での喧嘩で相手に恐怖を感じているようだ。……動くことが出来なかった」


樹は震える手を震えないように手で押さえていた。


「樹……いや、それでいい。何もしないのが一番だ」

「……あぁ、そうだな」

「さ、道草を食ったし早く教室に帰ろう」


俺は空気を換える為に2人に伝えると、すぐに3人で教室へと向かった。




教室内は既に誤解が解けているので過ごしやすい空間となっていた。

そんな中、俺の席に樹達は集まる。


「ふぅ……落ち着くな」

「だな、ここは私も居心地がいい」


既に眼鏡を予備に変えていた樹は、周りを見回しながら呟く。


「もうあまり教室外に行かない方がいいかもな」

「……それもそうね」


恵は苦笑しながら答える。

程なくして昼休みの終わるチャイムが鳴り響く。


「お、それじゃまた後でな和樹」

「それじゃまたね和樹君」

「おぅ」


俺はその後も心底落ち着きながら5限,6限と授業を終え、放課後になるまで過ごしていった。


「さて……と」


放課後になったので俺はスマホを確認しようとすると、席に樹達が近づいてくる。


「和樹、確かこの後は3者面談だよな?」

「あぁ、先に部室に向かっておいてくれ。……鍵の借り方ってわかるよな?」


すると、恵が思い出しながら答える。


「確か、前に国枝さんがやってたのを見ていたから問題ないわ」

「よし。今日は会長も来るらしいから俺の3者面談が終わるまで待っててくれ」

「了解した!」

「えぇ、それじゃ先に部室で待ってるわね和樹君」

「うん、また後で」


2人が教室から出ていくのを見届けた後、俺はスマホに視線を戻す。

すると、芳樹おじさんから学校に到着した旨の通知が入っている事に気付く。


「……よし、行くか!」


俺は鞄を持って昇降口へと向かっていった。

「面白かった!  続きが見たい!」

と思っていただけましたら小説投稿のモチベーションになりますので、

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